ジチタイワークス

石川県中能登町

被災者の生活再建を迅速にするため、職員が電子申請フォームを内製で緊急構築。

職員が申請フォームを内製できる電子申請サービス

能登半島地震の発生からわずか1週間後に、電子申請フォームによる罹災証明書の交付申請受付を開始した中能登町。一日も早い交付が求められる中、職員自らフォームの作成・公開を手がけたという。

※下記はジチタイワークスVol.33(2024年8月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
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左から
石川県中能登町
総務課
課長補佐 宮川 武志(みやがわ たけし)さん
住民窓口課
主幹 成田 里絵(なりた りえ)さん
税務課
主事 大森 聖也(おおもり せいや)さん

一日も早い生活再建を可能にするため、導入から間もないツールに着目した。

もともと同町は、現在とは異なる電子申請システムを導入していた。しかし、庁内では当時あまり活用されていなかったという。「使い勝手がいまひとつでした。もっと簡単で、多くの職員が使えるものにしたい。フォームの内製率を上げて、住民サービスを充実させたいと考えていました」と総務課の宮川さん。システムを刷新するにあたり、候補として挙がってきたのが、「トラストバンク」の「LoGoフォーム」だった。「同社のLoGoチャットは導入済みで、利便性は実感していました。同じシリーズということで、期待は大きかったですね」。

トライアルで手応えを得たため、デジ田交付金のTYPE1を活用して、令和5年10月から本導入。まずは職員向けアンケートなどの庁内活用から始め、徐々に住民向けへと活用の幅を広げようと考えていたそうだ。しかし、その直後に、能登半島地震が発生。町内では震度6弱を観測し、家屋の倒壊や道路の損壊が起きた。職員は被災者支援に奔走したが、中でも罹災証明書の交付を急ぐ必要があったと話す。「証明書がないと、建物の修理や公費解体が進まず、被災者の生活再建に影響が出ます」。そこで注目したのが、電子申請だった。

他自治体のテンプレートを参考にして、2日後にはフォームの草案が完成。

混乱する被災地では、住民にとって申請方法の選択肢は多い方がいい。もちろんスピードも必要になる。しかし、災害対応に追われる職員に新たな負担はかけたくない。「これらに対応できるのが、LoGoフォームでした。対象としたのは、罹災証明書や被災届出証明書など。中でも真っ先に取りかかったのが、罹災証明書の申請フォームでした」。フォームの作成は総務課が担当。他自治体が公開しているテンプレートをもとに組み立て、紙の申請様式に沿って項目を整えた。「マイナンバーカードによる公的個人認証の部分は少し手こずりましたが、それ以外はスムーズでした」。1月3日に作成を開始し、2日後には税務課にチェックを依頼。修正箇所はほとんどなく、紙の申請が始まる1月8日に合わせて、電子申請フォームによる受付も始めたそうだ。

6月20日時点で、電子申請による受付件数は608件(全体4,240件)。住民窓口課の成田さんは「公的個人認証や通帳の写しの添付が必要だったので、窓口に来た人も多かったですね。しかし、フォームで申請した人から、別の手続きも電子申請で可能かと聞かれることも。使いつづけることで住民に浸透し、今後はもっと増えていくと考えています」。

地震での経験を教訓にしつつ、未来を見据えた地域DXへ。

さらに同町では、申請は紙で、被害状況の画像はデータで受理するというハイブリッド方式も採用。税務課の大森さんは「スマホなどを窓口に持参して、データをフォームにアップロードしてもらいました。職員が付いていたので窓口が混乱することはなく、何より被災した住民に印刷の手間をかけずに済みました」と話す。罹災証明書などの電子申請が一段落ついた後も、被災者生活再建支援金や家屋解体など、次々と申請フォームを作成していったという。

今回の経験から得た教訓は多いと、宮川さんは振り返る。「LoGoフォームを導入した直後の地震でした。早くから使っていれば、もっと多くの職員や住民が電子申請フォームを使いこなせたかもしれません。先を見越して、紙ベースのものはなるべく早く電子化した方がいいと感じましたね。電子申請を選択する人の多寡を問うのではなく、住民の選択肢を増やしておくことが重要。紙でも電子でも対応できるのが理想です」。

また、今後の展望については、電子申請が当たり前になった社会を見据えて、次のように語ってくれた。「申請できる手続きの幅を広げるため、オンライン決済にも取り組みたいですね。同時に、原課でのフォーム作成を推進すれば、地域のDXも加速する。そうした未来を目指したいと考えています」。

※国の支給対象にならない被害家屋を同町が支援した
 

 

 

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