
全国の市区町村の創意工夫あふれる取り組みを表彰する、愛媛県主催の「行革甲子園」。7回目の開催となった令和6年の「行革甲子園2024」には、35都道府県の78市区町村から97事例もの応募があったという。
今回はその中から、福岡県直方市の「市民を守る樋門の遠隔監視・遠隔制御」を紹介する。
※本記事は愛媛県主催の「行革甲子園2024」の応募事例から作成しており、内容はすべて「行革甲子園」応募時のもので、現在とは異なる場合があります。
取り組み概要
福岡県の北部に位置する直方市は、市の中央を一級河川「遠賀川(おんががわ)」が流れ、東西には福智山をはじめとする雄大な山々で囲まれた自然豊かなまちだ。季節の折々には、遠賀川の広い河川敷にチューリップや桜などが咲き、市民の憩いの場となっている。しかし、毎年6月から9月にかけては、大雨や台風の影響により、遠賀川が増水して氾濫の危険性が高まり、市民生活が脅かされていた。
▲写真1: 左/普段の遠賀川の様子。右/大雨が降って増水した遠賀川の様子。
このような災害から市民の安全を守る河川管理施設の一つとして、河川から住宅地へ川の水が逆流することを防ぐ『樋門』と呼ばれる施設(下記写真)が、直方市内の堤防や水路等に数多く設置されて、そのほとんどが地域の住民によって管理されている。
しかし、樋門をはじめとする河川管理施設の管理は、死亡事故も発生する可能性がある危険な業務であり、近年、「作業の危険性」「操作人の高齢化」「担い手不足」の問題により持続的な樋門の運用・管理が危ぶまれている。同市は、この課題を解決するため、令和2年12月から、樋門操作人の安全を守るため、遠く離れた場所から樋門を監視・制御する技術を、地元の企業や大学と連携して研究開発してきた。
この研究開発により、樋門を操作する人が悪天候の中、現場で危険な作業をすることなく、パソコンやタブレットなどを使って、遠く離れたところから安全を確保して樋門の開閉作業ができるようになったとともに、将来、樋門の開閉作業を自動化するための基礎技術を開発することができた。
また、樋門の遠隔監視・遠隔制御の研究成果を応用して、市役所のパソコンや職員のスマートフォンから市内の冠水しやすい道路やアンダーパスなどの重要監視地点の状況を確認するためのシステムも開発できており、一部の情報を市民に公開するなど、その運用が始まっています。
▲写真2:市内に設置されている樋門。
背景・目的
遠賀川流域は歴史的な背景から多くの河川管理施設があり、国土交通省遠賀川河川事務所の論文によると全国の河川管理施設の1割となる約900もの施設を有している。
市内にも50か所以上の樋門が設置されており、その樋門の多くは、国または福岡県から直方市が管理委託を受け、さらに直方市から地元の住民に大雨の際の開閉操作や管理を再委託している。樋門管理の性格上、出水期においては、急な大雨による河川などの増水にすぐに対応できるように、地域の自営業の方や、すでに仕事を定年退職されている人にお願いするケースが多い状況だが、今日では定年後も仕事を続けられている人も多く、担い手不足となっており、操作員の確保や高齢化が大きな問題となってる。
特に、高齢化の問題は深刻で、操作人の平均年齢は66歳、最高齢は86歳の方にお願いをしている状況。また、樋門の開閉操作は、大雨や激しい風が吹く中、場合によっては夜間に現場に出動して行わなければならず、重いハンドルを100回以上回して、水路を堰き止める鉄の門扉を開閉しなければならない。
そのため体力が必要であるとともに、一定の経験値も必要であること、また非常に危険度の高い作業であることが、樋門操作人の担い手不足を招く一因になっている(下記写真参照)。
地域の人々からは、以前から同市に対して、「このまま樋門操作人を続けることは難しく、どうにかして欲しい」と相談を受けることもあったという。今回の研究開発は、市民の生命や財産を守る樋門の管理を将来にわたって安定的に実施し、樋門操作人の安全を確保する方法を開発し、実現化することを目的として始まった。
▲写真3: 左/実証対象となった直方市下新入地区の樋門。右:同樋門の既設のラック式開閉機(改造前)。
取り組みの具体的内容
1. 遠隔監視・制御システムの構築
樋門の遠隔制御を実現するにあたり、今回の研究開発では、その研究対象を最も操作に労力がかかるハンドルなどを使って人力で操作する手動動力式の樋門を対象にし、以下の項目の研究開発を行った。
