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【セミナーレポート】水道業務におけるスマート水道メーターの活用とDX化に向けて

長引くコロナ禍の中で、各種インフラのデジタル化推進機運が高まり、水道インフラ分野においても「スマート水道メーター」と「水道標準プラットフォーム」が、情報活用の流れを大きく変えるツールとして期待されています。その一方で、わが国の水道事業は給水人口減少に伴う収入減少と設備の老朽化、ベテラン職員の高齢化などの課題に直面しており、「水道DX」がそれらの課題に対して、どれほどの効果を生むのか疑問視する意見も出ているようです。そこで、水道関連サービスで豊富な実績を持つ3社・4人のプロに、水道事業の課題と解決策について解説してもらいます。


概要

◼タイトル:水道業務におけるスマート水道メーターの活用とDX化に向けて
◼実 施 日:7月16日(金)
◼参加対象:自治体職員
◼申込者数:167人
◼プログラム
Program1
スマート水道メーターの海外事情と日本の諸課題への対応
Program2
水道事業におけるDX推進の課題と解決
Program3
スマート水道メーターを活用した水道業務のDX推進
Program4
スマート水道メーターの実証実験やご採用に向けたご提案


スマート水道メーターの海外事情と日本の諸課題への対応

講師

大澤武郎 氏

アイトロン・ジャパン株式会社
代表

プロフィール

1991年東京電力入社。通信、企画・海外部門、スマートメータープロジェクト等に従事。2014年アイトロン・ジャパン入社、同代表に就任。スマート水道ソリューションの他、電力スマートメーター、スマートグリッド、エネルギーマネージメント、IoT関連ソリューション等の国内導入展開を推進中。


スマート水道ソリューションを世界各地で展開するItron, Inc.の日本法人である「アイトロン・ジャパン」の大澤氏が、共同検針やスマートシティー、IoTサービス等との関わり、通信技術の標準化動向などの観点から、海外におけるスマート水道メーターの活用事例を紹介。また、国内の水道検針に関する諸課題解決に向け、世界市場で実績のある技術の活用について、日本と海外との違いを踏まえつつ解説した。

検針・送信を自動化するだけでなく、データ分析が重要

スマート水道メーターを推進すべき要因として、インフラ老朽化による水不足、漏水の削減、法的規制、業務運営の効率化・省力化と適正な水道収入の確保などが挙げられます。とは言え、スマート水道メーターへの移行を阻害する要因もあるわけで、代表的なものは予算不足・財政難、新技術導入への抵抗と保守的な事業運営、検討・意思決定に長期間を要することなどで、これらは海外でも日本でも共通課題と言えるでしょう。

こうした状況下で当社は、水道メーターや漏水センサー、遠隔制御水栓などによる「計量・計測・センシング」、モバイル検針やフィールドルーター、データ集約装置と携帯電話網を活用した「通信・データ収集」、お客さま情報管理と料金システムと連携し水道システム運用と配水システムの管理、漏水・無収水・圧力・イベント管理などを目的とした「データ収集、ネットワーク・セキュリティ管理機能」などの水道ソリューションを提供中です。

近年、水道メーターそのものに通信機能を持たせる技術も注目されていますが、単に計測した数値を送信するだけではなく、データの取得と収集、データ活用の全プロセスに対し、総合的なソリューションを提供してお客さまの目的を達成するのが、当社のポリシーです。国際標準規格の採用、APIの開示等により、他社様のシステムと容易に連携可能であること、WOM(Water Operation Management/水道システム運用管理)による高度なデータ分析が可能であることなどが、当社ソリューションの特徴です。

様々な国・地域で目的に合わせたソリューション導入

海外における、当社ソリューションの導入効果事例を紹介します。まず、イギリスの「Anglian Water Business」という水道事業体の場合、カスタマー・ウェブ・ポータルによる顧客満足度向上を狙って当社のTemetra(データ管理クラウドサービス)を接続数約20万で導入。OFWAT(英国水道事業規制機関)による顧客満足度調査で1位を取得しました。水が貴重な地域である東アフリカのブルンジでは、水道事業体「REGIDESO」が漏水等の実損失、不払い、検針・請求不備等を含む損失の削減を目指してTemetraの検針計画ダッシュボード表示機能を導入。接続数は5万ほどでしたが、故障メーターの発見・取替数は約7,000件、12%の無収水削減と10%の請求額増加を実現しました。

