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【セミナーレポート】新学習指導要領が目指す英語教育とオンライン英会話の実践例セミナー

長引くコロナ禍の影響で、学習環境面に大きな変化が生まれています。オンライン英会話など、ICT利活用による教育環境整備が進む一方で、ALT(外国語指導助手)不足など教育現場が抱える課題も浮き彫りになっています。そこで今回のセミナーでは、新学習指導要領が目指す英語教育のあり方と、ICTを活用した公立高校におけるオンライン英会話の実践事例などをご紹介します。

当日の内容を概要版でお伝えします。参加できなかった方は、次回のセミナー開催にご期待ください


概要

◼タイトル:新学習指導要領が目指す英語教育とオンライン英会話の実践例セミナー
◼実施日:6月29日(火)
◼参加対象:自治体職員
◼登録者数:15人
◼プログラム
Program1
新学習指導要領が目指す英語教育の実現
Program2
公立高校におけるオンライン英会話の実践例
Program3
コロナ禍におけるICT活用とオンライン英会話


新学習指導要領が目指す英語教育の実現

<講師>
田中 茂範氏

PEN言語教育サービス代表
慶應義塾大学名誉教授

プロフィール

現在、慶應義塾大学環境情報学部教授を経て、慶應義塾大学名誉教授。PEN言語教育サービス代表。JICA 語学検討韻員会座長、ベネッセコーポレーションARCLE 研究理事( 現在は、名誉理事)、モンテッソーリミライキンダーガーテン顧問などを務める。NHKのテレビ番組「新感覚 キーワードで英会話」「新感覚 わかる使える英文法」に出演。現在はNHK「ボキャブライダ̶」の監修を務める。


新学習指導要領では外国語教育について、「“外国語を使って何ができるようになるか”を明確にするという観点から改善・充実を図る」ことを改訂の指針に掲げており、単語や文法を丸暗記させる教育から、実践的な会話などを通じて語彙力や表現力を身に付けさせる教育への転換を目指している。教育現場では今後、どのような指導法で生徒の「英語力」を伸ばすべきか、慶應義塾大学名誉教授の田中茂範さんがICT活用のポイントも含め解説した。

「新・学習指導要領」における7つのポイント

中学校では令和3年度、高校では令和4年度から「新学習指導要領」にのっとった英語教育がスタートします。改訂の要点は、“予測困難な時代の中でも、未来のつくり手となるために必要な資質・能力を育む”こと。その中で英語教育の1つ目のポイントとなるのは、丸暗記式のコミュニケーション英語を学ぶのではなく、実際のコミュニケーションの中から英語を学ぶことと、単語の羅列で一問一答する英会話ではなく、文節としてまとった内容の言葉を、口頭なり文章なりで表現することができる英語力を身に付けるということです。

2つ目・3つ目のポイントは、ネイティブな英語話者と意思疎通できる「確かな英語力」「真に使える英語力」を身に付け、それを自分の立場だけでは無く相手の立場からも見る・考えることが、「深い学び」の鍵となるということ。そのために、これまで「英語4技能」といわれてきた“聞く(Listening)”“話す(Speaking)”“読む(Reading)”“書く(Writing)”が、これからは「音声言語として相互に意見を交わす(Spoken Interaction・Spoken Production)」を含めた「5領域」という考え方に切り替わるということです。

ポイント5は、日常的な話題や社会的な問題について、英語を聞いたり読んだりして得られた情報や考えなどを活用しながら、自分自身の考えを適切に表現すること。ポイント6は「文法演習型からタスク型英文法」への転換。つまり、文法的な正しさのみを過度に強調したり、用語・用法の区別などの指導が中心となったりしないよう配慮し、実際のコミュニケーションにおいて活用できるような指導となるよう工夫するということです。そしてポイント7は、単に英語を日本語に、あるいは日本語を英語に置き換えるだけの“機械翻訳”的指導とならないよう、意味のある文脈でのコミュニケーションを繰り返しながら、指導することが重要ということです。

新しい英語教育を実現するためのグランドデザイン

“全体構想(グランドデザイン)”がなければ、整合的な教育は実現しません。グランドデザインにおいて肝心なのは、教育活動の「整合性」です。英語に限らずどのような科目でも、「教材開発」「指導法」「評価方法」が教育の3本柱となるわけですが、この3つに「目標設定」にもとづいた一貫性・整合性を持たせることが、グランドデザインの必須条件だといえます。

