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【セミナーレポート】バックヤードとフロントヤード、両面から考える業務改善【DAY2】

情報政策
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【セミナーレポート】バックヤードとフロントヤード、両面から考える業務改善【DAY2】

オンライン申請やRPA、書かない窓口といったデジタル施策を導入しても、担当者の異動や運用の変化でアナログに戻ってしまう——そんな「定着しないDX」に悩む自治体は少なくありません。

その背景には、住民対応業務(フロントヤード)と庁内業務(バックヤード)の間に生まれる「つながらない隙間」があります。そこで、本セミナーでは、フロントヤードとバックヤードを意識して業務を見直した実践事例を紹介します。導入して終わりではなく、庁内にしっかりと定着し、継続的に改善ができるヒントをお届けしました。

概要

■テーマ:バックヤードとフロントヤード、両面から考える業務改善【DAY2】
■実施日:令和8年1月16日(金)
■参加費:無料
■申込者数:244人

【北九州市】「書かない」「待たない」「行かなくていい」を目指す「スマらく区役所サービスプロジェクト」について

第1部に登壇したのは、福岡県北九州市の3名。「スマらく区役所サービスプロジェクト」の概要や目指す姿を始め、窓口予約システムの導入についてなど、北九州市の取り組みを伺いました。

【講師】
渡邉 氏 金田 氏 小野 氏
福岡県北九州市 政策局DX・AI戦略室DX推進担当

なぜ北九州市はDXを推進するのか

北九州市は九州初の政令指定都市として誕生し、九州の玄関口として物流の拠点であったほか、ものづくり産業が盛んなまちです。一方で、高度経済成長期に栄えたまちの宿命として高齢化が進み、政令市の中でも高齢化率が高い状況にあります。加えて、他都市と同様に少子高齢化に伴う労働力人口の減少は避けられず、自治体のサービスを維持しながら新たな行政需要にも応えるためには、生産性を高める必要があります。総務省の「自治体戦略2040構想研究会(2018年7月)」でも、「従来の半分の職員でも自治体として本来担うべき機能が発揮できる仕組みが必要」と示されています。

推計によると、北九州市では2020~2040年の20年間で生産年齢人口が19.7%減少し、高齢化率は2040年に36.6%となる見込みです。限られた人数でも行政サービスを維持し、課題を突破していくための有効な手段として、DXを位置づけています。

DX推進計画と「スマらく区役所サービスプロジェクト」

DXは全庁的に取り組む必要があるため、北九州市では庁内体制を整え、令和3年に「北九州市DX推進計画」を策定しています(2021年12月策定、2025年4月改定)。計画では、目指す姿と合わせてDX推進のスローガンを3つ掲げています。

<DX推進のスローガン>
・「書かない」「待たない」「行かなくていい」市役所へ
・「きめ細かく」「丁寧で」「考える」市役所へ
・「働きやすく」「いきいきと」「成果を出す」市役所へ

推進計画(第2期)では、令和7~9年を集中取り組み期間とし、11の集中取り組み項目を設定しています。今日ご紹介するのは、その中でも「フロントヤード改革」と「BPR(業務改革)」を含む、市民サービス向上につながる取り組みです。

「スマらく区役所サービスプロジェクト」とは

その名も、窓口業務のDXを進める「スマらく区役所サービスプロジェクト」です。行政手続きが「スマホでらくらく」「スマートでらくらく」になるよう、窓口を中心に「書かない・待たない・行かなくていい」を実装していくプロジェクトで、令和5~7年度の3年間でサービス実装を進めています。市民の時間と手間を軽減しつつ、職員の作業時間を効率化してコア業務に集中できる環境へ変えていくことを目指しています。

スマらく区役所サービスプロジェクトの実装状況としては、「書かない・待たない・行かなくていい」窓口が令和7年度中に概ね実装される見通しとなっています。

「待たない」区役所へ。窓口予約とデータ可視化

「待たない」区役所の柱が、窓口予約・発券サービスです。デンマークの予約サービスを活用し、実証を経て本格運用を開始しました。オンライン予約により来庁者の平準化ができることに加え、予約枠をノーコードで各職員が細かく設定できる点、待ち時間や対応時間などのデータを取得し、窓口の状況を可視化できる点が特徴です。可視化したデータはダッシュボード化して庁内に共有し、他課も自由に見て活用できるようにしています。

