公開日:
【セミナーレポート】生成AI・AI・RPAを使いこなす! ~事例から学ぶ業務活用と庁内浸透~【Day2】

判断・予測が必要な業務にはAI、定型・繰り返し作業にはRPA、言語処理・創造系には生成AI……と、それぞれの役割が明確にわかっていても、なかなか各課で運用が浸透しないという悩みを抱えていませんか。その原因は、“特性の違い”を踏まえた業務への当てはめ方が整理されていないことにあるかもしれません。
業務効率化の効果を最大化するためには、どのように各課がシステムやツールを使いこなすべきなのか。今回は、具体的な実践事例を交えながら、庁内浸透のポイントをお伝えします。
概要
■テーマ:生成AI・AI・RPAを使いこなす!~事例から学ぶ業務活用と庁内浸透~【Day2】
■実施日:2026年6月5日(金)14:00~16:00
■参加対象:自治体職員限定
■申込者数:232名
【横須賀市】ブームで終わらせない。横須賀市の生成AI活用
第1部に登壇したのは横須賀市の太田さん。生成AIをブームで終わらせないため、猛スピードでの全庁導入から、現在直面するハルシネーションや三層分離の壁、そしてその先を見据えたGoogle Workspaceへの移行構想までお話いただいた。

【講師】
太田 耕平 さん
横須賀市
経営企画部 デジタル・ガバメント推進室 部長
猛スピードでの全庁導入という決断
時計の針を3年前、令和5年の春に戻します。世の中はまさに生成AIのビッグバンの真っ只中にありました。3月14日にChatGPT-4がリリースされたとき、私はこれまでのITツールの延長線では測れないゲームチェンジャーだと直感し、すぐに個人課金をして触り始めました。行政の日常業務の大部分は文書の作成や要約、そして法令や規則といった難解な文書を市民の皆様に分かりやすく翻訳することで占められており、言葉を司る生成AIが行政事務に絶大な効果を発揮することは間違いないと感じました。当時私は都市戦略課という市役所内コンサルともいえる組織にいましたが、デジタル・ガバメント推進室が既存のチャットボットにAPI連携を組み込む技術検証を行っていることがわかり、この仕組みを使えば全庁的な導入が実現できる可能性も感じました。
そうしているうちに、私にデジタル・ガバメント推進室への異動内示が出ました。同時に3月29日、市長から「ChatGPTを使って何か検討できないか」と具体的な指示があり、私はスピード勝負に出ることを決意しました。急造のチームをこしらえ、技術的知見を持つメンバーにチャットツールとの連携テストを、会計部門にはAPI利用料を支払うための法人クレジットカードの整備をお願いしました。当時ベネッセやパナソニックといった大企業が次々と全社導入を発表しており、つくば市や神戸市のような先進自治体も続くだろうという予測もあり、どうせやるなら自治体で一番を狙おうと、トップスピードで動き出しました。これほど迷わず決断できた理由は2つです。

1つ目は行政事務の本質です。条例の解釈、補助金の案内、議会答弁、通知文書、議事録、計画の素案など、言葉と文章を扱うことが行政職員の本業であり、言語を操る生成AIとの相性は抜群だと思いました。2つ目は職員数の減少です。人口減少で自治体はどこも深刻な担い手不足に直面しており、少ない職員数で行政需要に応えるには、この技術を使わない選択肢はありませんでした。使うか使わないかではなく、どう賢く使うか。それだけでした。
実演というものさしで進める
しかし市長がゴーサインを出しても、自治体はそれだけで動く組織ではありません。財政当局や幹部職員の説得が必要です。そこで私は副市長をはじめとする幹部職員に対し、その場で実演デモを行う場を用意しました。未知の技術は精緻な説明書を出しても経営層の心を動かすことは難しく、大切なのは目の前で正しい使い方でシステムが動く姿を見せることです。私が用意したのは、市長の過去の発言や挨拶文を読み込ませた簡易な市長ボットでした。目の前でAIがまるで市長本人のように語る挨拶文を瞬時に出力して見せると、副市長や幹部職員は生成AIのすごさを肌で理解し、その場で導入を決意してくれました。まさに百聞は一デモにしかず、です。

