ジチタイワークス増刊号「感謝劇場」とは?
行政マガジン編集室が、事例紹介を中心とした通常号とは趣の異なる「増刊号」をつくりました。
「感謝・ありがとう」をコンセプトにした、その名も「感謝劇場」。略して、カンゲキ号です!
公務員の誰もが主人公になり得る、様々な視点での「ありがとうのドラマ」を取材し、紹介しています。
※下記はジチタイワークス 感謝劇場号(2024年3月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
●編集室の取材ネタ選びで候補に挙がることが多い福井。枠からはみ出すことを恐れず、行動力と発信力、受賞歴のある職員が多い印象の福井。今回は、そのアツさの秘密を探るべく、市町を越えてつながる有志グループ「若者チャレンジ応援公務員」の座談会を実施した。
やりたいことのある人に動き出すきっかけを与えたい。
――まずは、皆さんの出会いやグループ参加の理由などを。
寺井 出会いは知人の紹介や地域のイベントなど、様々です。COD活動の流れでグループ結成を決めたとき、ここにいる面々はすぐに賛同し、参加してくれました。とはいえ、福井の公務員がみんなこんなに「濃いキャラ」ではないですよ(笑)。
田野 え、僕は皆さんと違って「普通」ですよ(笑)。県への出向時に寺井さんから刺激を受けたし、波多野さんのように前を走ってきた人の影響が、皆さんにあるのでは?
波多野 僕が活動を始めた13年前は、こんな「つながり」はなく、職場で否定されても自分で頑張るしかなかった。だから、やりたいことのある若手には「動き出すきっかけ」を与えたいという思いがあります。
出蔵 ルールや規則からはみ出して見える挑戦をしようとして、冷や水をぶっかけられた経験がある職員は多そう(笑)。だから、寺井さんの「チャレンジング」な姿勢は一緒にいて心地いいですね。
寺井 あ、でも僕はちゃんと職場内の「根まわし・調整」をして動いていますからね。そこ、すごく大事!
山田 確かに(笑)。私は、職場では内部的な業務をしています。だけど人と話すことやイベントが好きで。色々と参加するうちに皆さんと仲良くなり、学ばせてもらっています。
小玉 僕は、「これは何を目指すグループなのかな?」と最初に思いました。でも、寺井さんが「ゴールは設定しない。何かを達成して終わりではなく、ゆるくつながって、長く活動することに価値がある」と言っていて。それがすごく新鮮でした。
出会って対話することで内に秘めた思いに「火」を!
―― 福井の人は社交的で行動力のある人が多いのでしょうか。
寺井 もともとは、控えめで保守的な県民性です。だけど市町の数も人口も少ないから、公務員同士がつながりやすい環境だといえますね。
出蔵 確かに、小規模なので、会いたい人に意外と簡単に出会えます。娯楽も少ないから、そのぶん人と「話す機会」も多いですね。すでに何か活動をしている人の話を聞くうちに、「自分にもできるかも!」と、内に秘めた思いに火がつくことは多いのかもしれません。
田野 一人では動き出せない「モヤモヤ」を秘めた人々が集うことで、モヤモヤ解消の「行動」が生まれ、よい流れができているんでしょうね。
小玉 行動のしやすさでいうと、知事や市長が代わって「新しいことをやってもいいよ!」という空気感ができたのは大きいと思っているんですよ。
寺井 うん、それは大きいね!知事は、何かを始めようとするとき、まず「面白いね」と肯定してくれるしね。
――つながりを広げるために行っていることはありますか。
寺井 とにかく、たくさん人に会う!僕は、初対面の人に会うことに何の抵抗もないですから(笑)。
山田 私も、抵抗なく交流できるタイプ(笑)。ただ最近、コロナ禍で入庁した若手が「縦横のつながりがつくれず、仕事がしにくいのではないか」と感じますね。だから食事会やイベントの参加など、積極的に「庁内のつながりづくり」に励んでいます。
小玉 僕は、まず人が集まる場に行って名刺交換をし、その後にSNSで友達になるようにしています。その場の付き合いだけで終わってしまうのは、もったいないので。
田野 僕は「クセのある人」と出会うのが楽しくて、そういう人たちとはゆるくつながっています。すると、思わぬときに仕事で接点をもてることもあるから、役に立ちますね。
波多野 僕は、本当はSNSが苦手です(笑)。なぜそれでもするかというと、情報入手や外部との接点づくりに有効だから。ただ、無理して誰かとつながろうとする必要はないと思っていて。まずは、「自分のやりたいこと」を発信すること。そうすれば、寺井さんや小玉さんみたいな人が気づいて声をかけてくれるはず(笑)。そこから、やりたいことの実現に近づけると思います。
SNSやメディアを使って情報発信をすることが大事。
出蔵 情報発信は、「練習」をするといいですね。発信が上手な人を何人か見つけて、文章や投稿のタイミングなどを研究する。そうするうちにコツがつかめてきます。これが、メディアに送るプレスリリースづくりにも役立つんですよ。
波多野 メディア活用は大事ですね。私の活動も、メディアが取り上げてくれたことで「住民から評価」を得て、それが庁内での理解につながった。自治体職員として一番大事なのは、住民のために働くこと。それを「やりがい」にできれば、行動しやすくなると思います。
小玉 僕たちが地域に出て、「住民の声、評価の声」が聞こえる場所にいることも大事ですよね。
寺井 そう。庁内にいるだけだと、クレームの電話ぐらいしか住民の皆さんと接する機会がないから(笑)。地域に出てみると、想像以上に住民の皆さんから歓迎されるよね。
福井に愛着をもつ住民を増やし「チャレンジ応援」を文化に!
―― 皆さんで、どんな「福井」を目指していきたいですか?
出蔵 福井には共通して「チャレンジ応援」が根底にあります。職員個人の強みをかけ合わせ、それが好結果をもたらせたらいいですね。
田野 概念的な意味合いで、東京みたいに「光輝く」方へ若者は寄っていく。福井も、若者が吸い寄せられる地域にしていきたいです。
小玉 「福井はすごい」と言われたとき、自信をもって肯定できるようになりたいですね。そうなれるように、僕たちが「住民が愛着をもてるまちづくり」に取り組まなければ!
山田 そのためにも、まず職員が地域に誇りをもてるといいですね。住民のために頑張って働いている!という達成感があれば、日常が充実してワクワクできると思います。
波多野 自分らしく、やりたいことをオープンにして生きられる地域であってほしい。そんな人たちを応援できる空気になれば、みんな福井に「愛着」をもてるんじゃないかな。
寺井 何かをやりたいという思いをもつ人が、一人でモチベーションを上げるのは難しい。だから、それを否定せず応援してくれる仲間の存在は重要です。今、ここにいるのも、そういう人たち!それぞれ「すごいところ」が違うから、苦手なことは得意な人に任せればいい。それがすごくありがたいし、みんなとならできないことの方が少ないんじゃないかな。一緒にこの取り組みを長く続けて、「チャレンジ応援を福井の文化に」していきたいと思います。