運用開始後のアンケート(令和7年6月~11月)では、満足度約91%、「早く/予約時間通り呼ばれた」が約94%、「今後も利用したい」が約93%でした。今後は広報強化により予約率を上げること、予約対象手続きを拡大すること、予約なし来庁者も当日予約で受け付けるなど利用拡大を進めます。

「行かなくていい」区役所へ

次に「行かなくていい」区役所です。北九州市では、手続きのオンライン化を進め、手続きオンライン化率は約84%(手続き数ベース)、申請件数ベースでは約81%となっています(いずれも令和7年3月末時点)。また、簡単な質問で必要な手続きを案内する「ネットで手続きガイド」や、子育て応援アプリの取り組みも進めています。

本年度の目標は、対象手続きのオンライン化100%です。そのために、複数の電子申請ツール(Graffer、GovTech Express、FormBridge、ぴったりサービス、電子メール)を使える体制を整え、所管課が手続きの性質に合わせて選択できるようにしています。あわせて、DX・AI戦略室が伴走支援を強化し、業務フロー再構築の支援や、申請フォーム作成代行、運用の個別相談受付も行っています。市民向けには、オンライン手続きポータル「スマらく窓口」の公開や、ガイドブックの配布など、広報も強化しています。

実際、「シン・子育てファミリー・サポート事業」では、市の公式LINE上で事業に係る多様な手続きが可能となり、LINEからの申請率は9割超となっています。本事業は「ベスト育児制度賞」を受賞しています。

区役所業務を支えるバックヤード改革

ここからはバックヤード改革のご紹介です。北九州市は行政区が7つあり、7区役所で発生する窓口業務のうち、定型・大量のノンコア業務を集約処理する拠点として「行政事務センター」を令和6年10月から設置しました。スモールスタートとして、保育入所業務とシン・子育てファミリー・サポート事業の2業務から開始しています。
この取り組みは、総務省の「自治体フロントヤード改革モデルプロジェクト」の報告書(概要版)をベースに進めています。目指す姿は、「スマらく区役所サービスプロジェクト」の一部として、フロントヤードを支えるバックヤードを整備することです。


KPIは窓口担当職員の後方作業時間の削減とし、改革前は2手続き合計で15,500時間(年)だったものを、令和8年度末までに6,200時間へ削減(約60%減)する目標を掲げています。

現状分析として、令和3年度に全庁的な業務量調査、オンライン申請状況の調査、窓口職員へのアンケート・聞き取りを実施しました。その結果、区役所窓口業務のうち約60%が専門性不要のノンコア業務であることがわかりました。また「窓口対応が説明等で長時間に及び、バックヤード事務の処理に支障が出ている」という声もありました。

オンライン申請についても、「行かなくていい市役所」を進めるには申請率を上げる必要がある一方、オンライン申請の内容確認は不備が多く、区役所職員の手間になっている、という課題も挙がりました。そこで、オンライン申請の処理も含めて集約し、窓口職員の負担を減らす方針を立てています。 

初年度で後方作業時間を約7,000時間削減

効果検証では、改革前(令和5年度)に年間15,500時間だった後方作業時間が、令和6年度末時点で8,455時間となり、約7,000時間削減できています。令和8年度末は6,155時間の見込みで、KPIの6,200時間達成が見えてきました。
また、オンライン申請率の違いが効率化に影響していることも見えてきました。保育入所はオンライン申請率0.9%に対し、シン・子育てファミリー・サポート事業は78.1%(令和6年度末の実績)で、削減時間もファミリー・サポート事業が6345時間(年)と大きい一方、保育入所は700時間(年)にとどまっています。オンライン申請率が高いほど効率化につながる可能性があると見ています。

事業実施で特に工夫した点として、申請書様式の統一が挙げられます。保育入所の「利用調整採点表」は点数基準こそ統一されていたものの、記入様式が区ごとに異なり、記入項目や記入場所にばらつきがありました。そこで統一様式を作成し、集約拠点でのシステム入力時に見落としがないようにしました。

