ジチタイワークス

埼玉県熊谷市

外付日よけの設置で室温の上昇を抑え「室内熱中症」の予防を官民協働で推進。

人と地球に優しい温度で「健康・快適」と「省エネ」の両立を目指す

猛暑日や熱帯夜の増加に伴い、熱中症で救急搬送される患者数が増えている。特に近年は、直射日光にさらされる屋外ではなく室内で熱中症に陥るケースが、高齢者を中心に増えているという。そうした事態を受けて環境省は、関係省庁および自治体、民間企業などと連携し、様々な熱中症予防対策を実施している。

※下記はジチタイワークスVol.10(2020年6月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[提供]株式会社LIXIL

Interview 01

熱中症増加はもはや社会が抱える課題の一つ

環境省 大臣官房環境保健部 環境安全課 主査 石橋 七生さん

自治体や企業と連携した全国規模の対策が重要。

平成22年の猛暑をきっかけに熱中症の予防意識が向上。

平成22年夏、国内平均気温は気象庁統計が始まって以来の最高値を記録、同年7~9月の熱中症による救急搬送人数は約5万3,800件を上まわった。「気温上昇に伴う熱中症増加については、課題の一つとして掲げていましたが、この年を境に、本省や関連機関、各自治体の意識が変わりました」と語るのは、環境省の石橋さんだ。

同省では、平成23年度から熱中症予防情報サイト内の「暑さ指数(WBGT※)」の実況値を、全国約150地点に増加。きめ細かな情報を提供できるようにしたほか、熱中症予防の啓発を図る資料を充実させていったという。

※熱中症予防を目的とした指標。人体と外気との熱のやりとり(熱収支)に与える影響の大きい ①湿度 ②日射・輻射など周辺の熱環境 ③気温の3つを取り入れて算出される。

一人ひとりへの呼びかけから“地域ぐるみ”の予防対策へ。

その後も様々な対策を推進したが、平成30年夏、熱中症による救急搬送人数が、過去最多の9万5,000人を超える事態が発生。石橋さん曰く、「これが、対策について見直す契機となりました。それまでは、一人ひとりに注意喚起を促す内容が主でしたが、災害級の猛暑を経験し、個人ができることには限界があると感じました。地域ぐるみで取り組まねば、大きな改善は得られないと考え、各自治体や企業の熱中症予防対策について幅広く情報を集めることにしたのです」。

そこで取り組まれたのが、「平成31年度熱中症予防対策ガイダンス策定に係る実証事業」。環境省支援のもと、熱中症予防の実証事業を行う団体を公募したのだ。「それぞれの地域の仕組みに合った熱中症対策の中から、新たな着想を得ようというのが狙いの一つでした」。

公募には自治体や民間企業から15事業の応募があり、その中から9事業が採択された。医師をはじめ学識経験者による審査委員会が、他自治体でも参考にしやすい内容を中心に評価したという。

実証事業による成果を、全国的な予防対策の参考にしてほしい。

その採択事業の一つが、埼玉県熊谷市とLIXIL(以下、リクシル)が協働で行う外付日よけを用いた実証事業だ。「暑さ対策で知られる熊谷市が企業と連携するという点は、採択のポイントの一つでした。それぞれの知見を活かして進められた結果、窓の外に日よけを設けることで、室温上昇を抑えられるという実証結果が得られました。熱中症は室内での発症率が高いのも特徴。特に発症リスクの高い高齢者の中には、電気代節約や冷房が苦手という理由で、エアコンをつけずに過ごす方もいます。そのようなケースの発症防止の一助になる取り組みだと思います。また、モニターとなった世帯において、外付日よけとWBGTやエアコン消費電力との関係等を調査した点も良かったですね」と石橋さん。

同省では、今年度も同実証事業を実施。令和2年度の実証結果を、3年度初旬頃までに「ガイダンス」として取りまとめる計画だ。また、WBGTにもとづいた情報を発信する「熱中症警戒アラート(試行)」も、来年度の本格実施に向けて整備中だという。

 

Interview02

熊谷市では「外付日よけの設置費補助金」も!

熊谷市 市長公室 政策調査課 杉本 正代さん

“暑さ対策日本一”を目標に掲げ多彩なアイデアで熱中症予防に取り組む。

民間企業とも連携しながら暑さから市民の健康を守る!

