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【セミナーレポート】バックヤードとフロントヤード、両面から考える業務改善【DAY1】

オンライン申請やRPA、書かない窓口といったデジタル施策を導入しても、担当者の異動や運用の変化でアナログに戻ってしまう——そんな「定着しないDX」に悩む自治体は少なくありません。
その背景には、住民対応業務(フロントヤード)と庁内業務(バックヤード)の間に生まれる「つながらない隙間」があります。そこで、本セミナーでは、フロントヤードとバックヤードを意識して業務を見直した実践事例を紹介します。導入して終わりではなく、庁内にしっかりと定着し、継続的に改善ができるヒントをお届けしました。
概要
■テーマ:バックヤードとフロントヤード、両面から考える業務改善【DAY1】
■実施日:令和8年1月15日(木)
■参加費:無料
■申込者数:245人
職員の業務効率化効果を可視化!八戸市に学ぶ窓口設計とDX定着の実践ノウハウ
第1部に登壇したのは、青森県八戸市の古里陽一氏。「書かない・待たない」窓口を実現した庁舎レイアウトやデジタル化の連動手法について伺いました。

【講師】
古里 陽一 氏
青森県八戸市 総務部情報政策課デジタル推進室
八戸市が直面した「窓口業務の矛盾」
人口減少や人材不足、業務の属人化は、多くの自治体が共通して抱える課題です。青森県八戸市も例外ではなく、今後25年間で約6万人の人口減少が見込まれています。これは市が1つ消える規模に相当します。加えて、若年層の流出も進み、10年で約27%が減少する状況にあります。
ところが、2004年度と2022年度の市民課窓口業務を比較すると、申請・届出件数は約36%減少しているにもかかわらず、市民課職員数は約40%増加しています。特に会計年度任用職員は約3倍に増えており、件数が減っているのに業務負荷は体感として増えている、という現象が起きていました。

原課を巻き込む体制づくりからスタート
そこで八戸市がまず着手したのは、庁内体制の整備です。情報政策課だけで完結させるのではなく、原課を巻き込んだプロジェクトチーム制を採用し、ライフイベント系、証明書発行系、アナログ改革・庁舎レイアウト最適化など、テーマ別に7つのプロジェクトチームを設置し、若手職員や現場担当者を中心に据えて改革を進めました。

デジタル施策というとベンダー主導で進めがちですが、八戸市では「ベンダー任せにしない」ことを重視しました。住基の4情報連携など、一部はパッケージに手を加え、職員同士で議論しながら設計しています。
「書かない・待たない・行かない」を軸にしたスマート窓口
こうして誕生したのが「はちのへスマート窓口」です。特徴は、「書かない」「待たない」「行かない」の三本柱にあります。
特に力を入れたのが「書かない窓口」です。市民課の記載台は全て撤去し、レイアウトも刷新しました。さらに住基4情報と連携し、タブレットでの入力内容を自動で申請書に反映。二次元コード付きの手続チェックシートを活用することで、次の窓口でも情報が引き継がれる「窓口リレー方式」を実現しています。
対象手続きは132にのぼり、年間約76万件ある手続きのうち、約40%をデジタル化しました。市民課だけでなく、国保年金課、子育て支援課、税関係、さらには出先機関である南郷事務所や各サービスセンターにも展開しています。



入力を減らすことで時間を減らす
導入効果は、時間の短縮として明確にあらわれました。例えば、住民票の写しを取得する単独窓口では、導入前は11分程度かかっていた手続きが導入後は約7分50秒に短縮され、約3分50秒の削減となりました。記載台がなくなったことで、そもそも「書く時間」が発生しなくなった点が大きいと思っています。

複数窓口をまわるケースでは、効果はさらに顕著です。例えば、市民課での住民異動手続き後、国保年金課や子育て支援課をまわる場合は合計で約13分の短縮が確認されています。市民の負担が減ることは、そのまま職員の確認時間削減にもつながります。入力作業を極限まで減らす設計が、結果として双方の負担軽減を実現したと感じています。
予約制で「待たない窓口」を実現
「待たない窓口」では、事前申請と来庁予約を組み合わせた仕組みを導入しています。対象は、おくやみコーナーや死亡届関連の手続きです。

