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自治体におけるマイナンバーカード活用事例|分野別の取り組みから見るの実務ポイント

他自治体のマイナンバーカード活用事例は、自治体職員が業務効率化や住民サービス改善を検討する上で、具体的なヒントとなる。交付・普及は進んだ一方で、「どの業務でどのように活用されているのか」「現場の負担や住民対応がどう変わったのか」といった実務レベルの情報は見えにくい。
本記事では、自治体におけるマイナンバーカードの活用事例を分野別に整理し、導入による効果や取り組みのポイント、今後の展開の方向性について解説する。
※掲載情報は公開日時点のものです。
マイナンバーカードの普及状況と住民利用の実態

出典:デジタル庁「マイナンバーカードの普及と利活用の状況に関するインターネットによるアンケート調査の結果(集計表)(令和6年度)」
マイナンバーカードの普及は全国的に進んでおり、令和8年2月末時点の保有率は81.7%である。令和8年4月からは医療機関などでの受診には「マイナ保険証」の利用が求められることから、今後も利用の拡大が見込まれる。
これにより、マイナンバーカードは行政手続きにとどまらず、医療・福祉・子育てなど幅広い分野で活用される基盤となっている。
実際に、マイナンバーカードを利用したサービス・手続きの利用経験がある人は、令和6年度の調査では全体の約86%に達しており、住民側における利用は着実に広がっている。
自治体におけるマイナンバーカード活用の拡大状況

出典:デジタル庁「~マイナンバーカードの市民カード化構想を進めるためにご参考資料」
こうした普及を背景に、自治体においてもマイナンバーカードの活用は急速に進んでいる。デジタル庁の調査によると、利活用サービスを導入している自治体数は令和6年度で665団体と、前年度から大きく増加している。また、サービス件数も1,038件に達しており、活用の幅が広がっている。
このように、マイナンバーカードは「普及」から「活用」の段階へと移行しつつあり、各自治体においても具体的な業務への組み込みが求められている。
自治体で進むマイナンバーカードの主な活用分野

