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【セミナーレポート】能登半島地震の教訓をこの先へ ~復興への取り組みと防災力向上~【Day2】

全国からの注目を集めた「能登半島地震の現状と教訓」セミナーの第2弾。前回開催分と同様、様々な分野から防災における知見を持つ方々が集まってくれました。

Day2では能登半島地震、熊本地震の災害対応を経験した職員をはじめ、保険や通信、エネルギーといった領域の事業者が登壇。それぞれの視点からノウハウを伝えます。

概要

□タイトル:能登半島地震の教訓をこの先へ ~復興への取り組みと防災力向上~【Day2】
□実施日:2024年9月27日(金)
□参加対象:自治体職員
□開催形式:オンライン(Zoom)
□申込者数:177人
□プログラム:
 第1部:熊本地震の経験と教訓
 第2部:地域における防災・減災取組支援について
 第3部:地方での大規模災害のリスクと復興に向けたポイントについて
 第4部:防災DXと避難所の通信インフラ強靭化
 第5部:災害時のエネルギー確保と避難所の居住環境向上について


熊本地震の経験と教訓

第一部は、災害対応の経験が豊富な熊本市の職員が登壇。能登半島地震への対応で見た現実、そして熊本地震の振り返りなどを通し、現在の同市における取り組みと、今後の災害に備えるポイントなどを伝えてくれた。

<講師>


 

 

 

清田 隆宏氏
熊本県熊本市 政策局
危機管理防災部 部長

プロフィール

平成28年熊本地震では、住家被害認定調査に業務の中心として携わる。政策局危機管理防災総室副室長(2018年~2020年)この間に防災士資格取得。政策局危機管理防災部長(2024年~)。


熊本市による対口支援の内容について

熊本市政策局危機管理防災部長の清田と申します。私からは、熊本地震の経験と教訓をテーマにお伝えさせていただきます。

まず、先の能登半島地震について。当市は政令指定都市であり、指定都市市長会で「広域・大規模災害時における指定都市市長会行動計画」が策定されています。この計画の枠組みの中で、当市は珠洲市への対口支援を行うことになりました。私も1月23日から31日までと、2月4日から13日までの2回、珠洲市へ支援に入っています。

1回目の支援は災害マネジメント総括支援員という立場で、災害マネジメント活動を行いました。活動の中では、各関係機関との調整や、市長・副市長へ助言を行っています。

2回目の支援では、住家被害認定2次調査プランニング支援を行いました。私が熊本地震でこの業務に携わっていたので、経験を活かすためです。

住家被害認定の2次調査は、1次調査結果に不服がある被災者の申請で実施しますが、珠洲市としては被災者の1日も早い生活再建のため3月末までに終わりたいとの意向があったため、それに応じるべく調査体制や応援職員の必要などを検討し、プランニングを行いました。その際、新たな取り組みとしてドローンを活用した遠隔での住家被害認定調査を実施しています。初の取り組みだったので課題も判明しましたが、より効果的な利用に向け課題を関係機関と共有して対応したいと考えています。

また、当市全体としては珠洲市への対口支援で250名の職員を派遣。対口支援以外でも上下水道等のライフライン応急復旧支援、公費解体業務支援などに243名の職員を派遣しました。この活動は現在も継続中です。

熊本地震の際には、多くの自治体から支援をいただきました。今回の能登半島地震ではその恩返しの意味も含め、それぞれの職員が災害対応にあたっているところです。

“三助”を軸にした地域防災計画をつくる。

次に、熊本地震を踏まえた対応と備えについてお伝えします。“自助・共助・公助”それぞれの強化を目指したものです。

まず、当市では地域防災計画の見直しを行っています。熊本地震で課題となった点を中心に見直し作業を行っており、改定にあたっては、市民・地域・行政それぞれの災害対応力を強化するという基本理念のもと、以下6つのポイントを中心に取り組んでいます。

また、熊本地震では避難所運営に関する課題が浮き彫りになったため、地域における避難所運営体制の強化に取り組んでいます。校区ごとに情報を集約する校区防災連絡会を設置し、避難所運営委員会も避難所ごとに設置。さらに、避難所を担当する職員を平時から指名して固定化しました。