① 導入コストを軽減するため、既設の樋門に「後づけ」で設置可能な遠隔監視・遠隔制御用のIoTユニットを開発する。
② 樋門を操作するタイミングを測るのに必要な樋門周辺の「水位」「流速」「流れの向き(流向)」を遠く離れた場所からでも把握することが可能なセンサーを開発する。
③ 配置するセンサー情報を通信するための無線通信ネットワークを構築する。
④ 操作対象の樋門の状況を常時表示し、遠隔開閉操作ができる統合的な樋門管理システムを構築する。
また、研究開発の段階を3つのフェーズに分け、第1フェーズは「調査及び試作」、第2フェーズは「実証の加速」、第3フェーズは「実用化の検討」として進めることとした。
この研究開発には、直方市をはじめ、地元の大学である福岡大学、九州工業大学、そして同市に拠点を置くアドバンテック株式会社、遠賀川流域の自治体の遠賀町に拠点を置く株式会社ジェー・フィルズが参加し、それぞれが得意とする分野の技術を結集して研究を進めた。
福岡大学は水位などの周辺状況の測定や通信技術に関する分野を、九州工業大学は流速や流向の測定に必要な流体力学に関する分野を、株式会社ジェー・フィルズは電動による水門開閉技術に関する分野を、そしてIoT技術によって全体を統合するシステム開発に関する分野をアドバンテック株式会社が担った。
同市は、関係する部署や他の行政機関との連絡調整、そして全体の研究開発マネジメントを行った。今回、研究開発の対象とした樋門は、ハンドルを用いて開閉操作をするものであり、多くの樋門で採用されている方式ですが、先述したように、樋門操作人にとって、かなり体力を消耗する非常に負荷の高い作業である。
この樋門を遠隔制御するために、対象となった樋門に既に設置されているラック式開閉機に電動化ギアユニットを取りつけるとともに、IoT制御盤および制御用コンピュータを取りつけることで遠隔制御を可能にした。
また、樋門の開閉状況や周辺状況を監視するために、IPカメラや水位計測用として超音波式水位センサーを設置した(写真4参照)。そして樋門に設置された各ユニットの情報はセキュリティが確保された専用クラウドにあるデータベースに送られ、遠隔地からの操作するためのコンピュータ画面に映し出されるダッシュボード(写真5参照)に反映されるようにした。
▲ 写真4:開発された樋門管理システム。
▲写真5:遠隔監視制御用のダッシュボード(実証では現場の樋門から6Km離れた建物内から操作)。
このダッシュボードには、樋門を操作するため、「上昇」「下降」「停止」の信号を送るボタンが配置されるとともに、市内の樋門位置図、樋門周辺の水位等を同時にモニタリングするための画面も搭載した。
これにより樋門操作人は、樋門から離れた場所で樋門の様子を確認するとともに、ボタン操作一つで樋門の開閉操作ができるようになった。このシステムは、数カ月に渡って動作に問題がないか検証しており、台風上陸などの荒天時にも検証を行い、問題なく樋門の開閉作業ができることを確認することができている。
2. 樋門の自動化に関する研究
次に樋門の自動化に向けた研究も行った。樋門の自動化を検討するにあたり、樋門を開閉操作する判断基準について調査した。調査を進めると樋門の開閉を判断する基準の一つとして、樋門周辺の流向が逆向きになっているかどうか確認することが基本要素となるものの、必ずしも流向だけで判断をしているわけではなく、流向以外にも、これまでの経験や勘を通して雨量や水位等、様々な状況から総合的に判断していることが分かった。
そのため、樋門の開閉操作を行うタイミングを判断するために、「水位」「流速」「流向」の3要素を測定することとし、操作員の経験や勘に頼らなくても、一定の判断基準の指標を示すことができないか検討した。
まず、水位の測定についてだが、高価で高性能な水位計を取りつけるのではなく、安価で樋門操作の判断に十分な精度を持つ水位計の開発を目指し、超音波を利用した水位センサーを開発した。本センサーは、独立してその機能を保持できるように商用電源ではなく、太陽光発電やモバイルバッテリー等を利用できるようにするとともに、小型コンピュータを組み込み、測定した情報をクラウドに送信できるようした。検証の結果、測定誤差は±4㎝であり、樋門の操作をする上での許容範囲内に収めることができた。
