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【セミナーレポート】地域経済に活路を開く!失敗事例・成功事例に学ぶ地方創生術

人口減、歳入減などで将来への課題が山積する現在。自治体は地域経済をどう活性化していけばいいのでしょうか。今回のセミナーでは、ニューノーマル時代におけるまちづくりの考え方と成功事例を専門家に紹介していただきながら、地方創生のヒントを探りました。当日の様子をダイジェストでお伝えします。


[概要]

■タイトル:ニューノーマル時代を生き抜く為の地方創生の在り方とは?
■実施日:2021年2月25日(木)
■参加対象:自治体職員
■開催形式:オンライン(Zoom)
■登録者数:237人
■プログラム:
 第1部:「コロナ禍における地域間競争を生き抜く方法」
 第2部:「応援の連鎖がまちを変える~油津商店街・那珂川市からみる地方創生のカタチ~」


第1部
「コロナ禍における地域間競争を生き抜く方法」

コロナ禍の社会では多くの変化が起きた。様々なニューノーマルが提唱される中、自治体は何を指針に動けばいいのだろうか。ここでは、地方創生の専門家が現状を分析しつつ、地方の抱える課題とその解決策についてアドバイスする。

<講師>

一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンス代表理事
木下 斉さん

プロフィール
早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。一橋大学大学院商学研究科修士課程修了、修士(経営学)。各地での事業開発だけでなく地方政策に関する提言も活発に続けている。主著に『地元がヤバイ…と思ったら読む凡人のための地域再生入門』(ダイヤモンド社)、『福岡市が地方最強の都市になった理由』(PHP研究所)、『地方創生大全』(東洋経済新報社)がある。

“観光”と“教育”からの分析

コロナ禍では、様々な局面で地域の明暗が分かれました。例えば“観光”という面では、インバウンド頼みで成長してきた地域で反動が如実に現れています。そもそも、インバウンドの市場規模は約4兆円、国内観光産業の規模は約20兆円です。コロナが収束し人の動きが戻った時に、この20兆円の市場に支持されるか否かが、地方の存続に大きく関わってきます。地域の魅力を見つめ直し、そこに付加価値をつけていかなくてはならないのです。

また、“教育”の変化も同様です。GIGAスクール構想の加速などもあり、教育は分岐点に入っています。そうした中でモデルケースとして挙げられるのが、N高等学校(以下、N高)のスタイルです。

N高は角川ドワンゴ学園が運営する、ネットと通信制高校の制度を活用した高校です。2016年4月の開校から5年目で生徒数が1万6,000人以上。コロナ禍でもスムーズに授業を継続し、注目を集めました。

ネットで学ぶというN高のスタイルでは、新型コロナのような感染症の影響を受けることはほぼなく、地域の枠組みもなくなります。また、学校側も校舎・敷地・職員などのコンパクト化が可能。こうした新たな教育機会を作り出せるか否かで、地方の未来が変わってくるのです。

「まちを経営する」という地方創生

観光と教育の一例を示しましたが、変化は社会全体で起きており、自治体も対応していかなくてはなりません。しかし、コロナ禍でお金を一気に吐き出したため、どの自治体も財政が危機にひんしています。今後は様々な施策をよりシビアに考えていかなければなりません。

同時に、国の補助を頼るのではなく、地域が自立できるように、自治体の保有財産―道路や公園、公共施設なども、財源に結びつく資産として活用していく必要があります。そこで私が提案する地方創生は“まちを1つの会社と見立てて経営する”こと。基本は下図の通り、入ってくるものを「増やして」、地域内の経済を「回して」、出ていくものを「絞る」という考え方です。

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失敗したモデル事業に学ぶ

上記の観点でみると、今、地方に決定的に欠けているのが「回して」の部分、すなわち住民の労働所得と地場企業の資本所得です。この両者は密接につながっているため、外から人気企業を引っ張ってきても地域活性化の効果は期待できません。地場企業こそが地域の財産となるので、地域外から稼ぐ域外収支を重視しつつも、地域内の経済循環を高めていく“自前主義”を重んじなければならず、これができるかどうかで明暗が分かれます。

また、地方創生は主に人口問題をベースとして語られますが、将来的に人口が減ることは明確。この事実を前提に、まちが存続していける施策を考えなくてはなりません。人口回復のロジックはありませんが、少ない人口でもやっていけるロジックを考えることはできるはずです。

この“縮退社会に合わせる”ということに逆行すれば、地域のプロジェクトは失敗に終わります。代表的な例が、地方都市でモデル事業として建設された巨大商業施設です。巨額を投じて作ったものの、経営が立ち行かなくなり、負債を抱えて自治体が支援する羽目になる。こうした例は、かつて人口が増え続けていた時代のイメージでアクセルを踏んでしまったから起きた事故だといえます。

逆算開発で地元にマッチした地域おこしを実現!