出典:デジタル庁「~マイナンバーカードの市民カード化構想を進めるためにご参考資料」
マイナンバーカードの活用は、自治体業務の様々な分野で広がっている。オンライン申請・コンビニ交付を除いた、主な活用分野は以下の通りである。
- 窓口業務(書かない窓口・本人確認)
- 図書館サービス(貸出・利用登録)
- 印鑑登録・証明書発行
- 医療・健康・子育て分野
- 防災・避難所運営
- 交通・地域サービス
【分野別】自治体におけるマイナンバーカード活用事例
自治体では、マイナンバーカードを活用した様々な取り組みが進んでいる。ここでは、分野別に具体的な活用事例を紹介する。
【行政手続き】岡山県津山市|オンライン申請と窓口DXによる行政手続きのデジタル化
津山市では、電子申請システム「スマホdeすまそ」を導入している。これにより、仕事や育児、介護などの理由で来庁が難しい住民でも、マイナンバーカードとスマートフォンを用いて、24時間いつでも申請手続きができるようになった。
また、窓口での申請においてもマイナンバーカードを活用することで手書きが不要となり、入力作業の削減や記入ミスの防止につながっている。本人確認にはマイナンバーカードと暗証番号を利用しており、不正利用のリスクを抑えながら安全に手続きを行える点も特徴である。
これにより、来庁が難しい住民への対応が可能となるだけでなく、窓口の混雑緩和や職員の業務負担軽減にもつながっている。
出典:津山市「津山市電子申請システム(スマホdeすまそ)ご紹介」
【行政手続き】熊本県玉名市|LINE活用で実現したオンライン申請の効率化
玉名市では、LINE公式アカウントを活用した電子申請サービスを導入している。これにより、戸籍・住民票・税証明などの申請手続きを、LINE上の操作のみで行えるようになった。
本サービスでは、マイナンバーカードを活用した公的個人認証により、オンライン上での本人確認や電子署名を実現している。これにより、従来は来庁が必要だった行政手続きを、安全性を担保したままオンラインで完結できる仕組みとなっている。さらに、住民票や各種証明書の発行にかかる手数料の支払いもオンラインで行える。
LINEという身近なツールで手続きが可能であることに加え、マイナンバーカードによる安全な本人確認、さらに決済まで一連の手続きをオンラインで完結できる仕組みにより、住民が利用しやすい環境が整備されている。
【教育・文化】福島県昭和村|電子図書館で“いつでもどこでも”を実現した読書環境の整備
昭和村では、マイナンバーカード認証を活用した電子図書館サービスを導入している。これは、同カードを活用した電子図書館として全国初の取り組みである。村民全員に等しく読書を通じた学びの機会を提供することを目的に、電子図書館を開設した。
マイナンバーカードによる本人認証を行うことで、村民であればオンライン上で電子図書館を利用できる仕組みを構築している。これにより、時間や場所にとらわれず、図書の貸出・閲覧が可能となった。
実際に、電子図書館の貸出数は従来の紙資料と比べて増加しており、利用環境の改善につながっている。また、貸出・返却が自動化されることで、職員の業務負担軽減にも寄与している。
出典: 昭和村「昭和村電子図書館蔵書計画」
出典:株式会社メディアドゥ「マイナンバーカード連携電子図書館のご案内(昭和村電子図書館 事例紹介)」
【子育て支援】群馬県前橋市|子育て支援アプリによる情報連携とサービス向上
前橋市では、子育て支援アプリ「OYACOplus」を導入している。本サービスでは、マイナンバーカードによる認証を活用することで、健診結果や予防接種の履歴などの母子健康情報を安全に管理・閲覧できる仕組みを構築している。
さらに、マイナポータルと連携することで、乳幼児健診や予防接種のデータが自動的に取得され、胎児期から乳幼児期にかけての健康情報を一元的に把握することが可能となっている。
これにより、対象者に応じた適切な情報提供や継続的な健康管理が実現するとともに、自治体側の情報管理の効率化や、保護者の利便性向上にもつながっている。
出典:前橋市「子育てに役立つアプリ「OYACOplus(オヤコプラス)」をぜひご利用ください!」
【防災】宮城県|本人確認のデジタル化で実現した避難所受付の効率化
宮城県では、マイナンバーカードの情報を活用した防災アプリを導入し、避難所受付の効率化に取り組んでいる。従来の紙による受付では、記入や転記に時間がかかるなどの課題があった。
本システムでは、マイナンバーカードを読み取ることで基本情報を取得し、QRコードの読み取りにより受付を行うことができる。これにより、避難者情報の把握が容易になる。実証訓練では、約100人の受付が2分強で完了し、紙受付と比べて約14倍の速さで受付が進む結果となった。
取り組みの詳細は、以下の関連記事で紹介している。
【交通】群馬県前橋市|タクシー補助のデジタル化による移動支援の効率化
前橋市では、高齢化に伴う移動困難者の増加に対応するため、タクシー運賃の一部を補助する「マイタク事業」を実施している。従来は紙の利用券を用いていたため、利用状況の管理やデータ入力などが職員の負担となっていた。
そこで同市は、マイナンバーカードによる本人確認を活用した仕組みを導入した。利用者は登録済みのカードをタブレットにかざすことで割引が適用されるため、対象者の特定や利用管理をデジタルで一元的に行うことができる。
取り組みの詳細は、以下の関連記事で紹介している。
マイナンバーカード活用による自治体のメリット
マイナンバーカードの活用は、業務効率化とサービス向上の両面で効果が期待されることから、自治体業務において注目が高まっている。
窓口業務の負担軽減
マイナンバーカードを活用することで、本人確認の簡略化やオンライン手続きが可能となる。これにより、窓口対応の効率化や紙書類の削減に加え、職員の業務負担の軽減や繁忙期の待ち時間短縮につながり、人員不足といった課題の解決にも寄与する。
データ連携による住民サービス・対応の質向上
分野を横断してマイナンバーカードを活用することで、福祉・医療・子育てなどの情報連携が進み、必要な支援につなげやすくなる。
具体的には、以下のようなデータ連携が可能となる。
- 医療・健診情報の共有による適切な受診・支援
- 子育て・福祉情報の連携による手続きの簡素化
- 災害時の本人確認による迅速な避難者把握・安否確認
これにより、支援の漏れ防止や、住民一人ひとりに応じたきめ細かなサービス提供が可能となる。
証明書事務のコストの低減
コンビニ交付サービスの導入により、証明書発行にかかる窓口対応が減少し、人件費や事務コストの削減につながっている。あわせて、自動交付機の維持管理費や独自カードの発行・管理コストの削減も可能となる。
その結果、限られた人員や予算を他の行政サービスへ振り向けることができ、全体として業務の効率化とサービス向上の両立が図られる。
こうした背景から、マイナンバーカードの活用は各分野で広がっており、具体的な取り組みを見据えた対応が求められる。
自治体が抱えるマイナンバーカード活用の課題