一方、マルチ・ユーティリティ・スマートメーター・ネットワークの導入事例としては、アメリカ・ミズーリ州の「CITY UTILITIES SPRINGFIELD」が障害やトラブルの正確な把握と早期発見を目指し、電力・ガス・水道AMIとデータ分析を導入。水道8.9万、電力12万、ガス8.8万の、計約29.7万の接続数で、月間1.7万ドルの検針コスト削減を実現したほか、盗電等の不正計量発見、漏水及び逆流などの検知に要していた時間を、およそ90%削減することができました。この他にも実証プロジェクト推進中の事例も含め、多数の国・地域で当社ソリューションは着実な実績を更新中です。

一気にゴールを目指すのではなく段階的導入が現実的

海外で実績あるソリューションを、国内で適用するためのポイントをまとめてみましょう。国内の水道関連事業を取り巻く課題として、人手不足や老朽設備の増加、働き方改革に向けた業界ニーズの高まりがあり、多くの水道事業体様・施設管理者様から、データを活用した漏水管理や見える化による節水行動支援、トータルコスト削減などのために、コストアップを抑えながらスマート化を進めたいという声が出されています。

一方で、長期運用を考えた場合、どの通信方式を選ぶべきなのか判断しにくいことや、従来システムとの二重管理が負担になることなどが、スマート化に踏み切れない主要因としてあるようです。そうした背景を考えた上で、スマート水道メーターとポータブル無線親機やAndroid端末、Temetraを活用した「無線モバイル検針(ウォークバイ/ドライブバイ)」により、水道の総合的なスマート化とDXの基礎を構築するのが最善ではないか…というのが当社の考えです。

当社は、「検針・料金請求」を目的とした無線モバイル検針ソリューションを1996年に提供開始しており、現在までに「指針値・簡易なアラームの取得・伝送だけでは、総合的なスマート化には不十分」「端末側にも相応の機能が必要」という結論を得ています。それを踏まえ、大豊機工様から国内向けに提供されている当社の端末「MeSynapse (メイシナプス)」は、セキュアで信頼度の高いデータを有効活用するために必要な機能を実装しています。クラウドサービス「Temetra」のデータ管理・分析機能と組み合わせ、料金システムなどと連携させることで、総合的なデータ活用が可能なのです。

水道スマート化のニーズは、国・地域・事業体によって様々で、AMIや自動検針がゴールではありません。検針だけにとどまらず、給配水システムの運用全体のスマート化、設備管理の高度化などを見据え、将来の拡張性を確保したシステム構築を目指すことが重要です。一方で、予算の確保や新技術開発、標準化に要する期間を考慮し、最終的なシステムを一気に構築するのではなく、ニーズに応じた段階的な導入を図るのが現実的だと言えるでしょう。

スマート水道メーターの段階的な導入展開のアプローチ例

水道事業におけるDX推進の課題と解決

講師

増山 崇城 氏

株式会社ウォーターリンクス
取締役 

プロフィール

1987年システム開発会社を経て、1997年コサウェル(出資会社)に入社。汎用機時代から現在のDX時代に至るまで、長年システムの開発、ソリューション企画・提案、業務改革の推進提案に従事。
現プロダクト・マーケティンググループ部長としてDX推進に関わる。2020年ウォーターリンクス取締役に就任。水道業界向けSaaSを事業体への導入提案を推進中。


人口減少に伴う水需要と水道料金収入の減少は、もはや避けられない。配水施設の老朽化や職員の不足・高齢化なども同時に進行することから、水道事業の健全経営も徐々に難しさを増していくだろう。この課題に対して国は、水道情報活用システム構想を打ち出し解決を目指しているが、具体的にどのような取り組みが必要なのか。水道事業体向けにSaaS(Software as a Service)導入を提案するウォーターリンクスの増山氏が語った。