また、現行業務のマニュアルが十分に整備されていなかったため、作業を標準化するためのマニュアル作成も進めています。加えて、年度末など通知が多い時期には、データを外部印刷拠点へ送って印刷・封入封緘・送付まで一括処理することで、発送作業の負荷を平準化する考えです。

kintone連携は「道半ば」

一方、保育入所は変更申請が多く、紙で連携すると変更に追随しにくいという特性があります。そこで現在は、庁内版kintoneを用いて児童ごとにレコードを作り、区側とセンター側の双方で状況を更新し、進捗管理を行う仕組みを構築しています。ただし、区側の入力が進まないという課題もあり、縦割りを超えた情報連携の実現はまだ道半ばです。
今後も組織の縦割りを越えて子育て分野や福祉分野を集約していきたいと考えています。

650自治体が導入!QommonsAIの最新情報を公開

第2部に登壇したのは、Polimill株式会社の谷口野乃花氏。ユースケースとともに、650もの自治体が導入している「QommonsAI」の最新情報や今後のリリース情報などを伺いました。

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【講師】
谷口 野乃花 氏
Polimill株式会社
代表取締役COO

「QommonsAI」とは

「QommonsAI」は全国約650自治体で活用されており、リリースから1年余で導入が一気に広がっています。毎週およそ10自治体から新規の申し込みがあり、全国の皆さまに利用が広がっている状況です。多くの自治体で支持いただいている理由は、大きく3つあります。

1つ目は、全自治体・全省庁の行政文書をナレッジ化していること。2つ目は、「1クリックでその自治体の専門AIになる」というユーザー体験。そして3つ目は、トークン数無制限・利用料無料で、上限を気にせず使えることです。さらに現地導入研修も無料で行っています。LGWAN対応も2026年4月から無料で進めていますので、ぜひご期待ください。

そんなQommonsAIは、さまざまな専門性を持つAIの集合体です。自分が使いたい専門性に合わせて、チャットを切り替えて使えるのが特徴です。

まずは汎用的な生成AIから紹介します。QommonsAIでは複数のモデルを提供しており、用途に合わせて選べます。モデルは随時アップデートし、各社の更新から短いスパンで新しいバージョンを使えるようにしています。

最近のアップデートでは、チャット画面の右側から「プロンプトテンプレート」を呼び出せるようにしました。あらかじめ用意しているテンプレートをクリックして使えるだけでなく、自分でカスタマイズしたテンプレートも登録できます。テンプレートは、入力した文章をAIが読みやすい形に整えることもできますし、タイトルを自動生成することもできます。さらに、自分だけで抱え込まず、同じ自治体の職員と共有することも可能です。庁内で「よく使う聞き方」を共有できると、利用が広がりやすくなります。

もう1つのアップデートが、チャット内でのファイル添付です。資料を添付して「概要を教えて」と聞いたり、Excelを添付して分析を依頼したり、複数ファイルをまとめて投げたりもできます。業務の中で、そのまま使いやすい形になりました。

議会対応AI

専門AIのデモの1つ「議会対応AI」は、全国で公開されている議会の議事録を学習しており、右側の画面から自治体を選ぶだけで対象を切り替えられます。自分の自治体だけでなく、隣接自治体、さらには都道府県単位でまとめて選ぶこともできます。情報収集で「まわりの動きも見たい」という時に便利です。

また、ある議員の過去の発言や質問の傾向を議事録から拾い、一般質問に対して「納得してもらうために入れるべき情報」を整理させたり、必要情報を埋めれば答弁案が完成する“型”を作らせたりできます。議会対応の準備で、ゼロから資料を掘り起こす負担を減らす使い方です。

e-Gov法令検索AI

次は「行政文書(e-Gov法令)検索」です。法律・法令を扱うAIで、条文を簡単に探すだけでなく、「この事象は法に触れる可能性があるか」「根拠条文はどこか」を整理する用途でも使えます。また、必要に応じて汎用AI側に切り替え、ウェブ検索機能をオンにして事例を探す、といった使い方もできます。1つの専門AIだけで閉じず、同じ会話の流れの中で切り替えられる点が特徴です。

