ジチタイワークス

宮崎県日南市

グリーンフラッグでコロナ対策の実施を見える化。

新型コロナウイルス感染症に関する報道が続いている。不安は尽きることなく、なかなか安心して出歩くことや外食、買い物をすることができない。一方で、飲食店や小売店などの事業所は、感染予防対策をしっかり行っていても外からでは分かりにくい。そんな両者の溝を埋めるため、「グリーンフラッグモデル」を広めている日南市の蛯原さんに話を聞いた。

※下記はジチタイワークスVol.11(2020年9月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[提供]宮崎県日南市

多くの観光客が訪れていた地域も緊急事態宣言によって一時休業に。

宮崎県南部に位置する日南市。美しい海と山に囲まれて、カツオやマグロ、マンゴーなど海と山の幸の宝庫といわれている。また、九州の小京都と称される飫肥や鵜戸神宮、日南海岸など歴史と観光資源が豊富。プロ野球やJリーグチームの合宿地としても知られており、国内外から年間180万人ほどの観光客が訪れていた。

ところが、「4月初旬に初めて日南市で新型コロナウイルスの陽性者が確認されて、市内でも緊張感が高まりました」と蛯原さんは振り返る。4月16日に緊急事態宣言が全都道府県に拡大されると、同市でも休業する店が増加。それでも、5月14日に宮崎県が対象地域から除外されたのを機に、なんとか営業を再開した。

感染予防への努力を可視化して事業所と市民の不安を解消する。

緊急事態宣言が解除されたからといって、すぐにもとの生活に戻れるわけではない。そこで日南市は先手を打ち、5月12日に「グリーンフラッグモデル」を発表した。これはいわゆる新しい生活様式を取り入れつつ、地域経済をまわしていくための取り組みだ。飲食店などの事業所は、宮崎県のガイドラインをもとに同市が作成したチェックリストなどを活用して感染予防対策を行い、店頭にグリーンフラッグを掲げることで、“感染予防対策を行い、安心して利用できる事業所(店舗)であること”“安心して外食や買い物ができる期間であること”を市民に知らせることができる。これは事業所側の自主的な取り組みであり、市が感染予防対策の承認をする制度ではない。

「自粛によって厳しい状況に陥った事業者さんから、お店を開けてもいいだろうかと相談されることがありました。また、市民の皆さんからはお店に行くのが不安という声も聞こえていました。そこでどうにかできないかと考え、感染予防対策を見える化するために“グリーンフラッグを掲げよう”というアイデアが持ち上がったのです。旗を緑にしたのは、感染症対策の一環で大阪の通天閣が緑にライトアップされていることにヒントを得て、緑は“安心”をイメージする色だと感じたからです」。

臨時の記者発表を行い、この取り組みはテレビや新聞の報道を通じて市民へ広く知られるように。フラッグを市役所まで取りに来てもらうようにしたところ、現場の話を聞くこともできるようになったという。フラッグは窓口で配布、チェックリストはデータでも配布するため、その2点が準備できればそれ以外のコストはかからない。同市では、すでに500枚を配布し、飲食店やスナック、スーパー、金融機関などに掲げられている。事業者からは「フラッグを掲げることでお客様にも安心して来てもらえる」という声も届いた。

飲食店でのカード運動と、家庭での意識づけも開始。

さらに7月30日、同市は「グリーンカード運動」を始めた。主に接待を伴う飲食店でクラスターが発生した場合、濃厚接触者を追跡できるよう来店客に氏名と連絡先を記したグリーンカードを提出してもらうという内容で、賛同店舗は自主的に取り組んでいる。同時に「グリーンフラッグプラス(家庭版)」も発表。自治会連合会から「グリーンフラッグモデルを家庭まで広げてほしい」という要望があったことから、全世帯にグリーンのステッカーを配布して感染予防を意識づけるとともに、市の職員などもグリーンのバッジをつけている。「日南市ではグリーンプロジェクトでみんなの意識を高め、Withコロナを乗り越えていきます」。

賛同した事業者の方たちが取り組みを盛り上げてくださって、とてもありがたいです。市民の“安心”を基本として、これからも市としてできることを考え、実行していきます。


日南市 商工・マーケティング課 マーケティング推進係 蛯原 遼(えびはら りょう)さん

課題解決のヒントとアイデア

1.フラッグだけでなくチェックリストの掲示も推奨

接待を伴う飲食店・それ以外の事業所に向けて、感染予防の具体的な項目を示した宮崎県のガイドラインをもとに、チェックリストを作成。これをフラッグと一緒に掲示してもらうことで、事業所にとっても市民にとっても、対策の内容が分かりやすくなる。

2.状況に合わせて基準を変更する

緊急事態宣言が解除されてすぐは「感染拡大地域からの入店自粛」など厳しい条件を設定していたが、段階的に緩和。逆に、国から特別警戒都道府県に指定された場合などはフラッグを下げるといったルールを設定し、状況に合わせた対応ができるようにしている。

3.意識づくりのきっかけにしてもらう

感染症対策に取り組むものの、すべて条件を満たすのが難しい事業所もいる。そのようにフラッグが掲げられない事業所には、この取り組みの意義を説明し、感染予防の意識を高めるきっかけにしてもらっている。

取り組みの反響

▶市民の自主的な動きも

取り組みに賛同した事業所が「元気に営業中」と書かれた緑ののぼりを掲示。ある小学校では、児童や教員が感染予防対策に取り組んでいることに対し、フラッグを掲示する動きも。さらに自治会連合会から家庭にも広げてほしいという要望があるなど、市民の意識が高まっていることが分かる。

▶「グリーンフラッグモデル」が他県にも波及

石川県七尾市の商工会議所から参考にしたいと連絡があり、同市内でも「#がんばろう七尾!グリーンフラッグ運動」が実施されている。

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