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【セミナーレポート】 まだ間に合うZEB入門! ムリなく進める脱炭素のはなし【DAY2】

脱炭素をテーマにお送りする2DAYSセミナー。2日目は、環境省職員が登壇して国の方針などを共有。また、環境先進都市・宇部市からも省CO2を実現した新庁舎の取り組みについて紹介してもらいました。
さらに、執務室での脱炭素や、建物の垂直面を利用した発電、ZEB改修におけるESCO事業など、独自の取り組みを進める事業者も集まり、それぞれの知見を紹介。今後の脱炭素事業にぜひお役立てください。
■タイトル:まだ間に合うZEB入門! ムリなく進める脱炭素のはなし【DAY2】
■実施日:2025年7月11日(金)
■参加対象:自治体職員
■開催形式:オンライン(Zoom)
■参加者数:111人
■プログラム:
第1部:宇部市新庁舎の取組~世界的に評価された「宇部方式」の理念のもと、次の100年の未来を創る庁舎~
第2部:身近なところから始める脱炭素化施策のご紹介
第3部:建築物を最大活用する再エネソリューション"建材一体型太陽光発電ガラス(BIPV)"のご紹介
第4部:公共建築物の脱炭素化に向けて
第5部:民間主導による補助金を活用したZEB改修事業事例紹介
宇部市新庁舎の取組~世界的に評価された「宇部方式」の理念のもと、次の100年の未来を創る庁舎~
過去の大気汚染から脱却し、環境先進都市となった山口県宇部市。その新庁舎には、CO2削減をベースに、市民・職員のウェルネス向上や、災害時への対応など様々な知恵が盛り込まれている。同市の職員が、新庁舎の計画から運用までの流れを解説する。
[講師]
紅野 覚 氏
宇部市 都市政策部 新庁舎建設課 課長
[講師プロフィール]
2002年宇部市役所入庁(建築職)。住宅課、建築指導課、営繕課を経て、2023年より現職。保有資格:一級建築士、建築基準適合判定資格者。
3つのコンセプトを掲げ、環境に優しい庁舎を目指す。
宇部市新庁舎における環境負荷低減への取り組みについて紹介します。まず大枠について。当市はSDGs未来都市に選定されており、新庁舎建設事業についても、まちづくりを先導するものと位置付けてスタートしました。
設計にあたっては地域の特性や庁舎の特性を踏まえた上で、未来を見据え、多種多様なCO2排出量の削減対策、ウェルネスの向上、BCP性能の強化がシームレスに相互浸透するよう取り組みました。それにより人に寄り添う庁舎と環境親和庁舎の両立を目指しています。
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次に建築概要について。
本庁舎棟は主に行政機能を備えています。延べ面積は約1万5800平方メートルで地上6階建て。大地震時における建物の損傷や防災拠点としての初期稼働性を考慮し、免震構造を採用しています。
次に、市民交流棟は、行政機能に加え市民活動支援機能、市民交流機能を備えています。延べ面積は約3200平方メートルで、地上3階建ての耐震構造です。
これら新庁舎の整備にあたり、市では“まちづくりを先導する庁舎”、“共生社会を先導する庁舎”など5つの目標を設定。これらを達成するために、3つのコンセプトを掲げ、まちづくりの先導的役割を担う庁舎を目指しました。
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そして、環境親和計画を進める上で、3つのコンセプトがシームレスであることを主眼としました。平常時に省CO2効果を発揮するのは当然のこと、災害時の防災拠点としても機能し、省CO2効果がウェルネスの向上にも寄与することを重要視。加えて、先進技術を採用し、SDGs未来都市宇部を発信することとしました。
宇部らしさを追求するため、気候特性などから環境設備計画を導きました。例えば、気温変動が大きいことに対して外壁や屋根の高断熱化をする、安定した卓越風に対してハイブリッド換気を導入する、雨水利用をする、などです。これらを具体的に技術的なアピールポイントにまとめ、展開しました。また、地元山口大学工学部との協働により、旧庁舎における環境実測、職員アンケートを設計初期段階で実施し、旧庁舎と新庁舎の室内環境、知的生産性に係る比較研究に役立てています。
エネルギー消費62%減に貢献した様々な技術とは。
ここからは、導入している省CO2技術の一部を紹介します。下図は全体像です。左側が北で、中央に本庁舎棟、右側が市民交流棟。北側には立体駐車場が配置されています。
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まず、「負荷を元から絶ち、自然の恵みを活かすパッシブデザイン」について。
日射の多い南面はバルコニー、水平ルーバー、グラデーションブラインドによる三重の日射対策を行っています。バルコニーは日射を遮ることによる空調負荷を低減し、水平ルーバーやグラデーションブラインドは日射熱を防ぎつつ反射光も利用して照明用エネルギーの削減につなげています。
