
ふるさと納税の推進事業
甲府市は、ジュエリー産業の衰退に向き合い、地域ブランドの再生と寄附拡大を推進している。庁内外の連携で返礼品を拡充し、方針・運用・検証を一体で行う。伸びた寄附をブランドづくりと担い手育成へ還流し、地域の活力につなげている。
※下記はジチタイワークスVol.40(2025年10月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
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甲府市
産業部 産業総室 ふるさと納税課
課長 土橋 克己(どばし かつみ)さん
担当者の声
やればやるだけ成果の出る取り組みだと感じます。市民や事業者が地場産業を誇れる、若者が働きやすいまちにしたいです。
産地の強みを戦略の中核に据えて一貫生産を地域成長の原動力とする。
同市はふるさと納税の返礼品として、市内で生産したジュエリーを主力に掲げる。原料調達から研磨・デザイン・加工までを一貫して完結できる地域は世界的にも希少で、同市を支えてきた基幹産業の一つだという。「当市ならではのもので寄附額を伸ばし、縮小傾向だった市場をもう一度動かしたいと考えました」と土橋さん。
返礼品として展開を始めた令和2年、掲載先のポータル担当者だった山田さんから、ジュエリー関連の200点を年末までの2カ月間で登録することを提案された。当時の登録数は約40点。高い目標だったが、同市は工程設計から実装・検証までの手順を整え、正面から挑んだ。土橋さんは「期待値を超える結果で示すつもりでした」と振り返る。現場運用を担う中間事業者(シフトプラス)の中澤さんと連携して商品ページを再設計し、掲載点数は約500点に拡充。登録直後の11月、寄附額は1ポータルサイトで1億円を超えたという。
その後は戦略面を補強するため、山田さんが立ち上げた「祭天」もアドバイザーとして令和5年に参画。庁内連携と現場実装がかみ合う体制を整備し、“チーム甲府”として率直な意見交換を重ねることで、産地の強みを成果へ結び付ける運用が定着している。
意欲ある事業者への伴走を強化しジュエリー産業を盛り上げる。
寄附額が伸びはじめ、同市が次に着手したのは、継続的に成果を生むための商品構成の設計だった。先進事例や市場調査を踏まえ、返礼品のジャンルを細分化。ジュエリーのアイテムをネックレス・ピアス・指輪などの7種類に分け、さらに4種類の地金に誕生石など石種のバリエーションをかけ合わせた。特定カテゴリでトップをねらえる領域を増やし、需要の変化に左右されにくい構成を目指したという。
運用面では、チーム甲府と事業者が定例会議と個別面談を重ね、市場分析や販促費の配分、画像や説明文の改善に日常的に取り組む。同市への思いをもつ中澤さんも高頻度で現場へ入り、継続して商品の発掘と域内事業者の改善に向き合っている。登録している330社以上のうち、約50社を重点的に伴走し、前向きな事業者の成功を全体に波及させた。「“ただ出す”から“勝てる商材を設計する”段階になりました。議論の質とスピードが確実に上がってきています」。関係性の積み重ねにより、市内セミナーでは同業者が登壇し、知見を共有する機会も生まれている。信頼を基盤に切磋琢磨する動きが、さらなるチームワークへと発展しているようだ。
数字の先にある地域の誇りを自信をもって語れる未来へ。
令和元年度に約1.7億円だった寄附額は、令和6年度には約74.1億円にまで伸びた。事業者は全体で332社、そのうちジュエリー関連は138社にのぼる。また、令和6年度のふるさと納税寄附額は、全国1,788自治体の中で同市が17番目※に多いという。
土橋さんはその先を見据え、ジュエリーに限らない地域産業の活性化にも力を入れる。寄附全体の約7割を占めるジュエリー関連の収益は、地域産業のブランド化や販路開拓、人材育成などに活用されている。事業者との関係の築き方や、地域を応援したい思いは、土橋さんの公務員としての志と重なっているのだとか。これまでも、ご当地グルメのまちおこしや、中心市街地の路地横丁を盛り上げるNPO法人の運営など、市の魅力を伝える活動に力を入れてきた。
「ふるさと納税は入口に過ぎません。市民が“宝石のまち甲府”と胸を張って言える地域づくりを進めたい。地場産業の担い手を増やし、自信をもって地元で働ける環境を整えていきます」。数字で成果を示しながら、地域の誇りを次世代へつなぐ挑戦が続いている。
※令和7年7月 総務省「ふるさと納税に関する現況調査結果」
創業者の声
祭天
山田 穂高(やまだ ほだか)さん
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