ここではヒアリング内容を定型化し、業務をマニュアル化したうえで民間委託を行っています。窓口リレー方式も活用し、現在では利用者の約半数が予約制を利用している状況です。件数が事前に把握できるため、運用は安定し、待ち時間の少なさも高く評価されています。
「行かない窓口」は今後の課題
オンラインで完結する「行かない窓口」も導入されていますが、現時点では利用は限定的です。証明書発行が中心で、コンビニ交付の方が「利便性が高い」と感じる市民も多いためだと考えています。一方で、今後はプッシュ型通知を活用したオンライン申請を進める方針を立てています。例えば、物価高対応子育て応援手当の給付では、スマート窓口の仕組みを活用し、オンライン申請を導入しています。

データで「忙しさ」を可視化する
スマート窓口のもう1つの大きな特徴が、データ取得です。窓口件数を分析した結果、繁忙期は3月第3週から4月第1週に集中しており、それ以外の日はほぼ平均値で推移していることがわかりました。つまり、特定期間だけ人手が必要で、それ以外は過剰配置になっている可能性が見えてきたのです。

さらに、ログデータから窓口稼働率も算出しました。週明けの11時台には稼働率が190%に達する一方、17時以降は数%にとどまっています。これを受け、週明けのみ増員する業務委託や、夕方以降の窓口縮小といった具体的な検討が進められています。

市民満足度は91.8%に上昇
アンケート調査では、利用者満足度が91.8%に達しました。「書かなくてよい」「時間が短くなった」といった声が多く、導入効果の高さが伺えます。クレーム件数も導入当初で4件程度と、全体から見ればごくわずかでした。
一方で、職員満足度は導入前後で大きな変化はありません。この点については、フロントヤードだけでなく、バックヤード改革や行革とセットで進める必要があると考えています。

完璧を目指さず、まずは走らせる
こうした取り組みを経て実感した成功のポイントは、大きく3つです。1つ目は、人です。ベテラン職員の知見を尊重し、対話を重ねながら標準化を進めること。若手職員のデジタル適応力を最大限活用することが欠かせないと感じています。2つ目は、フロントヤードとバックヤードを分けて考えないこと。RPA以前に、入力そのものを減らし、スピードを重視する設計が重要だと考えます。「紙申請を残す」という現場の声もありましたが、二重業務を避けるため、思い切って廃止したことが、成功へと導いたのではないかと思っています。3つ目は、過剰最適化を避けることです。レアケースに引きずられず、9割のサイレントマジョリティを基準に判断することが重要だと思います。

八戸市の取り組みは、完璧な完成形を目指したものではありません。走らせながら改善し、データをもとに次の打ち手を考える。その積み重ねが、窓口DXを定着させていると考えています。
【参加者とのQ&A(※一部抜粋)】
Q:プロジェクトチームの人数は何人ですか。また、マネジメントの担当はアサインしていますか。
A:チームごとに違うのですが、だいたい10人です。担当に関しては窓口となる担当課から1、2人入る形をとっています。
電話交換業務のAI化に挑む―旭川市×インターパーク実証レポート
第2部に登壇したのは、株式会社インターパークの菊田一弥氏。電話交換業務のAI化について、旭川市役所の山腋千絵子氏、水沢悠氏を交えて実証実験について紹介していただきました。

【講師】
山腋 千絵子氏
北海道旭川市 総務部 管財課 課長補佐
水沢 悠氏
北海道旭川市 行財政改革推進部 行政改革課 主査

菊田 一弥 氏
株式会社インターパーク
システム部 部長 兼 SUBLINE事業責任者
「AIアテンダント」とは
AIアテンダントは、クラウド電話サービス「SUBLINE」上で提供される機能です。SUBLINEは、職員のスマートフォンにアプリを入れることで仕事用の電話番号を持てる仕組みで、必要なときに必要な番号を使える点が特徴です。
SUBLINEには、もともとIVR(自動音声応答)機能が標準搭載されていますが、自治体の代表電話のように振り分け先が多い場合、従来型IVRでは選択肢が膨大になり、運用が難しいというジレンマがあります。そこで、IVRの「振り分け」部分にAIを組み込み、自然な会話から用件を理解して適切な部署へ転送する仕組みとして、AIアテンダントを開発しました。

