郵便局で空き家バンクへの登録・相談を受け付け
広大なカルスト台地「秋吉台」を有し、中山間地域にある美祢市。郵便局に空き家バンクの窓口を設置したことで、相談や登録件数が増加。小さな悩みを気軽に相談できる場所づくりが大事だという。
※下記はジチタイワークスVol.33(2024年8月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
美祢市
総務企画部 地域振興課 主事
北尾 大也(きたお ひろや)さん
年間100件近い相談が寄せられ登録増加につながっている。
市内の空き家総数に対する空き家バンクの登録件数が少なく、未登録物件の掘り起こしが必要だった同市。「登録には来庁しての手続きが必要ですが、交通手段がない人や、家の名義が故人のままで、市役所に相談しづらいという声も多く聞きます。登録を促すためには、気軽に立ち寄れる窓口が必要でした」と地域振興課の北尾さん。この課題に対応するために着目したのが、地域に密着した市内各地の郵便局だ。
同市は平成29年に、郵便局と包括連携協定を締結。令和元年12月、市内の16局全てに空き家バンクの登録・相談窓口を設置した。「市役所に足を運ばなくても、近くの郵便局で登録可能になりました。空き家バンクとはどういう制度なのか、名義の変更が終わっていないけれど登録できるのかといったことも、郵便局で質問できます」。なお、市から郵便局への委託料に関しては、相談内容と対応件数の実績に応じて料金を支払う仕組みだ。
反応は上々で、初年度の相談件数は110件。その後も年間100件近い相談が寄せられ、毎年3件程度が登録に至っているという。郵便局から市に対応記録を提出して、情報を共有。込み入った質問であれば、その場で市役所に電話してもらい、直接答えているそうだ。
窓口周知に一役買っているのが郵便局前に立てた“のぼり旗”。
郵便局の窓口利用が広がった理由として、北尾さんが挙げるのが“のぼり旗”の設置だ。「全局にのぼり旗を立て、郵便局で登録ができることを周知しています。空き家管理のために帰省した人が見かけて立ち寄るケースもあるようで、市役所まで行く手間がかからなくてよかったと喜ばれたそうです。のぼり旗を見た介護士さんが訪問先で話をして、口コミでも広がっていると聞きます」。ほかにも物件所有者に固定資産税の納税通知書を送付する際にチラシを同封し、郵便局で登録可能なことを知らせているそうだ。
身近な窓口を増やしたことで、着実な成果が出ている同市。たとえその場で登録に至らなくても、気軽に相談してもらうことに意義があるという。「話をする中で補助金制度があることを知り、それなら登録を考えてみようという方もいるそうです。相談窓口を増やし、小さな悩みや疑問を拾うことが、ゆくゆくは登録につながるのではないでしょうか」。
近年では、広めの空き家を購入して住居兼店舗を構える移住者も増えているそうだ。「今後もそうした活用が進めばいいなと思います。そして、地域住民と移住者との交流がさらに増えていってほしいですね」と期待を寄せる。