少子高齢化による人口減少に歯止めをかけるべく、横須賀市で全国初の試みとなる妊活サポートサービスが導入された。自治体が主導する妊活支援に新風を吹き込む一手となるか。同市こども育成部こども健康課 課長の河島 夏美さんに話を聞いた。
※下記はジチタイワークスNEWS(2020年6月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[提供]株式会社ファミワン
自治体による妊活支援には課題が山積する
住民の高齢化、出産人口の減少などで人口減少に頭を悩ませる自治体は数多い。横須賀市も例外ではなく、平成20年は7.3%だった出生率が、平成30年には5.8%と1.5%減少している。
そのような中、市はこれまで特定不妊治療費助成や不育症治療費助成などの経済的支援、セミナーの開催や相談窓口の
開設をしてきたが、妊活・不妊の悩みはただでさえ周囲に相談しづらく、サービス利用のハードルが高い。さらに、支援の情報が当事者に届いていないのではないかという課題が浮き彫りとなっていた。
妊活から妊娠・出産・育児まで包括的に支援する体制
妊活による身体的・精神的・経済的な負担の大きさなどを考慮し、一刻も早く相談しやすい環境を整えることと、望んだ時に妊娠・出産ができるような環境を整えることが急務となる中、担当となったのがこども育成部こども健康課だ。
「横須賀市では、横須賀再興プランという、経済の再興と福祉の充実を両立させ、“誰も一人にさせないまち”を目指す取り組みを行っています。こども健康課は、子どもを産み育てやすい体制を整えるための施策を担当しており、妊娠、出産から育児までの切れ目のない包括的な支援を行っています。妊活支援も当然ながら包括的支援の一つとして担当することとなりました」。
妊活コンシェルジュサービスの開始を記者会見にて発表した、
横須賀市の上地克明市長と株式会社ファミワンの石川勇介社長。
LINEを利用した妊活支援に課題解決の糸口が
以降、課として予約制で利用できる対面相談など様々な取り組みを実施したが、相談や支援サービスの利用数は少なく依然として課題は解決しないまま。そこで目を付けたのが、LINEを活用してタイムリーかつ気軽に相談できる、妊活コンシェルジュサービス「ファミワン」だった。「導入の決め手となったのは、利用者の多いLINEを活用し、気軽に専門職によるアドバイスを受けることができるというサービス内容でした。市で抱えていた課題の解決に必要であると考え、モデル事業として実施することとなったのです」。
前例のない新しい取り組みだったが、内容やスタート時期、予算などファミワン側が柔軟に対応できる体制を持っていたため、令和2年、スムーズに導入が実現した。
身近な相談ツールとして多くの市民に利用して欲しい
「まずは、妊活に関する相談体制の充実を図りたいと思います」と話す河島さん。市民にとってファミワンがより身近な相談ツールの一つとなり、それぞれの人が望む人生を送るための一助として活用できる体制が1日でも早く訪れること、それにより、将来の出生率向上に寄与できることが期待される。
さらに、今後は妊活への理解ある環境づくりを推進するためのセミナー開催などもファミワンと連携して行っていく考えで、市民が誰でも参加できるセミナーに加え、市職員の妊活への理解を深めるため、管理職者を対象としたセミナーも開催する予定だ。これらの取り組みが自治体による妊活支援のあり方に道筋をつけることができるのか、今後の展開に注目したい。
こども育成部こども健康課の河島さん。
市長のコメント
出産・育児だけでなく「 妊活」支援を、当たり前のものへ
横須賀市では、市民の皆さまが安心して子どもを産み、育てるための体制の充実や、生活・教育環境の整備、仕事と子育ての両立に対する支援を推進しています。少子化の一因として初産の平均年齢が高くなっていることが挙げられます。また、望んだ時に授かれないというケースも多く、妊活においてはその方に合った情報提供や心身のケアが必要です。これは自治体がサポートすべきポイントであり、「子どもが欲しい」という人へ手を差し伸べることは、行政の当然の役割と認識しています。
今回の横須賀市の取り組みは、全国初で前例がないということですが、私自身は、目の前のやるべきことに取り組むのが行政であり、前例や慣例に囚われるべきではないと考えています。「行政が」に関わらず、「人としてどうあるべきか」という根本に立ち返って課題に取り組むべきです。妊活は大変デリケートな問題ということをしっかりと再認識した上で、「誰も一人にさせないまち」の実現に向けて、今後も福祉・子育て支援の充実に取り組んでまいります。
神奈川県横須賀市 上地 克明 市長
妊活コンシェルジュサービス「ファミワン」の導入例
専門家による妊活相談、サポートを、LINEを通じて匿名で利用できるサービス。個人利用のほか、平成30年9月より自治体や企業単位での導入も可能となった。LI NE相談のほか、ファミワンから専門家を講師として派遣する形で、セミナーや勉強会の提供も行う。
POINT 01
サービス内容はニーズごとに柔軟に対応
月額料金3,980円の有料版を無料で市民に提供するなど、自治体の取り組みに沿った内容を導入可能。セミナー開催や公的支援などの情報発信にも利用できる。
POINT 02
セミナーなどへの専門家の派遣が可能
住民向け、庁内向けの各種妊活セミナーを企画し、講師を派遣。個別相談だけでなく、妊活に対する知識や理解を深める機会づくりのサポートも行う。
セミナー開催!オンライン参加も可能
妊活支援をご検討の行政の担当者の方へ
ファミワンのサービス/セミナーや勉強会についての説明会を開催。
令和2年7月17日(金) 14:00~15:00@大阪
令和2年7月20日(月) 14:00~15:00@東京
お問い合わせはコチラの特設ページから。