市長指示から1ヶ月足らずの4月20日、全国の自治体に先駆けて全庁活用を開始しました。私たちがこだわったのは、一部のITリテラシーが高い部署だけでの限定利用ではなく、全庁導入という形です。これから訪れるAIが当たり前の時代の空気感を、役所の全職員に肌で感じてほしかったからです。生成AIは専門知識が不要で誰にでも触りやすく、触ればすぐに効果がわかる、歴史上もっとも民主的なツールだと考えました。全職員が同じスタートラインに立ったことで、部署を超えて使い方を教え合う文化が生まれ、普及の速度を押し上げています。ただし、この横須賀のやり方が唯一の正解だとは思いません。リテラシーの高い一部の部署から始め、利用方法を成熟させるという作戦も、有効だと思います。
使われ続けるための仕掛けづくり
導入したけれど結局ほとんど使われていない、という声を耳にすることがありますが、横須賀市では利用開始当初は月2,000万トークンほどだったものが、現在はファイル添付を除く純粋なテキスト入出力だけで月1億トークンに達する月もあるほどです。

この定着は実績にも表れており、当初見込みの年間業務削減22,700時間に対し、実際の時間外勤務の削減は22,800時間とほぼ一致しました。

もちろん生成AI単独の効果ではありませんが、働き方改革の強力な推進力になったことは間違いありません。継続の鍵は、生成AIは楽しんで使うものだ、という刷り込みです。
組織の意思決定権を持つ40~50代の管理職層をターゲットに、内部広報誌「ChatGPT通信」を創刊し、明日から使える具体的なプロンプトを毎週発信し続けました。ガードを固めたチャットボットに職員がハルシネーションを起こさせようと挑む「ほこたて対決」など、まじめにふざける空気づくりも普及を後押しし、今は自律的に回る安定飛行のフェーズに入っています。
見えてきた壁と、その先を見据えて
一方で、今直面している壁が2つあります。1つは市民向けサービスのハルシネーションの壁です。傾聴AIは手続きの正解を教えるものではなく市民の悩みを聴き心に寄り添うためのものとアナウンスしていますが、住民は具体的な行政手続きの答えを求めて質問してしまい、曖昧な回答の提示で低評価を受けることがあります。

もう1つは内部向けの三層分離の限界です。過去の行政ファイルを常に参照させた高度な文章作成の要望が強まっていますが、横須賀市が採用するαモデルのセキュリティ構成では、インターネット側の最新AIから内部のファイルサーバーへシームレスにアクセスできず、業務全体を覆う基盤としての活用には限界があります。

この壁を前に、私たちは全庁的な業務基盤そのものをGoogle Workspaceへ移行する取り組みに着手しています。単なるツールの新調ではなく、事務の効率化とレガシー維持コストの回避、次世代クラウドを使いこなせる組織への転換を見据えたものです。現場からは「早く全庁に展開してほしい」という声が上がっており、このプレッシャーこそ最大の成果だと感じています。背景には、GIGAスクール構想でクラウドを使いこなして育った世代が2029年4月に入庁するという節目もあります。

彼らが初日から最高のパフォーマンスを発揮できる環境を、今から先回りして作っておく必要があるのです。生成AIを打ち上げ花火で終わらせず、組織やインフラをアップデートし続ける。この終わりのない営みこそが私たちの仕事だと思っています。
【オムロン株式会社】自動化する業務の見つけ方と作業の見直し方
第2部に登壇したのはオムロン株式会社の近藤さん。
RPA活用が進まない現場に向けて、自動化できる業務の見つけ方とECRSによる業務の見直し方、そして自社70部門以上での実践から得た知見についてお話いただいた。

