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効果を生み出す地域独自の観光戦略~「データ活用」+「情報発信・マーケティング」+「魅力開発」~

国内の観光動向がコロナ前の水準を回復する中、国は観光を「地域活性化の切り札」として掲げ、観光地・観光産業の再生・高付加価値化に向けた政策を進めています。各自治体においても、地域経済の活性化に観光が担う重要性が増していると感じる職員が増えているようです。その一方で、地域の魅力を発掘し、さらに認知されるにはどうすれば良いか、難しさを感じている自治体も多いのではないでしょうか。

そこで今回、地域特性を踏まえた自治体の観光戦略について、専門家による講演や自治体での実例を紹介することで、ヒントとアイデアをお届けするセミナーを実施します。データの分析・活用のため、自治体としては何をすれば良いか、データ活用により、どのような課題を解決できるかを紹介すると同時に、観光施策に関連した企業ソリューションも併せて紹介します。

概要

■テーマ:効果を生み出す地域独自の観光戦略~「データ活用」+「情報発信・マーケティング」+「魅力開発」~
■実施日:2024/07/08(月)
■参加対象:自治体職員
■申込者数:172人
■プログラム
Program1
地域を豊かにするツーリズムの方向性とは
Program2
データマーケティングにもとづいた箱根地域独自の観光戦略
Program3
人流ビッグデータの活用で新たな“気づき”を
Program4
ロマンシング佐賀プロジェクト ~SaGaと佐賀の奇跡の連携~
Program5
地域の独自性を活かした「集客・回遊促進」を加速する人流データマーケティング
Program6
「デジタル観光統計」を身近に!「おでかけウォッチャー」の活用と可能性


地域を豊かにするツーリズムの方向性とは

<講師>

 

 

 

多摩大学大学院 客員教授
EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社パートナー
平林 知高さん

 

プロフィール

政府系金融機関、外資系コンサルティングファームを経て現職。データドリブン戦略の立案を起点とし、様々な社会課題の解決に向けた取り組みを実施。近年は、観光関連の政策立案を支援するとともに、全国各地の自治体や観光関連事業者などとの連携によるデータ利活用プラットフォームサービスを自らが主導して展開。エコシステム、プラットフォームビジネスにおける第一人者として活躍中。

国土交通省 観光庁 観光DX推進のあり方に関する検討会 委員、JNTO 認定外国人観光案内所の機能強化方策検討会 委員、地方部における観光コンテンツの充実のためのローカルガイド人材の持続的な確保・育成に向けた有識者会議 委員。


未曽有のパンデミックを乗り越え、ようやくインバウンドを含め活況を呈し始めた日本のツーリズム市場。2024年3月には単月で過去最高を記録するなど、順調に見える一方で、東京、大阪を中心としたゴールデンルートへの偏重や一部ではオーバーツーリズムの問題も聞こえている。ツーリズムに対する捉え方、いかに地域を豊かにしていくか、DXと言われているが何をすればよいのかを平林さんが講演する。

ツーリズムを取り巻く環境について

令和6年3月以降、インバウンド客数は3カ月連続で300万人を超え、回復傾向を見せています。一方、日本全体が回復しているかというと、そうではなく、令和5年宿泊データでは都市部に偏重していることが分かります。本年度は円安の影響もあり、海外旅行から国内旅行にシフトする傾向が強いため、もう少し好調になるのではないかと見ています。

インバウンドの好調な回復の一方で、「オーバーツーリズム」が非常に大きな課題となっています。全国全てではなく、局所的に起きています。これは日本だけではなく、世界各地の観光地でも問題化して議論されています。

ツーリズムは、「量」から「質」へと転換がトレンドになっています。しかし、果たして、量を捨てて質を追求することで、本当に観光地が幸せになるのかという点は、地域で今一度議論する必要があるでしょう。

1つの考え方として、域内の観光GDPをゴールとしたときに、どういう数字の掛け算になっているかを見て、自分たちがどういう部分の点数を重視すべきか。あるいは、質を重視するのであれば単価を意識する必要がありますが、質か量かではなく、どうバランスを取ってツーリズムによる経済維持と成長を目指すかが重要だと思います。そこで一番重要なのが、数字のデータです。

観光DXは地域に何をもたらすか

なぜDXが今必要なのでしょうか。DXはゴールではなく、あくまで「手段」です。企業や地域はDXに取り組まないと淘汰されますので、ここをしっかりと考えていく必要があります。自らのビジネスを可視化しなければ、経営のムダが蓄積し、衰退するだけでなく、地域も衰退する可能性が高まります。DXのプロセスを3段階で下記に表記していますので、参考にしてください。

データは、取り始めて1年以上のサイクルがなければ分析・活用が困難です。「今すぐ」取り組まなければ、結果は2年先、3年先となり、DXによる恩恵を受けることができなくなります。観光DXは、一事業者だけがもうかれば良いということではなく、地域全体が潤うことで初めて発展につながります。観光地として、どのようにDXを推進していくかが、極めて重要な要素となります。

また、データがあれば何でもできると思われがちですが、単にデータを取れば解決するわけではありません。データから出た数字を別地域と比較したり、仮説を立てたりすることによって、その数字が大きいのか小さいのかが見えてきます。

データサイエンティスト的な人材のニーズが高まっていますが、地域には必ずしも必要ではないと思います。むしろ、分析結果を踏まえ、戦略を構築できる人材が必要です。データ(数字)は、それ自体は意味を持たず、何かと比較することで初めて意味を持ちます。多くのデータを収集することも良いですが、継続的に追う数字が何なのかを見極めることが重要です。

