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【セミナーレポート】観光市場の動向を先読みする!ヤフー検索分析をフル活用する長崎市の挑戦。

コロナ禍で様変わりした国内の観光市場。GoToトラベルの実施、マイクロツーリズムへのシフトなど、変化の波の中で自治体は翻弄されています。

本セミナーでは、ビッグデータを活かして観光客の動向を読み、地域経済を活性化させようとする長崎市での取り組みを紹介しました。当日の様子をダイジェストでお伝えします。

概要

□タイトル:「Withコロナ時代の戦略的観光PR」~DMO NAGASAKIが実践した観光PRとデータ活用~
□実施日:2021年12月8日(水)
□参加対象:自治体職員
□開催形式:オンライン(Zoom)
□申込者数:124人

<講師>

左:小林 寿樹 氏
一般社団法人 長崎国際観光コンベンション協会(DMO NAGASAKI)
右:鶴田 貴明 氏
公益財団法人 ながさき地域政策研究所(シンクながさき)
 

西田 浩二 氏
ヤフー株式会社 データソリューリョン事業本部


「Withコロナ時代の戦略的観光PR」
~DMO NAGASAKIが実践した観光PRとデータ活用~

観光に関するデータの活用は以前から行われていたが、コロナ禍を経た今、新しく求められている情報は何なのか、そしてその分析結果をどう観光PRに活かすべきか。長崎市の観光促進に携わる2人と、データを提供するヤフーの担当者が意見を交わした。

長崎市の新・観光ビジョンと施策エビデンスの見直し

まずは「長崎国際観光コンベンション協会(以下DMO NAGASAKI)」の小林から、長崎市での取り組みについて説明します。

DMO NAGASAKIは、前身から数えて約70年、行政や地域の皆さんと連携しつつ観光まちづくりを推進している団体です。2018年には地域DMOに登録され、昨年度・本年度は、重点DMOに選定されています。DMO NAGASAKIの主な役割は、下記資料右欄の通り4つあります。

私たちDMO NAGASAKIは昨年、2025年までの5カ年の事業計画を策定しました。計画の基本軸は以下の3つです。
・量から質への転換
・ロングステイの受入環境づくり
・安心安全モデルの創出

具体的な戦略骨子は大きく2つあり、まずは選ばれる21世紀の交流都市を目指すためにブランディングを進めていくこと、そして選ばれ続け、稼ぐ力を引き出し、その上で持続可能な仕組みづくりを策定していくというものです。

こうしたビジョンのもと、長崎市における国内誘客は、令和3年度からDMO NAGASAKIが業務として担っており、まずは調査・分析のあり方をゼロから見直しました。これまで長崎市は、誘客に関する統計調査を年に1度実施しており、“団体か個人か”など大まかなことは分かるものの、DMO NAGASAKIが目指しているターゲット戦略やきめ細かいマーケティングには不十分だったため、本年度からは旅行消費行動に基づく「包括的リサーチ」を設計し、それを展開し始めました。そのリサーチの一つとして、ヤフーデータソリューションのサービスを導入しています。

ここからは、ながさき地域政策研究所(以下、シンクながさき)の鶴田さんに解説していただきます。

検索キーワードから見えてきた「旅マエ・旅ナカ・旅アト」の動向

シンクながさきの鶴田と申します。小林さんがお伝えした取り組みの中で、我々は全体データのリサーチや分析などを担当しています。

長崎市では、旅行者の行動を“旅マエ・旅ナカ・旅アト”に分け、その行動特性やニーズ、満足度などを把握するために様々な調査を実施していますが、その中でヤフーの「DS.INSIGHT」データも活用しています。ヤフーでは行動データと検索データを集めることが得意なので、その膨大なデータを以下のように活用しています。

□旅マエ:旅行に行こうと思い立った時点での国民の関心事。
□旅ナカ:旅行先で必要な情報は何なのかという点。
□旅アト:旅行後に何を検索しているかを分析。

また、こうしたデータと同時に、行動データを活用し、結果としてどれくらいの人が実際に長崎を訪れたのか、ということも分析しています。

これを毎月タイムリーな情報としてステークホルダーの皆さんにも示すため、マンスリーレポートとしてとりまとめリリースしています。その表紙が下記です

長崎市への来訪者数の動向は、2019年の8月から分析できます。つまり、コロナ前から長崎市にどれくらいの人が入ってきているか、という推移が分かるのです。今は様々なオープンデータもありますが、DS.INSIGHTではこれを毎月(毎日でも)タイムリーに出せます。また、ブロック別の推移は2019年の9月を基準値とした変化であらわしています。

人間でいうと血圧測定のようなもので、長崎の観光の基礎的な部分や、エリアごとのボリューム、伸び率・減少率などが分かります。プロモーションのエリア選定などでも一つの指標になるのです。

このデータをもとに、前々年度との比較も含めて、エリアごとの増減数を検証しています。例えばコロナ禍で注目されたマイクロツーリズム。皆さんのエリアも同様だと思いますが、実際に長崎でもデータ分析を通じてマイクロツーリズムの動きが明確になりました。