【講師】
近藤 剛史 さん
オムロン株式会社
データソリューション事業本部
データ活用ソリューション事業部 コンサルティング営業部
効率化が求められる背景から考える
まず、なぜ業務の効率化が必要なのかについてです。帝国データバンクの調査によると、企業の約50%が「人手不足が業務に影響している」と回答しており、特に事務系の職種では新規採用が困難という課題も聞かれます。また業務の属人化という点では、総務省の調査によると企業の約60%が「特定の従業員に依存している業務がある」と回答しています。それ以外にも長時間労働、平均残業時間が月20時間以上にもなっているという課題もあります。このような状況だからこそ、普段されている業務を効率化するというテーマが重要になってきています。その中で注目されているツールの1つがRPAです。
自動化できる業務を見つける視点
RPA、ロボティック・プロセス・オートメーションとは、パソコンの中に入った小さなロボットが作業の記録をして自動化してくれる仕組みのことです。これまで皆様がパソコンで行っていた作業を、人に代わってロボットが行ってくれます。特徴としては、エクセルなど普段からよく使うツールだけでなく、業務システムや自社で開発したシステムにも対応できるという点が優れています。実際の動作としては、システムへのログインから始まり、エクセルのデータを収集して決められた箇所へ転記する、といった一連の作業を自動的に、しかも一行ずつ確実に行ってくれます。
反対に、システムからデータを抽出して報告用の資料に加工し、メールで上司に報告するといった作業も対応可能です。単調な繰り返し作業を効率化するという面において非常に優れたツールであり、こうした背景からRPAはこの数年で必須の時代になってきています。

年商50億円超の企業では45%が導入しており、自治体の中でも個別に活用や導入を進めるケースや、共同調達で導入を進めるケースが増えている印象があります。
無理なく進めるためのステップとして捉える
こういったツールを導入するにあたり、失敗しない自動化の進め方をご紹介します。全体像として大きく4つのステップがあります。1つ目は、自動化できそうな業務を洗い出すことです。3つのポイントとして、締め処理や月次・週次・日次など「定期的に行っている業務」、異なるシステム間のデータ受け渡しなど「システムに関連する業務」、そしてコピー&ペーストや突合チェックなど「心理的に負担のある業務」があります。特に3つ目のポイントが一番業務を洗い出しやすく、「先週行った業務の中でストレスを感じたことはありますか」と自分自身や周りに問いかけると、たくさん業務が出てくるはずです。
2つ目のステップは、やめられそうなものがないか整理することです。ここではECRS(イーシーアールエス)の法則、やめる・まとめる・順番を変える・簡単にするという4つの考え方に従い、自動化の前に業務の無駄を削ぎ落とします。

3つ目のステップは、投資対効果をざっくりと試算することです。計算式は「現状の作業時間×自動化できる割合×労働生産性+付加価値」で、労働生産性は社会保障費や家賃補助なども含め時給の3倍程度とされています。
4つ目はスモールスタートでトライすることです。本当に自動化できるか、効率が上がるのかを小さな単位で確認します。重要なのは、隅々まで業務整理をしたり精緻な投資対効果を試算したりして最初から100点を目指すのではなく、クイック&ダーティーに進めることです。
現場で使いこなすところから
オムロン社の中でも、これらのステップを活かして70部門以上でRPAを導入し、業務の自動化を実現しています。製造部門では日報の集計やデータ入力、購買・資材周りでは受発注業務など、幅広い部署で効果を出しています。
その際に利用したのが、オムロンが自社開発した「pengu」というツールです。現場で使える「世界一ハードルが低い」ことをコンセプトにしたRPAで、マンツーマンの教育もセットでご利用いただけます。まずはスモールスタートしたいという各部門の声にもマッチしたサービスです。