「水道情報活用システム」の概要

現状、各地の水道事業において利用されているシステムは、各水道事業者・水道施設ごとに構築されたものです。そのため、システム間のデータ流通性は低く、データ利用は各システム内で完結している、いわゆる「ベンダーロックイン」状態にあるのが実情です。これに対して「水道情報活用システム」は、データ流通仕様等が統一され、セキュリティが担保されたクラウドを活用したシステムであり、主な利点は「ベンダーロックイン解除」と「コスト低減」の2つ。システムを共同利用することで、コスト低減や業務効率化の推進も期待されます。

データ流通の基盤となる「水道標準プラットフォーム」は、水道事業におけるデータ流通の基盤であり、料金、会計、マッピング、台帳、監視制御などのアプリケーションを、水道事業者の必要に応じた機能・価格で選択することを可能にします。また、システムをまたいだデータの利活用、広域化によるシステム統合、BCP対応やテレワークの推進などもスムーズに行えるようになるでしょう。

セキュリティ対策はLG-WANの要求事項を踏まえて設計されているので、不正アクセスなどの脅威を防止できるほか、IDS/IPSアラートの24時間・365日監視対応が実施されます。国が提示している構想なので不確定要素が多数ありますが、水道事業を安定的に継続するためにこういったシステムが必要なのは、当社としても間違いないと考えています。

ウォーターリンクスが目指す「水道DX」について

水道インフラの老朽化が進む一方、多くの水道事業体は職員高齢化と人材不足、人口減少や節水機器の普及などに伴う水道料金の減少といった経営課題に直面しており、現在の管路更新率は約0.7%にとどまっています。この状況に対して当社は、「水道DX」と「陸上養殖」の導入により、水道事業体の収益向上、費用削減、管路更新の最適化などを可能とし、管路更新率引き上げに貢献したいと考えています。

特に水道DXは、水道メーター検針から水道料金管理まで水道関連業務の自動化を行うことで、人材不足への対応、トータルコストの削減に寄与します。また、水道ビッグデータの保有が可能となり、利活用による精度の高い老朽水道管の管路更新等、新たな付加価値が創造可能です。

当社が目指す“IT化”とは、取りも直さず「標準化」です。水道事業のあらゆる業務を標準化されたデータで一元管理することで、広域管理がしやすくなり業務効率が高まります。当社システムの強みの1つは、国が推進する水道標準プラットフォームやガイドラインに当初から準拠しており、より使いやすく利用しやすい環境を実現できる点です。接続仕様を標準化することでデータの流通をスムーズにし、効率性と連携力を高めます。これにより、「導入自治体」「利用する住民」「水道職員や関連事業者」の三者共栄のメリットが期待されます。

(1)サブスクリプション方式による圧倒的な低価格の利用料金設定、(2)標準化された共通機能と水道事業体個々のニーズへの対応、(3)国全体でのAI・ビッグデータの利活用を踏まえたアプリ開発、(4)IoT機器との連携+API連携+多様なアプリとの連携の、4つの基本方針に基づき、「カスタマーサクセスの実現」をモットーに国の指針に沿った確かなIT技術と、使う人に寄り添ったUIで目的を実現することが、当社サービスの基本方針なのです。

当社サービスの概要と特徴

当社は、水道業務のIT化・標準化、システム共同利用を推進するため、「業務支援系アプリケーション」をSaaS型(利用料方式)で提供します。いわゆる「サブスクリプション方式」のサービス提供ですから、保守サービスを含め毎月の利用料の支払いのみで、水道業務関連のアプリをポータルサイト「Water Links」に集約することで、全ての業務がポータルサイトから一括管理できる環境を目指します。

水道事業体と各業者、水道事業者と水道事業者の双方でアプリの共同利用や外部事業者間連携が可能なポータルサイトなので、業務の効率化と同時に「見える化」が実現。高度なマルチテナント機能により事業者ごとにデータを管理し、情報の公開範囲を設定することも可能です。スマートフォン・タブレットでも利用できるので迅速な対応が可能となると同時に、コロナ禍終息後も予想されるテレワークニーズの高まりに、柔軟に対応することができます。