その他、様々な訓練を通じた防災力の向上、トイレやエアコンなど避難所機能を考慮した施設の整備、協定の締結など官民連携による防災力強化など、複数の取り組みを進めており、受援計画の策定、備蓄食糧の見直しも行いつつ、今後に備えています。

南海トラフ巨大地震では、熊本市の一部でも震度6弱が予想されており、大規模な被災が想定されると同時に、太平洋沿岸地域への応援なども必要になると考えられます。その反面、熊本地震から8年が経過する中、市民アンケートを実施したところ6割を超える方が「熊本地震の記憶を忘れがちだ」と回答されました。地域の防災イベントに参加したことがない方も半数以上です。地震の記憶が風化していくのは仕方ない面もあるのですが、記憶が遠のいたとしても、常に災害への意識を醸成するような仕組みをつくっていくことが必要だと考えているところです。

多面的な取り組みで地域の防災力を磨いていく。

最後に、“誰も取り残さない被災者支援”の話です。

当市では熊本地震の教訓や課題を踏まえ、地域防災力の向上を目指し、熊本市防災基本条例を制定しています。主な内容は以下の通りです。

この条例において毎年4月16日を「熊本地震の日」と制定しました。これは熊本地震で得た災害の教訓等を、次の世代に伝承するとともに、防災への関心および理解を深めるための取組を進めるものです。

本年度は2回目となるイベントが実施され、防災パークを開催するなどして約3,500人の来場者がありました。また当市独自のマイナンバーカードを利用したスマートフォンアプリ「くまもとアプリ」を令和6年3月末から開始しています。事前に登録しておくと、災害時に避難所の受け付けがスムーズになるなど、的確な避難者への支援につながるものです。このように、熊本市防災基本条例に掲げた取り組みを確実に進めているところです。

皆さんの地域においても、ある日突然災害が発生して被災者になるということがあるかもしれません。明日はわが身として捉えていただき、災害が突然降りかかった場合でも対応できるよう、事前の備えに努めていただくことが重要だと考えています。

地域における防災・減災取組支援について

災害発生時、住民へのサポートを効率よく行うためにはデータの活用が欠かせない。第2部では、災害に関するデータと分析ノウハウを持つ事業者が、有事に役立つ民間からのサポートについて情報を提供する。

<講師>

 

 

 

 


國部 裕氏
三井住友海上火災保険株式会社
課長代理

プロフィール

2011年に三井住友海上に入社。保険金支払部門で事故対応業務などを経験し、現在は防災減災領域を初めとした自治体向けソリューションの推進および新規ビジネスの企画・検討・開発に従事。

 

 

 

 




和住 賢一氏
三井住友海上火災保険株式会社
部長

プロフィール

1994年、住友海上(現:三井住友海上)に入社。自動車事故処理から企業営業まで幅広い経験を積み、現在は、会社の地方創生のリーダーとして、防災・減災、SDGs、脱炭素、地域経済活性化に向けた多くのアライアンスを推進している。


相次ぐ激甚災害に対し、保険会社ができることは何か

日本は災害大国ですが、近年は地震や台風などの災害が激甚化しており、それによる被害の甚大化や、災害対応業務の負荷増大など、各種課題が生じています。

こうした災害対応においては、最新のデータ分析技術による災害予測や平時からの防災力向上施策が予測が重要です。保険会社としてこれまで培ってきた知見やノウハウの活用、またアカデミアとの連携による先端技術の社会実装を目指し、様々な角度から取り組みを進めています。

まず、平時から地域の防災リテラシー向上を支援する取り組みとして、防災パートナー制度と、被災者生活再建支援サポートを紹介します。

防災パートナー制度の具体的な活動は、保険の代理店は全国に約3万店舗あるので、この各店が、年に1、2回、火災保険や自動車保険の更改をする中、行政が伝えたい内容を橋渡しして伝達するというものです。例えば、地域の防災訓練のお知らせや、家具の固定に関する啓発といったことを直接案内しています。