「AIアテンダント」の機能は大きくわけて3つです。

今回、旭川市様の実証実験では「AI転送」を中心に取り組みました。次からは、旭川市の山腋さん、水沢さんが解説します。
旭川市の電話交換業務の実態
旭川市の電話問い合わせは、年間の全受電が約110万件。うち、代表電話(電話交換業務)が約13.2万件で、全体の約12%にあたります。代表電話の一次対応は外部委託で、オペレーターはおおむね4名体制、委託料は年間約2,000万円とされています。

一方で、各課・担当で約200の直通電話を持ち、申請書類やホームページ等で周知しているため、用件が明確な市民は直通を利用するケースが多い。結果として、代表電話への入電よりも直通電話の入電が大幅に多くなる、という状況でした。そのため「代表電話の交換業務だけをDXしても効果が限定的であり、市への問い合わせ全体をどう最適化するかを検討する必要がある」という問題意識を抱えていたのです。
喫緊の課題は「業務中断」と「負担」
現場の課題として挙げられたのは、主に以下です。
- 業務中断・作業効率低下:日々の業務を進めながら電話対応も行う必要があり、業務時間外で処理せざるを得ない場面も出る。ミスは許されず、漏れなく処理すべき自治体業務の特性上、電話対応の比率が増えると集中が切れ、手戻りが起きる。
- クレーム対応の負担
- 問い合わせ側の利便性が制限されること
- コスト削減の必要性
そこで、旭川市がツール選定で重視したのは「アップデートや改善の際に、どれだけスムーズにサイクルを回せるか」でした。完成品をそのまま使うのではなく、「小さく試して、問題点を細かく変えられる」ことが大切だと考えたのです。
その後、インターパーク様側のプロジェクトが立ち上がったのは2025年5月頃。AIを入れれば自動的に解決するわけではなく、正しい振り分けのためには業務理解が不可欠であるため、最初は「どんな問い合わせが多いか」を把握するところから始めていただきました。その過程で、全情報を長いプロンプトに詰め込むだけでは応答が安定しないという課題があり、類似検索(ベクトル検索)を導入して“意味の近い情報のみ”を参照させる方式に移行したと聞いています。

旭川市側の作業としては、傾向分析、データ投入、AIキーワード設定、アップデート、検証・フィードバックなどです。

また庁内体制については、情報システム部門と人事部門で構成するチームを組成し、電話課題解決を取り組みの1つとして位置づけて連携しました。
振り分け精度の改善については、正直に言うと「最初はこのままでは使えないと思った」と感じました。AIは賢く見えても、人間のように仕事をさせるには具体的に設計・調整が必要で、意味の取り違い・勘違いが起きるため、除外や条件設計が重要だと実感しました。以下は、実証実験の中で見えてきた振り分け精度を上げる5つのポイントです。

「一緒に作っている感覚」が推進力になった
自治体業務は突発的なタスクが多く、手がまわらない状況が起きやすい中で、インターパーク様とともに締め切りを柔軟に調整しながら進められた点はありがたかったと感じています。また、AIの調整は膨大な作業を伴うため、「一括でどれだけ柔軟に、スムーズに更新できるか」が重要であり、その点でも非常に助けられました。
「導入して終わり」にしない。RPAをきっかけに職員を巻き込むBPRと意識醸成
第3部に登壇したのは島根県江津市の森下晃氏。RPAを活用した業務改善の具体的なステップや職員のマインドを育てるための実践的な取り組みを伺いました。

【講師】
森下 晃氏
島根県江津市 政策企画課 係長
スマートシティ江津推進構想について
江津市は、島根県の中央部に位置する自治体で人口は2万2,959人(2020年国勢調査)、面積は268.24㎢です。少子高齢化・人口減少による将来不安に直面する中で、従来の「財政削減策」だけでは限界があるという認識のもと、令和4年度に「スマートシティ江津推進構想」を策定しました。目的は、DX(Digital)を手段として全職員の行動変革(X)を含む行政改革を進め、その結果として市民に寄り添ったスマートシティを実現すること。まずは市役所内部のデジタル化を通じ、課題解決によって職員の行動を変えたかったという意図もありました。

