身の回りの片づけは心の片づけ。職場や家庭をスッキリすることで、効率アップ・自己成長・人間関係の改善など。片付けがもたらす効果は心理的にも効果がある。そんな職場や家庭の「日々を整える片づけ術」をテーマに、元・自治体職員で、現在はオフィス業務効率化コンサルタントとして活躍している長野ゆかさんに連載の執筆をいただいた。
第3回目は「家事時短のための整理術」について。家事も工程を見直して頑張らない家事の方法を見つけていただきたい。
家事時短は、家の片づけから
家も片づいていると家事効率が上がります。いつも同じ場所にモノがあると「鍵がない、スマホがない、子どものプリントがない」など、探し物の時間が減ったり、また家事動線が良くなるので、料理、洗濯、掃除の時間を短縮できたり。そして、一度しっかり片づけると、それ以降はそもそも散らからないため、片づけ作業に時間をかけなくてもよくなるなど、副次的にもたらされる効果はとても大きいのです。
工程ごとに分解して改善ー仕事のように考える
家の片づけの進め方は、前回のオフィスの記事と同じ。「整理・収納・整頓・片づけ」の順で進めるのですが、やはりこの整理でそもそも「やるべき家事(コト)をやめる・減らす・なくす」ができるのが1番単純で、簡単に大きな効果が出ます。一つの家事を丸ごとやめることは難しいですが、作業ごとに分解してみていくと、意外に改善ポイントが見つかります。特に働いている方は業務への改善意識が高いので、そのスキルを「家事に活かすことができる」と分かれば、一気に改善が進むことが多いのです。
では、具体的にどのように考えていけばよいか「衣類・洗濯」を事例に、やめかた・減らし方を見てみましょう。
「洗う・干す・畳む・しまう」ー干すをやめるためにできる工夫を考えてみる
洗濯の作業を工程ごとにざっくり分けると「洗濯機に衣類を入れる・洗う・干す・畳む・しまう」に分けられます。この作業で、やめられることや、時短になる工夫がないか考えてみましょう。例えば、一つ目の「洗濯機に衣類を入れる」を、自分が毎朝しているなら、家族おのおのにしてもらうのはどうでしょうか。洗うも朝からスイッチを入れるのではなく、夜にタイマーを使ってみる。洗濯乾燥機の乾燥機能を活用して「干す」をやめる。畳む・しまうは収納を工夫することで、しないこともできます。こうやって家事も仕事のように効率を考え、可能な箇所、しやすいところから工夫・改善をしていくのです。
1日30分、相当数の手間を、当たり前にこなしていませんか
「全自動洗濯機の乾燥機能まで使い、干すことをやめる」というと、一言ですが、この機能を使うと、「洗った後取り出す・運ぶ・干す・取り込む・運ぶ」という一連の工程が無くなります。さらに1作業1アクションと考えた場合、単純にタオル+衣類+下着類+靴下(1足で2つ)×家族の人数分のアクションが必要です。保育所に通っていれば、お着替え衣類にエプロンに口ふきタオルが一人3枚なんてことも普通ですよね。一つずつ手に取る、洗濯ばさみをつかみ、広げ、はさみ、またかがんで…。さらに言うなら、天日干しを毎日されている場合は「扉を開ける・靴を履く・外へ出る・竿を拭く」など、さらにアクションは増えます。これらの作業に「1日30分かかっている」ならその分丸ごと時短になりますね。朝から20分、帰宅時取り込み10分。この時間、今までとは別のことができるゆとりの影響は、とても大きいでしょう。
妥協できるポイントを、改善目線で探す
自動乾燥機を使うことを、光熱費がかかる、衣類が傷む、お日さまにあてて乾かしたい、などから好ましく思わず利用を避ける方もいますよね。もちろん、各自・各ご家庭のこだわりもあるのですが、ココこそポイント。毎回は気が引けるという方は「平日だけ」「残業した翌日」や「週半ばの水曜日だけ」など、自分が良いと思える範囲で利用してみることです。自分の妥協ポイントを見つけることができれば大きな家事時短+ゆとり時間を生み出すことにつながります。
ソファの上に洗濯ものが山積みーどこのご家庭にもあるあるストレス
もう一つ作業のかかる工程の事例として、洗濯物を「畳む・しまう」を見ていきましょう。先ほどの洗濯物の点数分だけ、取り込んだ後たたまないといけないですよね。さらに今度はタオル1枚でも「手に取る・広げる、2つ折り、さらに2つ折り…」と4~5アクション近くかかります。これを全部たたみきり、各部屋まで持参し、引き出しに入れていくには、こちらも相当数の工程が発生します。
優先順位をつけて、家事をしているだけ