例えば、観光客が1,000万人来た場合。その地域で1,000万人というのが、多いのか少ないのかが、数字だけ言われても分かりません。下記の図は、データ利活用に向けたステップです。

単に多くの種類のデータを取得しても意味はなく、地域にとって見るべきデータが何かを定義する必要があります。 可能であれば3C分析の手法で、自地域、ベンチマーク地域、旅行者のデータをうまく組み合わせて、地域が進むべき方向性を検討することが望ましいと考えます。

高付加価値旅行者を誘致する場合の戦略の考え方としては、自地域でどうなっているか、ベンチマーク地域・周辺地域とは差別化できるか、そもそも市場がどうなっているかなどから検討が必要です。その戦略イメージは、下記の図を参照してください。

仮説をもとに検証するためのデータを定義し、そのデータを取得し、当初仮説とのギャップを検証することで、次のアクションにつながります。データを活用したPDCAサイクルの考え方は、下記の図を参照してください。

 

地域を豊かにするツーリズムとは

日本のツーリズムの捉え方は、非常に狭く感じます。人口減少、生産年齢人口が減っていく中で、地域の需要も縮小するのは当然で、先進国には特に大きな問題です。この状況で市場を維持・拡大するためには、

①域外展開によって外需を取り込み、市場拡大する
②域内に外需を取り込み、市場拡大する

この②のパターンがツーリズムということになると、あらゆる産業がツーリズムに関係してくることになります。地域にどういうふうにお金が落ちて潤うかという仕組みを考えていくことが、ツーリズムそのものです。

ツーリズムは、巨大な地域データを通じたイノベーション促進の経済的側面だけでなく、社会的活動の側面もあります。ツーリズムの本質である「異」を理解することによって多文化共生、社会平和へ価値が増大する、重要なインフラとなる可能性があるのです。

 

 [参加者とのQ&A(※一部抜粋)]

Q:外国人観光客が爆発的に増えていますが、外国人は観光地や宿泊の情報を、どうやって収集しているのでしょうか。
A:一般的な回答になりますが、これまではホームページから行きたい場所を検索して収集していたと思います。これが現在ではTikTokとかInstagramなど、映像とセットになってるマーケティングチャネルで情報を集めています。利用者にとっては、イメージが湧きやすい傾向があるようです。
 

Q:本年度初めて観光の担当になりました。まずどう情報を集めて、どう分析して、どう活用すべきか、最初のステップで悩んでいます。
A:まず、自分たちの地域ですでに取っているデータと、今後取るべきデータの選別をしてみてください。今後自分たちがどうしたいのかを詰めると、「このデータが足りていないので集めよう」、一方で、「これは必ずしもなくても良いデータ」というケースもかなりあります。

統計で取っているデータがすでにあると思いますので、そういうところから始めていくと良いと思います。

データマーケティングにもとづいた箱根地域独自の観光戦略

<講師>

 

 

 


箱根DMO(一般財団法人箱根町観光協会)
専務理事 佐藤 守さん

 

プロフィール

(株)リクルートの旅行領域「じゃらん」で地域や宿泊施設の営業、じゃらんNETの立ち上げなどを経験。じゃらん営業部長、北海道じゃらん代表取締役社長、リクルートホールディングス総務部長を経て2018年より箱根DMO(一般財団法人箱根町観光協会)に出向。現在、専務理事として官民一体ALL箱根の実現に向けて、箱根の観光戦略を推進中。

 

箱根観光ではデータマーケティングを積極的に活用。データに基づいた合意形成が箱根観光を前進させ、官民一体ALL箱根で箱根観光の課題に取り組んでおり、その内容は、観光庁の「観光分野のDX推進に向けた優良事例集」にも掲載されている。
これまでの取組や今後のありたい姿について、佐藤さんが紹介する。

観光DXとは

箱根は人口が約11,000人ですが、年間約2,000万人の観光客が来訪し、2900億円の観光経済消費があります。昔から、いわゆるオーバーツーリズムではありますが、地元全体が観光をやるしかない地域だと認識しています。箱根は火山を持つ国立公園でもあるため、観光振興、火山災害防災、自然環境保全利活用、この3つのバランスが必要となります。そのバランスを取る役割として、我々、箱根町観光協会「箱根DMO」がいます。

箱根DMOの使命は、「観光地そのものを経営する視点」のもと、「官民一体ALL箱根」の構造で、箱根町の観光経済を拡大発展させることです。そのため、単に誘客宣伝PRを行うだけでなく、地域の課題を明確にして取り組み、PDCAをまわす役割です。その実情を知るためのマーケティングの手段として、観光DXが必要になってきます。

データを活用して観光DXを推進するために、先を予測することに取り組んでいます。例えばLINEを使って、観光事業者が経営に必要なマーケティングデータや需要予測などを簡単に情報取得できる仕組みを構築。施設のシフト調整や先の経営見通しを立てることに活用しています。また、箱根町とじゃらん(リクルート)と包括連携協定を締結したことで、宿泊統計データを提供いただき観光予報プラットフォームデータとかけ合わせて活用することで、来訪予測を立てています。
視察に来られる方からよく質問される内容が、

●何にいくらお金がかかったか?
●その後の運用成果はどうか?
●関係事業者や地域ステークホルダーとの合意形成はどうやったのか?