また、災害中間支援組織の組成のお手伝いや、地域の防災訓練への参画、イベントなどの活動も展開しています。こうした活動を通し、少しでも自助が勧められるよう、全国の代理店と一緒に取り組んでいます。

続いて、被災者生活支援サポートについて説明します。

当社では全国各地の自治体と協定を締結していますが、この取り組みを開始して3年間で180を超える自治体と取り組みを進めさせていただいています。

具体的には、水災を対象とした、災害発生時に行う住家被害認定調査のサポートです。我々も水災が起きた際、お客さまの住宅に駆けつけて全社体制で調査し、データを取り付ける、写真を撮るといったことを行います。そのデータを自治体に提供して、罹災証明の発行を早くスムーズに行うというサービスです。これは自治体の費用負担なしで提供する仕組みなので、多くの自治体に採用されています。

洪水・地震における住宅被害規模推定サービス

次に紹介するのが、洪水・地震における住宅被害規模推定サービスです。

弊社が保有する保険契約のデータや水災事故データなどを活用し、AI技術の一つである機械学習を通じて、損害保険ならではの独自アルゴリズムを構築しました。実際に地震が発生した場合、気象庁からの推計震度分布のデータを読み込ませて、独自アルゴリズムにより住宅の全壊や半壊、一部損壊などの被害棟数の推定件数を算出します。

地震と洪水でインプットデータが異なりますが、地震であれば推計震度分布のデータを活用して、発災約10分後に速報値を算出。その後推計震度分布のデータと、インターリスク総研が大学と連携して開発した地震動分布推定システムを活用して、発災数時間後に確報値を算出します。

洪水の場合は国土地理院から出る浸水推定図を活用し、発災約1日から3日後に推定値を算出するものとなっています。自治体で想定されるユースケースは、以下の5つです。

本ソリューションを活用して、今年の4月末から、震度5強以上が発生した場合に被災自治体に対して住宅被害棟数の推定結果のキャプチャー画面を無償で提供する取り組みを始めています。対象の災害は地震のみですが、事前申し込み等は不要で、自治体に対して弊社営業を通じてご案内をさせていただきます。

土砂災害マルチシナリオ予測サービス

最後は、土砂災害マルチシナリオ予測サービスの紹介です。

地震と土砂災害は密接な関係があり、強い地震のあとは、土砂災害の発生に特別に警戒を行うソリューションが有効です。そこで開発したのが本サービス。台風科学技術センター、民間気象会社のウェザーマップと、産学連携を通じて開発しました。

気象予報における台風の予報円は、進路の不確実性を含めて示されますが、自治体では予報円のどのルートを進んだ時に最も危険なのかが分かりません。また、気象庁の警報は最大6時間先の予測なので、夜間や早朝の災害対応準備は職員の経験だよりになっているのではないかと思います。

このサービスでは、土砂災害の危険度を30時間先まで予測し、かつ予報のばらつきを加味したマルチシナリオ予測とすることで、最悪のケースを想定した対応も可能としています。最大1日半前から災害対応の行動ができるので、夜間や早朝における災害対応の準備や、避難指示を行う心構えとしての活用を見込んでいます。

これまで洪水や土砂災害に関するリスク予測データの提供は気象庁しかできませんでしたが、昨年末の気象業務法の改正により民間事業者からのデータ提供も可能になりました。ただし、混乱を防ぐために事前説明を行った方のみへの提供となっています。そのため、現時点では自治体への提供を想定しており、業務の一助になればと考えています。

地方での大規模災害のリスクと復興に向けたポイントについて

地震、豪雨と二重災害に見舞われた能登半島。その当事者である石川県の職員が、現地の復旧・復興状況を伝えつつ、災害対応における“地方ならでは”の課題について、リアルな事例をまじえつつ共有してくれた。

<講師>

 

 

 

 

佐藤 晋太郎氏
石川県
能登半島地震復旧・復興推進部
創造的復興推進課 課長

プロフィール

2013年経産省入省。再エネ、クールジャパン、地方への人材移動等の業務を経て、2022年に石川県に出向。能登半島地震発災後、県物資チームの中枢を務め、4月からは県の創造的復興プランの策定・推進等に携わる。


