ジチタイワークス

青森県東通村

健康づくりの第一歩を後押しする、地域を挙げた村民チャレンジ!

厚生労働省の調査によると、青森県民の平均寿命は男女ともに全国最下位で“短命県”といわれている。その背景には、長年続いてきた食生活や飲酒・喫煙を好む習慣があり、住民の意識と行動を変えることはなかなか難しい。東通村ではそんな現状から脱すべく、コロナ禍の令和2年度に「コロナに負けない!東通村 村民健康チャレンジ」と題した事業を実施。村民の約5%にのぼる人たちが参加した、取り組みの舞台裏を担当者に聞いた。

※下記はジチタイワークスVol.18(2022年3月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。

コロナに負けない村づくりに向け自粛期間に生活習慣を見直す。

厚生労働省・平成27年調査「都道府県平均寿命ランキング」によると、青森県は男性78.67歳、女性85.93歳でともに最下位。「青森県では、飲酒と喫煙率の高さ、幼少期からの肥満、塩辛いものを好む食生活、運動不足が原因で、がん・脳血管疾患・腎不全などによる死亡率や要介護認定率が高い実情があります。東通村も短命村で、健康寿命の延伸が喫緊の課題でした」と健康福祉課の三國さんは説明する。

そこで令和元年度から地域医療振興協会ヘルスプロモーション研究センターと共同で「まるごと元気!東通村」事業を開始。体組成計や血圧測定などの健康チェックとともに、村の良さを再発見する企画だが、新型コロナウイルス感染症の影響で中断。一方で、コロナ禍でストレスやうつ、運動不足が問題視されることから、令和2年度に「コロナに負けない東通村」として新たにスタートした。

クイズの解答と行動宣言を登録し1カ月間実行した結果を報告。

健康チャレンジのねらいは、健康づくりに関心の薄い村民や村内事業所に勤務する人たちに関心を持たせること。自分で目標を決め、1カ月間チャレンジした結果を報告してもらう。まずは村内の全世帯と事業者などに、企画内容を知らせるポスターと、登録シート・記録シートのハガキを配布したという。

参加には2つのステップがある。ステップ1は、ポスターを参考に、心身の健康づくりに関する「コロナ撃退クイズ」に答え、自分の健康につながる「行動宣言」を決める。加えて、村の良いところと、それを残すためにできたらいいと思うことを記入した登録シートを、令和2年8月末までに役場に持参または投かんする。

ステップ2では、行動宣言の内容に9月の1カ月間チャレンジし、その結果を書いた記録シートを役場に提出する。記録シートのカレンダーに、宣言を実行できた日は〇、できなかった日は×を書く。やってみた気づきや感想などを自由に書く欄も設けた。

シートを両方提出した全員に参加賞として歯ブラシを送付。さらに、抽選で10人に村の特産品詰め合わせをプレゼントしたという。

クイズに答え、手書きのシートを投かんして参加

行動宣言は自由に決めることができる。「1日1回以上、果物・乳製品を食べる」など、簡単なものでも構わない。

開催2回で人口の5%が参加、令和3年度は減塩の企画を実施。

9月のチャレンジには319人が参加登録し、224人から記録シートの返送があった。1カ月間、毎日目標を達成できた人が75人(33%)、20日以上達成できた人が168人(75%)と好成績。好評を受けて令和3年2月にも同様の取り組みを行ったところ、297人の参加登録があったという。

「人口6,000人ほどの村で2回とも5%の方々に参加してもらい、参加のハードルを下げた効果が見られてうれしく思っています。ほかの人に宣言することでモチベーションが保てることや、参加しやすさ、プレゼントがポイントだったと考えています。ハガキの感想欄に、このチャレンジを機にこれからも健康のための行動を続けていくと書いている人も多くいました。私自身、この事業の一環で血圧が高いことが判明し、薬を飲み始めるきっかけにもなりました」。

令和3年度には厚生労働省の減塩プロジェクトに参加。住民健診時に尿中のナトリウム・カリウム比を測り、減塩などの食事指導をして1カ月後に再度測定することで、効果を数値化する。「せっかく芽生えた村民の健康意識を根づかせるために、これからも健康に関する取り組みを続けていきたい」と三國さん。村民健康チャレンジは、日本健康教育学会主催の「第29回日本健康教育学会学術大会」で、特別賞にあたる「わかっているけど実践しない相手を動かすで賞」に選ばれた。住民の関心事に着目した親しみやすい事業は、アプリなどの新たな開発をしなくても、どこの自治体でも取り組める好例といえるだろう。

東通村 健康福祉課
課長 三國 正人さん(みくに まさひと)

送られてきた登録シートと記録シートを読むと、村民の健康意識や関心事、村の良いと思うところなどがよく分かりました。貴重なデータとして活用していきたいです。

課題解決のヒント&アイデア

1.参加へのハードルを下げる自分なりの目標設定

一律に決められた運動や生活改善を目標とするのではなく、自分に合わせた目標を自由に決められるようにした。簡単なことでもできる目標から続けていく大切さを意識づけるとともに、誰でも参加しやすくする意図があった。

2.興味を持つきっかけになる特産品のプレゼントや参加賞

健康だけを打ち出しても、無関心層には響きにくい。幅広い人に興味を持ってもらうため、健康に関するクイズを取り入れた。さらに参加賞と1万円相当の特産品詰め合わせを用意し、村の特産品を知ってもらう機会にもなった。

3.低コストで導入しやすく高齢者も親しみやすい紙のツール

モバイルアプリなどのデジタルツールが主流になる中、低コストで導入しやすいポスターやハガキを使用。参加する際もダウンロードなどの手間がなく、デジタルになじみの薄い高齢者や子どもでも簡単に取り組める。

宣言内容を分類すると…

取り掛かりやすい目標から始める

【例】・毎日歯磨きをする
  ・朝の体操をする
  ・手洗い・消毒の徹底
  ・週に2日は休肝日をつくる
  ・東通村産の野菜を取り入れる

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