次に、「再生可能エネルギーを活用するアクティブ技術と高効率設備システム」です。潜熱顕熱分離空調の採用により、高効率の空調システムを実現。複数の熱源により季節に応じて最適なものを選択してエネルギー効率を高めつつ、災害時の電力複数化にも寄与しています。屋上の太陽光発電は市民交流棟に電力を供給。さらにハイブリッド換気とナイトパージで効果的な換気を実現し、夏場の冷房用エネルギー削減にもつなげています。
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そして「設備の適切な運転制御とワークスタイルの見直しによる運用効率化」。赤外線アレイセンサで室内人数を検知し、人数に応じた適切な空調を行います。タスク・アンビエント照明と生体リズムに合わせた照明制御では、室内を控えめの照度に設定し、机上に個別のタスク照明を追加。夏冬以外の中間期は、執務室の“自然換気オススメランプ”に従って窓を手動で開閉し、効果的な自然換気ができる仕組みです。
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次は「先進技術の波及、普及に向けた取り組み」について。
エネルギーマネジメントに寄与できる深化拡張型BEMSを構築しています。状況を把握しやすいグラフ化機能の強化やガイダンス機能の付加により、特別な技術を持たない管理者でも維持管理の最適化が可能となり、中央監視の運用やチューニング支援に貢献しています。
これらの省エネ性能により、設計段階で基準一次エネルギー消費の43%削減を達成。1万平方メートル以上の庁舎では国内で初めてZEB Orientedの認証を取得しました。CASBEEでは最高ランクのSランクを達成しています。
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本庁舎棟の供用開始後は、システムチューニングでさらなる省エネ化をはかり、1年目の実績で約62%を削減。ZEB Readyを達成しています。2年目、3年目についてもZEB Readyの達成を確認済み。令和5年度には建築設備技術者協会による第12回カーボンニュートラル賞を受賞しました。本庁舎棟は令和4年5月に開庁し、市民交流棟は令和7年8月に供用開始。しかし開庁はゴールではなく、新たなスタートです。今もさらなるZEB化とウェルネスの向上を目指し、進化し続けています。
身近なところから始める脱炭素施策のご紹介
第2部は、エプソンの企画担当者が登壇。庁内のプリンターをインクジェットに変えるだけで何が起こるのか。自治体で導入した結果をもとに、業務の中で簡単に始められる脱炭素推進の取り組みについて分かりやすく解説してくれた。
[講師]
横場 翔 氏
エプソン販売株式会社
ビジネス営業企画部 業種企画担当
見逃しがちな印刷機の電力消費と、その低減ソリューション。
私からは、カーボンニュートラルの実現に向けたZEB化の一環として、執務室の環境見直しによる脱炭素化について紹介します。現在自治体においてはZEB化の実現に向けて取り組んでいると思います。当社では下図の赤丸の部分について、庁舎の省エネという部分に貢献する機器の導入支援を行っています。
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その機器とは、インクジェット方式の複合機です。一般的なレーザープリンターに比べて、CO2排出量を47%以上削減することが可能となっています。削減のポイントは、印刷プロセスで熱を使わないということです。インクジェット方式では印刷時に、単純にインクを吹き付けるだけ。一方、レーザー方式のプリンターは、印刷指示をかけた後、トナーを紙に定着させるためにウォームアップを行うので電力を多めに消費します。
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そこで、単純に現状のコピー機をインクジェット方式に入れ替えるだけで、庁舎の脱炭素化を進めることができるというのが提案の内容です。少額投資で即効性の高い設備の高効率化策だと考えていただければと思います。
自治体において、多くの複合機は5年間のリース契約、あるいは賃貸借契約で運用されていると思いますが、この契約期間が満了した後にインクジェット方式への切り替えを検討されるケースが増えてきています。
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上のグラフは、オフィスの電力占有率です。自治体の執務スペースもこれに近いといえますが、電気消費量の7~10%がプリンターや複合機によるものです。おそらく現状で空調の温度設定管理や、LEDへの入れ替えといった取り組みは実施されているかと思いますが、次の打ち手を考えると、パソコンの使用を抑制するのは難しい。ならばプリンター・複合機になる。意外と盲点になりがちですが、実は見直しが簡単な部分なのです。
そうした中、「印刷の品質は大丈夫か」といった声もいただきます。参考までに、昨年度インクジェット方式の製品を採用いただいた自治体は104ありました。それだけの導入実績があるので、我々としては自信を持って紹介しています。