平成30年7月に観測史上最高気温を記録し、“日本一暑いまち”のイメージが強い熊谷市。しかし、単に暑いだけではなく、“暑さから市民の健康を守る”を課題に据え、防災無線やメール配信、広報車による注意喚起、若手職員を中心とした「暑さ対策プロジェクトチーム」を結成し、独自の事業に果敢に取り組む、“暑さ対策日本一のまち”でもある。

民間企業との協働にも意欲的で、平成29年からはリクシルとともに、室内熱中症予防を啓発する「クールdeピースPROJECT」に着手した。「熱中症で搬送される人の4割は、室内での発症です。暑さによる疲れの蓄積で重症化する場合が多いことも、ぜひ知ってほしい」と語るのは、熊谷市の杉本さんだ。

プロジェクト初年度には、同社が寄贈した外付日よけ「スタイルシェード」66セットを、市内の公立保育所など12カ所に設置。シェードの有無による効果を検証した。

室内熱中症対策の一環で「補助金制度」を開始。

検証結果を受け、同市とリクシルは、環境省による「平成31年度熱中症予防対策ガイダンス策定に係る実証事業」に参加。令和元年7月、市内24世帯と、無人住宅一棟を対象とした実証実験を行った。これにより、外付日よけを設置するとWBGT値の厳重警戒ライン(28℃以上)の状況を25%削減できること、外付日よけとエアコンの併用で、室温上昇を抑え温度が安定することなどが判った。

こうした取り組みを経て同市は、令和2年度から「住宅用外付日よけ設置費補助金」制度を開始。外付のサンシェードまたはブラインドを新たに設置した市民を対象に、購入・設置経費の5分の1(上限2万円)を市の商品券で交付する内容だ。

この制度を担当した環境政策課では、「内付のカーテンやブラインドよりも、外付の方が日射熱を軽減する効果が高いと判ったため、補助対象を外付のみにしました。今年度は200万円(2万円・100件分)の予算を組んでおり、より多くの方に設置していただき、効果を実感していただきたいと考えています」。

同課では、補助金の活用により、市民の室内熱中症への意識が高まり、予防対策が広がることに期待を寄せている。

 

外付日よけを使った実証実験の効果

令和元年 室内熱中症ゼロを目指して!
外付日よけ「スタイルシェード」実証実験における効果の一例

エアコン消費電力は遮光カーテンのほうが約30%高い。これは、シェードが部屋の外側で熱を遮るのに対し、遮光カーテンは部屋の内側で遮光することで窓とカーテンの間に熱がこもり、エアコンが強風運転をしてしまうことを理由として考察。窓の外側で日よけを行うことが熱中症リスクの低減に効果的であり、かつ省エネルギーにも貢献。

 

熊谷市の補助金制度

「住宅用外付日よけ設置費補助金」の概要

交付対象・条件

●市内在住で外付日よけを設置した方(住んでいる方)
●外付サンシェードと外付ブラインドが補助対象

申請の流れ

1.補助対象製品であるかどうかを確認の上、外付日よけを購入・設置。
2.設置後、支払いから90日以内に申請書に必要書類を添えて環境政策課へ提出。

補助金内容

購入・設置経費の5分の1(上限2万円)
熊谷市商品券で交付

 

Interview03

“室内熱中症から家族を守る”熊谷市とLIXILの取り組み

LIXIL LHT 営業本部 営業企画部 田中 邦義さん

 

熊谷市のような自治体と協働することで快適に過ごせる室内環境づくりを推進したい。

室内=安全ではない。室温に対する意識がリスクを防ぐ。

前ページで紹介した環境省や熊谷市と連携し、啓発活動を進めてきたのがLIXIL(以下、リクシル)だ。

「私たちは、様々な住宅設備やサービス等の提供を通じて、“健康で快適な住まいの実現”を提案したいと考えています。室内には安全なイメージがあるかもしれませんが、そうとは言い切れません。暑い夏には室内熱中症、寒い冬にはヒートショックのように、命を脅かすリスクが潜んでいるからです」と、リクシルの田中さんは警告する。

このようなリスクから身を守り、健康かつ快適に、しかもエコに過ごすためには、「ヒトと地球に優しい室内温度について知り、それを実践することが大切」だという。同社では、このような考えのもと、室内温度について考える「THINK HEAT」活動(次ページ参照)を進めてきた。その一環として、自治体と協働で行ってきたのが室内熱中症予防啓発を目的とした「クールdeピースPROJECT」だ。

自治体と協働しながら予防啓発活動を全国へ。

「私たち民間企業だけでは啓発活動の輪が広がりにくいと考えました。そこで、暑さ対策に熱心な熊谷市さんをはじめとする自治体と協働し、様々なプロジェクトを行ってきました」と田中さん(活動の詳細は下欄)。