こうならないための手法の1つとして、逆算開発というものがあります。これは従来の施設開発における、予算を決めて開発してテナントを募集する…という流れではなく、逆にテナントを募集するところから始めて、入ってくる金額から逆算し開発予算を決めるというものです。

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私たちはこの手法をとりながら各地で地域開発を進めています。テナントは、入ってもらったからには応援します。そこが盛り上がってくると、周りにも人や店が集まるようになり、やがて地域全体が活性化されるのです。例えば、岩手県紫波町の公民合築施設「オガールプラザ」は、逆算開発に基づいた戦略で地元にマッチし、成功を収めています。紫波町は盛岡市と花巻市の中間に位置しており、地理的に集客には不向きだと言われていましたが、ここではテナントもオガールプラザ自体も紫波町も黒字、という好結果を生んでいます。

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縮退社会に合わせていける地域と、昔のやり方に固執する地域とでは、大きな差が出ることは必至です。それは資金調達にも影響します。開発資金を集めるのには様々な方法がありますが、公的なお金ばかりではなく、民間が投資したいと思うような魅力づくりも不可欠です。それが地元の資本であれば、地域内でお金の循環も生まれ、全体として良い結果を生み出せるようになるのです。「地域開発で問題になるのは、環境条件ではなく方法論である」、この点を忘れてはなりません。

第2部
「応援の連鎖がまちを変える~油津商店街・那珂川市からみる地方創生のカタチ~」

地方創生は自治体だけの力では成し得ない。住民の協力や民間事業者の知見などが不可欠だが、それをどのように活かせば良いのか。九州を拠点に地方創生を手がけている“地域再生請負人”の言葉からヒントを探る。

<講師>

株式会社ホーホゥ代表取締役
木藤 亮太さん

プロフィール
宮崎県日南市の全国公募にて、2013年より油津商店街の再生に取り組み、約4年で25を超える新規出店、企業誘致などを実現。地元の福岡県那珂川市へ戻り、JR博多南駅前ビルを地域コミュニティのための場として再生。老舗喫茶店の継承などでも話題を呼ぶ。

「猫すら歩かない商店街」を立て直す

コロナ禍で明らかになった地方創生の本質は、地元経済の循環に重きを置かなければならないということ。つまり、自立したまちづくりです。そうした視点もふまえた上で、私からは具体的な例を紹介したいと思います。まずは、宮崎県日南市の事例です。

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宮崎県日南市にある「油津商店街」は、JR油津駅と港を結ぶルートにある、400mほどの古いアーケード街。以前は、そのさびれた様子から「猫すら歩かない商店街」などと揶揄されていました。ここを何とかしたいと日南市がプロジェクトを立ち上げ、公募で選出された私がテナントミックスサポートマネージャーに就任し、プロジェクトが始まりました。

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はじまりは1軒の古びたカフェ

商店街の近くに引っ越した私は、地域を知るためにまちへ足を運び、ひたすら話を聞きました。その中で聞こえてきたのが「商店街にあるシャッターが閉まって10年以上の喫茶店が、かつて地元の人が愛したたまり場だった」ということ。まずはここから始めようと決め、地元のパートナーたちと「株式会社油津応援団」を設立。カフェの改修費1千万円のうち、200万は補助金、残り800万は銀行から借り、「ABURATSU COFFEE」をオープンさせました。

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新しいカフェのオープンで少し活気が出て、周りにも店舗が入り始め、民間の出資者も集まってきました。「地域を何とかしたい」という気運が高まってきたその頃に着目したのが、広島東洋カープのキャンプです。

カープのキャンプは、商店街から徒歩5分ほどの球場で行われています。しかし、商店街にはそれを活かそうという発想がありませんでした。そこで新規プロジェクトを立ち上げ、アイデアを出しあい、カープファンに向けたランチマップの作成、球団にまつわるフード・ドリンクの考案、カープゆかりの品の展示などを実施。キャンプに訪れるファンを商店街に誘導しました。折よくカープが優勝を果たし、企画は波に乗ったので、さらに勢いをつけようと商店街で優勝パレードを行い、球場から商店街に至る道の路側帯をチームカラーの赤に塗ったりもしました。

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企業誘致の成功でシフトアップ!