業務での使用感を変えずに、8割近くのCO2削減を実現。
では実際に庁舎で採用した際、どれくらいCO2削減ができるのか、事例を紹介します。測定は「ワットモニター」という消費電力の測定機を用いて、レーザー方式の機械を使った環境での電力消費と、インクジェットに入れ替えた後の電力消費を測定して、年間でどれだけ違うのか比較をしています。
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この自治体では、令和7年4月から当社のインクジェットの機械を採用。業務環境に合わせて複合機の台数を増やして配備しています。それにも関わらず、CO2排出量が年間で約3000kg減という結果です。また、5年間で電気代がどう変わるかを試算すると、機械が増えているのにも関わらず、消費電力、CO2の排出量は62%の削減。電気代に換算すると5年間で約60万円です。効果がご理解いただけるかと思います。
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ちなみにこの自治体では庁舎だけでなく、出先機関も含めて当社のインクジェット方式を採用しています。規模が大きくなるとさらに効果は高まり、5年間で5.4万kWhの削減と、消費電力、CO2排出量の削減量は78.6%という見込みです。これを電気代に換算すると、約167万円となり、800本ほどの蛍光灯をLEDに変えるのと同じような効果になります。
加えて、低消費電力という観点では、災害時のBCP対策においても有効です。インクジェット方式の機器は予備電源や蓄電池などでも十分に稼動でき、ポータブル電源を使った実証実験では、蓄電池がフル充電の状態から1日8時間、約1700枚を印刷したとしても5日間稼動しました。有事の際に罹災証明の印刷などを行う場合も、通常の使用感と変わらず対応が可能です。実際に当社のインクジェット方式複合機を被災地に貸し出した事例もあり、災害に強い庁舎の取り組みの一助を担うこともできると考えています。
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導入支援として、機器の稼働状況、印刷環境の可視化や、CO2削減の実態の可視化を実施。実際にインクジェット機器を試したい、検討したいという場合は、運用上問題ないのかを確かめる意味でも、検証あるいはデモという形で機器の無償貸し出しを実施しています。印刷速度や画質の部分も実機で確認できるので、ぜひお試しください。
建築物を最大活用する再エネソリューション“建材一体型太陽光発電ガラス(BIPV)”のご紹介
太陽光といえば屋根か平地に置くイメージだが、建物の側面にも大きな可能性がある。第3部では、ガラス関連事業を手がける事業者が、これまでの各種施設への施工事例を紹介しつつ、窓や壁などで脱炭素化を図る手法についてその全体像を説明する。
[講師]
盤指 豪 氏
AGC株式会社
事業開拓部 GGX(Glass for GX)プロジェクト リーダー
[講師プロフィール]
2008年王子製紙(現王子ホールディングス(株))に入社後、イノベーション推進本部にて、新規材料開発、新規事業のテーマ立案・推進等に従事。2022年より、AGC(株)事業開拓部でBIPV事業を拡大・推進するGGX(Glass for GX)プロジェクトのリーダーを担当。
垂直面での発電を可能にする3つのソリューション。
当社は1907年創立。建築ガラスや自動車のガラス、ディスプレイ関係のガラスなどを事業として手がけています。今回は、「BIPV(Building Integrated Photovotaics)」という建材一体型の太陽光発電ガラスを紹介します。端的にいうと、建築物のガラス部に太陽光発電の機能を備えていく、という商品です。
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上記右が施工例で、窓の部分や、トップライト、フェンスなどにも施工実績があります。ひさしやバスシェルターの屋根も多く手がけています。
ガラスの中に収める太陽光のセルは、様々な施工条件や意匠性に配慮したシリコンのセルを3種類ラインアップしています。ペロブスカイトの発電セルを活用した製品も開発中ですが、実装までにもう少し時間がかかるため、足元の結晶シリコン3種を提供中です。
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これまで、窓やカーテンウォール、ひさし、フェンスなどに施工する「サンジュール」という商品で展開しています。最近は既築の改修時に発電を入れられないかという要望が多いため、後付けできるソリューションとして「後付けサンジュール(仮称)」も提供。さらに外装材メーカーとの共同開発で、新築の壁に設置する「サンブリック」もリリースしています。
以下、施工事例を紹介します。羽田空港の第2ターミナルで拡張工事が行われた際、窓に1000平方メートルほど採用されています。容量は約107kWで、セルの種類はスクエアです。また、愛知県淑徳大学の駐輪場では、フェンス部にグリーンのセルを入れています。緑化を想起させた施工です。