構想では改革を3つ掲げました。1つ目が市民サービスの改革、2つ目が業務プロセスの改革(BPR+デジタル化)、3つ目が人と組織の改革(DX人材育成・体制構築)です。今回のテーマであるRPAは、2の業務プロセスの改革と3の人と組織改革に関わる取り組みとして位置づけています。
業務プロセスの改革
現状は保存データのリアルタイムな共有が難しく、庁内・庁外の情報共有に時間がかかっているなど様々な課題を抱えていました。そこで、ローコードツールやAI-OCR・RPAに置き換えることで解決に導けないかと考えています。

人と組織の改革
ここで重視したのは、人材育成です。現状は職員が自分自身の業務を見直す機会がなく、課題の整理ができない状況が続いていたため、RPAシナリオ作成方法とAI-OCRの設定方法を習得する研修を行うことで、業務見直しの機会を設けられるのではないかと考えています。

いきなりRPAではなく「BPR」から
BPRとRPA導入の定着を進めるために掲げたのは、以下の3ステップです。

なぜSTEP1でBPRを行ったのか。それは、目的はデジタル導入ではなく、庁内業務の課題解決によって職員の行動を変えることだったからです。そのため、まずは工程の洗い出しと分析から始めました。実施時点では、RPAが有効な手段になり得るかどうかも、まだ分からなかったのです。
STEP1ではBPRを令和4年度に実施し、人事課・税務課・社会教育課・水道課の4課が対象となりました。36業務を分析し、削減見込みは3,587時間。そのうちRPA・AI-OCRの利用想定による削減が2392時間だったため、「試す価値はありそうだ」という結論に至りました。
続く令和5年度には、スマートシティ江津推進本部会議のワーキンググループとして「AI-OCRとRPA」を立ち上げ、複数のRPA(WinActor、UiPath、BizRobo)の説明やデモを受けました。その結果、プログラミングでコードを書くよりは簡単だが、Excelの数式よりは難しいということを痛感しました。また、総務省のガイドブック等で紹介される先進事例は大規模自治体が中心なのですが、何千・何万件という処理は小規模自治体ではなかなかありません。そのため、小規模自治体ではRPA活用が困難ではないか、という疑問も出ました。
一方で、ここで得た気づきが「細かい業務でも“普段使い”すればいいのではないか」という発想です。1つの業務で大きな削減をねらうのではなく、職員一人ひとりが薄く使い、全体として時間を生み出す――この考え方が、後の全庁導入の軸になります。

「いつでも使える環境」を重視して導入
そこで、令和6年度には公募型プロポーザルを実施し、NTTドコモビジネス株式会社 中国支社を特定。導入したのは「スマート自治体プラットフォームNaNaTsu(フローティングライセンス1、DXSuite)」と、WinActorのノードロックライセンス1です。職員用端末からいつでも操作可能な環境(フローティング、DXSuite)と、基幹系(住基台帳等)システム端末1台(ノードロック)という構成です。
選定理由としては、どのRPAでも難しさはあることを前提に、「研修とシナリオ作成フォローが充実している提案」を重視しました。加えて、“普段使い”するために、職員用端末からいつでも使える環境を選んだという経緯があります。

全庁定着の鍵は「まず知ってもらう」
RPAを“普段使い”として全庁に広げるため、次に導入プロセスを設計しました。令和6年度の全庁導入プロセスは次の通りです。

全職員向けRPA概要研修(203名参加)
業務ヒアリングの場で「RPA?なに?」という反応をなくすねらい。
希望者向けRPA操作研修(30名参加)
一からシナリオ作成が難しくても、基礎を学び「この業務はRPAでできそう」と思いつく人を増やす。
業務ヒアリング(37業務)
操作研修受講者を中心に職場をまわり、RPAで対処できそうな業務を聴取。
これらは外部(株式会社ロボフィス)に委託して実施しています。
実際の活用業務の具体例
実際の活用例として、税務課の軽自動車税の廃車処理を紹介します。これまで、紙で届く廃車情報は職員が基幹系システムに手入力していました。この作業を、AI-OCRとRPAで処理する流れに見直したところ、月3時間の削減につながっています。