また、スポット別の動向も追っています。例えば夜景の名所として知られる稲佐山展望台は6月にリニューアルしましたが、その効果が明瞭にあらわれて来訪者数も増えたとか、野母崎に博物館ができたので来訪者数に貢献している、といった点もリアルタイムに分かります。

次に、検索数の推移です。

GoToキャンペーンが行われていた2020年の11月は、来訪者数が多くなっています。ただし検索数で見ると同年10月が最も多い。つまり検索行動と来訪はおおむね1カ月程度の差があるということが分かります。こうした行動の相関関係をもとに、プロモーションのタイミングなどをより効果的にできるのではと考えています。

次に検索のキーワードについて。DS.INSIGHTのデータからは興味深い事実が分かります。例えば、「長崎 観光 ○○」といったワードで検索された内容を追うことで、長崎観光に何が付随して検索されたかが見えてきます。実際に多かったのは「モデルコース」でした。どういうルートで周遊すれば良いか、という点がユーザーのニーズだということです。ほかには「スポット」「地図情報」などもあります。地図については、スマホを持っていてもやはり紙媒体のニーズは高い、ということが分かります。

こうした分析結果を、例えば地元Webサイトでの情報発信などに役立てるため、基礎データを集めているところです。

データが教えてくれた改善点をもとにターゲットも、周遊ルートも明確化

ここからは、再びDMO NAGASAKIの小林がお伝えします。

DS.INSIGHTのデータから、長崎市は京都市や金沢市に比べて、まだまだ域内検索の広がりが少ないということが分かりました。これは「長崎市に何があるのかよくわからない」というインサイトが隠れていると感じています。つまり、長崎市の観光について認知が充分でないということです。

その課題を解決するために、本年度からは従来型のメジャーな観光施設一辺倒のPRから転換し、長崎市の多様な観光資源をターゲット別に編集して伝え、興味関心を持ってもらおうと取り組んでいます。

そしてDMO NAGASAKIのミッションである“周遊を促して消費拡大をしていく”という点も、モデルコースをしっかりつくって広く市内を周遊してもらいながら、同時にお金を少しでも落としてもらおうという施策を実践している最中です。

DMO NAGASAKIとしては今年から始めた取り組みであり、コロナ禍もあってまだ手探りの状態ですが、現在の観光プロモーションについて少し紹介します。

本年度のプロモーションは、コロナ禍で自粛疲れにある皆さんにデジタルでは体感できない魅力を伝えながら、季節ごとに新しい長崎の魅力を提案していこうというものです。コンセプトは「ボツニュー感」。これに設定した理由は3つあります。

(1)長崎市は観光資源が豊富で、歴史的な背景もあり、それぞれに奥深いストーリーが潜んでいる。そんなストーリーに絡めて周遊促進につなげていく。

(2)コロナ禍において観光ニーズが変化する中、以前は旅そのものが目的だったのに対し、今は自己実現の手段としての観光や、日常の延長線上にニーズが移行し、これまでよりも地域との深い関わりを求めている観光客が多い。

(3)新規ターゲットのZ世代や、クリエイティブクラス層に関しては、ほかの世代に比べ自分の好きなことに対する探究心や自分らしさを追求する傾向が強い。

これらの視点から「ボツニュー感=深く入り込む」をテーマに設定しています。このコンセプトのもと、シーズンごとにテーマを設け、ターゲット別に広告デザインを用意し、ABテストを実施して、反応がいい広告の露出を増やし費用対効果を上げようとしている最中です。

また、消費という点で見落とせないのが“グルメ”です。検索ワードでも上位に入っていますが、長崎には王道のちゃんぽん、カステラ以外にも魅力的なグルメがたくさんあります。それを実際にお店で食べてもらうために特集を組んでいます。そうした立体的なプロモーションをしているところです。

以上、ここまでDS.INSIGHTを活用した長崎市のマーケティングを紹介しました。ここからはヤフーの西田さんにバトンを渡します。

ユーザーのペルソナをイメージし動向予測に結びつける

西田:ヤフーの西田です。サービス内容の説明をする前に、お二人と少し意見交換をしたいと思います。まず小林さんに質問です。地域観光の課題や地域事業者のニーズの拾い方には様々な方法があると思いますが、長崎ではどのように進められていますか。

小林:マーケティング調査の中で、直接訪問して事業者の声を聞くという取り組みは継続的にやっています。しかし限界もあり、面と向かって言いづらいこともあると思うので、Webを使った調査もしっかりやっていきながら、インサイト的なニーズをそこで把握しつつ、リアルと合わせた全体設計のもと各調査を実施しています。

一番の課題は消費額についてのデータが不足しているという点です。DMO NAGASAKIの活動で目指す大きなところは旅行消費額ですので、その消費額も含めながらできるかぎり高速でPDCAをまわしていくのが、我々のありたい姿です。