英語力は、Speaking、Writing、Listeningなどからなる“タスク・ハンドリング”と、それを支える語彙力や文法力、慣用表現力など“言語リソース”の両輪がなければ成り立ちません。語彙力の基本となるのは基本語ですが、例えば、“声変わりする”と表現したい時に“BREAK”を、“目薬をさす”時に“PUT”を使える語彙力は、単語の知識だけ詰め込んでも身に付かないでしょう。

基本語力を基盤にして、拡張語彙力を伸ばす教育が、語彙力を育てます。一例を挙げると“RUN”という単語。従来の教科書では“走る”と和訳して覚えていましたが、川が流れていく様子も、砂漠をパイプラインが横切っている様子も“RUN”で表現できます。一方、“噂を広める”“塗料を塗り広げる”など同じ“広げる”という表現で、“SPREAD”“EXTEND”のいずれを使うべきかを適切に判断する練習も、拡張語彙力を伸ばすためには重要です。

“3つの条件”を満たすためのICT英語教育

真の英語力を身に付けるための成功の条件は、英語体験と英語使用の質と量、英語を使う必要性などの条件を満たす環境の場づくりです。その上で質を保証するために必要な要素は、生徒にとって意味があること、本物であること、パーソナルな教材と活動を提示することの3つだといえます。この条件を満たすことができるのが、生素材のダウンロードや作品のアップロードが可能で、検索性・記録性・通信性が高いICT教育だと思われます。

ICT活用による英語教育の可能性は、「授業の補助的手段(Addition)」と「新しいセルフスタディ方法の実現(Innovation)」という2つに大別されます。参考書・問題集+アプリ・オンライン指導というやり方は、現在でもすでに行っている学校がありますが、ICTの最大活用によって、例えば海外とのジョイントオンライン英会話など、教室の壁を取っ払った授業のやり方が考えられると思います。生徒は、学習者であると同時に表現者でなければなりませんし、先生も語学教師であると同時に、シラケない場をつくるプロデューサーでなければなりません。

生徒が表現者となることで、前述した“英語体験と英語使用の質と量、英語を使う必要性などの条件を満たす環境”が実現します。教室では難しい音声表現力のアップも、オンライン英会話なら克服できる可能性が高いと思われます。

いずれにせよ、英語教育においてICTを最大限に活用し、最大の効果を得るためには、英語指導カリキュラム全体におけるICTの位置づけについて、“何であるか”“何ができるか”“何をすべきか”の3つについて真剣な熟議が必要であり、個々の生徒がアクティブに、何をどう学ぶのかという観点から、画一化しやすい教科書のあり方や、問題集・参考書・業者テストなどのあり方、教師の役割と生徒の評価法について、十分に論じることが重要だといえるでしょう。

[参加者とのQ&A]

Q:オンライン英語教育が進展する中で、教員はどのような役割を担うべきでしょうか。
A:オフラインとオンラインの相乗効果を考えた指導を心がけることが重要です。オンラインは、1つの独立した教育プログラムとして発展するでしょうが、それをどのように活用するかを指導したり、準備したりするのは先生方の役割です。さらに、生徒1人ひとりの発達的プロフィールを、先生が把握しておくことも重要です。

公立高校におけるオンライン英会話の実践例

<講師>
(左)校長 本郷 宏一 氏 (右)英語科教諭 森 啓樹 氏

神奈川県立横浜氷取沢高等学校

令和2年度から、オンライン英会話を導入している神奈川県立横浜氷取沢高等学校。英語教育を変革させる可能性を持つオンライン英会話だが、これが“国際理解を深める”という大きなゴールに向け、どの程度の効果を生むかは未知数だ。同校の本郷宏一校長と英語科担当の森啓樹教諭に、 「スピーキング・プレゼンテーション」などアウトプット中心の授業展開について語ってもらう。

オンライン英会話導入の経緯について

横浜氷取沢高校は、神奈川県が平成27年度からスタートさせた「県立高校改革」の1期計画として再編・統合され、令和2年4月に開校した全日制普通科の県立高校。“主体性”“多様性”“自らの課題に挑戦”という3つの教育目標を掲げており、普通科高校ですが、英語教育や国際教育に力を入れています。その1つが、ICTを活用した授業。全ての教室に電子黒板と液晶プロジェクターを設置し、生徒1人に1台タブレットを導入しています。また、本校は統合前からオーストラリアや韓国の高校と相互訪問をしており、その取り組みは統合後も国際理解に向けた活動として継続することになりました。

開校後の令和2年度入学生から、2・3年とは異なる新カリキュラムで学んでおり、英語の授業が週7時間、2年生・3年生でも少なくとも6時間あります。コミュニケーション能力の育成を中心とした「コミュニカティブ・スキルズ科目」は週2時間の学校設定科目で、ほかの学校指導科目とうまく結び付くよう英語職員と一緒に考えました。