もう1つは、財務会計システムの支払処理です。Excelであらかじめ記入した項目をシステムに転記させる“単純な仕組み”の自動化で、負担行為兼支出命令、支出命令、一括調定など複数の帳票処理に対応しています。現在、職員約30人にシナリオを配布して実践してもらっている最中で、定量的な削減時間は出せていないものの「楽になった」「ありがとう」という声があがっているのが印象的です。こうした反応は、他の取り組みでは得られなかったので非常に新鮮でした。

一方で、RPAには限界もあります。固定資産税のシステム台帳内に「RPAでは取得できない表」があり、シナリオ作成を断念したこともありました。また、システム側でコピー&ペーストできないようにしている場合もあり、技術だけで解決できないケースはもちろんあります。
RPAシナリオ作成には①システム、②ハード性能、③RPAの能力、④業務フローの4要素を考えなければならず、どれか1つが欠けるとできない業務も存在するということを、念頭に置いておく必要があります。
導入後の変化
印象的だったのは、導入前後での“庁内の空気”の変化です。導入前は「前の会社で、上が勝手に導入したシステムで現場が混乱した」という反応があったほか、「何かお困り事はありませんか?」と2年間聞いても相談がほぼなく、BPR実施時にも後ろ向きな意見が多い印象でした。
しかしRPA導入後は、廊下ですれ違う際に「この業務、RPAで使えるかな?」と職員から声をかけられるまでになりました。まさに、庁内文化が変わり始めた手応えを感じています。今後は、令和7年度に「RPAを使える人を増やす」ことを目標に掲げています。採用3年目職員への操作研修を必須研修と位置づけ、普段から使うことを常識化する方針です。シナリオを作成・修正できる職員も増やしたいと考えています。
令和8年度以降は、スマートシティ江津の実現に向けて「できることから行動へ移す」と考える職員の育成を進めたいと思っています。
私たちは「全職員が一日15分でも楽になればいい」という考えのもと、RPAを導入しました。一気に何千件もの自動化ができるとは限らない自治体は、他にもあるでしょう。しかし、日々の小さな改善を継続することで、スマートシティ実現は可能だと、今回の取り組みで感じました。
イントラネットでDX(Data X-Link)
第4部に登壇したのは、中央コンピューター株式会社の根来隆氏。DXを「Data X-Link(データ連携)」と捉え、フロントヤードとバックヤードをつなぐ考え方について、共有していただきました。

【講師】
根来 隆氏
中央コンピューター株式会社
ビジネスイノベーション本部 DX推進部 部長
「Data X(Cross)-Link」とは
みなさんは「DXって難しい」と感じたことはありませんか。何が良いのか、どうすれば業務に役立つのかが見えにくい。そんな声をよく耳にします。DXはDigital Transformationの略で、2018年に経済産業省が定義しています。定義の中では、データやデジタル技術を活用して、製品・サービス・ビジネスモデルを変革するだけでなく、業務そのもの、組織、プロセス、企業文化・風土まで変革することが示されています。

プロセスや企業文化、風土といった領域まで踏み込むとなると、最初の一歩が大変そうに見えてしまう。だから、DXを難しく感じてしまうのだと思います。そこで本日は、DXを「Data X(Cross)-Link」つまり「データの相互連携」と位置づけてお話しします。
例えば、窓口業務とバックヤード業務を思い浮かべてください。窓口で受付をし、バックヤードで事務処理をさばく。この間を、紙ではなくデータで連携できれば、業務の効率化が図れます。ここで、先ほど重たく感じた「X」を「クロス(Cross)」として捉え直してみましょう。フロントヤードとバックヤードをデータでつなぐ――この「Cross-Link」ができれば、業務改善のヒントが見えてくるはずです。
これを実現するために、特別に大きなしかけが必要かというと、必ずしもそうではありません。大切なのは、次の5つ。