能登半島地震、能登半島豪雨を経た現状について

当県では9月の豪雨で、能登半島地震からの復興が進みつつあったところに打撃を受け、復旧局面に戻ってしまいました。まず能登半島地震ですが、半島の先で震度7および6強、金沢市は5強で、被害は広範囲に発生しています。余震が多いのも特徴でした。

被害は多種多様で、人的被害は大雨で加算されてしまっています。死者は374名、負傷者1,212名。住家被害は約9万棟です。避難者は、豪雨前の数字ですが、1万4千人から600名弱まで減りました。逆に公営住宅や仮設住宅で生活を始めた方が2万名程度まで増加しています。

現状、公費解体が大きなテーマで、約2万2千棟が対象です。全国から解体業者が応援に駆けつけていて、来年の10月頃までには終えるということで工程を組んで、早回しで取り組んでいます。これが進んでいかないと、まちの復興や、震災から立ち直るという気持ちの切り替えがしにくいというところもありますので、速やかにできるよう取り組んでいます。

また、9月の豪雨では死者9名、行方不明者、安否不明者合わせ6名で、住家被害は床下床上の浸水が多く発生。道路の寸断、電源が喪失して水が戻らない、こうしたことで多くの方々が避難所に駆けつけ、今も避難生活を続ける原因になりました。

仮設住宅でも多くの被害が生じています。仮設住宅地には広い場所が必要なので、河川敷などに近いところも多くあります。こうしたところに建てていた中での豪雨でした。避難所からやっと仮設住宅に入ったという方々が、またダメージを受けて、心が折れかけているところをどうサポートできるか。これが二重被害の重要な対応だと思っています。

地方が被災した場合に起こり得る問題点

ここからは、地方における災害のリスクをお伝えします。

まずは孤立集落が多く発生したというのが、この地方における大きな震災リスクです。下図左側に×印がつけられていますが、これは1月の地震で土砂崩れや地盤崩落等により通れなくなった道です。

能登は毛細血管のように細かい道が山あいを巡り、800の集落が点在している地域です。道路が寸断されると集落は孤立します。この状況下でどう救命救助するのか、どのように物資を送るのか、またライフラインをどう届けるのかというのが大きな課題でした。

2点目は広域避難者の発生です。地方で災害があると都市部に避難したいという方々が多く発生します。そうした方々の存在を踏まえた上で、支援の仕方を考えなければならない。今回は発災後に被災者データベースを構築して何とかなったのですが、災害が起きてから立ちあげるのは非常に大変で、大きな混乱があった点は、みなさんにもお伝えしたい学びでした。

3点目は帰省客や観光客の存在です。1月1日に地震が発生したので、住民票では分からない人たちが多く現場にいる状態でした。こうなると人員の把握、優先度の決定というのが難しくなります。当県では従来の地域防災計画で、帰省客・観光客の存在を想定できておりませんでした。こうした点も想定した防災計画が重要だと思っています。

そして、4点目が高齢化です。能登では集落によって高齢化率が50~80%で、避難や被害にも影響を及ぼします。高齢者は、復興時も新しく家を建てるのが難しい。しかし、この地域では民間の賃貸が非常に少ない。結局、災害公営住宅への希望が殺到するおそれがあるわけです。

都市部には都市部の課題があると思いますが、やはり地方は地方なりに考えなければならないポイントがあります。皆さんも能登半島地震の事例を参考に、それぞれの自治体での計画等に活かしていただきたいと思っています。

今後の“能登らしさ”を大切にした復興に向けて

最後は、今後の復興に向けたポイントを紹介します。

当県では、復興計画をつくるにあたって、地元の声をよく聞き、その上でそれと整合するプランをつくっていくといったことを心がけました。そうした中で、住民の方々が言っていたのは「能登らしさ」を大事にしたい、ということです。復興において、まちをつくり直していく中で、下手をすると、どの地域でもあり得るような光景ができ上がるということはあると思います。

そうした時に失われる能登らしさもあるのではないか。自然の景観とか、そこに暮らす人々の営みとか、日々の交流とか。そういう能登らしさをこれからも守っていける復興にしたいという思いが一番にありました。そのため、能登らしさを守るために何を変えるべきか、という点を意識した計画をつくっています。