次に流速と流向の計測ですが、水路内に新しく装置を取りつけることは、水路内を流れる流木やごみによって破損したり、流れを堰き止めてしまう可能性があるため、本研究ではカメラ画像を活用して計測できないかと考え、九州工業大学を中心に、粒子画像流速測定法(PIV : Particle Image Velocimetry)を用いて計測できないか研究した。
PIV法とは、実空間を撮影した2枚のデジタル画像を用いることによる非接触の流速計測手法として一般に利用されており、実空間の移動量ベクトルを、時刻が異なる2枚のPIV分析画像から計算する方法です(写真6参照)。現在は、移動量ベクトルを測定するために、どの粒子を測定する要素とするか画像から特定するとともに、カメラで捉えた水面の状況が実際の水流の状態と異なる場合の対策や、カメラに映りこむ他の物質からの誤ベクトルを除去するための方法の研究を進めており、現在では90%以上の確度で逆流を検知することができるようになっている。
このように開発した「水位」「流速」「流向」の3要素を測定するセンシング技術と、遠隔制御技術を組み合わせることにより、樋門の自動化に向けた基礎技術を確立することができた。
▲写真6:PIV法による流向・流速の計測。
3. 市内の重要監視地点のリアルタイム監視
さらに、樋門の研究で培った成果を応用し、市内で冠水しやすい道路や、アンダーパス等の遠隔監視の研究開発へと展開した。令和4年2月に、福岡大学と九州工業大学は、総務省が実施する令和4年度戦略的情報通信研究開発推進事業(SCOPE)に「LPWAを活用した河川水位・水量計測ならびに樋門管理制御システムの構築実証の研究開発」のテーマで応募し、電波有効利用促進型研究開発(先進的電波有効利用型(社会展開促進型))フェーズⅡの新規採択課題として採択された。
これまでの研究では、「4G/LTE」による通信(通信会社がサービスする電波)を活用していたが、通信にかかるコスト低減のため、別の通信技術であるLPWA(Low Power Wide Area、低消費電力かつ広域・長距離通信を特徴とする無線技術)の活用を検討することにした。この研究では、省電力かつ広範囲をカバーする通信環境を実現することで、多数のセンサーなどと接続できるかの検証や、IoT技術を活用した河川の水位モニタリングや樋門の遠隔制御、クラウドを活用した各種計測データ及び制御データの蓄積、VR(Virtual Reality)技術を活用した 樋門の遠隔操作技術の確立を目指した(下図参照)。
▲SCOPE研究の全体像。
参考:総務省ホームページ https://www.soumu.go.jp/soutsu/kyushu/press/220513-1.html
このSCOPE事業では、大雨が発生し、災害の発生が予測される場合に、現場に出動して直接対策を実施する土木課および下水道課の職員が要望した市内の重要監視地点22カ所に水位センサーや監視カメラを配置しており、同課の職員は執務室に設置しているモニターやスマートフォンなどから、現場に出動する前に現在の状況をモニタリングすることが可能となっている(写真7参照)。
▲ 写真7:土木課でのモニタリング並びにスマートフォンでの確認の様子。
特徴(独自性・新規性・工夫した点)
この樋門の課題は、全国の河川管理施設の1割を占める遠賀川流域特有の課題を、地域の産学官が結集して解決した事。自分達のまちの問題は、自分達で解決するんだという強い意志の下に集まったメンバーが長い時間をかけて研究開発を行ったことで、実証で終わらせるのではなく、実装し、横展開することができた。
技術面においても、ジェー・フィルズ社が開発した樋門の電動化技術は特許技術であるとともに、水路内の流向をデジタル画像を用いて計測する技術も今回の取り組みで開発された技術。そして、樋門の遠隔監視・遠隔制御に関する研究開発についても、住宅地にある小規模な樋門を低コストで遠隔制御できるようにするシステムとしてはほかに類を見ない取り組みであり、令和5年版国土交通白書にも、特徴的な取り組みとして掲載されている。