イントラネットを構築して
グループウェアを導入して
受付で入力した情報を
データのまま蓄積して
バックヤードで処理する
この5段階を連携することで、窓口を「受付の場」からバックヤードへつながる「データの入口」へ変えることができます。従来、フロントとバックの間は紙でつながっていたケースが多いと思います。これをデータで連携できるようになると、転記の手間やミスのリスクを下げるなど、多くの改善が可能になるのです。
イントラネットとは
では、「イントラネット」とは何でしょうか。ひとことで言うなれば、インターネット技術を閉域環境で活用することです。イントラネットは決して最新技術ではありません。しかし、今でも十分に有効だと私は考えています。既存のPCとLAN環境、サーバーがあれば構築でき、サーバーも重厚長大な専用機から始める必要はなく、遊休PCの再利用からスタートできる点も魅力です。
さらに、閉域で運用できるため、不正アクセスや攻撃のリスクを抑止しやすく、セキュリティ対策の負荷も相対的に軽微にできる――これも、運用面のメリットです。

グループウェアとは
次に「グループウェア」とは、ネットワークを介して組織内の情報共有や共同作業を効率化するソフトウェアのことを指します。代表的な機能として、スケジュール共有や会議室など共用設備の予約が挙げられます。
これも、イントラネット同様に最新技術ではありません。それでも今なお有効なのは、人が連携して仕事をするシーンは今も昔も変わらないからです。コロナ禍を経て、対面でなくても連携する環境が当たり前になりました。働き方が、コンピューターネットワークを介した連携を自然に受け入れやすくなっているのです。

グループウェアの基本機能
私が「グループウェアの四天王」と呼んでいる基本機能は、スケジュール、備品予約、電子申請、掲示板の4つです。今回は、電子申請と掲示板を掘り下げて説明します。
電子申請:紙回付を“データの流れ”に変える
電子申請は、紙ベースで回付している稟議等を電子で運用する仕組みです。自分が挙げた申請がどこまで進んでいるのか、どこで止まっているのかが分かる、という利点があります。例えば、窓口で受け付けた書類を回付し、決裁された内容をそのまま伝票処理へつなげれば、経理担当の伝票起票の手間を削減でき、転記ミスなどのヒューマンエラー防止にもつながります。支払いが正しい決裁にもとづくものだという統制も取りやすくなるでしょう。

掲示板:自由記述を「現行書式相当の入力画面」に変える
掲示板は、周知事項や連絡事項を書き込み、他の人が閲覧できる仕組みです。情報発信・共有のスピードや範囲が上がる点が特徴です。ただ、掲示板の自由記述欄で「ご自由にお書きください」と言われると、何を書けばいいのか戸惑うことがあります。そこで、自由記述欄を情報種類に細分化し、現行書式に相当する入力画面にすることで、掲示板を案件管理へ発展させる使用方法もあります。

自治体業務にあてはめると、どんな活用方法があるでしょうか。1つは、福祉・保護施策です。窓口での相談内容を集約し、バックヤードの情報共有(委員会付議資料等)へつなぐことで、転記作業をゼロにし、職員が「住民に寄り添う相談」に集中できます。
2つ目は、建設・道路管理。外部からの道路損傷通報を、イントラネット内のグループウェアで共有すれば、現場写真がそのままワークフローに乗り、即時の修繕指示が可能になります。
3つ目は、教育・働き方改革です。打刻データ、欠席連絡、行事予定をグループウェア上で一元化し、「打刻というデータの入口」と「日常の校務(掲示板・回覧)」をCross-Linkすることで、教職員の稼働状況をリアルタイムで把握できます。
AIでさらに発展させることも
AIを活用するとさらなる展開も期待できます。例えば、AIによる要約で付議資料を分かりやすくする、AIによる画像解析で現場写真を分析する、AIによる相関分析で労働状況の検討材料にする、といったものです。

ここまででお伝えしたいのは、「DX=いきなり大変革」ではなく、まずはフロントとバックの間を“紙”から“データ”へ置き換え、つながり方を変えることで、現場の業務改善を具体化できるということです。
また、文中に登場したグループウェアの画面は、弊社製ソフトウェアです。弊社は受託開発をDNAに持つ会社で、パッケージを元にしたカスタマイズや、利用シーンに合わせた最適なソリューションの再構築を得意としています。先ほどの「さらに発展」で触れたAI適用サービスも承っています。もし気になる方がいたら、ぜひお問い合わせください。
【お問い合わせ】
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