プライベートナレッジ

QommonsAIには「プライベートナレッジ」も用意しています。自分たちの資料をアップロードして、AIに参照させながら回答させる仕組みです。公開範囲も設定でき、自分だけで使う、庁内全員で使う、特定部署だけで使う、といった運用ができます。最近のアップデートでは、ナレッジの複数選択ができるようになりました。例えば総合計画とDX計画を同時に選び、整合性チェックや差分抽出をさせる、といった使い方が広がっています。

2026年4月までのアップデート

2026年4月までに実装予定の内容として、ファイルエクスポート(PDF/Word/CSV)、画像生成(PNG/JPG)、プライベートナレッジの複数選択、LGWAN対応、エビデンス・アンダーライン機能(PDF限定)などがあります。加えて、グラレコAI(予定)、禁止ワード登録(予定)、リテラシーチェックテスト(予定)、都市計画建築建設AI(予定)も検討中です。

行政分野の「巨大ディストリビューション」をつくる

「これだけの機能がなぜ無料なのか」と思われるかもしれません。私たちは、2026年内に合計1,200自治体で導入され、80万人規模の職員が利用する状態を見込んでいます。そうなるとQommonsAIは行政分野の巨大なディストリビューションになります。

行政向けソリューションがQommonsAIに搭載された瞬間に、1,200自治体へ“瞬配”できる。つまり、全国自治体の標準ツールになり得るのです。

こうしたプラットフォーム構想のもと、2026年4月に行政DXのApp Store(MCPアプリストア)、通称「Qommons ONE(コモンズ ワン)」を開設予定です。当社開発のAIや企業と共同で作った有償AIの提供を想定しているほか、自治体同士のマッチング機能、企業とのマッチング機能も順次搭載予定です。

スマート庁舎先進モデルの実証も構想

少し先の話になりますが、人口減少や単身高齢、人手不足が進む中で、私たちはAI制御ヒューマノイドの活用にも取り組みたいと考えています。

こうした取り組みも含めて、今後のQommonsAIと私たちの動きに注目いただけたら幸いです。

【裾野市】業務改善はどう定着したのか―予約優先制・レイアウト変更・データ連携で進めた窓口・庁内業務改善―

第3部に登壇したのは静岡県裾野市の中原義人氏。予約優先制の導入やレイアウト変更など、裾野市が行ったデータ連携による業務改善の取り組みと、そこから見えた効果や気づきを伺いました。

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【講師】
中原 義人 氏
静岡県裾野市デジタル部 業務改革課

窓口が白旗をあげた日

裾野市がフロントヤード改革とバックヤード改革に着手したきっかけは、2022年の最繁忙期に窓口が大混雑し、来庁者を1時間半以上待たせてしまう状況が発生したことでした。最大待ち時間は90分、最大滞在時間は240分。窓口では処理が追いつかず、LINEで「支所」や「コンビニ交付」への案内を出し、事実上「白旗」の状態になりました。

この状況を重く受け止めた市長が窓口改革の三本柱を打ち出し、改革を始めることになりました。三本柱は次の通りです。

受付開始までを待たせない:窓口WEB予約・発券システムの導入検討
住民に寄り添うサービスの拡充:おくやみワンストップ窓口の導入検討
処理時間を短縮する:書かないワンストップサービスの導入検討

あわせて、BPRを進めるために、市民課窓口を直営化しました。9年間続けていた業務委託に区切りをつけ、令和6年4月1日から直営化しています。

2023〜2025年にやったこと

この3年ほどで、改革として進めてきたことを整理します。

今回は、特に「改革の定着」に関わる5〜7の部分についてお話しします。

予約“優先”で「時間の価値」を再定義

まず、予約優先窓口で時間の価値を再定義しました。予約優先制は、待ち時間を短縮するだけの仕組みではありません。住民と職員の“時間の使い方”そのものを変える力があると感じています。裾野市は、デンマークのサービス「FrontDesk」を活用し、窓口WEB予約・発券システムを令和5年1月から試験導入、10月から本格導入しました。