高輪ゲートウェイ駅や静岡駅の駅前施設では、屋根のひさし部分に施工しています。これらは全て新築で採用いただいた事例です。
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一方、既築の窓では、横浜市の市庁舎1階アトリウムで採用されました。発電した電気はサイネージに利用しており、災害時などに系統からの電力が切れても、後付けサンジュールで発電するためサイネージは稼動可能というBCP対策も合わせてPRしています。
また、新築の壁では北海道の団体施設の事例があります。積雪地域では屋根置きが難しいため、水平設置で再エネを調達。雪の反射光も拾えるため、北国ならではの発電効率も。国内ではこれらの他に300件ほどの施工実績があります。
補助金も活用しつつ、長期的な視点での脱炭素化を。
ここからは、再エネを取り巻く環境と補助制度についてお話しします。7次エネルギー基本計画で、2040年までに太陽光を3倍くらいにしなければならないとされています。ただ、これまで主役を担ってきたメガソーラーは、適地の減少、災害の発生、国際的な生物多様性への配慮などで、大きく増加させるのは難しい状況です。
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資源エネルギー庁の資料では、100GWを超えるような規模感を目指すためには、公共施設や工場、物流施設など、あらゆる場所にPV設置を拡大する必要があり、建築物の窓や壁も活用していくことが前提とされています。その他、耐荷重の問題で屋根に乗せられないとか、屋上緑化などで置く場所が限られてくるという課題も。こうしたことを受けて建築物の垂直面、窓・壁部を活用した発電も進める必要があります。
2024年度からは、窓・壁などと一体となった太陽光発電の導入加速支援事業が創設されており、今年も第2次公募が行われています。概要は、窓部に入れるBIPVの補助は5分の3、壁部に入れる補助は2分の1、上限額はそれぞれ5000万と3000万。補助の対象期間は原則単年ですが複数年も3年まで対応できるとのことです。
同じように経産省が主導しているもので、ペロブスカイトの量産や実証フェーズの補助というものが出ています。また、2040年に20GW導入を目指すということで、国の目標の150GWクラスになってくると、ペロブスカイトだけではまかなえない容量になるので、結晶シリコンとペロブスカイトを使いつつ脱炭素を進めていくことになると思います。
また、スピード感を持って導入していただくために、JSA-S1024という規格も有志メンバーで組成しています。これは建築物を有効活用してPV設置をしている、ということを可視化する規格です。当社に加えパナソニックHD、東京建物、三菱UFJ銀行などのグループで規格開発を行い、昨年末に発行しています。対外的なPRへの利用に加え、将来的にはファイナンス面でのインセンティブに繋がればと考えています。
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この規格適合の第1号が上記右下の「八重洲ステップテラス」で、BIPVの環境省補助金の採択第1号案件でもあります。東京駅の八重洲口近くにあるので、ぜひ見学にお越しください。
公共建築物の脱炭素化に向けて
第4部は環境省で温暖化対策に取り組む職員が登壇。脱炭素の基本的な考え方を再確認しつつ、現状や今後の目標などについて改めて共有し、補助金に関する情報提供などを行った。
[講師]
鳴海 匡 氏
環境省 地球環境局
地球温暖化対策課 地球温暖化対策事業室 室長補佐
[講師プロフィール]
平成19年度、北海道庁入庁、以降、原子力行政、廃棄物行政のほか、予算・人事や重点政策など内部管理・企画部門を経験し、令和6年4月から環境省に割愛派遣中。
なぜ建築物で脱炭素を進めなくてはならないのか、基本を確認。
このセミナーでは、自治体が予算要求に向けて、どのような視点で内部調整を進めていくべきか、ヒントになれば幸いです。
最初に、公共建築物の脱炭素化の重要性についてお話します。既存の非住宅建築、いわゆる業務用建築物では全体の約23%が公共建築物にあたるというデータがあります。そのうち、第三者認証機関でZEBだと認定されたものは0.34%。自治体の建築物は相当な数があり、財政的状況もあって、現状の修繕対応に追われているのが実情と思われますが、脱炭素の取り組みをすすめていただくためにも、対応が急がれます。
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では、なぜ建築物の脱炭素化に取り組まなければならないのでしょうか。前提として、地球温暖化対策推進法というものがあり、地球温暖化対策計画を自治体に作ることが求められているからです。このため、環境省では策定のためマニュアルを出しております。自治体によっては、新築はこれからZEB Readyにするとか、自らのルールを課しているところもあると思われます。このように、地球温暖化対策推進法などでルールづけをしているというのが理由の1つです。
