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インフラ老朽化の現状と将来を考える!道路・橋梁・上下水道の定期的なメンテナンスを

高度成長期以降に整備された道路・橋・トンネルなどの老朽化が進行している。

老朽化を放置すると事故につながる恐れがあるだけでなく、住民の生活にも大きな支障が生じる。老朽化自体を防ぐことはできないが、自治体としてどのような対策を行えばいいのかを理解しておきたい。

保全やメンテナンスサイクルの確立、これまで起こった事故の事例を確認しながら、インフラの老朽化に備えて自治体が行うべきことを把握しておこう。
 

【目次】
 • 対策必須!インフラ老朽化問題とは

 • 事故として顕在化も!インフラ老朽化の現状とは
 • インフラ老朽化対策の課題とは
 • 今後に向けた地方自治体に期待される取り組みとは
 • 安心して暮らせる社会を維持するため、近隣の自治体と協力し合いインフラ老朽化の対策を

※掲載情報は公開日時点のものです。

対策必須!インフラ老朽化問題とは

私たちが日々当然のように使っている道路や橋、トンネルなどは高度経済成長期に整備されたものが多く、老朽化が進行している。インフラの老朽化を放置したままにしていれば、社会生活に大きな影響がある事故が発生する恐れがある。

対策必須!インフラ老朽化問題とは

保全やメンテナンスなど、老朽化問題への取り組みについて確認しておこう。

「事後保全」と「予防保全」 

インフラ老朽化による事故を防止するためには「事後保全」よりも「予防保全」が重要になる。それぞれの違いを理解しよう。

事後保全

事故やトラブルが発生してからメンテナンスすること。トラブルが発生する前は特に対応を行わない

予防保全

事故やトラブルが起こる前にメンテナンスすること

なお、2048年までの予算を試算したところ、予防保全を行う場合、約5.9~6.5兆円かかるのに対し、事後保全では約12.3兆円かかるとされている(※1)。予防保全を選択した方がコストを約47%抑えられるというメリットがある。

※1出典:国土交通省「国土交通省所管分野における社会資本の将来の維持管理・更新費の推計」

インフラ老朽化問題の主な取り組み

老朽化が原因のインフラ事故をきっかけに、国土交通省ではインフラ老朽化問題に本格的に取り組むこととなった。

主な取り組みは以下の通りだ。

インフラ老朽化問題の主な取り組み

メンテナンスサイクルの確立

産官学が一体となり、以下のようなインフラのメンテナンスサイクルが策定されている。

・予防保全効果の推計
・早期に措置すべき施設の把握
・個別計画の策定
・全体像の把握

また、「河川」「下水道」「道路」「港湾」「海岸」の5分野からなる点検マニュアルを策定し、確実なサイクルでメンテナンスが行えるよう支援する。

対策が必要な施設の集約・再編など

必要性や地域のニーズに応じ、施設の集約・再編・廃止・除去を進める。また、集約再編を検討する際の一助となるよう、分野に応じたガイドライン、事例集を作成し公表している。

包括的民間委託の導入

民間事業者との連携および業務委託を行い、職員の負担軽減や業務効率化を図る。受託する民間事業者側にもビジネスの幅を広げることができる点や将来の業務量の予測が立つため、設備投資に踏み切ることができるというメリットがある。

インフラ老朽化問題に関する技術の継承・育成

インフラ老朽化問題に対応できる人材の育成や技術継承を行う。なお、平成26年度より、地方公共団体にも呼びかけ、「道路・河川の研修」「港湾分野の研修」など、テーマごとに行われる維持管理研修への職員の参加を促している。

新技術の活用

産学官民が一体となってインフラメンテナンスに取り組むプラットフォーム「インフラメンテナンス国民会議」で新技術や知識を周知する取り組みを行う。また、革新的技術の開発も行う。

データの活用

令和4年に始まった全国の道路の点検データを蓄積する「全国道路施設点検データベース」のように、各分野でデータベースの整備を行い公開する。また、国土交通省のデータプラットフォームの活用も行う。