復興プランのスローガンは「能登が示す、ふるさとの未来」です。この復興が全国各地域のふるさとのあり方に少しでも資するよう、モデル的なものになるようにという気持ちを込めて、県としては復興に取り組んでいます

今は豪雨の被害もあり、復旧に再び取り組んでいるところです。この後、復興フェーズにおいて能登で暮らす人々を応援し、地域の再生を促して行くフェーズになります。県としてもプッシュ型で提案をしながら進めたいと思っていますので、ぜひ皆さんからも暖かいまなざしとお力添えをいただきながらやっていければと考えています。

防災DXと避難所の通信インフラ強靭化

被災者の救助活動において、欠かせないものの1つが通信インフラだ。この領域において防災DXの活動をする事業者が、最新の通信事情と災害に強い通信インフラについて、具体的な導入事例も含めて紹介する。

<講師>

 

 

 


川村 俊祐氏
株式会社ワイヤ・アンド・ワイヤレス
事業推進本部 アシスタントマネジャー

プロフィール

当社入社後、主に自治体へのフリーWi-Fi整備の営業を担当。2021年より、整備した通信インフラを活用してパートナーとの連携による新たな価値創出、提案活動に従事。現在は防災DXの推進役として活動中。


公衆無線LANに関する近年の傾向について。

ここではまず、公衆無線LANの社会的役割、ニーズの変遷に関する解説から始めます。

国内の公衆無線LANは、インバウンド向けとして2012年に開始したKYOTOフリーWi-Fiに代表されるものが始まりでした。その後震災もあり、災害時の安否確認や災害情報の入手といった目的もあって、避難所にもWi-Fiの整備が広まりました。コロナ禍ではリモートワークの普及もあり、コワーキングスペースとなるような施設においてもフリーWi-Fiの利用が一般化。直近ではデジタル田園都市国家構想もあり、必要となる通信インフラとして公共施設のWi-Fi化が進んでいます。

そして、ここ1年半ぐらいで「OpenRoaming(オープンローミング)」という新しい公衆無線LANが広がりをみせています。オープンローミングはWBAという業界団体が推進する国際的な無線LANローミングの仕組みです。100以上の国と地域で普及しており、利用者は10億人以上。端末のメーカーもオープンローミング設定をデフォルト化していく流れになっており、今後の利用は拡大していくものと思われます。

このオープンローミング、今までの公衆無線LAN、フリーWi-Fiとの違いは、セキュリティと利便性です。

従来のフリーWi-Fiは端末とアクセスポイントの区間が暗号化されておらず、盗聴などのリスクがありました。また、異なるサービスのWi-Fi利用ではパスワード入力などの手間もありました。オープンローミングでは端末間が暗号化されていることによりセキュリティを確保し、対応エリアに入ればパスワード入力や認証手続きの手間なく、自動でつながります。

このように、利用者にとってセキュリティと利便性の高いオープンローミングなので、今後もスタンダード化していくものと思われます。

Starlink+Wi-Fiで、通信可能な範囲を広げる。

続きまして衛星回線「Starlink」について。もうだいぶStarlinkに関する情報は出ているので、Starlink+Wi-Fiの事例をお伝えします。

まず、“山小屋Wi-Fi”です。電波の届きにくい山小屋で、防災や天候情報の収集、家族・友人との連絡、SNSへの投稿など、山小屋利用者やオーナーに好評いただいています。いずれの山小屋に設置している構成もStarlink付属のWi-Fiではなく当社の提供するアクセスポイントで整備。カメラなどにも使えるよう、認証不要の業務用電波を並波するなど、1台のアクセスポイントで複数の用途で使える状況です。

次に、イベントでの利用です。来場客が5万人を超えるような音楽イベントでStarlink+フリーWi-Fiを整備しました。イベントでは一時的に携帯がつながりにくくなる状況が想定されることからStarlinkを活用しWi-Fiのアクセスポイントとの組み合わせによって、広域でのエリア化と屋外での利用を実現しています。日にちや時間帯によってStarlinkやWi-Fiアクセスポイントの移設を行い、当社が培ってきた実績を活かしてサービスを提供しています。

