ジチタイワークス

茨城県常総市,東京都府中市,大阪府大阪市

官と民がともにチャレンジし、インフラの未来を共創する。

官民連携による持続可能なインフラ運営

国内各地の水道管が、老朽化に伴う漏水・破損事故の危機に直面している。工業用水道の管路の大半が法定耐用年数を超過していた大阪市は、事業の安定化を目指し、令和4年度から「コンセッション方式」を採用した。

※下記はジチタイワークスVol.34(2024年10月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[PR]インフロニア・ホールディングス株式会社

左から
大阪府大阪市
水道局 総務部
連携推進課
課長代理 西 慶太(にし けいた)さん

みおつくし工業用水コンセッション
代表取締役社長 川井 晴至(かわい せいじ)さん
 

老朽管路の更新需要が増大する一方で、収益は低下しつづける状態に。

総務省によると、全国の工業用水道管路の48.3%が、令和3年時点で法定耐用年数の40年を超えているという。「当市が管理する工業用水道では、年間10~15件の漏水が発生しています。管路の約80%が法定耐用年数を超過し、更新需要の増大が見込まれますが、特にリーマン・ショック後の景気後退などにより、収益は年々低下していました」と、事業の近況について西さんは語る。収益が減少する中でも大規模な漏水事故を防ぐため、投資を抑制しながら効果的に管路更新を実施していくことが経営課題になっていたという。

※総務省「令和3年度 地方公営企業年鑑」より

「そこで平成30年から、官民連携による新たな経営手法の検討を開始。経済産業省の支援を活用し、コンセッション方式の導入可能性調査に取りかかりました」。事業者側へのサウンディングを行いつつ検討を進め、令和2年度に公募を実施。「インフロニア・ホールディングス(以下、インフロニア)」傘下の「前田建設工業(以下、前田建設)」との契約が決まった。実は同市以外にも、工業用水道をコンセッション事業化した事例はいくつかある。ただ、それらは事業許可を自治体がもったままなのに対し、同市の場合、民間事業者が基本的な経営責任を負う、国内初のケースとなった。

ICT活用で漏水リスクを常時把握し、修繕・更新のバランスを最適化する。

インフロニアは、ゼネコンの前田建設、道路舗装の前田道路などがホールディングス化した持株会社。全国各地でコンセッションをはじめとする官民連携事業を展開している。グループ企業はいずれもインフラ関連の実績が豊富で、サービスの総合力が強みだという。同市から運営権を引き継ぐにあたり、新会社「みおつくし工業用水コンセッション(以下、みおつくし)」を発足させ、本事業に専念できる体制を整えた。

令和5年度までインフロニアに所属し、令和6年度からみおつくしの代表に就任したのが川井さんだ。「公募開始がちょうどコロナ禍の時期で、非常に計画が立てにくい状況でした。ただ、管路の老朽化は国内全域の共通課題です。この事業を“大阪工水モデル”として全国の課題解決につなげることを目指し、挑戦しています」と語る。

大阪工水モデルのポイントは、“管路更新も含めた一連の業務を行うこと”と、“管路の状態監視保全システムを構築すること”の2点。「当市の工業用水道の管路は計290kmほどです。そのうち、漏水事故時に影響が大きい約12kmを“重点監視路線”とし、100カ所以上に漏水センサーを設置して常時監視。それらを含めた全管路には衛星画像解析を用いて、地下漏水の発生位置を把握する広域探査を試行的に実施しています」。管路の重要度に合わせた監視手法を採用することで、コストの抑制や管路の長寿命化を目指すという。

管路の長寿命化を図りながら、利用者の拡大にも取り組む。

この状態監視保全システムについて、西さんはこう評価する。「漏水検知のためとはいえ、センサーや衛星などの先進技術を自治体が導入するには、成果が確実に見える段階になければ困難でしょう。このスピード感とトライアンドエラーの実行力は、民間による運営ならではだと感じます」。

また、コンセッション事業の立ち上げにあたっては、収益改善の対策についても重視したという。「新たな料金プランを導入し、利用者の状況に合わせて選べるようにしました。また、新規契約者の拡大を目指し、管路の引き込み工事費用の補助なども行っています」と川井さん。こうした大胆な改革は、事業許可を民間がもっている事例ならではといえるだろう。このほかにも、自動検針メーターのデータ送信をLTE回線に一本化するなど、自治体単独では行いにくかった対策を一気に推進。通信費を抑えながら、使用量を常時監視できるようになったそうだ。

今回のコンセッション事業は、民間ならではのチャレンジングな姿勢が市の幹部職員にも高く評価されているという。「これらの手法が今後より発展的に進めば、上水道側にも社会実装可能な事業モデルができるのではないでしょうか」と西さん。川井さんも、「失敗しながら最適な手法を模索し、新たな技術と事業スキームを生み出したいと考えています」と相づちを打つ。

始まったばかりのこの挑戦について、西さんは次のように語る。「当市は西日本を代表する都市であり、工業用水道は重要な役割を果たしています。この事業は、持続可能な将来ビジョンを構築する取り組みなのです」。

 

