防災行政無線は地域住民を守る命綱だが、コストなどの問題で十分に整備できていない自治体も多い。しかし限られた予算で防災力を強化できている地域もある。
そんな事例を持つ北海道足寄町の総務課企画財政室・中鉢 武志さんに話を聞いた。
※下記はジチタイワークス防災・危機管理号Vol.2(2019年10月発刊)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[提供]株式会社CSR
目前に迫った更新期限と、担当部署の懊悩
平成28(2016)年、北海道を相次いで台風や低気圧が襲った際、足寄町も大きな被害を受けた。その際に、暴風雨の中では屋外の防災行政無線が聞きづらいという問題が浮上し、それは町内全域約3,500戸への戸別受信機の整備を求める声へとつながった。同町で当時稼動していた防災行政無線は、電波法の改正により令和4(2022)年までに再整備する必要があったため、もとより見直す予定があった。限られた時間の中で検討を重ねたが、コストの問題が立ちはだかっていた。
当時の足寄町では同報系60MHz、移動系400MHzを併用しており、全てを再整備すると多大な費用がかかってしまう。しかし防災上の妥協は避けたい。「何を犠牲にするか」という問題を抱えつつ、先進地視察なども実施し、選択肢を絞っていく中で出会ったのが、“同報系にも利用可能な移動系”の防災無線システムだった。
全体最適を実現する260MHz
この新しい防災無線システムは移動用無線として使われる260MHzで同報利用も可能とするものだ。これまで260MHzは移動用としては国内導入実績があるものの同報利用としての導入実績はない。こうしたことから、「検討には慎重に慎重を重ねた」と中鉢さんは振り返る。「初めて知る会社なので、資料を集めました。調査、検討をしつつ、ここなら大丈夫だと上司や町長に提案したところ、非常に良い反応を得られたのです」。
防災行政無線は通常15〜20年は使い続ける。従って導入・維持の両コストが重要になるのだが、それまで検討していた方式に比べ、トータルコストが大幅に抑えられるとの試算が出た。残された課題は「国内初導入」というリスクだが、システムに関する説明を繰り返し受け、現場から首長までの意見が一致。全国自治体で初の260MHz無線の同報利用導入に踏み切った。
導入後の効果と、今後の展望
足寄町では、平成31(2019)年2月から戸別受信機の配布と試験運用を開始、同年4月から本格稼動を始めた。実際に放送をしてみると住民からも好評で、「放送が良く聞こえるようになった」という声があがったという。「当初は『国内初』ということへの不安がありましたが、いざ稼動してみるとすこぶる順調。メンテナンスも素早く対応してもらえるので円滑に運用できています」。
導入がスムーズに進んだ現在、今後は戸別受信機の普及率を上げ、SNSや町のホームページとの連携も強化し、より災害に強いまちづくりを目指すという。中鉢さんは「予算などの問題で移動系と同報系の両方を導入できない自治体にはマッチしたサービス。現状がどんな状態であってもおすすめできます」と語る。他自治体でもこのシステムの導入が進めば、現場からのフィードバックが重ねられ、より良い防災行政無線が作られていくことだろう。
「この取り組みが全国に広まれば」と話す足寄町の中鉢さん。
限られた予算でも妥協しない!廉価で導入できる多機能防災無線
国の制度改正を受けて開発された「260MHz移動系防災無線システム(同報利用)」。整備には消防庁の財政措置(緊急防災・減災事業債)が利用可能。導入コスト面などに問題を抱える自治体にこそ、新たな選択肢として視野に入れておいてほしい新サービスだ。
260MHz移動系防災無線の同報利用における特長と優位性
■トータルコストの比較(イメージ)
260MHz移動系防災無線システム(同報利用)の最大の特長は「コストの安さ」。20年の運用で試算した際のコスト比較(上図)でみても非常に廉価で、更に60・280MHzの同報系無線は別途移動系無線の整備が必要であることを鑑みると、同時整備※2ができる260MHzのメリットは大きい。
※2:同時整備が可能だが、移動無線/同報無線を同時に使用することはできない。優先制御により①J-ALERT、②自治体による緊急放送、③移動無線の順で回線を利用する。
260MHz(同報利用)導入のメリット
1.自治体のコストを大幅に低減!
従来の同報系防災無線と比較して、大幅に廉価なシステム構築が可能。維持コストも電波利用料と点検費のみ。
2.移動系・同報系を同時に整備!
同報系への拡張が可能な移動系防災無線なので、屋外拡声器・屋内受信機もカバー。※同報・移動の同時利用不可
3.充実の機能
機能は60MHzと同等で、肉声放送にも対応可能。また足寄町では、防災行政無線の放送内容(テキスト・音声)が確認できる防災ポータルサイト「防災ナビ」を整備。アプリではなくWebサイトのためガラケーでも利用可能だ。
こんな自治体におすすめ
●アナログ移動系防災無線のデジタル化を控えている
●近年多発する自然災害を受け同報系無線を検討しているが、移動系・同報系を別々に整備するコスト負担ができない
●もともと防災無線設備がなく、できるだけ安価に、かつ災害時には確実に使えるシステムを導入したい
●持込デモなどで、実際の使用感をみて検討したい
●全世帯に戸別受信機を整備したい
持込によるデモンストレーションを実施
実機によるデモを実施しております。移動無線電波を利用した同報(屋外拡声・戸別受信機)受信時の音声品質の確認や電波の飛びの確認が可能です。
お気軽にお問合せください。
お問い合わせ
サービス提供元企業:株式会社CSR 営業部
TEL:042-703-5100
住所:〒252-0303 神奈川県相模原市南区相模大野5-33-4