令和2年12月、「地方公共団体における情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」が改定され、クラウド導入の可能性が広がった。改定の背景やねらいを、当時、総務省の地域情報化アドバイザーを務めた富山県の半田さんに聞いた。
※下記はジチタイワークスVol.15(2021年8月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[提供]サイボウズ株式会社
自治体の“強すぎる守り”が業務の足かせになった現実。
自治体ネットワークの“三層分離構造”が導入されたきっかけは、平成27年に起きた「日本年金機構」の情報漏えい事件だ。同じ頃に大手民間企業でも相次いで情報流出事件が発生。マイナンバー制度の運用開始が目前に控えていたこともあり、行政全体での早急なセキュリティ対策を講じるため、総務省から提唱されたのが、いわゆる「三層分離のネットワーク構造(αモデル)」だった。
この三層分離が導入され始めた当時から、LGWAN接続系とインターネット接続系の分離による利便性の低下は指摘されていたという。「インターネットのメールが直接受け取れない、インターネット系のサービスが利用できないといった問題が起こり、現場からは対応を求める声が上がっていたのです」と半田さんは振り返る。
そうした反発はあったものの、三層分離化は着実に広まっていった。しかし、導入開始から5年が経過する中で、社会的な背景も大きく変化。特にクラウドサービスを利用できない点などが、以前よりも問題視されるようになった。
こうした問題を解消し、時代の流れに乗るために、総務省がガイドラインの改定を実施。そこで誕生したのが、新たな“βモデル”と“βʼモデル”だ。
新モデルのメリットを活かした現状の課題解決策を考える。
これらの新モデルにより、三層分離による利便性の低下という課題が解決できる。中でもクラウドサービスを自治体で活用できるようになるメリットは大きく、勤怠システムや経理システム、グループウェアの採用などで業務の効率化が可能だ。「民間のSaaSなどを導入することで、テレワークに取り組みやすくなります。ストレージサービスも導入効果は高いと考えられます」と期待を込める。
ただし、多くの自治体にとってβモデル、βʼモデルへの移行には、十分なリテラシーを備えた人材が必要になる。「まずは、目利き人材の確保を先行投資と捉え、外部からの登用も視野に入れるべきです。外部のCIO補佐を登用する場合は、コストの半分を特別交付税で充当するという施策も打ち出されています。こうした制度も積極的に利用すべきでしょう」。
さらに、市町村が全てを負担するのではなく、都道府県との連携が欠かせないとつけ加える。「各都道府県には、クラウド活用やセキュリティ対策の取り組みにおいて、市町村を積極的にリードする役割も果たしてほしいと期待しています」。
クラウドを活用できるか否かがまちの未来の分岐点になる。
さらに、政府の提唱する“クラウド・バイ・デフォルト”という考え方が重要だと力を込める。「今後、様々な変化が起きると考えられますが、とりわけ外部のクラウドサービスがもたらすメリットは大きい。クラウド活用は今後の自治体にとって必須と言っても過言ではありません」。
クラウドサービスの導入によって、自治体システムの標準化や業務の標準化が進めば、おのずと横展開もしやすくなる。これによってシステムの広域化・共同化も加速し、利用が広がるにつれてシステムの原価も安く抑えられるようになるだろう。もちろんセキュリティの担保も重要だが、前述のような“目利き”人材の確保や、都道府県と市町村との連携に加え、現場職員の教育・研修を徹底することが課題解決の糸口になるはずだ。
「βモデル、βʼモデルへの移行には時間と労力がかかりますが、移行後には職員の負担が格段に減ります」。同時に「クラウドの導入によって業務の無駄が省かれ、職員はより付加価値の高い業務に注力できるようになるでしょう」と未来を描く。こうした未来に向け、改革を進められるか否か。自治体は今、まちの未来を左右する大きな分岐点に立たされている。
富山県 知事政策局
デジタル化推進室 情報システム課
半田 嘉正(はんだ よしまさ)さん
クラウド・バイ・デフォルトの思考で自治体DXがぐんぐん加速する!
クラウド導入の推進で庁内システム合理化を実現。
以前のグループウェアは、LGWAN系に接続されていましたが、職員からは「インターネットに接続できないとメールの送受信が煩雑だ」という声が上がっていました。そこで、庁内システムの全体最適化という面も踏まえて見直しをしたのです。
検討の結果、採用したのはサイボウズの「Garoon(ガルーン)」。令和2年3月から本格運用を開始し、端末利用環境がインターネット接続系に移ったことで、職員のストレスも大幅に軽減されました。期せずして起きたコロナ禍でも、テレワークがスムーズに進んでいます。
財政の面からも、ICTの効率的な活用という面から見ても、“サービス利用が原則”という流れは必然。当県でも今後はできるだけパブリッククラウドに移行し、さらなるコスト低減と利便性向上を図りたいと考えています。
茨城県 政策企画部 情報システム課
飯野 和広(いいの かずひろ)さん
自治体のデジタル化・DXを支えるサイボウズのサービス
kintone(キントーン)
自治体業務の効率化や、住民サービスの向上を実現するアプリを簡単に作成できるクラウド型業務システムサービス。自治体のあらゆる業務に対応し、効率化・スピード化を実現する。
Garoon(ガルーン)
職員間の情報共有を効率化するグループウェア。スケジュールや掲示板など庁内業務に必要な機能がワンパッケージで揃う。ITが苦手な職員でも使いやすく、他システム連携も可能。
チームワーク総研
サイボウズでは、自治体支援のスペシャリストが相談役となり、テレワーク定着の支援をはじめ、継続的に問題を解決できるチームづくりを支える地域共創“支援”プログラムを提供している。
自治体の“ここを変えたい”を後押しします
サイボウズではツールとメソッドの事業を展開。1200を超える自治体への豊富な導入実績とノウハウで、紙・FAX・表計算ソフト中心の非効率な業務の“ここを変えたい”に貢献します。まずは気軽にお問い合わせください。