もし、畳んでしまう作業をする理由が「部屋をリセットするため」なら、食事やお風呂、明日の準備など、優先順位が高い作業から行うのは当然のこと。決して、家事の手際が悪いわけでも、めんどくさがりな性格が原因ではなく、優先順位が低く手間のかかる作業を後にしているだけなので、散らかって当然です。ただし、この後まわしになっている一時置きの状態は、リビングのソファなど目につきやすい場所が多く、どうしてもストレスの原因になるのです。
畳むという工程を省くための工夫
では具体的に、こんな工夫はいかがでしょうか。まず、家族の数+1つのかごを準備します。そして乾いた洗濯物を、洗濯ばさみから外し衣類をつかんだその手で、人別に分けてかごへ入れていきます。全部入れ終わったら完了。家族には、かごの衣類から優先的に使ってもらい、週末に1回、かごの中身を全部出してタンスにしまうという流れです。
うまくまわれば、二度と衣類が散らからなくなる
これで畳むしまうのアクションが大幅に減るため、ソファの上に山積みに散らかることもなくなります。しかも、かごの中の衣類は「昨日着用していた」という使用頻度が高い衣類なので、使う側も今度はタンスへ行かなくても「かごを見ればある」ため、協力も得やすい。ちなみに+1のかごには、誰のものとも分けられないもの(主にタオル類)を入れるとよいでしょう。
もちろん抵抗がある方は、タオルだけは畳んで風呂上がりの場所へ運ぶ、どうしても夫が嫌がるというなら、自分と子どもの分だけ、かご運用にする等もあり。こちらも妥協点を見つけていきましょう。
1週間で省ける工数は数百/キープできる秘訣はラクだから
この工夫で1週間の洗濯物にかかる工程を数百レベルで削減する効果があります。「この仕組みを導入してから、あれ以来1度も、洗った後の乾いた洗濯物がリビングやソファーを占拠している状態になったことがありません」など、うれしい感想をいただくのですが、理由は簡単。「たたんでしまうよりも、ずっとカンタンでラクだから」それだけです。
家事改善のハードルは「こうすべき」という思い込み
家事改善で1番問題になるのは「こうしなくてはならない」という思い込みです。洗濯は朝する、服の濃さで洗い分ける、汚れ度合いや種類で分ける、靴下の干し方は上下決まりがある、洗濯物は日光で乾かす…絶対ではないルールに、無意識にとらわれていませんか。
家事も柔軟に手順や方法を変化させていく
共働き家庭が増加し、家事に使う家電も圧倒的に進化しています。それに合わせて夜に洗濯する方も増えていますし、部屋干しも一般的になりました。ボタン一つで調理できるなどどんどん家事が省力化できるよう便利になってきています。なのに、今までの家事のやり方をそのまま踏襲していては、何も改善につながりません。そもそも、家事に絶対はなく、家族の人数・年齢・こだわり、おのおのの優先順位など、様々な要素によって「1番効率よく・満足度の高い方法」は家庭によって違います。柔軟に、状況の変化に合わせて進化させていきましょう。
いい加減が、良い加減
公務員として働いている方は、共働きの家庭も多いと思います。仕事も家事も育児も完璧にする方が無理があるのです。「家族のために家事をする、それが私の役目」「手抜きは悪」「毎日頑張って当然」こんな風にお考えかもしれません。一生懸命は素晴らしいことですが、そのせいで倒れた人をたくさん見てきたので、とても心配です。頑張るということは「頑なに張る(かたくなにはる)」ということ。そこに余裕はなく、突然プツリと切れてしまう危険性もはらんでいます。
そんなかたに知ってほしいのが「いい加減で良い加減」という考え方です。あなたとご家族にとっての「ちょうどいい加減」が良い加減。「頑張らなくても、同じことができるなんてすごい」と、工夫を重ねた自分をほめながら、わが家にとっての最善の家事の方法を探っていきましょう。
プロフィール
株式会社オフィスミカサ 代表取締役
長野 ゆか(ながの・ゆか)
大阪府生まれ、大阪府内中核市にて情報システム部門所属、15年勤続を経て独立。
現在は、文書(書類・データ)ファイリングを中心に、オフィスの環境改善・効率化などを指導。1か月で5.2トンの削減の実施。各社企業理念に沿った環境改善→業務改善(モノからコトへ)を促し、全体の業務効率アップを行う。
研修講師としては、オフィス向け(環境改善、接遇、ビジネスメール)から、家庭向け(ホームファイリング®・子育て・シニア片づけ講座)まで様々なテーマで登壇。大手企業、大学、弁護士会、自治体まで多数。述べ受講生は5,000名以上。プライベートでは、小学1年生から高校生までの3児の母。
保有資格
一般社団法人日本経営協会 情報資産管理指導者
一般社団法人ハウスキーピング協会認定 整理収納アドバイザー1・2・3級講師(全国24名) 他
著書
『実践! オフィスの効率化ファイリング』(DOBOOKS / 同文舘出版)