本校における英語教育・科目開発について

「英語教育」において力を入れているのは、以下の計5点。

(1)    多彩な英語科目
(2)    ALTとのTT授業
(3)    少人数学習
(4)    Speech Contestの実施
(5)    英語外部試験の活用

リスニング、リーディング、ライティング、スピーキングを4技能から、さらにスピーキングをやり取りと発表に分けた5領域を伸ばす授業づくりを考えました。その一環として、統合前から行っていたスピーチコンテストは継続を決定。授業中、生徒全員が発表する予選会を行い、また、GTEC(英語4技能検定)も導入しました。希望者には、英語検定試験の1次試験を校内で実施しています。
前述した「コミュニカティブ・スキルズ科目」について、生徒が英語力を伸ばせるよう配慮したのが教材です。国内・外の英語教材を取り寄せ、比較検討した結果、ALTとのチームティーチングを活かせる海外のテキスト採用が決まりました。

また、オンライン英会話導入が保護者の大きな負担にならないよう、費用と内容の両面から検討。自宅での振り替え受講が無料なこと、長期の休みには生徒が予約し、スマホやタブレットで受講できることに着目し、「weblio」(現在はGRASグループ)に決定しました。weblioでは講師が生徒のレベルに合わせたレッスンを提供するので、1人ひとりが充実感を得られているようです。

オンライン英会話の活用事例について

令和2年度入学の1年生(現2年生)の「コミュニカティブ・スキルズⅠ」にオンライン英会話を導入し、4月から授業を実施する予定でしたが、新型コロナ禍による休校で、急きょ自宅での受講に切り替えました。夏休みには自宅受講を活用し、レポートを課す形で実施。12月にようやく授業が実施でき、冬休み・春休みは自宅受講してもらいました。

授業においては、当初からプレゼンテーションを意識した組み立てを考慮しており、「将来就きたい職業」をテーマにプレゼンを行う授業を実施。生徒たちは自分で調べてスライドをつくり、英語でのプレゼンを行いました。その後、オンライン英会話の際に講師が将来の職業について尋ねると、生徒たちはプレゼン内容を英語で説明したそうです。講師からのフィードバックを含め、授業内容と関連させることができた良い例だったと思います。

オンライン英会話について、生徒対象にアンケートを3回行った結果、回数を重ねるごとに「とても楽しいと思う」「やや楽しいと思う」が90%を超えました。実践後の生徒の感想としては、「イディオムを使って表現の幅を広げたい」「イントネーションを良くしたい」「単語と単語のつながりを意識して読みたい」など、文法や慣用表現、音声面での意識の向上などが見られました。

国際交流への波及効果については、海外渡航ができない現状を踏まえ、オーストラリアの姉妹校とのオンライン交流を実施中です。最後に、オンライン英会話の今後の展望についてですが、真の英語力を身に付けるためにも効果的なメソッドと考えています。個々の生徒の習熟度に合わせた展開が可能ですので、今後もオンライン英会話を年間指導計画に組み込み、生徒のモチベーションを高めていくことを考えています。

[参加者とのQ&A]

Q:参考までに、ツール導入の際の問題点と、その課題解決法を教えてください。
A:公立高校なので、やはり導入費用の面が大きな課題となりました。これについては、学年集会や保護者会で、英語教育に力を入れている学校だということを皆さんに理解して頂くことで解決しました。また、オンライン英会話の意義をどういうふうに落とし込んで行くかという点について、英語科の教員とともに十分な検討を行いました。

コロナ禍におけるICT活用とオンライン英会話

<講師>
梶川 勝正氏

GRASグループ株式会社 執行役員
SDX事業本部 事業企画部部長 

コロナ禍に伴うGIGAスクール構想の前倒しなどで、教育現場におけるICT環境整備が加速した。引き続き令和3年度からは、“ICTの利活用”が新たな課題となるわけだが、コロナによる入国制限の長期化で、全国、特に地方都市の学校ではALT不足が深刻化している。GRASグループの梶川勝正さんが、オンライン英会話を活用することで、ALT不足をどのように解決できるか、新しい授業形態や英語力習得効果について語った。

ALTの派遣制限による発話機会の減少について

ALTに関する課題で特に大きいのは、派遣・雇用形態の不安定さと、日本の先生と連携する難しさです。これに、渡航制限によりALTが日本に入国ができない状況まで加わり、困惑している学校が少なくありません。関東エリアのある県立高校の場合、派遣される予定だったALTが来日できなくなり、教員自らALTを探したもののなかなか見つからず、元々の予算と合うICTサービスも無かったことから、自治体を通じて当社のオンライン英会話についてご相談頂くことになりました。

