ジチタイワークス

福岡県春日市

従来の舗装を見直すことで、景観と安全性の両立を目指す。

耐久性の高い景観アスファルト工法

春日市では、主要駅周辺の整備事業の一環として歩道を舗装するにあたり、当初計画していた平板ブロックに代えて「ストリートプリント」を採用した。景観と安全性の両立を目指し、コスト面での比較検討も行った上での選択だったという。

※下記はジチタイワークスVol.38(2025年6月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。

春日市 都市整備部 道路管理課
左:主任 森川 亮太(もりかわ りょうた)さん
右:主任 伊南 和磨(いなみ かずま)さん

歩道の経年劣化や破損が頻発し、安全維持の補修作業に追われていた。

景観に配慮した歩道の整備には、ブロックをかみ合わせるように敷き詰めるインターロッキングブロック舗装を採用してきた同市。見た目には美しいが、耐久性には課題があったという。「特に車の出入りがある場所は、数年でひび割れたり、ブロックが浮いたりしていました」と森川さん。職員が現場を補修することもあり、対応には労力を要していたそうだ。

年数が経つほど頻繁に作業が発生するため、維持管理にかかる手間と費用は年々増えていく。また、補修時に同じ素材が入手できない場合もあり、一部分だけ色が浮いてしまうなど、むしろ景観を損ねる事態も発生していた。「維持管理のコスト面から、結局、黒いアスファルト舗装に変えてしまうこともあったんです。見た目はよくないと分かっていても、予算上やむを得ない選択でした」。

そうした中、地域事業者からの提案で平成30年に試験的に導入したのがストリートプリントだ。同工法は、アスファルト舗装の表面を加熱し、型押しによって模様を付け、滑りにくい専用塗料で保護・着色する工法だ。見た目はブロックや石畳のように美しく、市内数カ所で施工したが、数年経ってもほとんど劣化が見られなかったという。

試験導入の結果をもとに検討し、駅周辺整備での本格採用を決定。

同市では、平成14年度から現在にかけて「西鉄春日原(かすがばる)駅周辺整備事業」を進めている。駅の高架化に伴い、東西を結ぶ歩道や駅前広場を整備。にぎわい創出や交通安全の確保、バリアフリー化を図る。令和8年度末の完成に向けて、段階的に工事が進行中だ。事業計画の当初、歩道は平板ブロックによる舗装が予定されていたという。しかし平成30年の試験導入によって、ストリートプリントのメリットを実感したことで、同工法へ切り替えるよう計画を変更した。

決め手となったのは、景観性・実用性・コストのバランスだ。「従来の工法と比べて、初期費用は多少かかりますが、耐久性が高いため、維持管理コストを抑えられる。長期的なトータルコストはむしろ低くなると判断しました」。今回は、景観に重点を置く駅前広場やメイン通りでは型押しのデザイン舗装を採用、それ以外の区間はカラー塗装のみとする予定。場所によって、型押しの模様あり・なしを使い分け、メリハリをつける計画だそうだ。

また、部分的な補修や狭い区間でも施工が可能な点も魅力だという。「使用する機械を実際に見たところ、2mほどの幅があれば十分対応できそうだと感じました」と伊南さん。今回のような大規模事業に限らず、多様な現場での活用も視野に入るだろう。

満足度の高い、美しい仕上がりに“新たな標準”となる兆しを感じる。

一部区間の施工が完了したところで、市民への報告会を実施。アスファルトであることを説明すると、“石畳だと思っていた”と驚きの声が上がったという。「ブロックを使用していた頃は、年に数回は必ずどこかで不具合が生じ、補修に追われていました。今回の工法が広がれば、職員の対応コストも減っていくのでは」と森川さんは期待を込める。突発的な業務に追われることなく、中長期の整備計画や道路改良工事など、本来担うべき業務にもじっくり取り組めるようになるはずだ。

また、新しい工法は職員の負担軽減だけでなく、市民の安全にも寄与している。「市民にとっては、歩きやすい歩道になっていると思います。溝が浅いので凹凸は気にならず、ベビーカーや車椅子の利用者にも優しい印象です。安全に通れることが大事ですから」と伊南さん。同工法の採用箇所でバリアフリーに関する苦情は届いていないという。今後は市内の公園や文化施設での使用も検討されている。森川さんは「将来的にはこのような工法が、当市の新たな標準になっていくと思います」と話してくれた。


 

市内で広がる活用場所

春日西多目的広場公園(新幹線の見える丘)の整備においても、同工法を採用予定。上空から新幹線に見えるようなデザインを検討中だ。

展望施設周辺整備の将来イメージ図

豊富な色と型が選べる

ブロック風、タイル風、石畳風など多数の型がある。歩道だけでなく車道や駐車場などにも施工が可能だ。

会員企業がドローンによる空撮動画で事例を紹介している。閲覧はこちらから。

春日市の天神山公園内でも採用。

ストリートプリント工業会とは

ストリートプリントの普及と施工品質の維持に努める企業団体。会員企業がいない地域でも対応可能なので、まずは事務局へ問い合わせを。

会員企業:全国18

※令和7年4月時点

お問い合わせ

サービス提供元企業:ストリートプリント工業会

事務局

東京都渋谷区代々木2-6-7
セイチビル8F

TEL:03-3370-6828
Email:otoiawase@sp-kougyoukai.jp

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