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他にも、全国知事会で令和4年7月に「脱炭素・地球温暖化対策行動宣言」というものが出され、都道府県が整備する新築建築物はZEB Ready相当にしていくこともすすめられています。これは毎年、全国知事会議の方でフォローアップされています。
また、令和7年2月に示された政府実行計画では、2030年度までに新築建築物の平均でZEB Ready相当以上、2030年度以降はさらに高い省エネ性能を目指すという方針が示されています。環境省の実施計画でも、前述の政府全体で新築建築物はZEB Ready相当以上、という基準に加え、今後改修時期を迎える既存建築物についても、原則ZEB Oriented相当以上となるよう計画的に設備改修に取り組む、ということが議論されています。
さらに、総務省が出している公共施設等総合管理計画の策定等に関する指針では、各自治体で作る公共施設等総合管理計画において、脱炭素化の推進方針について記載することと明記されています。自治体ではこういった各種の計画に脱炭素の方針を落とし込み、合意形成をして、全体的な施策とすることで予算措置にもつなげていくことができるのではと考えています。
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これまで2030年度にマイナス46%という目標を掲げていましたが、今年提出した目標数値は2035年度にマイナス60%、2040年度にマイナス73%となっています。今までは何とか順調に経過してきましたが、今後は未着手の部分に取り組んでいかないと目標達成も難しくなります。計画的に進めていくことが必要です。
公共建築のZEB化を進めるための各種情報を提供。
次は、公共建築物の脱炭素化のための手法と、合意形成に向けて必要な取組についてお話します。公共建築物の脱炭素化のために検討しなくてはならないこととして、施設ごとの整備計画があると思うので、それによって進めていくことが多いかと思います。脱炭素化を考えるきっかけは、主要設備の故障や、老朽化により修繕ができなくなったとき、または人口減少などによる施設の集約化、あるいは光熱費の削減を検討のいずれかになる場合が多いと思われますが、それを類型化すると下表の通りとなります。
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この中で、設備の単純更新は難易度が低いのですが、補助金の選択肢は少なくなります。また、光熱費の削減という観点では、ハードの更新もありますが、運用方法の改善を目指すという方法もあり、ここでは環境配慮契約法の基本方針で記載されているエコチューニングの実施について紹介されていただきます。他の3項目については、施設整備予算が必要であり、全庁的な調整が必要となります。
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公共建築物のZEB化に向けたプロセスとアクションの代表的なものを紹介させていただきます。こちらは二次元コードからもダウンロードできるのでご参照ください。また、基本構想段階についても、庁内でのアクション、関係主体への働きかけに分けて、それぞれのステークホルダーの役割を記載しています。こちらは環境省ZEB PORTALに「ZEB化実現までの流れ」として掲出しているので、ご覧ください。最後に、公共部門における脱炭素化への留意点としてまとめています。
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【ご参考】として記載していますが、まず更新費用が大きい設備は、補助金があるうちに省エネ化を進めていくことが重要です。エネルギー対策特別会計による補助は、石油石炭税が財源であって、化石燃料が使われなくなってきていることもあり、財源が減ってきています。政府は補助率の引き下げや対象設備の見直しをやらなければならない状況です。補助金があるうちに、ぜひ進めてください。
また、脱炭素化推進事業債を使われる場合もあるかと思います。国の補正予算による補助金を使うケースもあると思うので、補正予算債の活用も念頭に置いておきましょう。ZEBポータルなど環境省の各サイトには様々な情報が掲載されているので、こちらもぜひご覧ください。
民間主導による補助金を活用したZEB改修事業事例紹介
本セミナーのラストは、宮崎県小林市のZEB改修事例。この事業をリードした事業者が、施設の課題と対策、ESCO事業を採用するメリットなどについて、具体的な導入効果もまじえて紹介してくれた。
[講師]
川合 奨馬 氏
大和リース株式会社
リーシングソリューション事業部 FPL推進室 西日本FPL推進課
[講師プロフィール]
2014年に大和リース入社後、生産部門を経て2021年よりリーシングソリューション事業部にて現職に従事。現在は自治体に向けた公共設備リース事業を西日本にて実施している。
