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【セミナーレポート】地方創生×テレワーク ~魅力ある“働く環境の創出”と“新しいひとの流れ”を目指して~

出口の見えないコロナ禍の影響で、「分散型社会」「地方分散」という考え方が広がり、「テレワーク」「ワーケーション」などの働き方が、全国的に普及しています。令和元年には内閣府による「地方創生テレワーク交付金」の取り扱いも始まり、「どこでも働ける」という新しい社会の動きに目を向ける自治体も増えているようです。

そこで今回のセミナーでは、地方でテレワーク環境を整備する際に必要な要素や、遊休スペースの活用を機に“人の流れを作るメカニズムづくり”に取り組む自治体の先進的な事例や、実体験に基づく導入のポイントなどについて解説していただきました。

概要

◼タイトル:地方創生×テレワーク
~魅力ある“働く環境の創出”と“新しいひとの流れ”を目指して~
◼実施日:1月14日(金)
◼参加対象:自治体職員
◼参加者数:40人
◼プログラム
(Program1)
地方創生×テレワークを実現するまでの道しるべ
(Program2)
ワーケーション・テレワークを活用した地域活性に向けて
~ワーケーション、テレワークは誰のために?利用者と事業者のホンネ~
(Program3)
年間136日ワーケーションしてわかった地域で大切なもの


地方創生×テレワークを実現するまでの道しるべ

<講師>

東日本電信電話株式会社(NTT東日本)
ビジネスイノベーション本部
地方創生推進部 山内 康生氏

プロフィール

東日本電信電話株式会社入社後、自治体へのICTコンサルティング営業や監督官庁である総務省対応、政府との総合窓口業務に携わる。2021年からビジネスイノベーション本部・地方創生推進部にて、遊休スペース等を活用したテレワークの推進や、地方の関係人口創出に向けた取り組み支援を行う。


遊休スペースの利活用や、テレワーク及びワーケーション受け入れの観点から、実際の環境整備をはじめ関係人口の創出に向けた取り組みを、NTTグループ各社と連携して進めた自治体の事例とともに紹介する。

加速する、企業の「脱・首都圏」

いきなりですが、クイズです。「190」という数字が、何を表しているか判りますか? 実はこの数字は、通常事業区分における地方創生テレワーク交付金が採択された自治体の数です。テレワークを通じた人の流れづくりに、「すでに190自治体が取り組んでいる」と考えるか、「まだ190自治体しかやっていない」と考えるかは、それぞれの自治体の状況によって違うと思います。なお、テレワーク交付金の制度は来年度も継続される見込みとのことです。
さて、帝国データバンクの調査によると、2021年は本社機能を首都圏から転出させる企業の数が、首都圏への転入数を11年ぶりに上回り、半年間だけでも初の150社超となるようです。企業の「脱・首都圏」傾向が、明らかに加速しているということです。本社を動かさないまでも、Yahoo JAPANや全日空などの大手企業が、社員の通勤手当上限を撤廃し、どこに住んでも良いことにしたり、テレワーク時の通信費を別途支給したりする動きも起こっています。

自治体による先進的な取り組み事例

テレワークスペースの先行事例をご紹介する前にポイントをご紹介します。まず、ターゲット(個人若しくは法人)をイメージしつつ、コンセプトを設計します。ここは大きく分けて「スペース独自の魅力」と「地域性を活かした魅力」としています。合わせて、事業を担う事業主体を決め、これには自治体の協議会やコンソーシアムであったり、都市再生推進法人であったりと多種多様な組織があり、別途ご紹介します。

一つ目の新潟県上越市の場合、若年世代の県外流出などを背景に、スタートアップ企業等の誘致による最先端拠点整備を進めるため、産学官及び金融のコンソーシアムが事業主体となり、ローカル5G電波を用いてビジネス創出・サービス開発ができるラボ「JM-DAWN」を整備しました。ローカル5Gの実証の場として、様々な企業が取り組みを進めています。

また、栃木県日光市の場合、新しい働き方によって生まれる人流やニーズを取り込み、地域産業の盛り上げを図るため、自治体を中心とした「新しい働き方推進協議会」を立ち上げ、地域性を活かした魅力を発信できるワーケーション環境の整備を推進中です。日光東照宮に代表される歴史ある街と、新しい働き方との融合を目指しています。

