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【連載】自治体シゴトのテキスト、「生活保護ケースワーカー」を学ぶ(基礎編)

多種多様な仕事がある自治体現場での人事異動は、しばしば「転職」と称されるほど。「これまでの経験が活かせず途方に暮れる」といった話を耳にすることも多い。

本企画、『自治体シゴトのテキスト』では、少しでも皆さんの支えとなるよう、多種多様な自治体業務について、その業務に精通している方にやりがいや魅力、仕事のポイントについてご紹介いただく。

【生活保護ケースワーカーを学ぶ 基礎編】

第5弾のテーマは「生活保護ケースワーカー」
基礎編、実践編、応用編に分けてご紹介するお話しの中で、今回は「基礎編」を紹介する。
今回は『福祉知識ゼロからわかる!生活保護ケースワーカーの仕事の基本』などの著者である大阪市職員の山中正則さんにご登場いただく。山中さんのテキストには、いったいどんな内容が書かれているのだろうか。

※著者の所属先及び役職等は2024年3月公開日時点のものです。
※各記事の掲載情報は公開日時点のものです。

生活保護ケースワーカーは役所で一番の不人気職場?

こんにちは。「自治体シゴトのテキスト」、今回は私、大阪市の山中正則が「生活保護ケースワーカー」のシゴトを紹介します。

「役所一の不人気職場」などとSNSでも目にする生活保護ケースワーカー。
異動になると本気で落ち込むなんて事も聞いたこともありますが、皆さんは生活保護ケースワーカーの仕事についてどのような印象を持っていますか?

生活保護を担当する福祉事務所の窓口は、庁舎の中でもほかの来庁者の視線を遮るプライバシーに配慮したつくりになっていたり、ちょっと奥まったところの配置されていたりと、一般的な窓口職場とは違って他部署の職員は近寄りづらい雰囲気があるかもしれません。

そのため、実際に生活保護ケースワーカーとして仕事につくまで具体的なイメージをつかむことがなかなかに難しく感じます。
今回はそんな皆さんに少しでも生活保護ケースワーカーを知ってもらって、良い仕事のきっかけにしていただきたいと思います。

また、生活保護ケースワーカーでない人にも、生活保護担当を身近に感じてもらえるようになればうれしいです。
 

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生活保護制度におけるケースワーカーの重要性とは?

ケースワーカーの業務量は意外と多い

生活保護ケースワーカーは社会福祉法第15条にもとづき、保護の決定業務において、調査、決定手続き、被保護者への指導・指示・支援を行う職員とされています。

ケースワーカーごとに担当地域が決められ、その地域内に暮らす被保護世帯の支援を担当します。
ケースワーカー1人が担当する世帯は標準で80世帯とされていますが、[朝日新聞の調査では7割の福祉事務所でケースワーカーが足りていない]とされており、実際に私がケースワーカーをしていたときは100世帯以上を担当していました。
ケースワーカーは多くの場合、最初から「キャパオーバー」といった状態で仕事をスタートすることになります。

ケースワーカーの業務量は意外と多い

そんな多くの被保護者の「指導・指示・助言」を行うわけですが、それぞれが生活に困窮し生活保護を利用するに至った状況やそこから生活を立て直すための課題は多岐に亘ります。

統計上は生活保護を利用する世帯を高齢者世帯、母子世帯、傷病者世帯、障害者世帯、その他世帯という5つに分類していますが、ケースワーカーはそれぞれの世帯に合わせた「指導・指示・支援」を行わなければなりません。

また、被保護世帯の支援にあたっては、生活状況を把握して援助方針に反映させること、またその方針にもとづいて自立を助長することを目的に家庭訪問を行うこともケースワーカーの仕事の1つになっています。

さて、ここまででもケースワーカーの仕事って結構大変じゃない?と思ったかもしれませんが、ここに加えて大変なのが「付随する事務量の多さ」です。

家庭訪問をするとその訪問記録を作成し、被保護者が働いて収入があると生活保護費額を再計算し、扶養義務者の調査のために戸籍謄本を取り寄せたりとデスクワークも欠かせません。

A→B→Cと手順が決められた業務ではなく、被保護者ごとに違う課題に柔軟に対応して、「指導・指示・支援」をこなしていくのが生活保護ケースワーカーの仕事です。

ケースワーカーの一日と仕事のコントロール

業務量も考えることも多い生活保護ケースワーカーの仕事ですが、その一方で担当制をとっているということは、仕事を自分でコントロールできるということでもあります。

仕事を自分でコントロールできる

例えば、出勤したら前日に提出された書類を整理して、昼休み明けに家庭訪問をして、夕方にその日の訪問記録を作成する。
翌月の生活保護費算定のための入力締め切りが迫っていれば、家庭訪問の約束を入れずに入力作業に集中する。

 

以前、ほかの自治体のケースワーカーと話をしたときに、「僕は家庭訪問の半分以上は夏に集中してやってます」と言われて、どうしてそんなことをするんだろう?と思っていたら、担当している地域が雪深いところで冬になると家庭訪問が難しくなるといった事情があるとのことでした。なるほどなぁと思って、そういった地域事情も含めて、ケースワーカー自身がどう仕事をしていこうかということを考えられるのは良いことだなと思いました。

そういえば、私自身もケースワーカーをしているときが一番、有給休暇をうまく取れていたかも、なんて思います。

もちろん、緊急対応が必要なこともありますが、あれもこれもやらなきゃとあたふたすることなく、家庭訪問やデスクワークに費やす時間を緩やかにコントロールできて自分自身のプライベートな時間も確保できるのであれば、ちょっとだけケースワーカーの仕事も良いかも?と思いませんか?

そんな仕事をうまくやるにはいくつかのコツがあります。

次回は、ケースワーカーになったばかりの方に覚えてほしい3つのポイントをお伝えします。
もしも、生活保護ケースワーカーになって落ち込んでいる、なんて方がいればぜひ参考にしていただければうれしいです。

 

ケースワーカーになったばかりの方に覚えてほしい3つのポイントとは。
実践編に続く


「生活保護ケースワーカー」を学ぶ(実践編)|【連載】自治体シゴトのテキスト

 


 

山中 正則(やまなか まさのり)さん

プロフィール

山中 正則(やまなか まさのり)さん

大阪市生まれ、育ち、1993年に大阪市に入庁。
1999年に福祉知識ゼロで生活保護ケースワーカーになり、
生活保護関連の通達や通達を独自にデータベース化した『生活保護通知・通達総索引』を制作。「地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード2022」受賞。
著書に「福祉知識ゼロからわかる!生活保護ケースワーカーの仕事の基本」「生活保護ケースワーカーはじめての現場の実務」(学陽書房)

 

著書

福祉知識ゼロからわかる!生活保護ケースワーカーの仕事の基本

 

福祉知識ゼロからわかる!生活保護ケースワーカーの仕事の基本
(学陽書房)

 

 

生活保護ケースワーカーはじめての現場の実務

 

生活保護ケースワーカーはじめての現場の実務
(学陽書房)

 

 

 

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