…です。運用成果と言われても、すぐに成果は出ません。うまくいくと信じて実証している最中です。結果を探るだけではダメで、そもそも何のためのDXなのか、なぜこれが必要なのかという議論ができていないと、成果を出すことは難しいと思います。

「そもそも地域に観光は必要か」、「観光に取り組んでどうしたいのか」、「今、うまくいっているのか、うまく行くために足りないものは何か」。これらの問いを箱根に当てはめると、下記の一覧になります。

 

マーケティングとは何か

6年前、私が箱根に来たときに箱根DMO戦略推進委員会のメンバー20人ほどで集まり、最初にミーティングした内容がこちらです。

「そもそも、なぜこういうことが必要なのか」、「『マーケティング』って言うけど、そもそも何?」といったことを話しました。

私はマーケティングとは、「お客さまを知ること」だと思っています。箱根のお客さまは誰で、どこから来られて、箱根をどのように思われているのか?「観光して良かったからまた来るね!」なのか、「イケてないからもう来ない!」なのかを把握する。良い評価の部分はもっと伸ばして、ダメだった部分は変えられることなら変える。それが非常に大事だと思います。

目的を持ってデータを取り、改善する

東京、神奈川、千葉、埼玉の人口は約4,000万人ですが、人口減少の中で近隣の観光地が客を取り合っている状況です。東京から一番近い温泉観光地は箱根です。インバウンドゲストには、羽田や成田で降り、西に向かう場合も、箱根は最初の観光地です。そういうことを定性的に考え、データで裏付けるのが、我々の仕事です。

観光入込数や外国人宿泊入込数なども、必要だから調べています。やみくもにデータを取っている自治体もありますが、目的もなくデータを取って、それで一体何が分かるのでしょう。行政だけで突っ走ると、報告書をつくることで終わり、誰も見ないデータになってしまいます。ちなみに箱根では、以下のような「箱根DMO観光診断書」をつくっています。

これで年間7,500件ほどの回答を得られます。何歳ぐらいの人がどういうグループ属性で、どこから来ているのかがリアルタイムで分かり、旅行目的や日帰り、宿泊なのかなども分かります。つまり、宿泊客・日帰り客別に、箱根旅行で良かった点と改善を求める点が分かるようになっています。

改善を求める点の1~4位は、道路渋滞、夜間営業の店が少ない、公共交通の混雑、クレジットカードが使えないです。この内容をもとに、混雑緩和にはロープウェイを利用したパーク&ライドで大涌谷まですぐ行けると分かるように道路掲示板施策等に取り組んできました。また、「箱根町HOT21観光プラン」を策定。官民一体でPDCAをまわしています。

このように箱根は、数年間にわたる事業の土台ができており、令和5年度「事業者間・地域間におけるデータ連携等を通じた観光地域経済活性化実証事業」において、箱根温泉DXコンソーシアムでも、箱根DMO、日立システムズ、ランドブレインの3者が連携しています。また、伴走コンサルタントのナビタイムジャパン、その他にも箱根の観光に対して想いを持っている地域内外の関係者と一緒に実施することで、この事業はうまくいっていると思っています。

今ならまだ、地域経済活性化は間に合うと思います。それには、なぜこういうことが必要なのかという議論が地域でできていることが重要です。地域には、一緒にやってくれる民間業者がいると思います。そういうところを仲間にして、前に進んでいただければと思っています。

 

[参加者とのQ&A(※一部抜粋)]

Q:箱根町は多数の民間企業が集まっていますが、そういった参画事業者をどのように増やしていくのか教えてください。
A:地元の小田急箱根やプリンスホテル、富士屋ホテルなど、観光に関わる民間事業者から若手の人材を出してもらっています。単に観光DMOの人材が欲しいから、若手を出してくださいと頼んでも、まず断られるでしょう。出してもらったらこういうお返しをしますという、メリットを約束してください。

私の場合、6年間で1万人以上と名刺交換しています。机の前にいるだけでは話になりません。例えば、自主的に地元の祭りを手伝って、汗をかくことも大事です。その取り組みを民間企業の経営者に分かってもらえれば、きっと人材を出してもらえると思います。
 

Q:LINEを使用して混雑状況を予測するとのこと。どのようなデータを集めることができますか。観光客がアンケートに参加してくれる場合、その仕組みをどうやってつくっていますか。
A:
LINEについては、リクルートと連携が必要になってきます。それができなくても、観光予報プラットフォームを活用すれば、ある程度予測はできるはずです。これはあくまでも予測なので、多少外れて観光客に文句を言われたら、謝れば良いだけです。そんな細かいことよりも、先を予測することの方が大事です。

人流ビッグデータの活用で新たな“気づき”を

<講師>

 

 

 




パシフィックコンサルタンツ株式会社 デジタルサービス事業本部 DX事業推進部
技術課長 札本 太一さん

 

プロフィール

2011年入社。観光地の渋滞対策や大規模イベント対応など、観光に関する交通計画にも従事。2020年から、DX事業推進部にて分析・予測のノウハウを活用した人流データソリューションの開発・実装に従事。技術士(建設-道路)。


観光需要がコロナ前の水準へ急回復する中、その波に乗るには多様化する観光客の思考や行動を捉えることが重要だ。多様化する顧客の分析や誘客施策の検討に活用できるデータソリューション「全国うごき統計」や「検索×人流ビッグデータ」について、各地の事例を交えて札本さんが紹介する。データを通して得られる新たな”気づき”は、誘客のための的確な"次の一手"につながるだろう。