まちづくり会社が主体となった地域の場づくりの事例としては、福島県須賀川市の「シェアスペースSTEPS」が挙げられます。これは、都市再生推進法人が事業主体となり、参画する企業がそれぞれの役割を分担した上で、中心市街地の魅力的な場づくり、県内・外からの人の呼び込み、空き家の活用などを実現しようと取り組んでいます。また、ワークスペース構築にとどまらず、市街地の活性化に繋げるため、人流分析を実施しながら取組み領域を拡大する計画です。

千葉県佐倉市にあるショッピングモールでは、これまでの自治体等の取り組みとは別に、純粋な民間独自の事業として、モール内の空きテナントスペースをコワーキングスペース化し、地域活性化の新たな拠点として生まれ変わらせようという取り組みを進めています。ショッピングモール内という特性を活かしつつ、お子さんが小さいなどの理由で自宅でのテレワークが行いにくい地元住民の受け皿を作ろうというもので、ショッピングセンター協同組合が主体となって事業化を進めています。

明確なコンセプトを定めることが重要

以上のように、テレワークスペース活用は、地域の課題や要望を解決する“きっかけづくり”に成り得るケースがあります。

ただし、単に「場所が空いているからテレワークスペースを作る」というだけでは問題解決は困難です。観光、文化、ものづくりなどの地域資源を参考にしつつ、どのように活用してもらうかというコンセプトを定め、そのためのターゲットと、計画推進に適した事業主体を決めることが大切です。

NTT東日本は内装整備に関することやICT環境構築に関することはもちろんですが、コンセプトなどその他さまざまな面からのノウハウを持っています。よろしければ、検討段階からお気軽にご相談下さい。

 


 

"ワーケーション・テレワークを活用した地域活性に向けて"
~ワーケーション・テレワークは誰のために?利用者と事業者のホンネ~

 

<講師>

株式会社JTB総合研究所
地域戦略部長・主席研究員 
河野 まゆ子氏

プロフィール

東京大学文学部美術史学専攻卒。旅行会社勤務後、筑波大学大学院修士課程芸術研究科世界遺産専攻に入学。2006年に課程修了し、現職。文化財活用や観光危機管理体制強化等のテーマを通じ、地域や施設の「底力」の向上を重視したプランニング・戦略策定を行うほか、コンテンツ開発やプロモーションに関する具体施策の推進を手がける。


「テレワーク」「ワーケーション」の定義や種類と、地域・企業・行政それぞれから見たメリット、そして、実際に推進するために必要なポイントなどを、地域資源を活用した観光振興に係る戦略づくりを支援する地域密着型コンサルタントとしての視点から検証する。

リモートワークにおける「ワーク」と「休暇」の関係性

私どもJTB総合研究所は、観光や人の交流をメインとしたコンサルティングを行っていますが、ここ数年、ワーケーションあるいはテレワーク施設の整備に関わる案件が非常に増えています。ワーケーションやテレワークを行う利用者側のニーズ、自治体の皆さんが誘致をしたいニーズ、それぞれ何をメリットとして感じれば、働く人たちが地方に行くのかということを整理したいと思います。

ワーケーションにはいろんなタイプがあります。多いのは、レジャーに軸足があり、レジャー中にちょっと仕事もしますよ…というタイプです。それ以外にも勤務者個人が主体になるものには「業務型」、「地域課題解決型」、企業の判断で行われる「合宿型」、「サテライトオフィス型」などがあります。

コロナ禍の影響で、ホテルでの宴会や大会議室の利用、婚礼や二次会の利用などが激減しました。バンケットを有している宿泊施設では、空いている会議室を活用し、ワーケーションやワークショップ、体験メニューなどを提供できるスペースにリニューアルするケースもありました。

その他、自治体が保有する遊休施設を活用する例もあります。自治体保有施設のうち歴史的建造物については、施設の維持保存や消防法等の問題から近代的な機能を施した増改築が難しく、レストランや宿泊施設への転用が困難であることから、コワーキングスペースとして活用する例も少なくありません。京都府舞鶴市にある「赤レンガ倉庫群」は歴史的建造物をうまく活用した好例で、主に地元の方をターゲットとしています。
どういう場所を、どのように使ってもらうかを戦略的に検討することが重要なのです。

