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兵庫県加古川市

公開日:2024-08-16

住民の幸福度を数値化し施策立案の裏付けとして活用。

企画・政策
読了まで:5分
住民の幸福度を数値化し施策立案の裏付けとして活用。

地域の“幸福度”を可視化するツール

デジタル庁は、デジタル田園都市国家構想の実現に向けて、地域住民の幸福度を可視化する「地域幸福度(Well-Being)指標」の活用を推進している。この指標を全国に先駆けて導入した加古川市長の岡田さんに、そのねらいを聞いた。

※下記はジチタイワークスVol.33(2024年8月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
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兵庫県加古川市
市長 岡田 康裕(おかだ やすひろ)さん

定性的な幸福度を定量的に測る指標は“まさに欲しかったツール”だった。

同市は、総合計画の進捗状況を確認してPDCAをまわすことを目的に、平成28年度から市民意識調査を毎年実施してきた。その中で施策の満足度や重要度、市民の幸福感を測る試みは行っていたものの、その結果と市民の幸せにどのような相関関係があるかを、定量的に確認できないことが課題だった。そのため、岡田さんは地域幸福度指標について、「まさに欲しかったツールだ」と感じたという。「当市では何代も前の市長から、市民の生きがいや幸福感を大切にしてきた歴史があります。ただ、そのために市民の行動変容を促したいと思っても、施策の裏付けや効果を示す数字がありませんでした。指標は、この課題を解決するものだと思い、活用を決めました」。

さらに岡田さんは、指標が公務員にとって“自分は何のために仕事をするのか”を見つめ直すきっかけにもなると語る。「急激な物価上昇で生活が圧迫される今、目先の経済対策をどれだけ豊富に用意できるかが、自治体の価値と見なされがちです。しかし、自治体の仕事の中には、幸福度の向上のように、長期的な視点で考えなければならないものもあります。指標は、日々の仕事に追われる公務員が立ち止まって仕事の根本に立ち返る、よい機会になっていると思います」。 

幸福度と相関の高い分野を確認し施策立案や事業に反映していく。

同市では、令和4年度から市民意識調査の中に、地域幸福度に関する項目を追加し、その結果を活用している。指標の導入時は、調査の質問数が増えることから、回答率の低下が懸念されたが、調査対象者を増やすことで信頼できる回答者数を担保した。そこから、市民の幸福感と相関関係がある分野・キーワードを抽出。令和5年度には、“文化・芸術”をはじめとする6分野を確認できた。「当市は指標を活用する前から“音楽のまち”を掲げ、市民が音楽に親しむ機会を増やしてきましたが、正直、費用対効果の見えにくい分野でした。しかし、指標によって文化・芸術が、幸福感と相関関係があるという心強い裏付けを得られました。これを根拠に、さらに取り組みを進めます」と岡田さんは語る。

同時に、職員向け研修にも注力している。市長や副市長をはじめ、幹部職員へ考え方を浸透させるため独自に研修を実施。さらに、関係各課の課長級職員を対象に、地域幸福度指標の開発者である「スマートシティ・インスティテュート(以下、SCI-Japan)」が行う研修を取り入れた。“形のない幸福を測れることが分かり、仕事への意欲が変わった”、“市民の幸福度向上のために何をするかという、理想ベースの施策立案の手法を学べた”と、職員からも好評だ。岡田さんも「指標を活用して仮説を立て、それにもとづく事業を考えて具体化していきたい」と意気込む。

自分の幸福も考えることで、短期的・中長期的視点を養って。

現在、同市は指標の考え方や手法を理解する職員を増やし、施策立案に関する議論のレベルを底上げすることを目指しているという。それに向けて、令和6年度は関係各課の係長級職員に対する研修も進めている。

また、指標の活用について、市民への発信も行っていく。令和6年の年初、同市の広報紙に岡田さんと市議会議長、SCI-Japan専務理事による、地域幸福度指標をテーマとした座談会の記事を掲載した。今後はオープンミーティングの機会なども利用して、指標の意義を市民に説明する予定なのだそうだ。

長期的なまちづくりを目指し、施策の裏付けとして指標の活用に取り組む同市。岡田さんは最後に、「職員一人ひとりに、自分がより幸福になるためには、何が必要かについても考えてほしい。短期的な視点と中長期的な視点を備えることが、公共のために働く私たちには必要です」と話してくれた。

 

 

デジタル庁の担当者の声

指標を“共通言語”とすることで関係者の協力を引き出してほしい

デジタル庁
国民向けサービスグループ 参事官補佐
鈴木 ミユキ(すずき みゆき)さん


地域幸福度(Well-Being)指標は、自治体が住民の幸福度や満足度を多面的に評価・分析できるツールです。地域の現状を定量的に把握し、データにもとづく政策決定が可能となります。すでに85の自治体が活用に取り組んでおり、今後もさらに拡大していく見込みです。

デジタル庁では、活用自治体の拡大に向け、導入時の業務負担の軽減や取り組みへのサポートとして“自治体アンケート実施時の支援機能の提供”、“指標を活用したワークショップへの講師・ファシリテーターの派遣”、“指標活用のための研修動画の配信”を令和6年度中にスタートさせます。

また、令和6年5月に全国約10万人を対象としたアンケートを実施し、令和5年度に引き続き、結果を「地域幸福度指標サイト」のダッシュボードに公開しました。ぜひサイトに触れて、活用してみてください。指標をまちづくりの“共通言語”とすることで、地域の目指したい姿がより具体的になり、住民や事業者など、様々な関係者の協力を引き出す可能性が高まるはずです。

活用自治体

●福島県会津若松市
●静岡県浜松市
●群馬県前橋市 など

地域幸福度指標サイトのダッシュボードを活用

まだ個別調査を行っていない自治体でも、デジタル庁が実施する全国調査やオープンデータを反映させた客観データの閲覧が可能。

お問い合わせ

サービス提供元デジタル庁 地域幸福度(Well-Being)指標事務局

TEL:03-6747-9636
Email:well-being_support@murc.jp

お問い合わせ・詳細はこちら

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