住民側のメリットは、予約時刻に手続きできることで待ち時間が短くなるだけでなく、「いつ呼ばれるか分からない状態」から解放されることです。この不安やフラストレーションが減る効果は大きいと感じています。職員側でも、待っている住民からの心理的プレッシャーが軽減されます。さらに、来庁者の呼び出し状況を大型モニターで全員が把握できること、発券・チェックイン時に音声通知が出ること、他課への引き継ぎができること、予約によって負荷分散し平準化できることなど、運用面のメリットはたくさんありました。

実際に、窓口で「手続き開始まで10分以上お待たせした件数」は、2022年は1,286件(発生率4.3%)でしたが、2024年度は722件(発生率1.8%)に減少。年間手続き数は29,324件から39,093件へ増えていますが、長時間待機の割合は下がっています。

レイアウト変更で見えてきたこと
次に、レイアウト変更の話です。裾野市は「住民が迷わない」ことを最優先に、手続きのワンストップ化を目指してレイアウトを抜本的に再構築しました。市庁舎1階を目的別に「手続きゾーン」「相談ゾーン」「くらしゾーン」に分け、「各課の前のカウンター」をやめて「共有カウンター」へ移行する構想です。

しかし、課長層と何度も打ち合わせを重ね、担当職員の意見も聞きながら配置を考えたものの、全ての部署が納得できるレイアウトにすることはできませんでした。意見が通らない部署は不安を抱えやすく、「不安」が「不満」に変わり、議論が起こる場面もありました。

結果として、課題は「慣れ」と「決め」の問題であることが多く、住民の声を聞くと杞憂だったことも少なくありませんでした。ただ、気持ちよく改革を進め、定着させるには、納得につながるまでコミュニケーションしきることが重要だと痛感しました。職場環境に直結することだからこそ、住民と職員双方のメリットを自分事として理解してもらう必要があるのです。

部署間連携の大切さ

「手続きにかかる時間を最小限にする」を目標に掲げる中で「書かないワンストップ窓口」への進化が必要だという結論に至りました。ワンストップを進めるには、横につながる必要があります。そのために、住民情報など各システムのデータ連携(参照)が必須になり、窓口業務支援システムの導入検討へかじを切りました。

裾野市では、窓口DX SaaSを2025年1月から運用開始しています。導入に向けては先進自治体の視察に会計年度任用職員も同行し、事前説明会・研修会、試験環境でのロールプレーイング研修、様式変更に向けた根拠確認などを重ね、窓口職員の理解のもとで進めました。

運用開始後、「書かないワンストップ窓口」の効果を確認したところ、アナログBPRの効果も含めて、2023年と2025年を比較して市民課の手続き時間(住民の滞在時間)が平均55%削減できています。

この効果を目の当たりにして、他課からは「自分たちの窓口でも活用できないか」という相談がくるようになりました。現在は税務課と子育て支援窓口で、市民課手続きからのワンストップ連携を調整しています。

ここでは窓口部門を主体に運用連携を話し合ってもらい、システムのメンテナンスや構築はデジタル部門が補完する形を取っています。主導権を窓口部門に移し、デジタル部門が伴走する運用です。こうした形で部署間の連携が進み、業務理解や相互の敬意にもつながっていく感覚があります。私はこれを「データがつながると人がつながる」と表現しています。

利用者アンケートの結果

こうした改革を定着させるには、職員のモチベーション維持も欠かせません。そこで、データを使って“実感”を広げることに取り組みました。まず住民の声については、市民アンケートのような大枠ではなく、実際にサービスを利用した人の意見を第一に捉えたいと考え、窓口利用者を対象にアンケートを実施しています。回答数は約886件(2024年2月〜2025年12月末時点)です。集計はWEBと対面の紙で行っていますが、9割は紙回答で、スマホ誘導は難しいという現実もあります。だからこそ、簡易ボタン評価も取り入れ、「来庁者の声に耳を傾ける姿勢」を見える形にしました。

利用者アンケートを活用するメリットは、住民が実際に感じた「不快」「不便」「違和感」「良かったこと」がダイレクトに届くことです。窓口に立っていると怒られる場面が印象に残りやすいのですが、実際にはポジティブな声も多いことが見えてきます。これは職員にとって「改革はムダではない」「誰かの役に立っている」という認知につながります。