また、直方市による独自性のある取り組みとして、着実に実装し、横展開するために、マーケティング理論を用いた研究開発マネジメントを行ったことも工夫した点の一つで。例えば、研究開発を始める前に、顧客の設定を行い、開発する樋門管理システムの最終的な顧客は誰なのか、本当に顧客が必要としているシステムはどのようなシステムなのかなど、顧客ニーズをしっかり捉え、研究開発に挑んだ。マーケティング・ミックス(4P戦略)にもとづいた研究開発マネジメントを心がけており、その中でもプロモーションにも注力することで、当初から新聞やテレビなどのマスメディアを活用して、顧客となる直方市担当課の職員や、国や福岡県、また他自治体関係者への周知するための活動を行った。
取り組みの効果・費用
この研究開発は、令和2年度から令和5年度までの約3年半にわたって実施してきた。研究開発に要した費用は以下の通り。
【直方市予算】
令和2年度 8,351,800円
令和3年度 550,000円
令和4年度 4,999,500円
【総務省戦略的情報通信研究開発推進事業(SCOPE)】
令和4年度 30,000,000円 ※研究開発委託費ベース(間接経費は含まない)
令和5年度 30,000,000円
また、本研究で開発したシステムは、令和6年度から実装のフェーズに入り、土木課および下水道課によって、今後、具体的な効果について検証を実施することになるが、これまでの実証事業において、樋門操作人や、土木課や下水道課の職員からは、以下のような評価を得ることができた。
【樋門操作人】
樋門操作人には、実証の後半(令和5年度)から、遠隔操作用のタブレットを渡しているが、安全性を考え、現場に車両で出動し、樋門の状況を目視で確認しながら、車内からタブレットによる樋門の開閉操作をするという方法で作業を実施してもらった。
以下は樋門操作人からの評価。
「タブレットの起動方法も簡単で、操作画面が見やすく、操作しやすかった」。
「従来のハンドルによる開閉操作と比較して、格段に負担が軽減された」。
「車内から安全に操作することができるため、安心して作業にあたることができる」。
また土木課、下水道課の職員からは、重要監視地点のリアルタイム監視技術について以下のような評価を得ることができた。
【土木課職員】
「通行止めにする判断を迅速に行うことができる」。
「冠水による深刻な被害が発生する恐れがある場所の判断を速やかに行うことができるのはありがたい」。
「危険な状況下では、職員の安全を確保した上で現場を把握することができる」。
【下水道課職員】
「現場に行かなくても状況把握ができ、井堰の開閉依頼を迅速にできる」。
「職員の負担軽減を図ることができる」。
「緊急時の作業効率の向上、適切な人員配置が可能になった」。
「計測値の推移がわかることで、状況の予測が可能になった」。
河川管理施設の管理は、令和3年に佐賀県内の排水機場で70代の操作人が死亡する事故が発生するなど、非常に危険な業務。樋門の管理も同様に危険度は高く、常に事故が起きる可能性がある。
本研究開発による成果は、そのような不幸な事故の発生を防ぐために非常に効果的である考えている。また、この研究開発では当初予定していなかった成果もあった。それは研究開始当初、福岡大学の大学院に在籍していた学生が、本研究に携わったことがきっかけで地元の企業であるアドバンテック株式会社に就職したこと。このことは、大学がなく、高校卒業後、市外の大学に進学し、そのまま直方市には戻らず、市外の企業に就職するという若者の流出が課題となっていた直方市にとって、産学官連携による取り組みをきっかけに市内企業の魅力を知って就職してくれたことは、この課題を解決し、市内企業が若く優秀な人材の獲得するためのヒントになると考えている。
取り組みを進めていく中での課題・問題点(苦労した点)
取り組みの最大の課題は、単なる実証実験として終わらせるのではなく、担当課が抱える課題について納得できる解決策を提示し、しっかりと実装させることだった。
このような産学官連携による実証実験の場合、実証実験は行ったものの、実際に現場で使われることはないまま終わってしまうことが多いのではないかと思うが、われわれは研究開始当初から実装や横展開までのロードマップを掲げ、それにもとづき各メンバーが常に柔軟性を持って行動することを心がけた。