「ワーケーション」と「移住」は別物と考えるべき

自治体からワーケーションの相談を受け、戦略策定のお手伝いをすることも多いのですが、その際に必ず言われるのが「ワーケーションをきっかけに移住してもらいたい」ということです。しかし、ワーケーション利用する際の「地域に対するニーズ」と、「そこに住みたいニーズ」は、必ずしもイコールではありません。生活の軸足を動かす場合に消費者が気になるポイントと、日常から離れてリフレッシュするレジャーの合間に仕事をしたい時に必要とするポイントは根本的に異なるため、利用者が求める条件や設備、利用者に情報を届ける媒体、提供すべき情報そのものも変わってきます。

テレワークやワーケーションを実施する企業は徐々に増えていますが、新型コロナの感染拡大抑止策として始まった経緯があるため、「自宅のみ許可する」という企業がいまだに多く、ワーケーションまで導入できている企業は2020年の夏時点で約8%、2021年になって10%少々と、そう多くはないのが実情です。ワーケーションを推進しにくい企業の理由としては、主に労務管理が困難という点です。

企業がワーケーションを導入するにあたっては、各種インフラ整備、自由度の高い働き方を尊重する職場の風土作りが重要。労災の適用範囲、通勤要件や旅費規程、リモートワーク中の勤怠管理など、労務管理等のマネジメントの仕組みや規程の整備が求められます。そのコストに見合うだけの「ワーケーションを導入することによる企業にとっての経営的メリット」があることが不可欠になるのです。

ワーケーションの「タイプ」が異なれば誘致戦略も異なる

地方におけるリモートワークに対する利用者ニーズは、年代や、働くことに対してどのような価値観を持っているかという点で大きく変わります。下記の表は、これまでの各種調査を踏まえ、労働者の目線から、地方部、旅行先等でのワーケーションに対するニーズを整理したものです。

20~30歳代の単身者のフットワークが最も軽く、既婚で子供が小学生以下、特に“田舎”を持たない家庭では、子供の情操教育の観点から興味を示すという結果も出ています。一方、子供が小学校高学年以上の場合や、業務上必要な人とコミュニケーションをしっかり取って、日常的空間と同程度の質で仕事をしたいと思う人ほど、生活圏外でのリモートワークやワーケーションに対し消極的だという傾向があります。フリーランスやIT系、クリエイティブ産業に就いている人に関しては、世代を問わず比較的積極的なニーズを持っています。

企業側のニーズを見てみると、大企業ほどリモートワークを実施している比率が高く、業種については(1)情報・通信、(2)IT関連、(3)電気機器などが多く、インフラ整備や業務推進との相性が良い、支店や工場が広域分散しているなどの理由があります。前述した通り、ワーケーションには複数のタイプがあり、「合宿型」は宿泊施設にとって大きな収入になるものの、地域との交流は少なく関係人口にはつながりにくいです。「地域課題解決型」は地域関係者との交流を通じ課題解決策を共に考える魅力はあるものの、その人的交流や知見の交換をどのようにビジネス化し、地域と参画してくれた企業の双方にメリットを生み出すかのシナリオを作ることが重要です。「サテライトオフィス型」については、企業が自社の経営ミッションに照らして、その土地にオフィスを置く意味・理由を作ることが不可欠となり、勤務者の生活サポートをどうするかも重要です。

以上のように、ワーケーションのタイプが異なれば、誘致の手法や媒体、施設に求められるスペック、受入体制企業への訴求ポイントも全て変わってきます。それを明確にすることで初めてターゲットを絞ることができ、推進体制の検討に移ることができます。これを行政のみで推進して成功するケースは非常に少なく、地域内外に協働してくれる事業者がどれだけいるか、協働する事業者にどれだけのメリットがあるかがきちんとビジネスモデルとして成立することが継続の鍵となります。行政と、ステイクホルダーとなる様々な事業者がチームとなって、意見を出し合いながらシナリオを構築することが重要です。

年間136日ワーケーションしてわかった地域で大切なもの

<講師>

ネクストモード株式会社
代表取締役社長 里見 宗律氏

プロフィール

東京工業大学大学院卒業。東日本電信電話株式会社入社後、新サービス開発や研究開発に携わる。2019年よりビジネス開発本部クラウドサービス担当の部長を務めた後、2020年7月から現職。ワーケーション先でもセキュアに働けるように、場所に捕らわれない「クラウドであたらしい働き方」を整備・提供している。


20カ所以上の場所で実際にワーケーションをやってみて感じた地域の課題と、旅をしながら自由に楽しく働くワーケーションの魅力について、複数カ所でのワーケーションを実践した立場から紹介する。