築19年の福祉施設に、ZEB化で新しい命を吹き込む。
本パートでは、当社が宮崎県小林市において、ESCO事業という形でシェアード・セービング方式を活用しZEB改修をした事例を発表します。各自治体においても脱炭素のヒントになればと思っています。
対象となった施設は、同市の養護老人ホーム「慈敬園」で、現在設備改修を進めています。施設の概要は以下の通りです。
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事業以前に同市が抱えていた課題としては、まず光熱費の高騰があります。次に設備のメンテナンス料。経年劣化により故障も目立ってきていました。そして施設の使用実態に合わせたエネルギー使用ができておらず、ロスが発生しているという点です。
こうした課題に対し、設計・施工・維持・管理を一括という形で、当社大和リースと、パナソニック、九南、弘栄設計でグループを構成してESCO事業で提案。採択を受けたため、これから施工に入るという状況です。
この事業の特徴としては、設備改修のみで建築側の改修は行わず、ZEB Readyを目指すという点。同種施設では全国初のシェアード・セービングス型のESCO事業であり、また補助金を活用したESCO事業としても全国初の事例になります。事業費などは以下の通りです。
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事業のスキームについては、大和リースが代表企業として業務委託契約、ESCO形式を締結。各企業の役割は、設計業務、施工業務、機器の供給、維持管理と、それぞれの分野で事業を実施する方針です。小林市内の事業者にも施工、維持管理で協力をいただく形で、事前に関心表明をしてもらいながら事業を進めていく方式をとっています。
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今回はESCO事業の発注という形で、設計要件、発注要件の整理を行っていただき、調査・設計・施工、維持管理を一括で発注という方式です。採択後、我々事業者が調査から維持管理までの全てを行う形になっています。
費用の支払いについては、初年度(R7)の工事が終わり、来年度からサービス期間が始まると同時に総事業費を分割で支払う形です。これによりコストの平準化ができ、また補助金を活用することで事業費を圧縮できる点も魅力です。
自治体にもメリットが大きいESCO事業の様々な強み。
この事業で更新する内容についてお話しします。設備改修のみのESCO事業であり、照明、空調、換気、給湯、受変電、太陽光、EMS設備といった各種設備を提案しており、これから導入していく形です。照明設備については全て器具交換によるLED化を実施しています。また、空調設備は今までGHP、EHPそれぞれがあったのですが、全てEHPに更新することで電化への燃料転換をしています。
このESCO事業は10年間維持管理を継続するので、今後の10年間のエネルギーの使用状況によってさらに省エネとなるような運転管理ができる提案も都度させていただけるよう、30分ごとのエネルギー使用状況を可視化するシステムを入れています。
事業実施のスケジュールは下図の通りです。
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従来のように単年度で設計業務を行い、施工業務を行うと、2カ年が必要になるかもしれません。それに対し今回は、1月に設計をスタートし、7月に工事に着手して、全ての設備を12月末で完了予定。丸1年あれば全て更新できる流れになります。次に、今回改修する内容についての現時点での結果です。
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BEI値が0.49という結果ですが、実際にはまだ削減の余地があり、0.46くらいは見えている状況です。また、電力の使用量については、省エネ設備や太陽光発電を入れることで約60%の削減、ガスについても約50%の削減ができています。また、光熱費は約53%を削減。当初1300万近かったものが600万ほどに削減できる見込みです。
今回は、補助金を活用した事業です。補助率も当該施設が既設建築物で2000平方メートル以上、1万平方メートル未満ということで、ZEB Readyでも補助率3分の2と高い補助率になっています。約3億6千万円の事業費に対して1億円を超える補助金です。これに加えて分割という面もあるので、自治体側のメリットは大きいと思っています。
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最後に、当社は全国各地で事業の実績があり、それぞれ自治体の担当者がいます。ご興味がある方には、改めて補助金のポイントや詳細についてお伝えします。ささいなことでもぜひお声かけいただければと思います。
お問い合わせ先
ジチタイワークス セミナー運営事務局
TEL:092-716-1480
E-mail:seminar@jichitai.works