最後に、裾野市が「改革の近道」として活用したものも紹介します。最初の現状把握・きっかけづくりには、デジタル庁の「窓口BPRアドバイザー派遣事業」を活用しました。改革手法や事例の情報収集、疑問の解消には、デジタル庁の「デジタル改革共創プラットフォーム」を活用することをオススメします。最新の情報はジチタイワークスWEBも参考にしてきました。

裾野市は、すでにある制度や外部の知見も使いながら、フロントヤード・バックヤード改革を進めてきました。外と広くつながっていくことが、改革マインドを定着させる近道になると考えています。

【参加者とのQ&A(※一部抜粋)】

Q:改革を進めるにあたり民間事業者によるコンサル支援は入っていますか。

A:総務省のフロントヤード改革のモデルプロジェクトに取り組むにあたっては、入っていただきました。ただ、進捗管理やプロマネをコントロールしていただくことが主で、実際に手を動かすのは自分たちです。重要な部分はほとんど自分たちでやっていました。

【延岡市】「らくらく窓口」―申請から通知まで一気通貫DX―

第4部に登壇したのは、株式会社電通総研の海津泰夫氏と株式会社JAPANDXの滝川伸輔氏。一気通貫DXにおける「住民向けポータル」の導入背景から活用方法・効果までを事例ベースで紹介していただきました。

【講師】
海津 泰夫 氏
株式会社電通総研
スマートソサエティセンター 行政デジタル部 部長

滝川 伸輔 氏
株式会社JAPANDX
特別顧問

「らくらく窓口」とは

延岡市の「らくらく窓口」は、デジタルネーティブが多い子育て世帯をターゲットにした取り組みです。子育て関連12業務を、スマホの住民総合ポータルアプリから申請できるようにし、バックヤードはデータ連携で自動化。結果通知も同じアプリ上で受け取れる仕組みにしました。つまり、市民からバックヤードを経由して市民に返す――この一連の流れをオンラインで完結させる“一気通貫DX”です。

この仕組みにより、市民はいつでもどこでも申請でき、結果の受け取りまでオンラインで完結します。職員側でも、審査や通知にかかる事務負担が大きく減り、事務ミスの防止や精神的な負担軽減にもつながります。運用開始は2025年12月1日で、12月は保育所入所申請の繁忙期にあたり、まとまった件数をこの仕組みで処理しました。

紙とデジタルの併存

「らくらく窓口」の取り組みに至った背景は大きく3点です。1つ目は、子育て支援策を市として重視していたこと。2つ目は、部分的なオンライン申請を導入した結果、紙とデジタルが併存し、情報管理が煩雑になったこと。3つ目は、職員数の減少や習熟度のばらつきなどにより業務負荷が増大し、業務精度の低下や事務ミスにも悩んでいたことです。

そこで、デジタルデータを活用して「子育て世帯の利便性向上」と「職員の負担軽減・業務効率化」を両立する業務フローを確立することを目的にしました。効率化で生み出した時間は、より親身な市民サービスや新たな政策の企画検討に充て、行政サービスの向上につなげる――これが「らくらく窓口」のコンセプトです。結果として、この考え方は令和6年度の総務省フロントヤード改革のコンセプトとも一致し、延岡市は人口10万人規模で唯一のモデルプロジェクトとして位置付けられています。

取り組み前後の現場の声

取り組み前、現場からは率直な声がありました。「審査業務では二重三重のチェックが必要で、限られた人数で現行業務をまわすのが大変」「ほかの業務と並行して対応するため、時間外勤務が増える」「事務処理ミスが発生していたが、効果的な改善手法が見いだせていない」といったものです。フロントヤード改革への期待もあるものの、「システムが具体的にどう仕事を良くしてくれるのか、イメージが湧きにくい」という不安もありました。

ところが実際にやってみると、担当者にも管理監督者にも、業務量の削減や処理速度の向上といった効果が見えました。操作が複雑ではなく使いやすい、BPRを同時に行って重要性を実感した、慣れればさらなる業務改善も見込めそう――そんな声が出ています。