また、油津商店街では、お店だけでなく企業の誘致も行いました。第1弾が東京のIT企業です。

地方都市から人が離れる原因の一つが「雇用がない」という点。若い人たちが働きたくなる職種が必要なのです。それに対しIT系の企業では、プログラマーやSEばかりでなく、事務系の人材なども必要としています。オフィスがどこにあるかという点は、今のご時世ではあまり問題になりません。

こうした背景をもとに、日南市は歓迎態勢を強化。東京のIT企業誘致に成功し、今は空き店舗だった場所を事務所にリノベーションして使ってもらっています。この事例で注目度も高まり、現在では12の企業がエリア内に入居。油津応援団はオフィスのデザインもサポートし、洗練された空間を作り上げています。これらの会社で働く人たちは総勢120人。20~30代が中心で、まちの活気と消費を生んでいるのです。

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雇用が生まれ、働く女性が増えると保育所が必要だということで、商店街に保育所がオープン。カープファンやビジネスマンの宿泊というニーズも生まれてゲストハウスが作られました。油津商店街では、プロジェクト期間の4年で29の店舗・企業が新規参入し、通行量は3倍に伸びたのです。

2つの顔を使い分けて官民を行き来する

以上が日南市の事例です。商店街の再生というより、ゼロスタートによる再構築といった方が近いかもしれません。

私は自治体から委託を受けた個人事業主であり、役割はお店を増やすだけでなく、地域の人たちを密接に関わらせていくことでした。この「関わり」が重要で、その層を厚くすると、いずれ自分たちでまちを動かせるようになります。その時にはもう、私がいなくても問題ないのです。

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もう一つ、私がサポートマネージャーという“公”の立場と、“民”としての会社取締役という、2つの顔を活かすことができ、色々な発想を自由に実現できたこともプロジェクトの成功つながったと感じています。これは地域を問わず、今後のまちづくりの参考になるかもしれません。

そして、日南市のノウハウも活かしつつ、現在の私は福岡県那珂川市のまちづくりに携わっています。

ベッドタウンのライフスタイルに変革を

那珂川市は人口約5万人で、規模としては日南市とほぼ同じ。しかし、まちの背景は大きく異なります。

日南市は…
・交通アクセスに難があり陸の孤島のようなまち
・人口は戦後のピーク時(約9万人)から減り続けている
・地域住民は主に地元で働いている

那珂川市は…
・福岡市に隣接、新幹線の駅もあり約8分で博多に行ける
・戦後1万人近くだった人口は、ベッドタウンとしての発展で増え続けている
・地域住民は違うまち(福岡市)で働いている

このような差異があり、日南市とは活性化の方向が変わってきます。そこで私が立てた方針は「住むまちから暮らすまちへ」というものでした。住民が生産活動を福岡市で行う流れはそのままでいいが、消費活動は那珂川市で行う方向に変えていこう、と考えたのです。

施設と市民活動を活性化する仕掛け

私が最初に着手したのは、駅前ビルの再生です。那珂川市にある新幹線の「博多南駅」は、市の玄関口であるにも関わらず、盛り上がりに欠けていました。そこで、ビル内にコミュニティスペースを設け、ビアガーデンやカフェをつくるなどして、地域の若い世代が使えるように時間をかけてアップデートしていきました。

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また、「まち活UPなかがわ」という事業を通して、市民のチャレンジを生む取り組みも進めています。これは、「私はこれをやりたい」とチャレンジ宣言して、実際にイベントを実施したり、ショップを始めたりするというもの。現在は感染症を考慮して、オンラインでコミュニケーションをとりつつ、WEBにも活動の場を増やしています。

地方都市の“誇り”を取り戻す!

もう一つ、最近の私の活動として、喫茶店の経営があります。那珂川市の県道沿いに、40年近く地元で愛されている「キャプテン」という喫茶店があるのですが、オーナーが高齢のため廃業することになりました。それに対し、市民から惜しむ声が上がったので、私が経営を受け継ぐことにしたのです。

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前述の通り、那珂川市はベッドタウンとして人口も増え、まちもどんどん新しくなっています。しかし国道を走っていて目に入るのは全国チェーンの看板ばかり。便利になった反面、どこにでもあるまちになりつつあるのです。「キャプテン」は、そうした流れの中で、那珂川らしさを取り戻そうとするカフェです。基本は現状維持で、メニューも味も前オーナーの方針を守っています。こういうまちづくりの側面もあっていいと思うのです。

以上、日南市、那珂川市の事例を紹介しましたが、私が伝えたいのは「地方創生=まちのにぎわい」という単純なものではない、ということです。新しくお店ができることや、人通りが増えることも大切ですが、「一人ひとりが課題意識をもって考え、動く」ということが継続的に起こり得るまちになることが、本当の地方創生ではないか、私はそう考えています。

今、多くの地方都市は自分たちのまちに対する誇りを失っています。それは、未来を失うということに他なりません。まちの未来のためにやるべきことを、実直にやり続けること、そのチャレンジの連鎖、応援の連鎖がまちを元気にしていくのだと思います。



 

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