システムの提供形態は3パターンあり、水道標準プラットフォームデータセンターと各水道事業体とを閉域回線でつなぐ「水道標準プラットフォーム」方式だけでなく、AWSの既存のシステムと水道事業体とを閉域回線でつなぐ「プライベートクラウド (SaaS)」方式、水道事業体内で業務を完結させる「オンプレミス」方式も提供可能です。料金計算、施設台帳、公営企業会計など各種アプリケーションを順次リリース予定で、水道事業に係る人すべてにメリットがあるからこそ、より優れた水道事業を目指すことができるとの考えております。

スマート水道メーターを活用した水道業務のDX推進

講師

川瀬 政樹 氏

大豊機工株式会社
公共システム部 

プロフィール

大豊機工(株)のスマート水道メーターの営業マネージャーを担当。1990年入社以来、水道メーター製造の品質管理を9年、設計・開発を11年、更には水道メーターのJIS規格づくりや海外へのメーター部品・試験設備の供給にも携わる。そして現在、30年にわたる様々な水道メーターに関する知識と経験を携え、スマート水道メーターの担当として取り組む。


東京都は、スマート水道メーターの全戸導入に向けたトライアルプロジェクトに踏み切った。東京のような大規模事業体であれば、大きな費用を投資してAMI(完全自動検針)の全戸導入を進められるが、中小事業体では人口減少や施設老朽化という課題に阻まれ、AMIへの移行を急速には進められないのが実情だ。そうした状況下、中小事業体でも検討しやすい手軽にスタートできるスマート水道メーターについて、大豊機工の川瀬氏が紹介した。

水道事業における課題の確認

水道事業が抱える課題に対し、国は「水道DX」の推進を提言しています。単に業務効率化、コスト低減ばかりでなく、手入力によって起こりがちな誤検針などを防止できるメリットもあります。スマート水道メーターによってクラウド上に蓄積される膨大なデータと、その他の水道施設情報などをかけ合わせることで、水道事業の運用管理に役立てることも可能です。「見守り」など新しいサービスの創出にも活用できるようになるでしょう。

スマート水道メーターは、人が現地に行くことのない検針そのものの完全自動化を目指しています。キャリア通信や新設する無線基地局を使ってデータ通信を行い、基地局から直接インターネット網へ繋げる方式です。この完全自動検針方式を「AMI」と呼びますが、以下のような課題があるのが実情です。

(1)現在主流のスマート水道メーターの場合、単価が現在2~4万円と高額。電子式水道メーターと無線機器とのセットが高価格の要因。さらに工事費、毎月の通信費、サーバー利用代金などの固定費が必要。
(2)通信エリアの無線環境に関する課題。1台でも通信できなければ、現地にて確認する必要があるため、導入に先がけた、検針エリアの無線通信環境の調査が必要で、場合によっては大規模な準備も必要。
(3)現在主流のスマート水道メーターの場合、メーターと無線子機との接続はケーブルによる有線接続。無線子機とメーターの接続工事を現地で行う必要があり、その場で防水処理を施さなければならない。将来的には浸水事故のリスクもあり、その補修費用も必要。

効率的でローコストなスマート水道メーター「リマーズ」

これらの課題を解決できるのが、当社が提供中の「ReMARS(リマーズ)」です。アイトロン社とのパートナー関係により製品化した、より効率的でローコストなスマート水道メーターです。一括無線検針システムであり、前述の課題を全て解決し、スマート水道メーターによる検針を確実に実現します。リマーズに対応した無線通信子機「MeSynapse(メイシナプス)」と、無線通信親機である「RF-Master(アールエフマスター)」もラインナップしています。メイシナプスは、データロギング機能と漏水検知機能を持ち、検針だけでなく水利用に関わる様々なトラブル解決にも役立ちます。リマーズの一括無線検針システムは、より効率的な検針を実現します。

