ジチタイワークス

群馬県沼田市

包括管理でリスクマネジメント力もUP!“沼田市流”の包括管理導入術とは?

全国で徐々に広がりつつある包括管理。沼田市でもこの手法をスモールスタートで開始した。本格導入から2年目を迎え、今後はリスクマネジメントも視野に入れながら、まちの未来を築こうと展開する同市の取り組みを紹介する。

※下記はジチタイワークスVol.16(2021年10月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[提供]日本管財株式会社


【お詫びと訂正】本誌Vol.15(前号)に掲載した同社記事において、問い合わせ先のメールアドレスに誤りがありました。お詫び申し上げますとともに、訂正させていただきます。
誤:eigyo-market@nkanzai.co.jp 正:eigyo_market@nkanzai.co.jp

庁舎移転をきっかけとした沼田市の新たなチャレンジ。

施設の老朽化対策は、自治体の重要課題の1つだが、同市も例外ではなかった。適切な管理を行いたくても、各所管課の職員に専門知識があるわけではなく、保守・管理などの仕様も統一されていなかったため、「安全を前提とした状況把握ができているのか、管理に無駄はないのか、法令改正に対応できているのかと、疑問は尽きず常に不安を抱えていました」と戸部さんと須田さん。

そうした中、令和元年度には、庁舎を複合施設「テラス沼田」へ移転することが決定。新庁舎は、市内に分散していた庁舎を集約し、市民の活動スペースや商業施設なども併設する大型のものだった。当初は、職員による“直営管理”が予定されていたが「正直厳しいと思いました。専門知識の不足に加え、我々と同じく商業施設を庁舎に転用した他自治体からは『直営は困難だ』という話を聞いていたからです」。そこで浮上したのが、施設の管理・維持業務を一括で外部へ委託する“包括管理”という手法だ。

しかし、当時はまだ浸透していなかった包括管理。庁内からは「本当にやっていけるのか」という声もあった。そこで財政課では、地元事業者や議会への説明に奔走。その結果、まずは新庁舎を対象に、各種設備の保守点検や清掃、警備業務などを一括委託することが決定したという。

ドローンや赤外線を活用した学校施設での外壁診断

ドローン調査

足場を組むコストや人が高い場所にのぼるリスクを低減しつつ、人目が届かない場所をくまなく確認することが可能。

赤外線調査

外壁に欠陥(浮きなどの変状部)がある場合、健全部と比較し表面温度が高く、赤く表示される。そのため、外見では分かりづらい劣化状況を把握することが可能。

職員との不協和音を打ち消した事業者の細やかで迅速な対応。

令和2年4月、包括管理は「日本管財」に委託。ただ、スタート当初は、修繕実施に対する市の方針と日本管財の考え方に多少のギャップが生じることもあった。そういった場合は、各担当課と同社の担当者がお互いに納得するまで話し合い、理解を深めながら1つずつ解消していったという。こうして翌年度からは、対象施設を132箇所にまで拡大。地域からも好意的に受け入れられていった。

そんな中、他市にて「防球ネット」の支柱が倒壊する事故が発生。これを受けた文部科学省は、令和3年5月「学校環境における工作物及び機器等の安全点検について」を通達。同市は早速、日常の巡回点検をより厳しい基準で行うよう同社に指示。施設を徹底的に見直したことで、ある小学校の国旗掲揚ポールに危険があることが発覚したという。同市教育委員会の戸部さんは「危険を除去できたことはもちろんですが、ほかの問題が出なかったことも日頃の点検の成果だと実感しました」と包括管理を評価する。

施設管理は安全が最優先!リスク回避策としての包括管理。

こうした事例もあり、同市は“リスク管理”の面でも包括管理が重要だと再認識。外壁の点検においては、赤外線データを取得できるドローンによる巡回点検を実施し、同社とともにさらなる危険予測に活かしているという。「リスクマネジメントにおいては、実際に何か起きた際の対応力も重要です」と須田さんは強調する。その言葉を裏付けるのが、令和3年7月に、庁舎に隣接する駐車場で発生した停電だ。これも同社の迅速な対応があり、数時間後には復旧。影響を最小限に抑えることができたという。

包括管理を活用し、まちの安全・安心を築いていく同市。須田さんは「包括管理によって蓄積されている情報をもとに、今後は『公共施設等総合管理計画』の見直しなど、様々なFM※施策にも活用していきたい」と意欲を見せる。「包括管理の導入時にはいくつかの壁がありましたが、そこを乗り越えた先に良い結果が待っていました」という言葉の奥には、新たな挑戦の手応えが感じられた。

※FM=Facility Management

左:沼田市 総務部 財政課 FM推進係 副主査
須田 雅帝(すだ まさあき)さん
右:沼田市教育委員会 教育部
教育総務課 総務係 副主幹
戸部 隆之(とべ たかゆき)さん

防災・教育あらゆる側面に有用な包括管理によるリスクマネジメント。

包括管理は、施設の現状把握や職員の負担軽減だけでなく、地域の安全・安心を守るという意味でも有効だ。その効果が分かる事例を紹介する。

2つの事例を通して分かる導入メリット

事例1 職員に代わる緊急対応

立体駐車場で高圧ケーブルが破損し、停電が発生。駐車場のバーが動かず車が入出庫で行列になったが、同社の常駐設備員が駆けつけ、原因の究明や車の誘導、関係各所への連絡・手配などを実施。数時間での復旧を実現させた。

メリット:対応可能な人員補強+早期解決!

事例2 学校施設での安全点検

市の要請を受け、小・中学校や保育園など28施設を巡回して、遊具や屋外施設などを総点検。要観察箇所2点と、危険箇所 1点が判明した。常時、学校側も日常点検を行っているが、専門家の視点が確実な危険回避につながる。

メリット:異常箇所の早期発見+安心感の醸成!

マネジメントの見直しで事故を未然に防ぐ。

当社では“より安全、より安心、より快適に”をテーマに施設管理をしており、中でも重きを置いているのが“安全”です。利用される方に危険が及ばないよう、専門家の視点で点検・修繕・管理をしています。今後は、現状の管理体制やマニュアルが今の時流に即しているか評価し直し、必要に応じて是正しながら最適化していきたいと考えています。リスクマネジメントもPDCAが基本。自治体の力だけでは対応が難しい部分をサポートいたします。

日本管財 沼田市包括施設管理センター
統括責任者
村山 崇士(むらやま たかし)さん

「公共FMサロン」もご活用ください!

日本管財では、自治体職員限定の公共FMサロンを運営!サロンでは、公共FMに関する情報共有・課題解決の場を提供しつつ、誌面で紹介しきれなかった“こぼれ話”なども公開中です。加入は無料。この機会に右記の二次元コードよりご参加ください。

 

お問い合わせ

サービス提供元企業:日本管財株式会社

TEL:03-5299-0851
住所:〒103-0027 東京都中央区日本橋2-1-10 柳屋ビルディング5F
E-mail:eigyo_market@nkanzai.co.jp
担当:マーケティング推進部 恒川・大原・石井・島田

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