ジチタイワークス

共感できる仲間とつながり、日本の農業をもっとよくする。

農業系公務員のコミュニティで事例やアイデアを共有

全国の農業系公務員がオンラインの勉強会で集い、情報交換するコミュニティ「農業現場お役(に立ちたい)人カイギ」。運営幹事の佐川さんと、立ち上げから携わる白鳥さんに、取り組みの意義を聞いた。

※下記はジチタイワークスVol.32(2024年6月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。

左:ファームサイド 代表取締役
佐川 友彦(さがわ ともひこ)さん

profile
民間企業を経て、栃木県内の梨園で経営改善に参画。大小500件の業務を改善した。2020年に「ファームサイド株式会社」を設立し、全国で講演や研修などを行う。

 

右:前・栃木県 農政部 経済流通課長
現・農林水産省 経営局 総務課 課長補佐
白鳥 幹久(しらとり みきひさ)さん

profile
2009年、農林水産省入省。2021~2023年度に栃木県に出向し、いちご王国・栃木のPRなどを担当。休日は県内農園でタルトをつくる「旅するタルト役人」として活動。


正解を見つけにくい環境でも孤軍奮闘せずに悩みを共有。

-「農業現場お役(に立ちたい)人カイギ」ができた経緯を教えてください。

佐川 農業者が経営する上で、行政の支援は重要です。講演や研修の依頼を受け、自治体の農業担当者と話して感じるのは、いい事例や熱心な職員さんが多いのに、そのほとんどがクローズドな状態であることです。一方で、“何をすればいいの?”と悩む職員さんも多いのです。

白鳥 農業担当者の課題やニーズは、地域や作物などによって様々です。農業者の考え方や、コスト管理の方法、たくさんつくっても売れるかどうか分からない……など、正解を見つけるのは難しい状況。個々で農業者の右腕になる自治体職員はいても、数年で異動してしまうという課題もあります。全国でつながることで、ベストプラクティスを素早く共有し、横展開できるのではと思っていました。

佐川 孤軍奮闘するのではなく、みんなでつながって協力することで、共通の課題や悩みの解決に近づくのではないかと。そこで同じ栃木県内で活動していた白鳥さんに声をかけ、複数の農業系公務員の皆さんと令和4年にコミュニティを立ち上げました。会員制ではなく、1~2カ月ごとに開催する勉強会に、その都度参加できる形です。全国の自治体から、毎回100人ほどがオンラインで集まり、勉強会の後はSNSを通して事例の共有や相談などをしています。

参加者と整理した課題をもとに農業分野特有のテーマを学ぶ。

-勉強会はどのような内容ですか。

白鳥 初回に幹事と参加者が課題をもち寄り、約400件を整理して課題マップを作成。その後のテーマは、課題からのニーズをもとに、参加者のアンケートで頻出のワードも併せて検討しています。重視するのは、農業分野特有であることです。「農業者とのコミュニケーション」や「産地PR」など、どの地域でも求められる対応を深掘りすることもできました。

佐川 参加者のボリュームゾーンは30代後半~40代前半ですが、全体では20代~60代と幅広く集まっています。毎回勉強会の前には白鳥さんの漫才でアイスブレイクし、終わったらみんなで感想を言い合って交流する、和気あいあいとした雰囲気。参加者同士がリアルで交流したり、協力して取り組みを行ったりと新たな動きも生まれています。

新しいメンバーを増やしながら好事例が生まれる場にする。

-コミュニティでこれから目指すものは。

白鳥 現場で受け入れられなかった試みも、このコミュニティで共有すると認めてくれる人たちがいます。また、自分では解決策が浮かばないときも“ここでなら聞ける、全国に仲間がいる”という安心感があります。これからも、農業全体がよくなるように自身の現場で成果を上げることはもちろん、コミュニティの参加者が楽しめる環境づくりをしていきたいです。まだ参加したことのない、熱い思いをもった若手職員もいると思うので、そういう人たちにも参加してもらいたいですね。

佐川 立ち上げから2年が過ぎ、必要なときにアクセスして、前向きな話ができる場であるということが浸透してきていると感じています。理想は日々の業務が倍くらい改善されること。そして、コミュニティがきっかけで生まれた好事例が共有されるようになるとうれしいです。

▲取り組みの詳細、問い合わせは、画像をタップ or クリックでもご覧になれます。



\コミュニティに参加中!/

VOICE 1

大阪府 環境農林水産部 農政室 推進課
牧野 裕樹(まきの ゆうき)さん

悩みの解決がスピーディに!

ここでは、普段の研修では踏み込んで聞きにくい、他自治体のリアルな事例を知ることができます。例えば、市町村の担当者と頻繁にやりとりをしている職員さんの話を聞いて実践してみると、担当者の抱く問題に早めに気づいて対処でき、大事に至らずに済みました。また、SNSを通して気軽に相談ができ、農家さんの探している機器を教えてもらったことも。常にアンテナを張って、情報収集している人の集まりなので、反応の早さも心強いです。

さらに、職場の先輩をコミュニティに誘い、企画に加わってもらっています。ほかにも勉強会に参加してくれた先輩・後輩もいて、身近なところでも仲間が増えてうれしく思います。そういう仲間が職場にいることが励みにもなりました。自分たちがいきいきと働くことで、農業系公務員にも輝いている人がたくさんいて、魅力的な仕事だということが伝わり、目指してくれる人が増えるといいなと思っています。

VOICE 2

山梨県 総合農業技術センター
志村 貴大(しむら たかひろ)さん

熱い仲間に背中を押されました!

「農業者との関係構築」の勉強会では、登壇者を経験。自分の取り組みが受け入れてもらえて自信につながりました。また、他自治体の事例に興味をもった際はその担当者と直接つながり、実情やリアルな課題を詳しく情報収集。そこで得た学びは自分の職場でも活用しています。

そして何より、“農業現場の役に立ちたい”という熱い気持ちで話し合えるので、とても居心地がいいです。以前の私は悪目立ちすることを気にして、職場では思うように発言や行動ができずにいました。しかし、コミュニティで皆さんと接するようになってから、自分らしく積極的に動いていいのだと勇気がもてたのです。それからは現場での振る舞いが変わり、相談されることも増えてきた気がします。コミュニティから刺激を受け、山梨県内の公務員を対象としたファシリテーションの勉強会も開きました。これからは熱い気持ちを出せる環境を自分が率先してつくりたいです。

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