その1つが「グループ・バイ」です。検針したい地域やマンションを予めグルーピングし、おおよその無線通信エリアを定めることで、1度の通信作業でグループ全ての検針値を取得できます。同時に、その地域の無線環境も把握でき、将来AMIに移行する際、無線基地局設置に関する検討情報として役立てることができます。2つめは「ドライブ・バイ」です。これは、無線親機を携帯した車やバイクで住宅街を通過するだけで、自動的に検針値を取得収集できます。アンドロイド端末にマップが表示され、自分の位置、メーターの位置、検針結果が表示されます。

グループ・バイやドライブ・バイで集めたデータは、いったんアンドロイド端末に蓄積され、端末がキャリア通信対応であればそれを用い、キャリア通信に対応していない場合は、Wi-Fi環境のある場所でウェブアプリ「Temetra(テメトラ)」にアップロードを行います。テメトラにアップロードされたデータは検針値管理だけでなく、様々な分析・管理に活用可能です。

リマーズのウェブアプリ「Temetra(テメトラ)」の機能紹介

「リマーズ」導入前後の業務フローの比較

リマーズ導入前・後の業務フローについて紹介します。従来は、直読式メーターの設置から検針、手入力、料金管理、検針データの他システムへの入力まで、各プロセスを人の手で作業していたため、どうしてもヒューマンエラーが発生していました。リマーズであれば、スマート水道メーターとデータ自動取得、Webシステムによる管理までをワンパッケージとして提供し、ウォーターリンクスの料金管理システムも連携が可能なため、各プロセスの連携が自動化できます。新設の無線基地局も不要なため、通信環境の事前調査、導入時に必要な調査、設置設備のコストを大幅にカットでき、スムーズな導入が可能。また、試験運用も可能です。

最後に、リマーズの導入メリットをまとめます。1つめは、「比較的低コストでの導入が可能」であること。2つめは「システムのワンパッケージ連携・開発」で水道メーターだけでなく、上位システムへのシームレスな連携が可能であること。そして3つめは「新たな無線通信規格にステップアップ可能」であることです。

リマーズ対応のスマート水道メーターはメイシナプスを着脱することができ、まずはメーターだけを購入し、後からメイシナプスを取り付けることも可能です。さらに、将来新たな通信規格や、規格が統一された場合もメイシナプスだけを新たなものに交換でき、AMI対応もスムーズになります。みなさまの事情に合わせて計画を立案できて、より高度な管理形態にステップアップすることができます。

スマート水道メーターの実証実験やご採用に向けたご提案

講師

田端 誠治 氏
大豊機工株式会社
関西営業所 

プロフィール

大豊機工(株)のスマート水道メーターの営業を担当。2012年大豊機工(株)に入社後、セールス担当として国内の水道事業体だけでなく、海外の水道メーターメーカーとのビジネスにも関わる。一方で、水道事業には欠かせない検針用ハンディターミナルシステムや水道料金システムなどのシステムにも関わり、その知識をスマート水道メーターの担当として活かす。


現在の水道事業が抱える様々な課題を解決する技術として、なぜAMR(モバイル検針)方式のスマート水道メーターが必要なのか。AMI(完全自動検針)方式/AMR方式のメリットとデメリットは何なのか。水道メーターの分野で豊富な実績を持つ大豊機工の田端氏が、自社で実施した実証実験や、そこから見えてきた課題などについて、具体例を交えて紹介・提案した。

「AMR」提案の背景と導入メリット

多くの水道事業体が、「積雪や障害物などによる再検針や誤検針の発生」「飼い犬などによる被害、熱中症、作業中のケガなどの労働災害」「メーターの汚れや読み間違いによる誤検針やお知らせ票等の誤投函」「雇用確保の困難化」などの問題を抱えているのではないでしょうか。給水人口が減少する一方で維持管理費等は変わらず、結果として水道料金の値上がりへとつながっています。こうした課題を解決するためにも、現在の目視検針をIoT化し、正確、安全、低コスト化を目指すことが必要です。