都市整備部
道路課
維持管理等担当主幹
直井 秀典(なおい ひでのり)さん

事業効果を確認しながら、委託エリアを段階的に拡大。

道路をはじめとする都市インフラを適切に管理するため、平成24年度に「インフラマネジメント計画」を策定した同市。民間事業者のもつノウハウを導入することを目的に、平成26年度より一部エリアで包括的民間委託の試験運用を実施した。その効果が確認できたことから、3段階でエリアを拡大し、現在は市全域で事業を展開している。

事業範囲は3地区に分けており、東地区の事業を受託しているのが、「前田道路(現インフロニア傘下)」を代表企業とする共同企業体だ。地元事業者との連携のほか、高い意欲や積極性、予防保全型管理を遂行できる体制などが公募時に評価されたという。「当事業により、複数あった個別委託を一括発注できるようになったことで、職員の契約事務作業が軽減されました」と直井さん。

今後も官民連携を推進し、予防保全型管理を充実させる。

市民サービスの向上を目指し、同事業では24時間365日対応の“道路管理センター”を開設。市民からの要望・相談を集約できる体制を整えた。東地区では日常的な保全業務を効率化。要望が上がる前にパトロールで不具合に対応し、要望・相談の件数自体を減少させているという。現在はICTやAI技術も活用している同社。路面異常検知の効率化やクラウド上での情報共有、データベース化などを試行している。直井さんは、「街路樹の立ち枯れ状況や樹勢の把握など、職員よりも専門的な視点でパトロール巡回を行っています」と語る。

同市は今後も、官民連携による事業を充実させることで、予防保全型の管理を推進する考えだ。

委託のステップ


委託の内容

■管理センターの設置市民からの要望をコールセンターで集約し、管理システムで情報を一元化。リアルタイムで各所に共有される。

■日常的な保全

■道路巡回・点検効率化の試行車載検知器やAI画像解析技術の活用で、パトロール時の路面異常検知を効率化しつつ、精度の向上も図る。

■データを活用した予防保全システムに登録された日常保全データを分析・活用することで、予防保全型の維持管理へ移行させている。


委託の効果

1. 要望・相談件数が減少

維持管理の質が向上したことで、市民からの要望・相談件数は、令和3~5年度の期間で約14%減少した。


2. 市民満足度の維持・向上

持続可能なモデルを構築しつつも、トータルコストを縮減。市民満足度の向上につなげていくという。

自治体職員の業務も削減され、持続可能なインフラマネジメントへ

 

市長公室 資産活用課
課長補佐 兼 施設マネジメント係長
堀井 喜良(ほりい きよし)さん

地元業者とも連携しながら、高い技術力で管理水準を向上。

従来は公共施設の管理業務を個別発注していた同市。「老朽化が進む施設の適正管理が課題でしたが、管理レベルがバラバラだったのです」と振り返る堀井さん。また、課ごとの発注には多くの労力を費やしていたという。

それらの課題解決を目指し、前田建設と包括管理委託契約を締結。市の公共施設65カ所の管理業務を委託した。受託に合わせて同社は、適切な保守・修繕などを実施しようと、市内事業者との連携を強化。「庁内から、“市内の事業者であれば緊急時の迅速な対応が可能になるのでありがたい”といった意見が出ています」。事務作業の大幅削減により、施設管理に関わる職員数を減らすことができ、コア業務の成果向上にもつながっているそうだ。

「ほかの自治体にも、自信をもってオススメできます。導入によってどのような課題を解決するのか、庁内の意思統一を図ることがポイントと言えます」。

委託の内容

 対象施設  8課 65施設 公共施設の約71%(面積比)

 業務期間  令和2年4月から5年間

 対象業務  472業務/年
➡設備の保守点検・清掃・巡回管理(目視点検、応急処置、簡易修繕など)・最新技術の導入支援・施設情報のデータベース化 など

委託の効果

1.施設管理の品質が向上

施設担当者へのアンケートでは、77%が“施設管理の品質が向上した”と回答。細やかな報告や迅速な簡易修繕が喜ばれているという。

※令和5年 施設担当者17人へのアンケート(常総市調べ)

2.職員の業務負担を軽減

担当者のうち88%が“業務負担が軽減した”と回答。これにより、本来の業務でより高い成果を挙げられたとのコメントが集まった。

 

 

企業担当者の声

インフロニア・ ホールディングス
総合インフラサービス戦略部
部長 大塚 淳(おおつか じゅん)さん

多様化する自治体ニーズに応える。

PPP/PFI事業のメリットであり、当社の強みでもあるのは、“解決すべき課題に対し、総合的・横断的に取り組める体制”です。インフラの老朽化や少子高齢化といった課題に、全国の自治体が直面しています。こうした時代の要請に対しては、個別最適ではなく一気通貫のサービス提供や、建設業の枠組みにとらわれない幅広い分野との連携が求められます。そこでグループ各社のノウハウを包含しようと、令和元年にホールディングス化しました。

自治体のニーズは、この先さらに多様化・複合化していくでしょう。それに応えながら、期待以上のサービスを実現させるため、今後も事業領域を拡大させていきます。

■無償相談制度の活用を

国土交通省の「PPP協定制度」にて、同省と協定を締結。自治体からの相談対応や基礎講座の開催などに、無償で対応しています。気軽にご相談を。

お問い合わせ

サービス提供元企業:インフロニア・ホールディングス株式会社

東京都千代田区富士見2-10-2
飯田橋グラン・ブルーム8F

TEL:03-6380-8253
Email:Sogo_IS@infroneer.com

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