キャリア教育の重要性が叫ばれて久しいが、依然として「自分に自信が持てない」「目標が定められない」と感じる若者も多い。教育現場では、どのような働きかけが有効なのだろうか。そこで、写真(卒業アルバム編集システム)を用いたユニークな取り組みを進めている「道々楽者(どうどうらくしゃ)」の佐藤さんを取材した。
※下記はジチタイワークスVol.11(2020年9月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[提供]株式会社道々楽者
自分とは?進みたい未来は?考える機会が少ない若者たち。
プロの写真家として、母校である高校で市民講師を約10年務めてきた佐藤さん。生徒と向き合う中で、度々、自己肯定感の低さを感じてきた。「決まった課題に対して、上手にこなす生徒は多い。その一方で自由課題と向き合うと、途端に自分のつくりたいものが見つからないことが多いんです」。写真事務所の経営者として採用面接などを行う際にも同様の課題を感じるのだという。
「若者が自分の存在を認め、切り拓くべき未来を見つける機会を提供したい」。そこで注目したのが、長年制作に携わってきた卒業アルバムだ。従来のアルバムは、受け取ったときに友人と盛り上がって見るものの、そのまま押入れの奥にしまい込んでしまうケースも少なくない。「単なる記念品で終わらせるのはもったいない。卒業という節目に自分自身について考える時間を持つツールにできたら」。そこで開発を思い立ったのが、生徒自身が写真を選び、アルバムを編集できるシステムだった。過ごしてきた学校生活を振り返り、客観的に写真を見ることは、自分自身の棚卸しにもつながる。結果として「このときに頑張ったから今の自分がある」と、自分を肯定するきっかけにもなると考えたのだ。
アルバムの編集作業を通し自分と向き合う時間を持つ。
そうして産声を上げたのが、卒業アルバム制作を支援するウェブシステム「オリアル」だ。生徒と先生それぞれにアカウントが発行され、PCやタブレットを使えば、ウェブ上でアルバムの編集が可能。どの写真を使うのか、何枚使うのか、どう配置するのかは生徒次第。これにより、一人ひとり違うアルバムが完成する。開発段階では、直感的な使いやすさに配慮したという佐藤さん。一方で、自分の写真が簡単に探せる顔認識機能等はあえて採用していない。「自分以外の写真も見てほしい。このときにこんなことがあったなと、記憶のトリガー(引き金)を探し、振り返ることが大事だと思うからです」。
選んだ写真は自分で配置場所を指定できるが、自動配置してくれるボタンも用意されている。意欲がある生徒はゼロからどんどんつくり込めるし、自信がない生徒は自動配置を使うことで、ある程度、土台ができた状態からスタートできる。生徒の取り組む意欲やスキルに合わせて活用できるというわけだ。
アルバム編集のおおまかな流れ
1.イベントごとに整理して写真をアップロード
2.お気に入りの写真に☆印を付ける
3.アルバムをレイアウト(選べるテンプレートは75種類)
編集完了!
自己肯定感を高めるための授業プログラムも提案。
オリアルと並行して開発を進めてきたのが、自己肯定感の向上に着目した授業用プログラム「マイドキュメンタリー」だ。この授業は、学校生活を振り返る個人ワークから始まる。その中から“今の自分”につながるエピソードを3つ選び出し、ペアやグループワークで意見交換を行いながら、より深く自分と向き合う。さらに、オリアルを活用して写真と文章でエピソードをまとめ、自分の現在・過去・未来について、他者にも伝わるようにプレゼンテーションを行うという流れだ。先生用のワークシートには、授業を進める上での細かい設定や時間配分などが記載されている。
オリアルとマイドキュメンタリーの本格始動は令和3年度から。今年度は、教職員や教育委員会との意見交換会をはじめ、小・中学校や高校での実証実験を展開していく予定だという。「現場の方々にフィードバックをいただきながら、よりよく改善し、精度を上げていきたい」と意気込む佐藤さん。
生徒が楽しみながら取り組める新たな教育コンテンツとして、今後の動きに注目したい。
道々楽者 代表取締役 佐藤 太志朗(さとう たいしろう)さん
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写真を使った新たな教育コンテンツ!
オリアルの強みとは
1.ウェブ上でいつでも簡単に編集
制作できるアルバムは最小6ページから。ブラウザシステムを使用するため、専用ソフトは不要だ。ウェブ上で完結するので、写真のやりとりや校正などの負担を軽減。学校や家庭のパソコンもしくはタブレットなどで編集できる。
2.一人ひとり違うアルバムが完成!
全員共通の「固定ページ」と、一人ひとり違う印刷を行う「自由ページ」を設定。写真の選択や配置、ページレイアウトで個性を発揮できる※。レイアウトのテンプレートも75種類と豊富!
3.手持ちの写真も掲載可能
使いたい写真をアップロードしてアルバムに掲載が可能。スマートフォンからもアップロードできる※。
※申し込みプランによって、利用できる編集機能は異なる。詳細はホームページを参照
マイドキュメンタリーとは
写真家として数々の学校現場を訪れ、また、指導者として教壇に立ち続けてきた経験を持つ佐藤さんが考案した「授業プログラム(指導案)」。アルバム制作のオリアルを活用しながら、生徒の自己肯定感を高めるとともに、他者とのコミュニケーション技術を身につけることを目的に設計されている。
授業を行う目的
・自己肯定感の向上
・共感・他者承認の実践
・人に伝える手法の実践
授業プログラムのおおまかな流れ
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対象:小・中学校、高校 受付期間:9月25日(金)~12月25日(金)
実施期間:10月1日(木)~3月26日(金)募集自治体数:先着10自治体を予定