デジタル収蔵品の展示ソリューション
約70年ぶりに博物館法が改正となり、所蔵する資料のデジタル化が推進されている。岐阜県博物館では、郷土資料である刀剣の高精細画像をタッチ対応の電子黒板で公開。細部まで分かりやすい展示で、多くの来館者に好評だという。
※下記はジチタイワークスVol.34(2024年10月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
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▲岐阜県博物館キャラクター 博(ひろし)くん
岐阜県
岐阜県博物館
学芸部 マイ・ミュージアム係
学芸員 南本 有紀(みなみもと ゆき)さん
担当者の声
初心者にも見どころを伝えるため、細部まで鑑賞できる工夫をしています。企業の担当者と話し合い、イメージ通りの展示になりました。
肉眼では鑑賞が難しかった刀剣を高精細画像の活用で分かりやすく展示。
岐阜県は、室町時代末の戦乱期に日本刀づくりが盛んだった地域。同館では、郷土資料として多くの刀剣を所蔵している。一方で、恐竜化石の出土が多かったことから、恐竜のコンテンツも充実しているという。そんな中、ゲームが火付け役となり刀剣ブームが始まった。ファン層の拡大などを受け、平成30年には刀剣の特別展を開催。以来、恐竜と並ぶ目玉にすべく、展示の充実を図っている。そこで考えたのが、特別展の図録制作などで撮影した、高精細画像の活用だ。「実は、刀剣の展示・鑑賞には多くの課題があります。まず、実物資料はスペースの関係上、たくさん並べることができません。さらに本来は、部分的に光を当てる角度を変えながら鑑賞するのですが、ケースに入れた状態ではそれができず、見どころが伝わりにくくなります。そのため初心者にも分かりやすく、楽しめるような展示がしたいと思っていました」と、学芸員の南本さん。
また同館には、コロナ禍に導入した55インチの電子黒板があったが、タッチパネルなどの機能を活用できていなかったという。そこで、デジタルコンテンツのビューア制作を手がける「ボイジャー」のソリューションを活用することになった。同社は高精細画像を詳細に表示できる技術が強みだ。
オーダーメイドのデジタル展示で刀剣の詳細な見どころが分かる。
刀剣展示に活用しているのは、「Gaze-On(以下、ゲイズ・オン)」というソリューション。最大9億ピクセルの超高精細画像を取り扱うことができ、動作がスムーズなため閲覧しやすい。展示の内容や規模、公開先は全てオーダーメイド。既存のハードウェアに合わせてデジタル展示システムを制作するだけでなく、WEBに作品を公開することもできる。
導入にあたっては、同社と定期的に打ち合わせを行い、約4カ月かけてデジタル展示「刀剣鑑賞自由自在」を開発したそうだ。64点の画像を収め、常設展で展示している。
鑑賞する際の操作は、画面に触れるだけで簡単に行えるという。トップ画面のインデックスから見たい刀剣の画像を選ぶと詳細が表示され、タッチで拡大・縮小・回転が可能。「刃文(焼き入れによって付く模様)のように、肉眼では見えにくく、スポット照明を当てて鑑賞するものや、銘(作者の名前など)まで細かく確認できます。画像が鮮明で、初心者でも刀の特徴が分かって楽しめるのではないでしょうか。直感的に扱えて、子どもや高齢者が容易に操作しているのを見ると、刀剣鑑賞が身近になっていると感じますね」。
“携行しやすい”利点を活かし幅広い場面で魅力を伝える。
同館では令和6年4~6月にも刀剣の企画展を開催。普段の人文・歴史系の展示は、60~70代の地元住民が主に来場していたが、このときは約半数が県外からの観光客で、年齢層も30~40代が多かったという。「来館者のアンケートでは、刀剣のデジタル展示に対してもコメントが寄せられ、“解像度が高く、特徴がしっかり見える”“画像で勉強したら刀剣の見方が会得できそう”など好評でした。ファン層が広がっているからこそ、初心者でも楽しめる展示になってよかったです」。
今後は、ほかの博物館にデータを貸し出したり、イベント会場で使ったりすることも考えているという。「刀剣自体を館外に出すのは難しいですが、データなら出前授業などにも使いやすいので、これまで以上に多くの人に魅力を伝えられると思います。せっかくの高精細画像なので、様々な発信にも力を入れていきたいです」。地域住民に郷土資料への誇りや愛着を感じてもらうためには、まずは興味を引き、分かりやすく伝えることが大切だろう。デジタルで手軽に楽しめる展示法を取り入れることで、地域の歴史や博物館そのものが、住民の身近な存在になりそうだ。
導入実績
自治体 大分県大分市
市内の文化資源をWEB公開している「大分市デジタルアーカイブ」の一部で、ゲイズ・オンを活用。江戸時代の大分を描いた「御城下絵図(ごじょうかえず)」を公開している。
スペシャルコンテンツの「御城下絵図の世界」から詳細が閲覧できる。閲覧はこちらから。
民間 ギンザ・グラフィック・ギャラリー企画展
イラストレーター・宇野亞喜良さんの作品をもとにしたポスターをWEB公開。
▲「宇野亞喜良 万華鏡」(令和4年12月)の展示作品。
お問い合わせ
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