人の活動の基本は「滞在」か「移動」

観光にまつわる数字で「22%減少」と聞いて、何のことか分かる方はいますか?この数字は、2019年度と2023年度を比較したパック旅行取引額の減少率です。その一方で、全体の取引額としては、コロナ禍前にほぼ回復しています。つまり、個人行動が増加し旅行が多様化しているということです。その多様化する旅行を的確に捉え、施策に活かしていくにはどうすれば良いか?ということにフォーカスしてご紹介します。

人の活動や行動は、必ずどこかに「滞在」しているか「移動」しています。以下図のケースでは、空港、飲食店、イベント会場、ホテルに滞在し、その間を電車、飛行機、バスで移動していることが分かります。

このように、人の活動を捉えることが非常に重要です。その活動を捉えるための手段が「人流ビックデータ」です。以下の場合、港区に住む20代女性が自宅を出て、品川駅から電車に乗って羽田空港に行った、という情報まで取ることができます。

我々パシフィックコンサルタンツは、建設コンサルタントとして様々な社会課題の解決に取り組んできました。昨今は、いろいろデータを持つパートナー企業との共創により、様々なビックデータを開発しています。今回は3つのデータの有用性について、事例で説明します。

<事例1>
「日本人の行動」が分かる!全国うごき統計

こちらはソフトバンクの基地局のデータをもとに、全国1.2億人の交通手段を含めた行動を把握できるビックデータです。

例えば、愛知県のジブリパークが2022年に開園しました。大規模施設ができると、その施設がにぎわう一方で、周りの観光地では観光客が減るイメージがあると思います。
しかし、人流データを活用して愛知の観光状況を見てみると、ジブリパークと名古屋港水族館との間で、人の行き来が347%増になっています。また、ジブリパークと熱田神社との間では、人の行き来が254%増になりました。ジブリパークを起点に、周遊行動が大きく増加していることが分かります。
さらに、滞在時間をみると、ジブリパークで女性の約4割が3時間以上滞在しています。この影響か、元々長時間利用が多いと考えられる水族館では、短時間利用者が増加し、元々短時間で参拝が終わる神社仏閣では、大きな変化はみられませんでした。
このように単純な“数”を見るだけでなく、行動の変化などの“質”をきちんと捉えることが、施策を検討するためには重要です。

<事例2>
「外国人の行動」が分かる!全国インバウンド統計

こちらは、Azira(アジラ)のGPSデータを活用し、インバウンドの移動を交通手段も含めて把握できるビッグデータです。インバウンドの特徴である居住国などの情報も、把握可能です。

旅行者の属性が変われば行動も変化します。それを踏まえ、適切な観光施策が取られているか考えたいと思っています。札幌中心地での行動の違いを例に紹介します。

左側が来訪時間帯、右側が滞在時間の割合を地域ごとに整理したものです。昼の時間帯においては、欧米豪諸国が多いことが分かります。一方、夜の時間帯はアジア圏からが多く訪れ、滞在時間も長いことが分かります。
昼間に視察した感覚だけでインバウンド振興策を打ってしまうと、適切な施策にならないかもしれません。限られた予算内で、居住国など籍ごとの属性に着目した観光行動を把握することは、非常に重要なのです。

<事例3>
「日本人の志向と行動」が分かる!検索×人流ビッグデータによる潜在顧客発掘ソリューション

こちらはLINEヤフーの検索データと人流データを掛け合わせ、観光客の「興味・関心」と「来訪」の関係性を見える化するビッグデータです。観光地を調べたけれども来なかった人が、来なかった理由や代わりに訪れた場所の把握、つまり「とるべき改善施策」「意識すべきライバル」を知ることがもできます。

国交省における活用事例として、北海道の層雲峡温泉を例に見てみましょう。下記は、興味を持って層雲峡温泉を検索したが来訪しなかった人が、ほかにどういう検索ワードを調べたかをまとめたものです。

積雪期の検索結果では、札幌雪まつりや阿寒湖、砕氷船のガリンコ号等、北海道の他の観光資源を検索していることが分かります。その結果、層雲峡温泉には来訪しませんでした。

無雪期の検索結果では、草津温泉や有馬温泉、下呂温泉など、日本各地の温泉地を調べていることが分かります。

このように、「逸失原因」や「地域の価値」を客観的に把握できますので、非来訪者の行動をしっかり捉えることで、新しい気づきが生まれます。気づきを得て、仮説を検証していくことも重要だと思います。

多種多様なデータ連携により都市課題を解決・最適化

今回は人流データを紹介しましたが、複雑な社会課題の解決に向けては多種多様なデータを重ね合わせていくことが重要です。人流の他に、インフラ、天候、交通・物流、エネルギー、経済・消費活動等のデータを重ねることで、都市課題を解決していきたいと思っています。

当社は建設コンサルタントですが、我々の持つデジタルデータのノウハウを活かすことによって、都市を最適化することを目指しています。これを「都市最適化マネジメント」と提唱して活動しています。その第一歩として今回紹介した人流データを使ってみたいという場合は、丁寧に伴走させていただきたいと思っています。

 

[参加者とのQ&A(※一部抜粋)]