試しに業務を洗い出してみたけれど自動化に向いているか不安な方は、その作業についてまずオムロンにご相談ください。
【株式会社ジチタイワークス】仕様書作成・事例研究を劇的に効率化。調達インフォの生成AIで変わる調達実務
第3部に登壇したのは株式会社ジチタイワークスの田口さん。調達業務にまつわる負を解決する「調達インフォ」の5つの機能と、生成AIを活用した仕様書チェックの実例についてお話いただいた。

【講師】
田口 拓弥 さん
株式会社ジチタイワークス
ビジネス開発部 公共ビジネス課 係長
本日ご参加いただいている自治体職員の皆様が、何かサービスを導入したいとなったとき、情報の収集、参考見積もりの収集、予算要求、そして予算獲得という調達の流れの中で、それぞれのタイミングで「なんとなく面倒」と感じる場面がたくさんあると聞いております。

こうした負を解決できるのが「調達インフォ」というサービスです。全国の自治体とお話しする中で、次のような声をいただきます。導入したいサービスが見つかっても、類似の事例をWeb検索でなかなか見つけられず、情報収集に数日かかってしまう。ようやく仕様書や参考見積もりを集めても、その金額が適正かどうか判断できない。今提案を受けている業者以外にどこが対応できるかわからず、声かけのために時間を費やしてしまう。人事異動のタイミングで担当者のスキルの差により判断にばらつきが出て、ゼロからやり直しになってしまう。不調・不落が多い。これから9月頃に向けて多くの自治体で本格化する予算要求に向けた根拠づくりが大変。こうした一つひとつの声に応えるサービスとして、調達インフォをご提案しています。
調達現場に潜む負担から考える
調達インフォは、調達に必要な情報と支援をワンストップで提供するサービスです。情報収集、分析・検討、仕様書作成、参考見積もり収集、予算要求、そして入札執行という一連の調達業務の流れの中で生じる大変さを、この1つのサービスでクリアすることができます。

調達インフォが選ばれる理由は5つあります。

1つ目は「探す」機能です。過去16年分、約2,600万件を超える入札情報を網羅しており、案件名や自治体名、民間企業名など様々な切り口で検索できるほか、絞り込み検索も充実しています。2つ目は「作る」機能で、生成AIを使って仕様書を作成したり、チェックしたりする役割を担います。3つ目は「伝える」機能で、公開した案件の情報を企業へ直接メールでPRし、応札の可能性を高めることができます。4つ目は「見極める」機能で、生成AIが業者の過去の行政処分や入札停止などの情報をWeb上から自動で確認します。5つ目は「支える」というサポート体制で、導入して終わりではなく、実際に職員の皆様に使いこなしていただけるところまで、専任スタッフが操作説明会などを通じて丁寧に伴走支援を行っています。
5つの機能として捉える
導入自治体数は約1,000(無料トライアルを含む)にのぼり、費用対効果としては年間約176時間の業務削減効果が見込め、地方公務員の平均月給から時給換算すると、1つの課で使うだけで

年間約45万円相当の人件費削減につなげていただくことも可能です。実際の導入事例として、

立川市様や加東市様など様々な声をいただいており、新しい情報を庁内にない視点で見つけに行きたいという方に加え、既存の一社随契だった調達を調達インフォの事例を参考に入札へ切り替え、コストを削減したり歳入をより生み出したりといった成功事例もございます。