特に、担当課や国、福岡県のニーズ(潜在的なものも含めて)を積極的に把握することに努め、イニシャルコストやランニングコスト、安全性、ユーザビリティ等、常に現場の声に耳を傾け、研究開発メンバーと情報を共有しながら開発を進めた。また、この研究開発の成果を他の自治体などに横展開するためには、民間企業が主体となるビジネスとして成立させることが必然的に求められることから、開発した技術を製品として販売するために、製造、保守、その他サービス等を誰が担っていくのかについて、同市職員を中心としてマネジメントを行い、研究開発後の体制についても検討をしてきた。
しかし、ビジネス展開を見据えた体制を構築することは容易ではなく、現在は樋門の遠隔監視・遠隔制御の一部分について製品化ができる状態に留まっており、今後、研究成果を全て具現化し、サービスとして構築するためには、未だ越えなければならない、いくつものハードルがあると考えている。
また、実証実験の過程で苦労したことは、防災という市民の生命と財産を守る分野の研究において、実証実験によって現在の樋門の状態に悪影響を与えることは許されないため、実証実験には細心の注意を払わなければいけないことだった。そのため実際に使用される場面、つまり荒天時においても確実に稼働できることを確認するために、約1年半に渡り晴天時での実証実験を積み重ね、それでもたびたび発生するエラーに対して、原因分析を行い、改善を繰り返し、安全性・耐久性・確実性を確認しなければならなかった。
これは防災という性格上、必要不可欠なプロセスではあるが、それでも長期間にわたる研究開発は、研究メンバーにとって根気のいる作業であったと考えている。
今後の予定・構想
直方市では、地理情報システム(GIS)を活用した『防災情報プラットフォーム』(写真8参照)と呼ばれる災害時における情報共有プラットフォームの構築を進めている。
地図上に、今回の研究で得られるようになった水位情報や樋門の開閉状況に関するデータと合わせ、ハザードマップ、避難所の開設状況、被害情報(土砂・通行止め・河川損壊)、現地調査速報(現地写真を含む)、市民からの提供情報、気象情報などを、クラウド経由で専用のダッシュボードに反映させ、災害対策本部での状況分析や、災害対応の判断、災害対策にあたる職員間や関係機関の情報共有が可能にするシステムを開発している。
また、防災情報プラットフォームの一部の情報を、市民向けに情報提供することも検討。すでに昨年度から避難所の開設情報を職員間で共有する実証実験を実施しており、職員は専用のアプリケーションを活用して、リアルタイムに避難所の開設情報を、自身のスマートフォンで確認することができるようになった。
▲写真8:直方市防災情報プラットフォーム画面。
他団体へのアドバイス
この研究開発において、直方市職員は、研究開発の中心的な役割を果たすため、プロジェクトマネージャーとして、研究開発全体のマネジメントを行った。この研究開発が課題の解決策として有効なものであることを証明し、着実に実装させるために、顧客である樋門操作人や現場職員の声を聞き、その内容を他の研究開発メンバーに伝えていくことは、このような課題解決の取り組みの最も重要なポイントであり、プロジェクトマネージャーとして果たすべき役割。
地域課題の最前線にいる自治体の職員こそ、率先してこの任務にあたる必要があると考えており、そのようなマネジメント能力を自治体職員が備えることこそ、このような産学官連携による課題解決には必要不可欠であると考える。
また、樋門の研究開発における課題は、河川を有する自治体にとって共通する課題であろう。今回、直方市は約3年半に渡る研究開発において、様々な難局に直面してきた。その度に研究開発メンバーみんなで知恵を絞って解決したり、国や福岡県をはじめ、多くの方々からアドバイスをいただいたりすることで、今回の成果を残すことができた。
このような研究開発は先人たちの研究成果のもとに進化していくものであると思う。同様の課題に悩み、今後取り組もうとされる団体などに対して、惜しみなく、この研究成果や苦労した点やどのように課題解決してきたのかなど、様々な経験を伝えていきたいと思っている。このような活動こそが国全体の防災力を向上させると信じている。
▲写真9:左/令和5年度国土交通省遠賀川総合水防演習・防災展。右/地域×Tech関西・セミナー。
【直方市公式YouTubeチャンネル:市民を守りたい~樋門の遠隔監視・遠隔制御への挑戦~】
https://www.youtube.com/watch?v=MXqAWeIRcmU