住民の入口は「のべおかポータル」

ここからは、フロントヤードを担う住民総合ポータルアプリ「のべおかポータル」について説明します。らくらく窓口は、住民側の「のべおかポータル」、審査・通知の業務基盤を担うminnectというサービス、そして基幹システムで成り立っています。

ポイントは、「のべおかポータル」を新しく作ったわけではないところです。のべおかポータルは、令和4年にデジタル田園都市国家構想交付金(TYPE1)で構築しており、シングルサインオンによるサービス連携や、プッシュ通知の統合による情報発信の一元化を目的としていました。令和5年にはマイナンバーカード連携のサービス実装でデジタル田園都市国家構想交付金(TYPE-X)にも採択されています。

今回のらくらく窓口では、アプリを活用し「電子申請」「個別通知」「延岡ID(市独自ID)との連携」を行うことで、子育て関連12業務でバックヤードとのデータ連携を実現しました。

バックヤードの改革

ここからは、バックヤード業務効率化の話です。延岡市のバックヤードでは、審査業務に時間がかかることに加え、審査の進捗が見えず、ムダな確認作業や作業遅延が発生していました。さらに、スキルや経験値に依存する部分が多く、引き継ぎや教育が難しいという課題もありました。紙申請と電子申請が混在し、紙申請書やExcelへの転記など二重三重の作業も発生していました。

そこで審査業務では、電子審査を導入し、紙申請・電子申請を問わず、申請をデジタルで一元管理する形にしました。これにより、審査の標準化、自動化、進捗共有、複数職員での共同作業がしやすくなります。通知業務では審査結果を住民にデジタル通知できるようにし、住民からの問い合わせ対応や既読管理、通知履歴の一元管理にもつなげました。

審査業務の効果

審査業務では、経験に依存した業務から標準化された業務への移行が進みました。審査項目が整理され、経験の浅い職員でも対応しやすくなり、画面共有で相談・共同作業もできます。データ化により検索性が上がり、紙を探す必要も減ります。また、備考メモ機能で判断理由やコメントを残せるため引き継ぎもしやすくなり、UI/UXが分かりやすいことで教育面の負担も下がります。

定量効果においては、保育所入所申請(約1,700件)で、作業期間が「2カ月→4日」、作業時間が「180時間→30時間」、人件費換算が「約36万円→約6万円」と、大幅に削減できています。

通知業務では、アナログ通知からデジタル通知へ移行したことで、郵送費・発送関連コストの削減、既読管理、「誰に・何を送ったか」の履歴の一元管理、発送業務の外注不要といった効果が出ています。

市民からは良い評価をいただけた一方で、「スマホ操作が苦手」「マイナンバーカードがないので利用できない」「入力項目が分かりづらい」といった声も上がりました。バックヤード側の都合で業務設計や帳票設計をしてしまうと、こうした“つまずき”が起きやすい。だからこそ、導入時のBPRでは「市民目線の業務設計(帳票設計)」が重要だと考えています。

成功のポイント

最後に、延岡市で「DXを成功させるポイント」として整理した内容を共有します。

今後は、延岡市モデルを横展開する構想もあります。その際は、新規実装ありきではなく、既存システムの棚卸しから入り、使えるものは活用しながら進めることが重要になります。対応業務をテンプレート化し、導入自治体間で共有できれば、コストを下げ、導入期間を短くし、現場の負荷も下げられると考えています。

バックヤードの疲弊をなくし、フロントヤードの満足度を上げる。LGWAN対応SMSで実現する『攻めと守り』の自治体DX

第5部に登壇したのは株式会社ジチタイワークスの和田直樹。住民の利便性を高め、行政サービスへの反応率を劇的に向上させる手法として「ジチタイSMS」を紹介してもらった。

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【講師】
和田 直樹 氏
株式会社ジチタイワークス
ビジネス開発部 公共ビジネス課

コストを大幅削減できる「ジチタイSMS」

多くの自治体に導入いただいている「ジチタイSMS」の特徴は、何と言っても「郵送・印刷等のコストを約90%削減できる」という点が特徴です。定形郵便物(25g以内)110円の郵送料と、SMS1通10円の送信費を比べると、単純比較でも差が大きい。ここに、印刷・封入封緘・投函といった作業時間、電話の架電時間も加わります。郵送・電話が当たり前になっている業務ほど、効果が出やすいと考えています。

