ジチタイワークス

新潟県新潟市

里親等委託率60.4%で全国NO.1に!新潟市で行っている取り組みの秘訣とは?

虐待や経済的事情などにより、親元で暮らせない子どもを家庭に迎え入れて育てる里親制度。里親やファミリーホームで養育されている人数の割合を示すのが、里親等委託率だ。令和元年度の全国平均が21.5%の中、全国トップの新潟市は群を抜く60.4%。一方で最下位の自治体は約12%と、自治体間での格差が大きい状況だ。

なぜ同市では高い委託率を実現できているのか。理由を、同市児童相談所の本田さんに聞いた。

※下記はジチタイワークスVol.18(2022年3月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。

年間でわずか8組だった里親登録が、説明会を増やした結果、倍近くの15組に。

60.4%と高い里親等委託率を誇る同市。しかし、平成25年時点では33.3%、里親の新規登録は年間8組にとどまっていたという。「以前から新潟県は乳児院および児童養護施設が少なく、250人ほどしか入所できません。家庭養護が難しい場合は里親さんにお願いすることを第一選択肢としていましたが、なり手が少なくて困っている状況でした」と本田さんは当時を振り返る。そこで取り組んだのが、里親制度説明会を増やすことだった。「実は、説明会を始めた当時は、年に2回しか開催していなかったんです。もっと制度のことを知っていただくため、2カ月に1回に増やしました」。すると年間8組だった新規登録が、2年後には15組に増えたという。

さらに注目したのが、相談者の大半が法的な親子関係を結ぶ特別養子縁組を希望すること。「18歳ないし20歳の委託解除後も、子どもたちにとって里親さんは困ったときに頼れる存在です。いつでも帰れる場所としてつながっているケースも多いですよ」と話して里親制度の趣旨を理解してもらい、養子縁組里親だけでなく養育里親にも併せて登録を勧めている。

相談から委託、その後のサポートまで、専任職員による一貫した支援で安心感を。

里親委託を増やすために、何より大きく変えたのが体制だ。従来はケースワーカーが里親担当を兼ねていたが、平成26年には里親専任の正職員を配置し、人員も増加。さらに令和3年度からは、里親養育支援児童福祉司を配置した。「相談から登録、委託、そして委託後のサポートまで、一連の過程全てに専任職員が関わる形にしました。専任の職員が寄り添うことで里親さんも安心してくださるし、手厚い支援ができます」と手応えを感じているという。

専任にしたことで可能になったのが、継続的で密なコミュニケーションだ。相談に来た里親希望者に、なぜ里親になりたいのかという思いや、受け入れたい子どもの年齢層、性別などを細かく確認。登録後も定期的にコミュニケーションを取り、必要に応じて家庭訪問も行う。「現在約100世帯の登録がありますが、それぞれのご家庭の雰囲気や思い、希望の把握に努めています。そのため委託をお願いしたいお子さんがいるときも、どの里親さんが合っているか素早くマッチングにつなげることができています」。

平成28年には児童福祉法が改正され、家庭で暮らせない場合は施設ではなく、里親養育が望ましいという方針が打ち出された。「改正以前から取り組んでいたことが、実を結んだと自負しています」。

“寄り添う姿勢”を大切にし、里親の満足度を高める。

さらに里親委託を増やすため、同市が活用しているのが里親対象のアンケートだ。満足度調査の結果を見ると、研修以外の項目に限れば5段階評価で4.4の高評価。その一方、研修は4を切っている結果を受け、フォローアップ研修を始めることにしたという。「里親さんの満足度を高めることが、ひいては里親登録の増加につながると考えています」。

改善すべき点は改善しながら、これからも守っていきたいのが、寄り添う姿勢だという。「里親さんは一生懸命な方が多く、肩に力が入ってしまうことが少なくありません。専任職員だからこそできる親身なサポートを行うことで、里親さんも子どもたちも、双方が幸せになるマッチングを実現していきたいです」と意欲を見せる本田さん。

同市の里親からは「大変さを共有してもらえて力になる」「成長を一緒に見守ってもらえて頼りになる」といった感謝の声が届いているという。徹底した伴走型支援によって、ますます幸せなつながりが増えていくことだろう。

新潟市 児童相談所
里親養育支援 児童福祉司
本田 直己さん(ほんだ なおき)

制度説明会や体験発表会などを、特別なこととは思いません。早くからコツコツ取り組み、そして寄り添う気持ちで活動して積み上げてきたことが、成果につながっていると感じます。

課題解決のヒントとアイデア

1.少人数参加でも説明会&相談会を毎月開催

登録数を増やすには、まず里親制度を知ってもらうことが必要不可欠だ。同市では現在、制度説明会や個別相談会を毎月開催している。たとえ1~2人の参加であったとしても、里親登録までこぎつけられたら、大きな成果に。

2.登録後も小まめに受け入れ希望などを確認

年齢層の低い子どもを希望する里親は多い。ただし時間が経つと気持ちが変わり、受け入れ可能な年齢層が広がるケースもある。同市では年に1回の聞き取り調査を実施。最新の状況を知ることで、マッチングの可能性を広げている。

3.チームワークで親子の関係づくりをサポート

里親は里親自身の、子どもは子ども自身の悩みを抱えているケースも少なくない。同市では、委託時に家庭の状況をケースワーカーに細かく伝え、その後も連携をとりながら一緒にサポート。里親と子どもの関係づくりを支えている。

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