人事異動でこれまで属人的だった調達業務を引き継いだ担当者様が、他自治体の事例や過去の落札実績を根拠に、安心して判断できるようになったという声もいただいています。
実際の検索画面をお見せしながらご紹介します。調達インフォにログインすると、「探す」「作る」「伝える」といった機能が縦のラインでわかりやすく整理されており、初めて使う方でもしっかり情報を取っていただける組み方になっています。試しに「調達情報を探す」から、あるキーワードで検索してみると、全国16年分・約2,600万件の入札情報の中から該当する案件に絞り込まれます。ここからさらに便利なのが絞り込み検索です。「仕様書使用あり」や「入札結果あり」のチェック、都道府県などのエリア指定を組み合わせることで、件数を大きく絞り込めます。実際に近畿エリアで絞り込んだ案件の1つを開くと、当時の仕様書や質問書、入札説明書、スケジュール、そして入札結果まで確認でき、予定価格に対していくらで、どの企業が落札したのかという情報が一目でわかります。特に便利なのが、落札企業だけでなく応札した企業の情報まで表示される点です。応札しているということはその案件に対応できる企業ということになるため、参考見積もりをむやみに依頼するのではなく、あたりをつけて工数をかけずに対応いただけます。
実際の使い方を追ってみる
「作る」機能では、生成AIによる仕様書チェックを利用できます。ダウンロードした仕様書ファイルを読み込ませ、チェック項目を選ぶと、固有名詞や誤字脱字・表記ゆれのチェックと修正提案、想定される質問の洗い出しなどを生成AIが行ってくれます。

業者から説明を受けて作成した仕様書は、その業者しか対応できないキーワードで組まれてしまっていることがあり、公開後にトラブルやクレームにつながるケースも聞かれます。このチェックを通すことで、そうした表現を一般名詞に書き換える提案が得られ、公平性の確保にもつながります。「伝える」機能では、案件の情報を企業へ直接メールでPRすることもでき、応札の可能性を高めることができます。各自治体の課題に合わせたデモを交えた個別のお打ち合わせも受け付けておりますので、ご関心があればお気軽にお問い合わせください。
【近江八幡市】「一部門で終わらせない」RPAの広げ方
第4部に登壇したのは近江八幡市の園田さん。既存業務の見直し負担を避けて新規業務からRPA化を進める方針、シナリオ作成の外部委託と内製化のバランス、そして庁内展開を支える所属内の協力体制づくりについてお話いただいた。

【講師】
園田 泰久 さん
滋賀県 近江八幡市
情報政策課 副主幹
体制と歩みからひもとく
まず本市のRPA推進体制についてです。総合政策部の中に行政改革課と情報政策課があり、情報政策課がRPAツールの調達を、行政改革課が業務改革の一環としてRPAの導入を担っています。

人数を記載していますが、実際にこれだけの人数を推進に充てているわけではなく、情報政策課で1名程度、行政改革課で4名程度が、日頃の業務と兼務しながら推進を進めているという状況です。
導入の経緯としては、令和2年度に行政改革課、当時の行政経営改革室が導入しました。ちょうど業務過多で残業が増え、効率化が叫ばれ始めていた時期に、RPAの営業提案があり、そこに飛び込んだという形です。令和5年度にはRPAの管理を情報政策課へ移管し、現在に至っています。導入当初は3所属・10業務からのスタートでしたが、令和7年度は14所属・46業務まで拡大しています。