大規模事業体では、基地局を設置して自動検針の実証実験が行われていますが、AMI方式となっても、条例などにより2ヵ月に1回は水道メーターの点検を行い、漏水や機器の異常の有無を確認しなければなりません。また、人口分散地の郊外では山などの遮蔽物、人口密集地では新しい建造物などで電波強度が左右され、全戸カバーが困難になる可能性もあります。

そこで当社は、現在の検針方式(目視検針)から一足飛びでAMI方式に移行するのでは無く、まずはAMR方式で検針効率化を図ることを提案しています。ドライブ・バイ方式なら自転車やバイク、車など移動手段を選ばず、検針値取得のみであれば通常の2倍以上の効率化を図ることができます。最初に述べた課題の解決にもつながります。

当社で行った採用事例や実証実験

当社が実施した実証実験の事例を、3つご紹介します。まずは、積雪時の実証実験。スキー場(山間部)で通信端末を積雪内1.5mに埋め、通信対応性を確認した結果、1kmくらいの距離でも通信は可能でした。

次に、大型マンションのモデル事業です。この建物のオーナーはマンション6棟・水道メーター約300台を保有しておられ、更新の際、集中検針盤の老朽化が判明しました。更新にあたって、当社のスマート水道メーターの費用と取替費用のみ見積もりを出したところ、従来型の電子式水道メーター、集中検針盤、結線調整、取替等の費用と比較し、かなりコストを抑えることができました。

3つ目は市街地での実証実験です。1軒ごとの距離がある集落で、検針効率を上げる実験として原付バイクでドライブ・バイ検針を行いました。結果として、データ取得ができなかった家屋は地図に赤い×印が表示され、エラー音も鳴るので検針員がすぐに気づき、受信できなかった場所に戻ることができました。他にも様々な条件で実証実験を行っておりますので、ぜひお問い合わせください。

実証実験の一例のご紹介

AMI方式/AMR方式のメリットとデメリットは何なのか

同業他社の、電子式水道メーターと無線端末を用いたAMI方式のスマート水道メーターと、当社のAMR方式スマート水道メーターとの主な違いについてまとめました。まずは、ハードウェアの面。コストに関して、AMRは機械式水道メーターを採用しているため、電子式水道メーターを採用したAMIより比較的安価であり、メーターが壊れた場合も、AMRは壊れる直前までの計量値を保存できます。AMIは電子式水道メーターの電子回路が故障すると、計量値が消えます。重量も樹脂ケースを採用しているので、AMIの銅合金製ケースに比べ比較的軽量。防水性に関しては、当社のAMRは無線通信端末を有線接続していないため、浸水リスクが低くなっています。

次いで、無線・ソフト面ですが、AMRの場合、携帯無線親機「RF-Master(アールエフマスター)」で受信するため、無線基地局の設置や通信費が不要です。データ取得について、AMIは確実に無線で検針できますが、データが欠落した場合、現地に出向く必要があります。AMRでは、確実にデータ取得できるまでリトライできます。無線ライセンスについては、アンライセンスバンドのLPWA(特定小電力無線)を採用しているため不要で、他の上位システムとの連携についても、当社はWater Linksとの連携があるので、ワンパッケージでの導入が可能です。

なお、これまでの実証実験等で見えてきた課題に対し、当社は今後、カスタマー・ポータルサイトへの対応を図る予定です。テメトラには、オプションでカスタマー・ポータルサイト機能があり、ご希望いただければご提供を予定しています。クラウド上のウェブサイトで利用者へのお知らせをオンライン化し、利用者自身が検針データなどの情報を効果的に活用することができます。新たに銅合金製ケースのメーターも予定しています。

他の通信仕様に対応した無線端末の開発も、今後の課題です。現在は当社独自の通信を用いていますが、全国的な仕様が確立した際には、それに対応した無線端末を製品化する予定です。新しい通信仕様になっても無線端末のみの交換が可能で、同時に、テメトラ検針アプリケーションへのカーナビ機能の拡充や、水道利用者自身による検針を依頼するようなアプリケーションの開発も進め、事業体にとっても水道利用者にとっても、より便利な製品開発を推進する考えです。

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