住民への連絡・通知で発生する「困り事」

皆さんの現場では「住民に電話してもなかなか出てもらえない」「郵送物を開封してもらえない」「口頭で書類不備を伝えると漏れが出て、手戻りが発生する」といった困り事が生まれていませんか。デジタル担当だとこうした声に気づきにくいケースもあるかもしれませんが、実際に現場にヒアリングをしてみるとたくさんのお悩みが聞こえてきます。ぜひ、一度、現場の方に「郵送や電話の連絡、どこがつらいですか」「見てもらえない連絡はありますか」と聞いてみてください。

ただし、ここで誤解してほしくないのは「SMSだけで全てが解決するわけではない」ということです。私としては、すでに導入しているサービスと組み合わせ、メインの施策を支える“補助線”として使うのが現実的だと考えています。そのうえで、ジチタイSMSは「届けたい情報を確実かつ迅速に届ける」ための手段として、導入のハードルが低いのが特徴です。ぜひ、それぞれのポイントを押さえて業務にどのように活用できそうか考えてみてください。

他人接続判定による誤送信防止

SMSは「誤送信が怖い」「詐欺メールに見えないか」という不安がつきものです。そこで、ジチタイSMSでは“安心して運用するためのしかけ”を用意しています。例えば誤送信リスクについては、過去の番号利用履歴から「現在の持ち主が変わっている可能性」をチェックする機能(他人接続判定)があります。過去2年以内に3カ月の未利用期間がある場合を「他人」と判定し、誤送信によるトラブルや個人情報流出リスクを下げます。

独自ドメインの短縮URL

住民側の安心感という意味では、短縮URLを自治体名を想起させるドメインに変更できる機能もあります。「誰から届いたのか」が瞬時に分かると、クリック率の向上にもつながります。

また、高齢者の方にも届きやすいのがSMSのメリットです。ガラケーでも受信でき、インストールや登録、アップデートなどの面倒がありません。電話だと聞き漏れや「聞いたけど忘れた」が起こりやすいのに対し、SMSは読み返せる。ここが大きいと考えています。

送達結果を30種類で細かく把握

また、住民連絡で地味に大事なのが「送った後」です。ジチタイSMSは送達結果を30種類で把握でき、なぜ届かなかったのか(電源OFF、圏外、料金未納など)まで可視化できます。これにより、未達の住民だけに再対応する、電話フォローをかける、といった判断がしやすくなります。

また、短縮URLを使えば、誰がいつ何回リンクをクリックしたかを個人単位で確認できます。これにより、「見ていない人だけに再送」など、連絡のムダ打ちを減らす運用につなげられます。

料金プラン

料金プランは大きく2種類です。初期費用・月額システム利用料・送信費用・オプション費用という形になります。一方で「全庁導入プラン」は、条件を満たすと初期費用と月額費用が0円となり、送信費のみの導入しやすいプランもご用意しております。また導入後の庁内説明会開催など支援も無料でご提供可能です。

また、導入の流れもシンプルで、申込書を提出いただき、アカウント情報(URL・ID・PASS)を受け取り、LGWAN端末のブラウザでログインして送信。新しいPC調達やソフトのインストールは不要で、最短翌日から導入可能です。

いきなり本番は不安、という自治体向けに無料トライアルも用意しています。「最大2カ月3,000通(先着100自治体)」のトライアル(全庁プラン検討・2課以上利用などの要件あり)と、「まずは1課で試したい人向け(1カ月300通)」があるため、ぜひお気軽にお問い合わせください。

住民連絡は、フロントヤードの満足度に直結します。一方で、郵送・電話に頼る運用はバックヤードを疲弊させやすい。ジチタイSMSは、今ある業務の「置き換え」から始めやすく、LGWANで使えて、送達やクリックまで追える。だから、攻め(住民に確実に届く)と守り(作業時間・コスト・誤送信リスクの管理)を同時に前へ進められると考えています。

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ジチタイワークス セミナー運営事務局
TEL:092-716-1480
E-mail:seminar@jichitai.works