ジチタイワークス

愛媛県西予市

全国初、救急隊員を再編成新たな救急体制で市民を守る

地方自治体が「行政改革」の取り組みを発表して、表彰する「行革甲子園」。平成30(2018)年に開催された第4回目の大会は、全47都道府県の141もの事例が集結した。書類審査を突破した8団体のひとつ、愛媛県西予市が発表したのは、新たな救急体制の設置を目指した全国初の取り組みだった。

※下記はジチタイワークスVol.5(2019年6月発刊)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[提供]愛媛県西予市

救急車の24時間配置を求める市民の声

市内全域が過疎地域の西予市は、ある課題を抱えていた。それは、救急車の配置状況に問題があることだ。2004年に5つの区域(明浜地区、三瓶地区、宇和地区、野村地区、城川地区)が合併して誕生した西予市は厳しい財政状況のため、救急車の運用地区を制限していた。海岸部の明浜地区、山間部の城川地区の出張所では、救急車の運用を平日の昼間のみに限定していた。では、夜間や土日、祝日に救急車の出動が必要になった際はどうしているのか。本署・支署が設置され常に機能している宇和地区・野村地区から出動するため、現場への到着が最長で70分を超えることもあったのだ。

そのような状況下で救命率の低下が懸念されていた。しかし、人的資源や財源は限られている。それでも地域住民からは「24時間救急車配置」を求める声があがっていた。

救急隊編成の変更を提案「准救急隊員」が誕生

西予市は現状の職員数でこの問題を解決できないかと考えた。平成27(2015)年6月、国に対して「救急隊編成基準」の規制緩和を提案。「救急隊員の編成の基準の特例」の改正を要求した。提案は次のような内容だ。「現在救急車1台に対して3人以上の救急隊員で編成されている救急隊を、1台に対して2人以上で編成し、軽症患者を搬送したい」。これで2人編成の救急車を24時間運用にして、すぐに現場に駆けつけ、救急隊員の判断で2人での搬送が不適当な場合には、応援の救急車を要請するというものだった。

しかし、新たな提案はなかなか受け止められないものだ。同年12月の閣議決定において、救急業務は3人以上の体制を維持するようにと可決には至らなかった。しかし、救急業務の一部を消防吏員以外に担わせるなどの方策を検討し、1年後、ついに救急車1台に対して救急隊員2人以上、准救急隊員1人以上であれば編成可能だとの改正がなされたのだ。

諦めない心が改革の成功につながる

西予市は市の広報紙やSNSなどで、一般市民に向けて准救急隊員の募集を始めた。また、一般行政職の中から併任を希望する職員を募り選定。約3週間(105時間)の講習を受け、現場での実習も経て、准救急隊員となった。同時に、仮眠室無し、事務所・車庫のみだった城川町と明浜町の出張所を改修。平成30(2018)年4月より念願の24時間運用を開始した。このように体制を整えてからは、前年と比べ、明浜町では現場到着時間が10分49秒、城川町では8分35秒短縮している。

准救急隊員による救急活動は全国初の取り組みだ。「1秒でも早く」と声をあげた人々の諦めない思いが、市を通じて国を動かしたのだ。


救急隊員と准救急隊員の違い。

HowTo

01、職員との兼任という発想

准救急隊員は、市民から募集する「任期付短時間職員」だけでは補えない人員を一般行政職員や元消防吏員で補うことにした。人手不足のなか、新しい職員を募集して増やすのではなく、地元の自治体職員に手伝ってもらう、という発想で人員配置を可能にしたのだった。

02、希望者だけを募る

救急業務は失敗が許されず、仲間の存在や信頼が大事である。そこで、市民を救うという目的をチームでしっかりと共有できるように准救急隊員は希望者のみを募集した。職員からは思った以上に手が上がったという。

03、准救急隊員の出勤を一部制限

一般行政職と併任する職員の救急出張所への出勤は、週に1日、もしくは2週間に1日と制限を設けている。職員数が限られているので、兼任することで所属部署への負担増や市民サービスの低下を招かないようにしているのだ。

04、ある施設を再利用して出張所に

明浜支所が完成するまで、救急出張所は市所有の旧高山診療所の一部分に、医師住宅を隊員宿舎にした。城川救急出張所は、旧愛媛銀行しろかわ支店を改修して使用。民間企業と協力し、既存の施設を生かして施設にかかる財政負担を最小限に抑制できたのだ。

05、准救急隊員の任用終了後は

一般行政職員の中で准救急隊員の資格を取得した職員を増やすのが目標だ。任用終了後はその知識と経験を生かして「在住地域のファーストレスポンダー」として、過疎地域の救命率向上を図る。

06、諦めない思いが一番のエネルギー

今回の取り組みを成功へと導いた一番の要因はなんといっても「1秒でも早く到着してほしい」という市民からの声だ。市民のためにと一般行政職員や民間企業が動き、さらに国までも動かした。過疎地域で新たに実現した救急体制の形である。

Results

〇現場到着時間の大幅短縮

救急施設や人員に関して比較的良好な条件で取り組めました。同じように悩む過疎地域の新たな救急体制として参考にしてもらえればと思っています。


産業部農業水産課主任兼准救急隊員・周藤功治さん、消防本部防災課救急係長・平田博史さん、佐藤栄司さん

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