Q:どのようなデータを使いたいかを、事前に決めて相談した方が良いのでしょうか。
A:
我々はデータを提供する側面もありつつ、本来は一緒にデータを使っていく側面の方が強い会社です。こういう仮説を検討していきたいが、どういうデータが必要かなど、具体的な内容が決まっていない段階からでも相談いただけます。しっかりと相談に乗っていきたいと思っています。
 

Q:人流の見える化マップは、どこまで無料で使えますか。
A:
営利目的でない限りは、無料で使えます。自治体の皆さんにおかれましては、例えば企画を考える上で、課内でまわすのはもちろんのこと、予算要望や議会対応の資料に、そのままキャプチャーで貼っていただくなども無料で利用いただくことが可能です。

ロマンシング佐賀プロジェクト ~SaGaと佐賀の奇跡の連携~

<講師>

 

 

 

 


佐賀県 政策部
企画主幹 島松 宗一郎さん

 

プロフィール

広告代理店アサツー ディ・ケイ(ADK)を退職し、2017年3月に民間企業等職務経験者枠で地元の佐賀県庁へ入庁。文化課フィルムコミッションにて国内外の映画誘致に従事した後、政策部企画チームにて大学連携・ガストロノミーツーリズム・関係人口創出チャレンジ事業等を担当。


佐賀県と株式会社スクウェア・エニックス(以下、スクウェア・エニックス)の「サガ」シリーズとの連携事業である「ロマンシング佐賀」は、今年10周年を迎えた。これまでゲーム内での佐賀県コラボやロマ佐賀マンホール、有田焼陶板の設置、県内温泉地とのコラボ、ロマンシング佐賀列車の運行など、多くの実績を積み上げている。多くのSaGaファンに愛される関係人口創出の取り組みを、島松さんが紹介する。

事業概要とスキーム

「佐賀県関係人口創出チャレンジ事業」と「サガ」シリーズについて紹介します。 事業の目的は、人気ゲーム「サガ」シリーズを展開するスクウェア・エニックスと連携することで、佐賀県のファンである「関係人口」を創出することです。

コラボ相手のスクウェア・エニックスは、ドラゴンクエストなどを手がけているゲームソフト会社で、その中に「サガ」シリーズがあります。今年で35周年を迎えますが、現在全世界で累計3,000万ダウンロードされ、多くのファンがいます。

この事業は、「サガ」シリーズが25周年を迎えた際、スクウェア・エニックスから「一緒に何かやりましょう」と、声をかけてもらったのがきっかけです。2014年3月に初めて、六本木ヒルズでイベントを行い、7,000名が来場。ゲームユーザーの熱量に驚きました。最初の4〜5年は観光誘客がメインでしたが、2020年度からは「佐賀県関係人口創出チャレンジ事業協議会」として、事業を実施しています。

県が単独でやっているのではなく、協議会形式で県以外の市町にも参加してもらっています。そして協議会は事業実施にあたり、広告代理店と委託契約を締結。スクウェア・エニックスからは、県プロジェクトへの協力という形で、ドットキャラなどの知的財産権(IP)の一部貸し出しや、モニュメント等を寄贈いただいています。

具体的な施策・効果と事業の特徴

具体的な施策を一部紹介します。「ロマ佐賀資産」との名称で、県内のマンホール、有田焼の大陶板、ラッピング電車・バスの制作を行いました。

設置したマンホールで、「ロマ佐賀冒険ラリー」をやっています。各エリアに置かれたマンホールをまわると、ノベルティがもらえます。佐賀牛や嬉野茶など、県産品を使って地元ともコラボしています。注文してくれたファンには、オリジナルコースターがプレゼントされます。

また、地元の唐津線とのコラボでは、全16車両をラッピングしました。ファンはいつ来ても見ることができますし、全部デザインを変えているので、リピートしたくなるしかけになっています。駅名が入った駅名標や駅構内にもデザインが施され、バスは一部ですが、外装だけでなく内装にもラッピングをしていますので、ファンは佐賀県内での移動も楽しめます。

その他、ゲームとのコラボでは、吉野ヶ里遺跡、唐津くんち、佐賀バルーンフェスタなど、佐賀県内の施設やイベントがゲームに登場します。

結果・効果は、下記の通りです。

【定量】
(1)佐賀県でのイベント来訪者数
 2021年 目標5,000人 実績6,309人
 2022年 目標10,000人 実績10,388人
 2023年 目標10,000人 実績9,486人
 ※2022年と2023年の参加者のうち、8割以上は県外から参加

(2)経済効果
 2022年度 推定5.5億円
 

【定性】
(1)佐賀県の広報効果…ファンによりSNS発信、YouTubeによる発信、各種取材・講演会等
(2)コラボした地元企業や自治体とのファン交流
(3)関係人口創出=佐賀ファンの増加

この事業の特徴は、以下の3点です。
①単発イベントではなく毎年やるので、ファンがリピートしてくれています。佐賀県の山口知事もこの事業を推進しており、そこが一番大きなアドバンテージだろうと思います。

②ターゲットが明確です。佐賀県に来た際のお土産には、ゲームキャラクターが入ったパッケージにするなど、ゲームコラボだからこそできるファンが喜ぶ展開を常に意識しています。
「グルメあります・温泉あります」は散々過去やってきており、既存の情報発信で来る人はもう来てると思っています。違う層を狙うなら、違う手法でやること、やはり“尖る”PRを重要視しています。