この高校の場合、年8回ほど当社のオンライン英会話を実施して頂いた結果、ALTの時よりも発話量が格段に増え、今後は学校全体に広めていく予定との反応を頂きました。初年度は補助金を活用し、次年度以降は受益者負担にする予定とのことです。

一般的なALTとオンライン英会話とを比較した場合、ALTが1人対30〜40名(クラス全員)であるのに対し、オンライン英会話は1対1のマンツーマンで、教材は生徒それぞれが選択可能。自身のレベルに合わせて受講できます。発話時間については、実際の50分授業だと1人あたり1分ほどですが、オンラインなら丸々30分。年間10回実施をすると、授業の方は合計発話量が10分ほどですが、オンラインなら300分・5時間分になります。


GIGAスクール構想の前倒しによるICT利活用

コロナ渦で、GIGAスクール構想が一気に前倒しになりました。タブレットも1人1台用意できたと思いますが、これを“授業でどう活用するか”が今後の重要課題だといえます。当社のオンライン英会話は、非常に有効なICTコンテンツの1つであり、タブレットやPC、Chromebookなどをフル活用し、英語学習が可能です。

費用は、対象学年、回数、教材など、各学校の目的に合わせて設定可能。実際の費用ですが、1レッスンあたり1100円(税込)くらいです。モデルケースでは、1学年(4クラス)・年間10回実施、160人×1万1000円で、176万円になります。例えば1自治区内・5校に適用した場合は880万円(税込)ほどです。2学年にする場合、回数を半分にすれば同じ金額で済み、予算に合わせて回数や人数を調整することができます。

ちなみにALTと比較すると、諸費用込み1人約700万〜800万円ですからかなりの予算圧縮が可能なのです。ただしALTは、ディベートやディスカッション、プレゼンなど、英語を使って協働する活動にフォーカスすることが可能という特徴があるので、それぞれの利点と役割を考慮した授業づくりが重要だと考えています。

学習指導要領改訂による統合的な言語活動の実施

新しい学習指導要領の施行に関して、主な変更点は以下の3点です。

(1)聞くこと、読むこと、話すこと、書くことの言語活動およびこれらを結び付けた統合的な言語活動の実施
(2)実際のコミュニケーションにおいて、目的や場面、状況などに応じて適切に活用できる技能を身に付ける
(3)論理の構成や展開を工夫して、話したり書いたりして伝える。または伝え合うことなどができるようになる

この3点を踏まえ、4技能5領域をバラバラに習得するのではなく、統合的に学んでいくことを考えた場合、スピーキングを導入することが非常に効果的です。実際のコミュニケーションでも、外国人講師と1対1で、自然な会話表現を身に付けることができます。事前学習として文章を読んだり、聞いて理解したりすることもできる教材を準備しています。また、事後学習としては、うまく伝えられなかった部分を講師からフィードバックしてもらうことで復習が可能です。

中学1年生〜高校2年生を対象に、期間が5日間、1日あたり25分×3コマのオンライン英会話を実施した後のアンケート結果によると、「自信を持って会話できたか」「理由や考えとともに意見を伝えることができたか」「ぎこちない沈黙や間をつくらずに自然に会話できたか」などの質問に対し、いずれもポイントがアップしました。1対1のマンツーマンレッスンを繰り返すことで、自信がついたり自分の意見をしっかり伝えられるようになったりという、態度変容が見られます。この「態度変容」は、非常に大切な項目です。生徒が英語に対してポジティブな感覚が身に付くことによって、自走のエンジンが積まれていき、実際に授業を離れた後でも海外への興味が高まり、英語への学習意欲が高まることが考えられます。

ALTを取り巻く課題は、特に地方都市の学校において深刻です。コロナ渦以前からALTの補てんができないという問題も数多くあったようなので、オンライン英会話を利活用することが有効な対策の1つだと考えております。

[参加者とのQ&A]

Q:デジタル機器の扱いに不慣れな職員もいますが、導入時や導入後にはどのようなサポートをお願いできますか。
A:事前に回線などの確認を行った上で、導入前には、先生方に講習会やデモレッスンを受けて頂けるようにしています。また、初回利用時には当社スタッフが立ち会い、サポートおよびフォローアップをいたします。

Q:テスト~導入期間はどのくらいだと考えておけば良いでしょうか。
A:期間的な縛りは特に設定しておりませんので、導入時期や生徒数の規模などに応じて柔軟に対応いたします。

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