ジチタイワークス

兵庫県神戸市

【長井 伸晃さん】“つなぐ”達人たちに聞く!官民連携に踏み出すヒント。

現役公務員インタビュー

職員不足や行政需要の複雑化が叫ばれる中、官民連携の必要に迫られているのは庁内の全職員ではないだろうか。一方、現場では、何から手を付けていいか分からないとの声も上がっている。そこで、様々な連携事業に取り組み、実践経験を積んだ“つなぐ”達人3人にインタビュー。

連携の意義や地域・庁内外とのつながり方など、官民連携に取り組む上での基本となる心構えを聞いた。

【官民連携推進特集】
1人目の達人:兵庫県神戸市 長井 伸晃さん/ 官民連携の意義について聞きました! ◀今ココ
2人目の達人:神奈川県川崎市 上仲 俊輔さん/ 地域とのつながり方について聞きました!
3人目の達人:神奈川県小田原市 白井 直士さん/ 庁内外のつなげ方について聞きました!
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※下記はジチタイワークスVol.30(2024年2月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。

長井 伸晃さん
兵庫県神戸市(こうべし)
企画調整局 調整課
課長(SDGs推進担当)

ながい のぶあき:2007年神戸市入庁。17社との連携事業を実現し、「自治体×民間のコラボで解決!公務員のはじめての官民連携」(学陽書房)を著す。全国の公務員がつながるコミュニティ“オンライン市役所”の運営にも携わる。

 

Q:そもそも官民連携はなぜ必要とされているのですか?

多様化する行政課題に対して素早く合理的に対応するため。

住民のニーズが増え、行政課題が複雑化する一方で、自治体の職員数は減少傾向にあります。今や自治体のリソースだけで行政課題を解決できる時代ではありません。民間事業者は特定課題に対して迅速に対応できるソリューションをもっています。一方、行政は地域の困り事をキャッチして施策を実行していく仕組みをもち、公共性や信頼感をベースに地域を巻き込むことができます。新しい試みを行う上では、行政と民間がリソースや強みを出し合い、共通の課題に取り組むことが必要不可欠です。

官民連携の範囲は、事務や市民サービスの業務委託から民間事業者との事業連携まで幅広いもの。行政にとっては、既存の民間サービスをうまく取り入れることで施策をスピーディに実施できることもあります。さらに職員の業務効率が上がり、ほかの業務に時間を使えるという利点も。また、民間事業者にとっては行政の安心感とともに新しい地域や分野に参入でき、住民のリアルな声をヒアリングできるといったメリットがあります。

 

Q:民間と連携するためには、まず何が必要でしょうか?

地域に入って課題を把握し、解決へのストーリーを妄想。

官民連携は目的ではなく、あくまでも課題解決に向けた手段の一つ。まずは課題を把握するため地域に入り、住民や事業者から生の声を聞くことが大切ではないでしょうか。さらに、行政がなぜその民間事業者と連携するのか、という意味付けやストーリーが必要です。連携が行政課題とどう結び付き、双方にどんなメリットがあるのか。結果として地域住民の生活がどう豊かになり、便利になるのか。そのゴールまで、自分なりに課題解決のストーリーを描く。まずは“妄想”からでいいんです。

私自身は日頃から商店街の若い経営者や、地域の面白そうな人たちと関わるようにしています。自分の時間を割くことになりますが、人脈をもっておいて損はありません。それぞれの課題が見えてきますし、まだアイデアの段階でも意見交換ができるので非常に助かっています。

実際に見聞きした生の声やエピソードは、庁内の合意形成でも役立つポイント。約150万人いる神戸市民のうち数人の声であっても、臆測ではなく実際にこういう人がいるという事実は説得力があります。
 

 

Q:民間事業者と接する際には、どんな心構えが必要ですか?

程よい厚かましさをもって、相手の土俵に飛び込んで。

“公務員だからここまで”という線引きを、少し外側に広げてみることでしょうか。私も初めてI CT活用の担当をすることになったときは、右も左も分からない状態からIT関連のイベント・コミュニティに飛び込んで、何とか話についていくようにしていました。全く調べていない、知ろうとしていない姿勢はすぐに相手に伝わるので、ネット検索で分かる程度でも予備知識は入れておきたいですね。勇気を出して質問することも必要で、“ 程よい厚かましさ”をもって溶け込む姿勢が大事。また、話し合う中で分からなかったことは後で必ず調べておきましょう。

民間から提案を受けた場合も、公共性が重要なキーワードになります。単に自社の商材を使ってほしいという営業ではなく、社会をよりよくしたいという視点を共有できるかがカギですね。また、行政と民間は組織文化が異なり、同じ言葉でも受け取り方が違う場合があるので、企画担当者は庁内外との橋渡しや通訳のような役割を担う必要があります。打ち合わせ後に認識がずれていると思ったら、私はすぐに確認・調整するようにしています。

 

Q:官民連携の仕事における楽しさ、やりがいは何ですか?

民間のように働きながら行政の強みを再認識できる。

まず、民間ならではの価値観やスピード感に触れることで、視野が広がり成長につながること。次に、行政という看板がいかに強力かを再認識できることです。自分が自治体職員として動けるからこそ、民間の人と一緒にこの強みをフル活用することができます。そして最後に、新しい取り組みで社会をよくしていくことが何より楽しい。ダイレクトに反応も返ってきますし、課題解決を通して市民生活を豊かにできることにやりがいを感じます。

異動の多い自治体で、希望と異なる部署に配属されてギャップを感じている人も少なくないでしょう。しかし、結論からいえば、官民連携においてその経験はムダにはならない。私も生活保護のケースワーカーで対人関係の基本を、給与・人事担当では庁内の交渉や調整、根まわしを学びました。当時の仕事に本気で取り組んだ土台の上に現在があると思っています。

管理職向けの研修では「部下には、自分でやり切った経験をさせてあげてください」と話しています。官民連携に限らず、一度成功体験をもつと、面白さを感じられるし、それが仕事や組織を好きになることにもつながるはずです。

官民連携で身に付いたスキルを聞きました!
サイドストーリーに続く


課題発見は役所の外で!身に付いたスキルは「取材力&妄想力」
 

 

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 上仲さんSideStory/「本気の人と対等に会話したい」官民連携で痛感した学びの必要性。

 3人目の達人:神奈川県小田原市 白井 直士さん/庁内外のつなげ方について聞きました!

 白井さんSideStory/公民連携の足掛かりづくりのため、苦手な都会へ飛び込んだ。

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