西田:事業計画の中で、新規ターゲット層として富裕層、Z世代、クリエイティブクラスを設定されていますが、それをどのように見つけてアプローチしていくのでしょうか。

小林:ターゲットに関しては一定のペルソナ像が出ているので、観光以外に持っている興味、例えばアートとか、車とかの興味関心の部分や、よく見る媒体は何かを把握しながら立体的に露出させていく、そんな具合です。

ただ、ペルソナの確度も不明瞭な部分があります。これについては、来年ヤフーがリリースするというペルソナに関するツールも使って、より深く分析し、反応も見ながら確度を高めていきたいと思っています。

これについては、来年ヤフーがリリースするというペルソナに関するツールも使って、より深く分析し、反応も見ながら確度を高めていきたいと思っています。

西田:鶴田さんに質問です。ほかの観光都市との違いについて、DS.INSIGHTで分析されて感じたことはありますか?

鶴田:今回、別の調査で「コロナ禍が明けたらどこへ行きたいか」といった質問を設けたのですが、残念ながらメジャー観光地と比較した場合、長崎市のランクは低かった。そこで、選ばれる観光都市になるためのブランディングとプロモーションが必要になります。

DS.INSIGHTでは、検索の前後の行動が見られるので、そこが非常に興味深かった。「長崎 観光」と打った人は、その後に色々な地域を検索しているんです。しかし、例えば「京都 観光」という検索をした後は、域内でどの店に行こうとか、どんな体験をしようかなど、旅ナカの検索をする流れになっています。長崎も周遊をしたい方のニーズを取り入れて、周遊コンテンツをつくっていく必要がある、というのが今回分かった点です。

西田:お二人ともありがとうございました。それではここから、DS.INSIGHTについて説明していきます。

人と場所、2つの切り口で自治体の観光施策を応援!

DS.INSIGHTを提供しているヤフー株式会社は、約100のサービスを展開しており、年間約8,000万人のユーザーに利用されています。これらのユーザーが日常的に使うことで、DSのバックボーンとなるビッグデータが蓄積されています。ユーザーの属性は、性別年代ともに差が少なく、あらゆる属性のユーザーにリーチできているというのも特徴です。

DS.INSIGHTではそうしたユーザーの検索キーワードをベースに、日常の興味関心が分析できます。一般的なアンケートでは調査者によるバイアスがかかる場合がありますが、DS.INSIGHTでは本音が得られるのがポイントで、スピード感もあり、必要なタイミングで情報を得ることがPDCAを早くまわすことにもつながります。コストダウンが期待できるのもポイントです。

こうしたメリットに加え、データ分析による過去との比較、例えばコロナ禍前のデータとの比較などもできるので、来訪者の変化といった情報も得ることができます。

このDS.INSIGHTは、主に検索データからなる「People」と、主に位置情報から得られる「Place」の、2つの切り口でデータを提供しています。今回は「People」にスポットを当てて紹介します。

下図は「日帰り」というキーワードで共起分析した画面のキャプチャです。

共起分析とは、メインの「日帰り」と一緒に検索された第2、第3のキーワードをマッピングして表示したものです。円が大きいほど出現率が多いことをあらわしており、線で結ばれたワードは第2、第3ワードとして一緒に検索されていることをあらわします。

この図では、「はとバス」「バスツアー」「温泉」「カニ」などのキーワードの円が大きくなっているので、「日帰り はとバス」などが多い検索事例だと分かります。
表示色については、赤色が濃いほど女性の検索が多く、青色が濃いほど男性の検索割合が多いことをあらわしています。

次にキーワード比較です。検索キーワードを比較することで、関心の高さやユーザーの特徴が可視化されます。

まずは各キーワードの検索ボリュームを比較し、どのワードが多く検索されているのかを把握します。この事例でバスツアーは20~50代が満遍なく16~20%程度となっていますが、はとバスは40代以上の比率が高く、バスツアーと検索する人よりも世代が上だと分かります。ここで、20~30代のバスツアー検索はスノーボードやスキーなどのツアーを探しているのでは、という仮説が立てられるので、改めてバスツアーの共起キーワード分析をしていくということで確認できます。

ほかにも、検索の量を折れ線グラフで表示する「検索推移」、特定のワードに関連して検索数が伸びたワードを調べられる「上昇キーワード」、検索前後の動向を知るための「時系列キーワード」などの機能もあります。

また、ここまで紹介した「People」とは別に、「Place」は「人流」「場所」を可視化するものです。さらに、2022年1月には「DS.INSIGHT Persona」のリリースを予定しています。こちらは、興味関心や属性条件を設定することで、その条件に当てはまるペルソナを作成できるサービスです。

この機能を使えば、例えば「観光」に関心のある層が、他にどのような興味関心があり、どのようなライフスタイルなのか、多面的に可視化することができます。

興味のある自治体様は、ぜひお問い合わせください。

 

お問い合わせ

ジチタイワークス セミナー運営事務局

TEL:092-716-1480
E-mail:seminar@jichitai.works

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