出典:デジタル庁「マイナンバーカードの普及と利活用の状況に関するインターネットによるアンケート調査の結果(集計表)(令和6年度)」
デジタル庁の調査によると、マイナンバーカードを利用していない理由としては、「メリットを感じない」が最も多く、次いで「手続きが面倒」、「手続きがわからない」といった声が挙げられている。
また、「情報流出が怖い」といった回答も一定数見られ、利便性の実感不足に加え、利用方法やセキュリティに対する不安が活用の障壁となっている。
こうした状況を踏まえ、自治体においては単なる普及促進にとどまらず、「使うと便利である」と実感できる利用機会の創出や、分かりやすい周知による活用定着の促進が求められている。
メリットや利用機会の不足
「持っているが使っていない」という状況も多く、日常生活で活用する場面が少ないことが課題となっている。利便性を実感できる機会が限られているため、利用の定着につながりにくい。
そのため、運転免許証との一体化やスマートフォンへの機能搭載、医療・図書館サービスなど、日常生活に密着した活用の拡大が進められており、今後は「持っている」から「使う」への転換が重要となる。
申請・利用手続きの煩雑さ
申請方法が分かりにくい、手続きが面倒と感じる人も多く、年齢を問わず普及の障壁となっている。特に、仕事や育児で多忙な層では申請の優先度が下がりやすい傾向がある。
一方で、オンライン申請の拡充や、申請後に自宅へ郵送される特急発行・交付制度など、来庁回数を減らす取り組みも進められている。こうした制度を住民に分かりやすく周知し、利用につなげていくことが重要である。
個人情報・セキュリティへの不安
「情報漏えいが心配」「行政に個人情報を把握されるのではないか」といった心理的不安も多い。
実際にはICチップに機微な情報は記録されておらず、税や年金、医療、預貯金などの情報がカード内に保存されているわけではない。また、個人情報は各行政機関で分散して管理されており、一箇所に集約されているわけではないため、国が一元的に情報を把握できる仕組みにはなっていない。
こうした仕組みを住民に分かりやすく説明できる体制を整備し、不安の解消につなげていくことが重要である。
まとめ|マイナンバーカード活用を進めるために

出典:デジタル庁「マイナンバーカードの普及と利活用の状況に関するインターネットによるアンケート調査の結果(集計表)(令和6年度)」
マイナンバーカードを活用したサービスの中でも、コンビニでの証明書取得や本人確認など、日常的に利用される手続きほど満足度が高い傾向にある。一方で、マイナポータル関連手続きなどは利用率・実感率ともに伸び悩んでおり、活用の余地が残されている。
こうした状況を踏まえると、利用頻度が高く利便性を実感しやすい分野から活用を広げていくことが、定着のカギとなる。
マイナンバーカードは、医療・交通・行政手続きなど、日常生活の様々な場面での活用が進められており、デジタル庁の方針においても、カードの一体化やスマートフォンへの機能搭載など、生活インフラとしての利活用拡大が重要な方向性とされている。
今後は、こうした“生活の中で自然に使われる仕組み”として定着させていくことが重要である。