グッズ販売については、常設の通販はせず、なるべく現地で買ってもらうようにしています。そうすることで、佐賀に来てもらうことの価値を高めています。

③以下は、マンホールの初代と2代目のデザインですが、かなり違うことがお分かりだと思います。「ファンが撮影しSNS投稿する際、佐賀県の地名がPRできるように」と、スクウェア・エニックスの方からマンホール設置場所をデザインに入れる改善提案をいただき、変更しました。ラッピング列車も、ファンに何度でも見にきてもらえるよう、両面のデザインを変えています。

 

(担当として)大変なことと10周年企画について

これまで、マンホールやコラボ企画をやってきましたが、今後は例えば、ランドセルカバーとか、子どもの登下校時の横断旗など、交通安全や防犯、防災にもIPの力を使って支援できたらと思っています。

一番大変なのが、合意形成です。県、スクウェア・エニックス、地元関係者のどれかひとつでも合意されなければ成り立ちません。対等な関係であるからこそ調整力が求められます。ゴールイメージとしては、

【定量】
(1)首都圏イベント参加者および佐賀県への来訪者数を、目標延べ「3万人」とする
(2)2022年度の事業効果 「5.5憶円」を超える効果を出す
 

【定性】
(1)既存SaGaファン=リピーター「過去最高のイベントだった!」
(2)初めて佐賀県に来たSaGa ファン「また佐賀に来たい!」
(3)SaGaファン以外も 「佐賀県おもしろいことやってるな!」
(4)スクウェア・エニックス「 SaGa ファンがロマ佐賀を楽しんでくれている」
(5)佐賀県民「ロマ佐賀ファンが来てくれてうれしい!」

まとめとして、観光施策を考える上で、地域の魅力をどう発信・開発するかについては、

●既存の情報で来る人はもう来ている。違う層をねらうなら、違う手法で
●SNSで拡散されることを前提にしたしかけを
●そこに行く理由づくり=そこでしかできないコト・モノを見出す

…ということだと考えています。

 

[参加者とのQ&A(※一部抜粋)]

Q:観光政策における、効果測定の具体的な方法を教えてください。
A:
ノベルティ交換所でどこから来訪したかを直接聞いています。経済効果については、外部調査機関で算出しています。
 

Q:県規模まで発展させるまで、どのような手法で住民を巻き込みましたか。
A:
マンホールや陶板等の永続設置物、ラッピング列車等の地元密着のモノで、佐賀県の認知度を上げました。各施策展開時の地元との交渉は、各担当による人力です。幸い、ロマ佐賀ファンはとてもフレンドリーな方が多く、地元民との交流を好んで自らSNSで発信してくれています。

地域の独自性を活かした「集客・回遊促進」を加速する人流データマーケティング

<講師>

 

 

 

 

株式会社unerry 
取締役副社長兼COO 鈴木 茂二郎さん

 

プロフィール

1999年アクセンチュア入社。様々な分野のコンサルティングに15年以上従事。unerryには創業直後から参画、2018年取締役COOに就任。各省庁と連携したデータ駆動型のまち作りなど、地域発展に資する取り組みを牽引。


国内旅行消費額はコロナ禍前の水準を超え急回復、インバウンドも直近5月の訪日外客数は同月過去最高を記録している。ただ、急増する観光客の実態や観光ニーズをいち早く捉えたマーケティングや課題対応は、未対応の地域も多いのではないだろうか。国内1.5億IDの人流データによる地域観光客の来訪・回遊実態、嗜好性などの「分析」、来訪可能性の高いエリアや嗜好性のあう消費者への「プロモーション・効果計測」手法や、その最前線となる事例を、鈴木さんが解説する。

当社が持つ人流ビッグデータについて

当社は、リアルな空間で人がどんな動きをしているのかを、人流データからひもとく活動をしています。まず、スマートフォンのアプリからデータを取るのですが、当社がアプリを展開するのではなく、展開されているアプリに対して、位置情報を収集利活用するためのモジュールを埋め込むことにより、当社が情報をお預かりするという関係性にあります。GPSと、町中にたくさん置かれているビーコンの電波をキャッチすることで、人がいつどこにいるのかという人流データを集めています。

情報が蓄積されることで、この人はよく居酒屋に行く、ファミレスにも行くといった食事の傾向や、週末に車でアウトドアのレジャーに行くなど訪問傾向が分かり、プロファイリングにも使えます。こういった性別、年代、居住地、勤務地などの属性のデータや、移動手段も含めて移動の実態を理解できます。また、どんな場所に行く等の訪問の特性を理解でき、データを加工することによって、マーケティングに利用しやすいものにしています。

観光やエリアにおける分析では、基本的には「特定の場所」に来た「人」を理解するという使い方になります。例えば、市役所に来る人がどんな人なのかを見るために、性別、年代、居住地、勤務地、来訪手段、前後の場所、来訪経路を評価することが、人流の分析としては一般的です。

事例を2つ紹介します。

(1)人流データを活用した「脱炭素まちづくりダッシュボード」です。これは環境省と共同でつくったツールで、場所と機関を選ぶと、以下のような分析画面が出てきます。

まちなかの移動状況やスポットへの来訪前後の移動を視覚的に把握し、指定スポットへの来訪人数や移動手段の分布、スポット間の相関率を数値化することで、脱炭素施策の企画・設計や効果測定を支援可能です。一定の条件を満たしている自治体には、来年度以降展開を予定しています。