室内熱中症に対する認知は上がってきているが、その主因が屋外からの熱の侵入であり、ドアや窓など開口部からの熱の出入りが73%を占めていることは、あまり知られていない。室内に取り付けるカーテンやすだれなど、なんらかの対策をしている住居でも、その方法によっては遮熱効果が十分ではなく、効果が実感できない人も少なくないようだ。そこでリクシルは、同社の外付け日よけ「スタイルシェード」を用いた取り組みで、その効果を検証。「窓の外側で適切に日射を遮蔽すれば、室内の温度上昇を抑えられる」ことを発信し続けている。

「今夏は、新型コロナウイルスの影響によって家で過ごす時間が増え、室内熱中症のリスクがより高まるかもしれません。このような時期だからこそ、予防の重要性を伝えていきたい。特に高齢者の多い地域など、様々な自治体との協働に取り組みたいと考えています」。

 

自治体と連携した「クールdeピースPROJECT」の歩み

平成29年/30年
熊谷市および熊本県西原村に外付日よけを贈呈

平成29年、熊谷市の公立保育所や子育て支援拠点など12カ所へスタイルシェードを66セット贈呈。翌年には、熊本県西原村の災害公営住宅45戸に同製品を贈呈し、熊本地震復興支援とした。いずれも効果を検証。

平成30年
室内熱中症予防セミナーを熊谷市民に向けて開催

熊谷市内で室内熱中症セミナー「考えようヒトと地球にやさしい温度」を開催。約300名の市民が参加し、ゲスト講師が熱中症のメカニズムや予防対策、熱中症発症の実態などを分かりやすく講演した。

令和元年
熊谷市民モニター宅と無人住宅にて実証実験

環境省による採択事業として、熊谷市内の一般住宅24世帯と無人住宅を対象とした実証実験をスタート。外付日よけとエアコンの併用で、室内熱中症のリスクを大幅に軽減できることを明らかにした。

 

 


 

ヒトと地球にやさしい温度「THINK HEAT」の様々な活動

リクシルがCR(コーポレート・レスポンシビリティ)戦略の一環として取り組む「THINK HEAT」は、CO2削減など地球温暖化問題の解決に向けた「地球にやさしい温度」と、人びとが健康・快適に暮らせる「ヒトにやさしい温度」の両立がコンセプト。適切に省エネしながら、室内熱中症やヒートショックなどのリスクを防ぐ活動を推進している。

 

快適な住まい方について学び、考える全国各地の小学校への「出前授業」


リクシルの社員が小学校を訪れ、先生に変身。未来を担う子どもたちのため、「出前授業」として教育活動を行っている。授業のテーマは、「健康と環境によい住まい方」。模型を使った実験キットなど、オリジナル教材を使い、楽しみながら学べる内容となっている。

 

エコな選択が、室内熱中症予防につながる「窓からECOシェアプロジェクト」

自治体・ビジネスパートナーと協働し、エコ商品を普及させながら、室内熱中症予防を推進する取り組み。購入されたリクシル対象商品(断熱窓・スタイルシェード)のCO2削減貢献量に応じ、地域の保育所や幼稚園にスタイルシェードを寄付。九州で実施された同プロジェクトでは、自治体を通じ5施設への寄付を実現した。


 

様々な暑さ対策活動で活躍する外付日よけ「スタイルシェード」とは?

リクシルのスタイルシェードは、部屋に入る日差しを約80%カットし、室内の温度上昇を効果的に抑えられるのが特徴。室内を快適温度にすると同時に、省エネも実現できる。

1.夏の暑さをすっきり解消

スタイルシェードを設置することで、室内の温度上昇や熱中症、日焼けなどの予防に役立つほか、冷房効率も高まる。

 

2.使うときも使わないときもスマート

窓の上の収納ボックスからサッと引き下げ、使わないときはスマートに収納できる。巻き上げ式構造で操作音も静か。

 

3.1窓当たり約30分のスピード施工!

壁に穴をあけない、サッシ枠取り付けタイプもご用意。サッシ枠や壁面にボックスおよびフックを取り付けるだけ。1窓当たり最短約30分で施工完了。

シェード部分の色柄は2タイプ計9種類。
モダンな住まいにも、なじみやすいデザイン。

お問い合わせ

サービス提供元企業:株式会社LIXIL

部署:LHT営業本部営業企画部
TEL:03-3638-1386
住所:〒136-8535 東京都江東区大島2-1-1
THINK HEAT事務局
E-mail:thinkheat@lixil.com

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