続いて、避難所の通信インフラ強靭化について説明します。ポイントは以下の3つです。

避難所の通信を整備することで、避難者の安否連絡や、インターネットでの災害情報検索などのほか、自治体も防災DXを実現する通信インフラとして役立てられるものとなっています。

アプリとの掛け合わせでさらに利便性を向上。

ポケットサインはマイナンバーカードの利活用を専門とするスタートアップで、今回説明する「ポケットサイン防災」は複数の自治体でも導入実績があるサービスです。本セミナーで熊本市から紹介された「くまもとアプリ」も、ポケットサインが基盤で、オリジナルのスーパーアプリとしてお使いいただいています。

まず、ポケットサインというマイナンバーカードを活用したデジタル身分証アプリがあり、その機能の一つがポケットサイン防災です。防災専用アプリだと普段は使わないので削除されたりするため、平時にも使えるアプリを備えることで住民と自治体のコミュニケーションを常に取れるような構成にしています。

マイナンバーカードを使ってポケットサイン防災に登録いただくと、避難所受付をスムーズにできるほか、アレルギー登録や家族の登録もできます。また、様々な機能を掛け合わせて、「必要な物資は何ですか」といったアンケートができる機能も用意しています。

このサービスと、OpenRoaming対応Wi-Fiを活用することで、避難所に設置されているWi-Fiを受け取ったら瞬時に自動で受付が完了するサービス連携もしています。

地域ポイントなどと掛け合わせて活用される事例も多く、デジタル庁の優良事例にも掲載されており、デジ田交付金の実績もありますので、興味のある方は気軽にご相談いただければと思います。

当社には、通信事業者として避難所となる施設をトータルでサポートする防災ソリューションのご提案が可能です。災害の備えによって住民の方の安全や、職員の負荷軽減へのお手伝いができればと考えています。

災害時のエネルギー確保と避難所の居住環境向上について

本セミナーの最終セッションは、エネルギー分野の事業者が登壇。災害時のレジリエンス強化という視点で、いざという時に避難所などで住民をきちんと支える省エネ・再エネの取り組みについて提案する。

<講師>

 

 

 

 

度会 洋徳 氏
株式会社アイネック
代表取締役CEO
 

プロフィール

28年にわたり電機業界に従事し、2022年に株式会社アイネック代表取締役に就任。「電気に関連した環境ソリューション事業を通じて、持続可能な社会の実現」を目標とし、カーボンニュートラルの実現に向けて、環境課題を解決すると共に、自治体が保有する施設におけるCO2・コスト削減に寄与する。

 

省エネルギー・再生可能エネルギーを活用し、様々な課題を解決

当社は「電気に関連した環境ソリューション事業を通じて、持続可能な社会の実現」を目標とし地方公共団体と連携し、市町村ごとの地域性特性を考慮し省エネルギー・再エネルギーを活用したカーボンニュートラル実現に向けた課題抽出、実現に向けたプラン策定から導入に至るロードマップをご提案しています。

地方公共団体が保有する施設における、省エネ機器導入のコンサルティングや再生可能エネルギー(自家消費型太陽光発電)などのクリーンエネルギーの導入を、企画・設計・導入・維持管理など全般的な事業を行っており、公共建築物においてこれまで10,000施設以上の省エネルギーの現地調査・設計実績があります。

また、当社は省エネ・再エネ導入の取り組みとともに、災害時のレジリエンス強化を実現する事業を展開しています。具体的には自立エネルギー型の避難所の構築などで、「防災×脱炭素」を目標としています。

 

脱炭素事業で導入されているソリューションと現状の課題

現在、脱炭素に向けた様々な事業が行われており、環境省でも脱炭素に向けた施策を進めておりますが、課題を抱えたままのものも多く見受けられる状況です。

例えば、導入が進められている太陽光発電につきましては、自家消費率と投資回収年数から考えられているケースが多くあります。災害時に必要な電気容量を計算して設計されていないため、防災の観点からすると課題があります。