(2)令和5年度にURを支援した取り組みです。大規模な再開発案件の検討にあたり、人流データは不可欠であるため、多様な分析メニューを備えた分析ツールを開発しました。環境省と要素は似ていますが、もう少し狭い領域・地区で物事を見たり、人の通行量を道路単位で見たりすることができるサービスです。このように人流データは、まちづくりにおいても使われるレベルになっていると思います。

さらに人流データは、様々なデータと連結できます。例えばGoogleやSNS等の広告媒体とつながることによって、プロモーションや効果測定が可能になります。「こんな人が来そうだ」ということを人流データで推定し、広告の配信に使うこともできます。

観光における課題解決への活用

下記図は、人流データおよびデータのエコシステムがあるという中で、それが観光にどう使えるのかを整理したものです。

どんな人がどこからどこに行っているか、ウェブサイトを見た人がどのぐらい観光地に来ているのかを分析することができます。それにより、右側の集客につながるのですが、分析があるからこそ、来訪につながりそうなコンテンツを見出すことが可能です。

身近な施設・スポットの訪問傾向を数値化し、ユーザーごとの嗜好性を理解できます。事例を2つ紹介します。

<伏見稲荷大社>
京都の伏見稲荷大社ですが、来訪者の「行動嗜好性」をデータで見ると、美術館や水族館に行っている人が多いことが分かります。

伏見稲荷大社は商売繁盛の神様ではありますが、インスタ映えなどを意識して来訪する人が多いと分析できます。

このように、観光スポットに来ている人がどんな文脈で来るのか、どこを魅力に感じたのかを推察するデータとして使うことができます。

 

<鳥取砂丘>
ヒートマップで人の動きを見ることも重要です。鳥取砂丘に来た人の前後行動を見ると、空港からよりも鳥取駅の方から多く来ています。案内モデルコースとしては、冨浦海岸の方を推していましたが、実際には白兎神社の方の相関率が高いです。

駅からの移動経路も含め、視覚的に見るだけで色々な情報が得られます。距離では冨浦海岸の方が近いのですが、回遊率でいくと白兎神社が7倍ほど高かったことが分かります。

人流データを活用した広告配信

来訪可能性が高い人や回遊性が高い場所、来訪につながるコンテンツを分析し、そのデータを直接的に広告に使うのが、当社の来訪計測付きデジタル広告です。出雲市への過去来訪者・旅行頻度が高い人等を当社人流データから特定し、ユーザーリストを広告媒体へ投入し、配信後の来訪率・単価等によりPDCAを推進しました。

どんな人がターゲットなのかを考え、そのターゲットに情報を伝えるにはどうしたら良いかをデータでつなげることが最大のポイントです。

人流データを使って分析をする、可視化することが有益であることは、実証済みです。観光領域では、実態を理解することは当然のことながら、集客回遊促進等の施策、効果検証まで使えるので、観光のデジタルマーケティングを進める中では、まさに「ど真ん中」に存在するデータではないかなと思っています。実態の理解だけではなく、プロモーション、効果計測まで含めPDCAをまわすことをご検討ください。

 

[参加者とのQ&A(※一部抜粋)]

Q:アプリによって取得できるデータの特徴はありますか。
A:
特定アプリのデータではなく120以上のアプリからのデータ取得なので、施設来訪などピンポイントの詳細度で移動がわかることと、国内1.5億ID以上と圧倒的なデータ規模が特徴です。但し、スマホをあまり使わない後期高齢者などの行動データ取得の割合は相対的に低いです。地域においての公共交通の分析は、特に性別や年代が偏っていることはないので、環境省やURの取り組みにおける検証でも問題がないことをご確認いただいています。

Q:デジタル広告で、訪日外国人向けのプロモーション例はありますか。
A:
プッシュ広告の例ですが、Japan Wi-Fiのアプリを使って、近隣にいる人をリアルタイムのプッシュ配信で呼び込むプロモーションをやっています。また、インバウンドの方のご利用が多い場所でのOOH(屋外広告やサイネージ)などとの連携も可能です。

「デジタル観光統計」を身近に!「おでかけウォッチャー」の活用と可能性

<講師>

 

 

 


株式会社ブログウォッチャー おでかけ研究所
引谷 幹彦さん
 

プロフィール

2011年の東日本大震災を契機に、中央省庁・自治体との協働プロジェクトの立ち上げ・運営に従事。2022年ブログウォッチャーに入社。観光に特化したプロダクト・サービス開発ならびに調査・分析業務に従事。

 

「デジタル観光統計」は、観光入込客数統計オープンデータにも採用される信頼性の高い観光人流データである。今回はデジタル観光統計を搭載した「おでかけウォッチャー」の分析ツールや事例について、引谷さんが紹介する。

「デジタル観光統計」とは

弊社はリクルートと電通とのジョイントベンチャーとして設立された、位置情報のリーディングカンパニーです。本日は、観光に特化した人流データ「デジタル観光統計」についてご紹介します。
デジタル観光統計は、準リアルタイムに観光スポットの状況を複数同時に分析可能な人流データであり、以下3つの強みがあります。

