ジチタイワークス

神奈川県横浜市

窓に後付けできる太陽電池で、再エネ導入を加速させる。

既存建物に使える次世代型太陽電池

形状や設置場所の自由度が高いとされる次世代型太陽電池。横浜市では、既存建物の窓ガラスに後付けできる太陽電池を市庁舎に設置。工事はわずか2日で完了した上、デザイン性の高さから来庁者の興味を引いているという。

※下記はジチタイワークスVol.40(2025年10月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[PR]AGC株式会社

横浜市
脱炭素・GREEN×EXPO推進局 循環型社会推進課
課長 松下 功(まつした いさお)さん
係長  赤谷 知子(あかたに ともこ)さん
 

空き地や屋根スペースが限られるため太陽光パネルを置ける場所が少ない。

2050年のカーボンニュートラル実現に向け、再エネの導入を進める同市。ところが都市部特有の制約が大きく、自ら創出できる電力には限界があるという。「市の試算では、再エネで賄える電力量は全体の約1割にとどまります。住宅が密集しているため、メガソーラーの設置は難しく、市内の公共施設も太陽光パネルの屋根置きは困難なケースがあります。そのため、窓や壁面を活用できる次世代型太陽電池に注目していました」と松下さん。

住民や事業者への働きかけも重要なテーマだったという。「市の施設だけで再エネ化を進めても、目標は達成できません。二酸化炭素の排出量は、家庭部門が約3割を占め、市内には民間ビルもたくさんあります。住民や事業者が脱炭素への意識を高め、行動を変化させることも重視していました」。

そんな中で出合ったのが、「AGC」の建材一体型太陽光発電ガラス「後付けサンジュール」だ。同製品は次世代型太陽電池の一つで、既存建物の窓など垂直なガラス面に設置できる。「多くの人が訪れる市庁舎1階アトリウムへの設置は、PR効果が見込めます。新技術を知ってもらい、実用化を後押しするねらいもありました」。こうして同市は、令和6年12月から実証実験を開始した。

足場不要で工期が短い上に、建物を傷めずに原状回復が可能。

同製品を選んだ決め手について、赤谷さんは“既存建物に手軽に設置できること”を挙げる。「壁を壊したり窓を外したりといった工事が不要なため、時間も費用も抑えられます。足場も組まず、たった2日で工事が終わって驚きました。設置場所の自由度も高く、ほかの市内施設にも展開しやすそうです」。

新たな設備の導入では、庁舎管理部門が慎重になるケースも少なくない。設置物の落下や破損による来庁者のけがを懸念するからだ。同製品は耐震性やガラス強度などの各種試験をクリアしており、安全性にも配慮されている。専門知識を要する構造計算も不要なので、理解を得やすかったという。同社の柔軟な対応も後押しになったそうだ。「清掃業者から“手が入らず拭きにくいのでは”という声がありましたが、窓との間に適度な空間を確保してくれたことで、すぐに解決しました」。

今回は、あくまで実証実験であり、原状回復が条件。このため、柱に穴を開ける必要のない設置方法が採用された。「建物にダメージがほとんど残らないので、賃貸の物件でも導入しやすいのではないでしょうか」。

洗練されたデザインが注目され市内の大型施設でも導入へ。

設置後は多くの反響が寄せられている。他自治体からの問い合わせや現地視察のほか、公共施設を建てようとしている他部署からも“どこの製品?”と質問があったという。

「設置が簡単なだけでなく、見栄えもしますね。実証実験が始まったのは12月だったので、クリスマス関連の展示だと思った住民もいたようです」と赤谷さん。市庁舎に設置された様子が目に留まり、市内のランドマーク的な存在である大型施設でも導入が決定。観光拠点が集まる臨海部においても、活用が広がるのではと期待しているそうだ。

市内約90万棟の建物のうち、新築はわずか1~2%に過ぎないとされ、脱炭素化を進めるには、新築だけでなく、既存の公共施設や民間ビルなどへの対策が不可欠だという。「今ある建物で、業務を止めずに設置できるのは大きなメリットです。都市部は電力需要が大きい一方で、再エネ化の手段が限られるというジレンマがあります。簡単に取り付けられてデザイン性も高いので、今後ますます広がるのではないでしょうか」。

屋根の耐荷重の問題に加え、緑化や防水工事との兼ね合いから、太陽光パネルの屋根置きが難しい自治体も少なくないだろう。“既存ガラスへの後付け型”という選択肢は、再エネ促進の新たなヒントになりそうだ。
 

CHECK!

国の補助制度による導入の後押しも

環境省は、窓、壁などの垂直面を活用した建材一体型の太陽光発電設備の導入を支援。さらなる再エネの活用を促進している。

●補助率(補助上限)
窓:5分の3(5,000万円)
壁:2分の1(3,000万円)

●補助対象期間
原則単年度(最大3カ年)

●太陽光発電容量
3kW以上

※令和7年度の公募期間は終了

補助要件の確認など、各種相談にも対応。

お問い合わせ

サービス提供元企業:AGC株式会社

新市場開拓グループ・スマートガラスチーム

東京都台東区東上野4-24-11
グローバル・ワン上野12F

TEL:03-3218-5741

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