国民の理解と協力

インフラメンテナンスに対して国民の理解と協力を得るために「インフラメンテナンス大賞」を開催している(※2)。

※2:国土交通省「インフラメンテナンス大賞」

事故として顕在化も!インフラ老朽化の現状とは

インフラ老朽化が社会に知られるようになったのは、トンネルや橋梁、上下水道で大きな事故や損害が発生したためである。どのような事故だったのかを確認しておこう。

【三重県】木曽川大橋 トラス斜材破断

【三重県】木曽川大橋 トラス斜材破断

平成19年、三重県の木曽川大橋で橋の一部であるH型鋼が破断しているのが確認された。破断は橋の崩落にもつながる重大な問題であるため、緊急補修工事が行われている。その際、ほかにも腐食している部分が複数見つかっている。

この例では、損傷を発見した時点で修復できたため、事故は発生していない。事故を事前に防げた好例だといえる。

【山梨県】中央自動車道 笹子トンネル 天井板崩落事故

平成24年12月、中央自動車道の笹子トンネルで天井板が崩落するという事故が発生した。原因はトンネルの老朽化とされている。この時、トンネル内のコンクリート製天井板が約130mに渡って崩落し、下を走行していた複数台の車両が巻き込まれた。

この崩落は9名もの死者を出す大事故となり、インフラの老朽化問題が世間に知れ渡るきっかけともなった。

【和歌山県】「六十谷(むそた)水管橋」崩落による断水

令和3年6月、和歌山県の紀の川にかかる水管橋の一部が崩落し、紀の川流域北側の約6万世帯が1週間断水し、約14万人に影響が出ている。橋脚の上に直径約90センチの水道管が2本通っているが、ともに橋の中央部付近で破損し、一部は川の中へ垂れ下がった。原因は水管橋の経年劣化による腐食とされている。

崩落後、仮設の水道管を通した応急処置の後、復旧工事を行ったが、全ての復旧までに8カ月を要している。

インフラ老朽化対策の課題とは

インフラ老朽化対策の課題は、大きく分けて以下の3つである。

1.高度経済成長期以降に整備し、老朽化したインフラの数が加速度的に増加

高度成長期以降に整備された道路やトンネル、橋などの経年劣化が加速度的に増加している。特に、2040年には「建築後50年以上」経過するインフラ設備がかなり多くなることが問題視されている。

高度経済成長期以降に整備し、老朽化したインフラの数が加速度的に増加

画像出典:国土交通省『総力戦で取り組むべき次世代の「地域インフラ群再生戦略マネジメント」~インフラメンテナンス第2フェーズへ~』提言書について

2.技術系職員の減少、不足

自治体において技術系職員(土木技師・建築技師)が減少し、不足していることが問題視されている。現在、約5割の自治体で技術系職員数が5人以下となっており、次世代に技術をつなぐことが課題となっている。

3.土木費の減少

各自治体で土木関連予算が不足・減少している点も見逃せない。予算がないため、補修・修繕に着手できないという問題がある。

今後に向けた地方自治体に期待される取り組みとは

「人材不足」「予算不足」とはいえ、インフラ老朽化対策を何も行わないわけにはいかない。今後に向けて、地方自治体に期待される取り組みを見ていこう。

民間との協力も視野に入れた新技術の活用

自治体だけではなく、民間事業者と協力しながら、老朽化対策を行うことも検討したい。例えば、以下のような取り組みがある。

ドローンを利用し、設備の上空から画像を撮影し、損傷部分を確認する

ドローンを利用し、設備の上空から画像を撮影し、損傷部分を確認する
・AIを利用し、上下水道の劣化を診断する

人材不足解消の一助となる可能性もある取り組みだ。積極的に検討していきたい。

インフラメンテナンスへの国民・地域の関心の更なる向上 

インフラのメンテナンスについて地域住民に関心を持ってもらうため、地域住民への啓発も行っていきたい。例えば、学校への出前授業でインフラの大切さを訴え、子どもの頃から関心を持ってもらう、などがある。

地域インフラ群再生戦略マネジメント

特定の自治体だけでインフラ整備を行うのではなく、複数の自治体で協力する仕組みをつくることも考えたい。なお、この際の主体は市町村になるが、国や都道府県にも協力を求め、全体で取り組む仕組みをつくるべきだろう。

安心して暮らせる社会を維持するため、近隣の自治体と協力し合いインフラ老朽化の対策を

インフラの老朽化は放置しておくと重大な事故につながる可能性があるため、早急な対応が求められる。予算不足や人材不足といった問題はあるが、メンテナンスの仕組みづくりは必須といえるだろう。

自治体単独で行うのが難しい場合は、民間や近隣の自治体、都道府県とも協力することも検討すべきだ。

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