ワーケーションで変わった3つの価値観

弊社は、「場所にとらわれない新しい働き方」を整備するクラウド専業のSIer(システムインテグレーター)です。コンサル構築から運用まで、AWS(Amazonウェブサービス)で柔軟な監視・運用を行い、自社で活用中のクラウドツールを活用した働き方改革を提案しています。

会社設立後、まずは私自身がどこで働くのが一番快適かを試すため、ワーケーションに取り組み始めました。今日も、北海道の鶴居村に来ています。初年度はこの地が気に入り、何度も訪れています。2年目はさらに色々な地域に行ってみようと、格安航空券とゲストハウスを使い、年間200万円ほどワーケーションに費やしました。これだけ移動が多いと東京の住まいが無駄に感じ、昨年夏、千葉県の成田空港寄りのところに引っ越しました。また、ワーケーションが生活の一部になり、徐々にミニマリストになって軽くてかさばらないものを買うようになりました。

昨年7月には会社設立1周年ということで、全社員でのワーケーションを実施。社員にも様々な場所で楽しく働いてもらおうと思い、2人以上でワーケーションをする場合、費用は会社負担という決まりを作っています。

会社設立前までは、オフィスで働くことが当たり前で、残業も結構あったため、本社ビルの近くに住んでいました。資料はもちろん印刷して説明を行い、納品書や請求書へは印鑑を押し、お客様の会社を訪問し、セミナーでの登壇は現地で行うのが当然でした。しかしワークケーションをするようになり、私の働き方も生活も大きく変わりました。

まず、「出会いの場所」。鶴居村でのことですが、ホテルにこもって仕事するだけではワーケーションの意味がありませんから、この村で私設図書館を運営する男性と出会い、地元の方々と関わることができました。
このコミュニティに関わることができなければ、一般的な観光客に過ぎなかったと思います。また、ここで知り合った地元の方に、弊社に入社してもらうことができました。

次に「地域の発見」。この地域に住む人たちにとっては当たり前のことでも、ワーケーションで滞在する訪問者から見ると、かけがえのないものがあります。例えば、メジャーな登山情報アプリである「YAMAP」にも登録されていないような里山が、鶴居村にはたくさんあります。高知県日高村の場合は、地域の魅力を可視化した名刺大のカードを作り、地域の魅力を発信する取り組みを進めていました。

ワーケーションを支えるカルチャーとセキュリティ

当社は全員がリモートワークで働いているからこそ、離れていても信頼できる関係を大切にしています。新入社員が入るたびに下記の内容を、私が直接説明しています。

特に大事だと思っているのは、上記3つ。「オープンであること」とは、従来型の組織からオープンな組織に変わらないと、リモートワークは難しいということです。技術ノウハウを公表して社会に還元することも、オープンであることだと言えます。

2番目の「楽しく働くこと」は、インターネットが接続可能であればどこで働いても構わない、自主的に業務に取り組むことで、これまで以上のパフォーマンスを発揮しよう…ということ。そして「フラットな人間関係」は、「うちには偉い人はいません」ということです。これを強調しておかないと、チャットやWEB会議での交流時、気づかないうちに相手を力でねじ伏せてしまったり、ホウ・レン・ソウをしつこく求めたりすることが発生しがちなのです。

社員には、ワーケーションをするための準備として、入社後3万円分のリモートワーク用物品を選んでもらっています。加えて年に1回、追加備品を選んでもらうため、今年は1人5万円分を準備しました。ワーケーションを支える社内システムは、下記の図の通り全てクラウドで構築しています。

SaaSを利用し、オフィスを持たない新しい働き方を実践し、このサービスの仕組みをお客様にも販売しています。印刷・捺印・郵送のために出社する従来型の働き方を止めるため、電子署名システムを導入する、非効率なメールをやめてチームコミュニケーションツールを導入するなど、業務効率化をどんどん進め、より働きやすい環境を提供しています。

ワーケーションを支えるセキュリティとして、ゼロトラスト・ネットワークと呼ぶ最新のセキュリティを備え、インターネット経由でもセキュアに働ける環境を用意しています。ワーケーションを通じて「また行きたい」と思う地域には、開かれたコミュニティがあります。単なる観光ではなく、未知の出会いがたくさんあることが、ワーケーションの魅力だと言えるでしょう。

 

お問い合わせ

ジチタイワークス セミナー運営事務局

TEL:092-716-1480
E-mail:seminar@jichitai.works

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