このデータの一部は、日本観光振興協会と連携しオープンデータとして公表しています。自分たちの地域にどのくらいの人が来ているのかといった基本的な情報の取得は無償ですので、ご活用ください。
デジタル観光統計オープンデータ化の背景として、観光入込客数の共通基準が令和5年度に一部改定され、計測の一部に人流データを使っても良いという方針が示されたことがあります。
人流データは適切に扱わないと、今までの統計とのズレが出たり、ズレたまま計測すると本当に測りたいものが測れなくなったりするおそれがあります。この信頼性と速報性が高いデータを整備しようと、有識者からなる検討委員会を日本観光振興協会とともに立ち上げ検討を進めてきました。
適切な形の「測れる観光客」の定義と、観光スポットの定義を我々のガイドラインとして定めており、その結果にもとづき様々なデータを検証しています。
観光スポットとは常に新しく生まれるものです。我々は、すでに観光スポットのデータを全国10万カ所ほど保有していますが、全国の都道府県が年に1回観光スポットを更新するスキームを築いています。これにより、地域にある観光スポットと、我々のデータを統合することで、データをどんどん磨き上げていくことが可能となります。

「おでかけウォッチャー」について

「おでかけウォッチャー」は、国内客と訪日客を最小観光スポット単位で分析出来るツールです。
国内客は、「いつ」「どこから」「どんな人が」「どの位」来訪したのかという基本的な分析に加え、周遊状況や宿泊/日帰りの割合、時間帯別のスポットの来訪状況といった、従来基本的な調査として行ってきた分析を、最小観光スポット単位の粒度で見ることができます。
一方、訪日客に関しては、日本を何日の旅程で訪れ、どのように地域を周遊したかといった、全体像を把握した上で地域単位の分析に落としていくことを意図した設計としています。自分たちの地域に滞在しているか、通過されているか、では、どのような対策が必要かという、深掘りの思考ができる分析機能をご用意しています。

下記図はおでかけウォッチャーのダッシュボード画面です。左の①画面で見たい条件を絞ると②画面に自動で切り替わり、画面をさらにクリックすると、そこに紐づくデータが出てきます。得たいデータをクリックだけで操作できるのが、地域から評価されているポイントです。

また、データを実際にダウンロードして自分たちの地域にある他のデータと掛け合わせたり、手元で報告用の資料としてまとめ上げたりする実務活用も想定してつくっています。
実際の利用シーンにおいては、特に国内版は観光スポット単位でモニタリングをしていくことが一番多いですが、最近はそれを使って「自分たちの地域はここが人気」という情報発信にも活用しています。その結果、どうなったかをモニタリングすることでPDCAサイクルを回すことにもつながります。
その他、おでかけウォッチャーの活用ケースとして下記の内容が得られます。


●時系列比較
●ベンチマークとの比較
●ターゲット理解
●強み・課題の把握
●施策検討


サービスリリース以降約2年間で、47都道府県中34エリア、観光協会を中心に200件以上のIDが発行されています。

次に、おでかけウォッチャー国内版の具体的な分析活用事例をご説明します。
来訪地×発地×属性分析のクロス表の機能があり、来訪地×発地×属性分析では「どこに」「どこから」「どんな人が」いつどの位来訪しているかを簡単に可視化することができます。

この機能では、画面のクロス表の縦のラインである「表側」、横のラインである「表頭」の分析軸をプルダウン形式で選択することにより、分析軸を自由に選択出来るようになっています。例えば来訪地を北海道とした時に、表側を「発地都道府県」、表頭を「性・年齢」に設定すると、指定した期間に北海道のエリアに「どこから」「どんな人が」来訪しているかを簡単に可視化することが可能です。また同様のクロス表で発地や属性別の周遊傾向を把握することも出来ます。
これらの結果を地域が本来狙うべきターゲットの設定やマーケティング施策の見直しに活用し、地域全体の観光消費額の底上げに繋げられればと考えています。

最後におでかけウォッチャー訪日版の具体的な分析事例として、特徴的な広域ルート分析機能についてご紹介します。
例として、アメリカ国籍に絞って日本全体をどのように周遊しているかを分析します。広域ルートの定義として、1日に宿泊判定した1エリアを選択し、旅程日数分を繋ぎ合わせています。周遊パターンは、広域ルートに含まれる都道府県を順序関係なく組み合わせで示しており、今回は3都道府県以上に絞って表示しております。
地図から読み取れる通り、ゴールデンルート沿いのエリアが特に広域ルートに含まれることが多く、周遊パターンのランキングからも読み取れる結果となっております。

また、周遊パターン1位の「東京都-京都府-大阪府」を広域ルートとして旅程単位でみると、最初と最後は東京都、その旅程の半ばで京都府や大阪府を訪れているということが読み取れます。

まず、自分の地域がターゲット国籍の広域ルートのランキング上位に入っているかを確認し、それによって自地域への誘客方針を検討するというやり方を提案しております。こちらの考え方の詳細は、じゃらんリサーチセンターとの共同研究”地図で読み解くインバウンド地方分散研究”でも発表しているので、ぜひ内容をご確認ください。

[参加者とのQ&A(※一部抜粋)]

Q:1741の基礎自治体全てのデータを見ることはできますか。
A:
オープンデータは全て用意しておりますので、ぜひご覧ください。
 

Q:デジタル観光統計のオープンデータは、何のデータがもとになっていますか。
A:
弊社が保有するGPS経由の位置情報データから、一部ガイドラインに沿う形でデータを整理したものになります。有識者委員会でオープンデータにするにはどのようなルールが必要かというものを定め、そういったルールに則って制定しているデータが、弊社のデジタル観光統計オープンデータとなります。

お問い合わせ

ジチタイワークス セミナー運営事務局
TEL:092-716-1480
E-mail:seminar@jichitai.works

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