これ以外にも単発で動いている業務や、役目を終えて運用を終了した業務もあります。
同時期に、RPAを活用するための前提として、オンライン申請システムとAI-OCRも導入しました。RPAを動かすにはデジタルデータが必要になるため、オンライン申請によってデジタルデータを生み出し、AI-OCRで手書きの紙をデータに変換する、という組み合わせを想定したものです。ただしAI-OCRについては、オンライン申請の利用率が想定以上に上がったことで、紙申請を電子化する必要性自体が薄れ、現在は稼働を縮小して運用しています。
RPAの実像を見つめ直す
RPAとは何かについても触れておきます。一般的には「パソコン上の定型業務を自動化する技術」であり、人間の操作をシステムが再現することで業務効率化と人的ミスの削減が期待できる、と紹介されます。
ただ、実際に使ってみた実感としては、これに加えて「定型業務をアルゴリズム化し、効果的に自動化できる要素に置き換え、機械的ミスが少なくなるよう業務見直し、いわゆるBPRを行って初めて効果的に活用できる」という説明が必要だと感じています。
同様に、「作りやすい」「気軽に始められる」「プログラミング知識不要」といったキャッチコピーもよく見かけますが、本市の見解としては「簡単なものに限る」というのが実態です。
日常業務は思いのほか複雑な要素が絡んでおり、RPA化を実現するには、それなりのシステムへの機能理解やプログラミング知識が必要になるケースが多いというのが実感です。
2つの方針として進める
こうした前提を踏まえ、本市では2つの方針を立てました。1つ目は、RPAを導入する業務は新規業務を優先すること。2つ目は、RPA作成はとりあえず外部委託とすることです。
新規業務を優先した理由は、既存業務をRPA化しようとすると、これまでの手順や法規に縛られて自動化のハードルが高くなり、「今のやり方に問題がないのになぜ見直すのか」という声が上がって協力を得づらいためです。一方、新規業務であれば、これまでの手順がなく諸ルールに比較的縛られずに行え、オンライン申請を前提に業務そのものを組み立てられるという利点があります。ただしデメリットとして、比較対象となる既存業務がないため、何時間削減できたかという効果検証がしづらい点には注意が必要です。
実際に組んだRPAシナリオとしては、オンライン申請システムを起動して未処理の申請をダウンロードし管理簿に転記する、住基システムを検索して情報を管理簿に追記する、文書管理電子決裁システムで起案文書を作成する、支払データを作成し進捗を更新する、といった一連の小さなRPAを連携させています。三層分離の環境のため、USBでネットワーク間をまたぐ工程も組み込んでいます。

こうして税の未納者リスト作成や補助金交付決定通知の送付など、幅広い業務のRPA化を進めてきました。

2つ目の方針である外部委託については、RPA作成には専門知識が不可欠と判断し、シナリオ作成を外部SEに委託する業務委託契約を締結しています。令和7年度は年間65日分の支援を受ける契約です。
あわせて職員研修も実施し、内製化に向けた技術習得を進めていますが、現状シナリオ作成が完全にできる職員は1名のみで、数名がその職員に教わりながら学んでいる段階です。
外部委託は財政負担が大きいため、無理のない範囲で内製化を進めることは今後も重要なテーマだと考えています。
定着に向けた体制づくり
推進にあたって重要だと感じているのが、所属内の職員体制です。業務所管課には、RPA化に前向きな協力者が少なくとも2名必要で、一人は意思決定を行う所属長など、もう一人は業務実施を担当する職員です。特に後者が重要なキーパーソンになります。
というのも、RPAのシナリオは多くの場合その業務を知らない人物が代理で作成するため、担当者との意思疎通がうまくいかないと、想定と異なるシナリオが出来上がってしまうことが多々あるからです。そこで「使えないから元の手作業に戻そう」と諦めてしまうのではなく、「こう変えてほしい」と伝えてトライ&エラーを重ねられる関係性が欠かせません。

また、推進がトップダウンのみ、あるいはボトムアップのみだと機能しないケースが多く、異動によって体制が変わるリスクもあるため、協力者は常に増やし続ける必要があります。
他所属への展開については、1つの部署で実例ができると、その事例を動画や庁内掲示板で共有し、「やってみたい」と相談があった所属に対してアプローチする、という形で庁内展開を進めています。実際のシステムを動かして実演すると、より良い反応を得られやすい傾向がありました。
業務をヒアリングしていくと、これまでRPA化した所属と似た業務が多く、既存シナリオを流用できるため、横展開自体にはそれほど苦労していません。ただし難しい業務については、外部SEに技術支援を依頼しています。また、RPA推進部門も、できる限り実施部署と伴走できる体制を作ることが重要だと感じています。
最後に、RPAはあくまで自動化ツールの最終手段だと考えています。その前に、システム間のAPI連携やデータベース参照など、より効果的・効率的に行える機能がないかを検討したうえで、活用いただければと思います。


