また、蓄電池についても導入時においては投資回収の年数が大きく関わってくるため、それらを鑑みながら導入することになるのですが、現在は蓄電池が高額なため費用対効果が合わず、太陽光発電と同様に、災害時に備えるべき電気容量をもとに設計されていないというのが現状です。

電気自動車については、政府目標に向けて公用車のEV化は進行中で、災害時の非常用電源として頼りになるはずですが、車両から避難所への放電設計が検討されていない場合が多く、せっかくのエネルギーが有効活用できない状況です。

同様にLED設備や体育館の空調なども、災害時におけるエネルギー確保に対するリスクの検討がなされていなければ、災害の時など実際使用する際に起動できないことが想定されるなど、課題のある状況であると考えております。

脱炭素事業とレジリエンス強化を同時実現する

様々な省エネ・再エネ事業は、分断された状況にて一つ一つ進められているケースがほとんどですが、我々は、せっかく取り組むのであれば、事業を点ではなく災害時も想定した面の事業として、連携させて進めることを提案しています。
例えば、避難所において災害時に必要なエネルギーを計算し、太陽光パネルや蓄電池、LED照明などを準備して、不足する電力分は公用EV車で補うといったエネルギーの供給計画を立案します。これにより、停電によるブラックアウト状態になった場合でも、十分な電力が供給できる「自立エネルギー型 避難所」として、地域住民の皆さんの安全を確保することができるようになります。

下図左は導入フローの一例です。まず当社がヒアリングを行い、必要な負荷容量の算出や自立発電可能な電気量などの計算をもとにエネルギーコンサルティングをおこないます。そして、どういう手法で導入するのが良いか、リース方式や起債を使ったり、補助金を活用したりするといったプランを提案いたします。また、事業化に向けた様々な課題も出てきますので、その解決とロードマップの策定を行います。これら事業化に向けた一連の流れを自治体の皆様といっしょになって、当社はフルサポートしていきます。

リース方式によるデザインビルドの勧め

省エネ設備導入にはイニシャルコストの問題が出てきます。それに対して当社が行う省エネ環境事業は、既存の電気代を削減させることで、省エネ後は電気代が下がる効果があるので、その下がった幅の中で事業にかかる費用を賄うことが可能です。
また、リース料については補助金を活用することでさらに圧縮するが可能です。メンテナンスリース方式の活用により、費用の平準化が可能となり、リース期間中は維持管理やメンテナンスの負担が軽減されるといった面も含めて自治体にメリットがあると考えています。

従来の公共工事受注の場合、工程ごとに予算請求が必要であり、導入の実現にはかなりの期間が必要ですが、当社の「デザインビルド方式」はコンサル業務から設計・施工までがパッケージとなっており、以下のように導入までの期間を大幅に短縮できます。
またリースを用いるため、イニシャルコストも必要なく、すでに予算取りされている電気代のうち省エネによるコスト削減分をリース料に充当することで新たな予算取りが不要というメリットを活かすことも可能です。

省エネソリューションの導入事例

蒲郡市では、公共施設における太陽光パネルや省エネ設備の導入に関して、施設ごとの用途に応じた様々な省エネ・再エネの導入を提案し、この取り組みを実行中です。
地元の電気工事組合などとも協業し、自家消費型太陽光発電、レジリエンス強化を目的とした蓄電池、EV自動車、体育館空調などを、補助金も積極活用し、省エネソリューションによる“まちづくり” を進めています。

その他の導入実績として、東海・関東・関西の地方自治体を中心に幅広く官公庁の事業に携わっており、省エネ診断実績は1万施設を超えています。これらのノウハウをもとに、それぞれのまちにフィットした様々なご提案をさせていただきたいと思っています。

我々は、今後も電気に関連した環境ソリューションによる持続可能な社会の実現を目標に事業を進めてまいります。これらの一環として、「防災×脱炭素」を実現できればと考えております。お問い合わせいただきましたら日本全国対応いたしますので、気軽にご連絡ください。

お問い合わせ

ジチタイワークス セミナー運営事務局
TEL:092-716-1480
E-mail:seminar@jichitai.works

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