ジチタイワークス

岐阜県岐阜市

“健康”と“観光”を同時に強化、ウォーキングで実現するまちづくり。

人生100年時代において、市民が自ら生活習慣病予防、介護予防に取り組める社会環境の充実が必要であるとして、以前から“歩くまちづくり”に取り組んできた岐阜市。

現在、積極的に推進しているのが、健康増進と観光資源活用を組み合わせた「クアオルト健康ウオーキング」だ。同市の小川さんに、取り組みの概要や実践ポイント、参加者の反応などについて話を聞いた。

※下記はジチタイワークスVol.12(2020年11月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[提供]岐阜市

ドイツの運動療法が基本の自然を活用したウォーキング。

クアオルト健康ウオーキングは、ドイツのクアオルト(健康保養地)で自然の地形や気候を活用して行われる、参加者の状態に応じた無理のない歩行を基本にした運動療法をもとに考案されたもの。心身の健康づくりのためのウォーキングだ。自然を楽しみながら、安全・快適に運動効果が得られるように専門家が設定したコースを、実践指導者(ガイド)とともに歩く。

岐阜市では令和元年から専門コースの選定やガイドの育成などの環境を整え、今年6月から「クアオルト健康ウオーキング講座」として本格的に稼働させた。

「金華山・長良川・岐阜公園コース」(全長2.32km)と「百々ヶ峰・ながら川ふれあいの森コース」(全長3.15km)という岐阜市ならではの自然、歴史、伝統文化を感じながら歩くことができる2種のコースを設定し、両コース合わせて月に10回の講座を開催している。定員20人がすぐに埋まる回もあり、好評を得ているという。

クアオルト健康ウオーキングの価値はガイドが生み出す。

人気の理由はガイドにあると小川さんは話す。「ガイドは健康運動指導士、看護師、保健師といった専門の資格を持っており、さらに独自に勉強して地形や観光名所、植生などの知識を身に付けている人もいます。少しでも楽しくウォーキングできるよう、日々創意工夫しています」。

現在9人のガイドが在籍しており、1回につき4人が同行。血圧、心拍数、体表面温度を測定しながら、個人の体力に合わせた運動強度(55~60%)に気を配り、興味を喚起する話題を提供しながら、全参加者を最後まで安全に導く。「それぞれに能力と個性を持ったガイドたちが要所要所で役割分担しています。クアオルト健康ウオーキングの価値はガイドが生み出しているといえますね」。なお、参加者の測定値などの情報は、後にエビデンスを確立するために収集・分析され、役立てられるそうだ。

人と話すことへの欲求も、人気を後押ししているのではないかと小川さん。「コロナ禍でコミュニケーションの機会が減っています。参加者の6割強が60~70代ですが、この世代では特にその傾向が大きい。アンケートでも『コミュニケーションを取りながら歩くことが、こんなに貴重なものだったのかと初めて気付いた』という感想がありました」。

 

ウォーキング中に自然だけでなく、歴史文化資産にも触れられるのは都市型モデルならでは。

人口40万以上の都市で初導入、都市型モデルとして先例に。

クアオルト健康ウオーキングは現在20の自治体で導入されており、ウオーキングの普及に努める日本クアオルト研究所が指導している。希望する自治体は、認定コースの整備、ガイド養成研修、コースマップ作成などの支援が受けられる。岐阜市は、同研究所が主催する「太陽生命クアオルト健康ウオーキングアワード※2018」で優秀賞を受賞した。

これまで山間地域での取り組みが多かった中、岐阜市は人口40万以上の都市で初の導入となった。都市でありながら豊かな自然や歴史文化資産を有し、これらを周遊できる同取り組みは地域の魅力づくりに最適だった。市民の健康増進と交流人口の拡大、つまり“健康と観光”の両輪で取り組むまちづくり。まだ始まったばかりではあるが、クアオルト健康ウオーキング・都市型モデルとしての好例になっていくだろう。

※「クアオルト健康ウオーキングを活用したまちづくりビジョン」に対して表彰するアワード。太陽生命保険株式会社が支援・協賛している。同アワード2020が開催中

Interview

「クアオルト健康ウオーキング」は、ガイドの皆さんの尽力あってのものだと思います。毎回ミーティングを行い反省点を洗い出して改善しているので、回を重ねるごとに質がアップしています。新型コロナウイルス感染症の終息を願いながら、さらなるブラッシュアップに精を出したいと思っています。

岐阜市 保健所 健康増進課 健康プロジェクト推進係 小川 雅史さん(おがわ まさし)

取り組みを支えてくれている個性豊かなガイドの皆さん。

 

課題解決のヒント&アイデア

1.健康増進と観光振興の組み合わせ

生活習慣病予防や介護予防に効果的なウォーキング実践環境の充実を考える中で、観光地としての魅力向上という別の重要課題と結び付いた。いずれも以前から取り組んでいたが、同取り組みで理想的な融合が図れた。

2.市長をトップに推進本部を立ち上げる

クアオルト健康ウオーキングの普及を図るべく、施策の立案や推進を目的に「岐阜市クアオルト推進本部」を庁内組織として設立。民間では協会けんぽや医師会、企業、観光業界の参画による「岐阜市クアオルト推進協議会」を設立した。

3.個性を活かしたガイドの活躍がカギ

ガイドとして必要な資格にもとづいた技能や知識のみならず、独自の持ち味があり、観光資産や歴史、植生や生態系などについて積極的に知識を得ようとするガイドの熱意が、大きなアドバンテージに。ファンが付いているガイドもいる。

 

参加者アンケートの結果

9割以上が「楽しかった」、口コミ効果の高さにも注目

◎参加した感想
 楽しかった・・・・・・・・・・・・・・・・94%
 楽しくなかった・・・・・・・・・・・・・・0%
 どちらでもない・・・・・・・・・・・・・・6%

◎また参加したいか
 したい・・・・・・・・・・・・・・・・・・・83%
 したくない・・・・・・・・・・・・・・・・・0%
 どちらでもない・・・・・・・・・・・・・17%

◎何で見て応募したか
 広報ぎふ(岐阜市の広報紙)・・・69%
 友人・知人の紹介(口コミ)・・・・26%
 その他・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5%

◎周囲にクアオルト健康ウオーキング
 を勧めることは有意義か
 はい・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・97%
 いいえ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3%

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