日本の人口は、2050年に約9,515万人となり、現在から約3,300万人減少するとされている(総務省「我が国における総人口の長期的推移」)。人口減少・少子高齢化などの課題に“真っ先に”直面し頭を悩ませているのが、小さな「まち・むら」だ。しかし見方を変えれば、都市が遠からず直面する課題に先んじて挑むからこそ、「課題を解くイノベーションが生まれる可能性」は大いにある。また、小まわりが利くからこそ先進のソリューションを学び、試し、実装させやすいのも強みだろう。まさに、“逆転思考”。
そんな中、2023年11月15日に「U49 全国若手町村長会」が発足し、東京都内で設立総会が開かれた。今回は、同会設立に関する取材レポートをお届けする。
【まち・むらの逆転思考連載】
#01 “徹底して聞く”から全てが始まる。
#02 数多くある課題を“チャンス”へ。
#03 全国若手町村長会が発足!若手首長が連携し、持続可能な地域づくりに挑む! ←今回はココ
#04 全国若手町村長会を立ち上げた町長5人のホンネ座談会。首長だって悩むし、弱さもある!
※所属およびインタビュー内容は、取材当時のものです
先の見えにくい時代。若手首長たちが本音でつながって研鑽を積み、
地域の課題解決や活性化に取り組んでゆく。
「全国若手町村長会」は、当選時に49歳以下だった“町村長”が参加する任意組織。国内926町村のうち、該当する首長は67人(発足時点)いるが、総会には24都道府県・45町村長が集まった。参加者の年齢は37~53歳、その中で女性は3人。事務局支援団体として「一般社団法人 日本GR協会」、アドバイザーの一人として「よんなな会」の脇 雅昭さんが就任している。
自治体トップが連携する組織としては、「全国青年市長会」があり、昭和63(1988)年の設立から35年の歴史をもつ。49歳までに当選した市長が集い、地方自治の発展に寄与することを目的とする組織だ。市長会があるのに対し、これまで“町村長会”はなかったため、同会にならうかたちで設立が検討され、実現に至った。また今後は、市長会との連携も模索していくという。
設立の目的は、人口減少や少子高齢化、自然災害の激甚化など全国共通の様々な課題に対し、住民の幸せと持続可能な地域づくりに取り組むため。具体的には、官民連携をはじめとした課題解決の先進事例・成功事例の共有や横展開。好事例をもつ地域の現地視察や情報交換会、オンラインでの勉強会などが計画されている。
若手町村長に共通する悩みは、議会や職員など、周囲に経験豊富な年上が多いこと。新たな取り組みの提案に理解を得られないこともあり、悩みも共通しているという。
同会発起人の一人であり、会長に就任した神奈川県葉山町の町長 山梨 崇仁さんは、「私たちは、課題の多い社会の中核を担っていく世代。若手がつながって本音で語り合い、情報を共有して研鑽し、経験や知識の不足を補い合いながら力を発揮していきたい」と話す。
また、「首長であると同時に政治家であり、そして地域に暮らす一人の人間、働き手であり、その多くが子育てにも取り組む世代である」とし、仕事に限らず、様々な悩みを相談できる場として活用し、共に成長していけたら……と今後の活動に期待を込める。
設立発起人でもあり、同会の会長・副会長に選出・承認された
5人の若手首長をご紹介!どんな町長?どんな「まち」?
やまなし たかひと
1977年、東京都渋谷区生まれ。大学卒業後、ウインドサーフィンの選手として約4年間活動。ベンチャー企業勤務、葉山町議会議員(2期)を経て、2012年に34歳で町長に就任。
写真右は、ウインドサーフィン中のオフショット
▶ 町村長とは:「地域を一番よく知り、一番大きく動き、寝ても覚めても町のことを考え続けて決断する情熱エンジン」である
▶ 座右の銘(好きな言葉):(よく一人で念じるワードは…)「絶対あきらめない」
▶ 会長としての意気込みをヒトコト:立ち上げ、仕組みをつくり、そこに町村長のみんなが「楽しみに」「安心して」集まりたい会にすることが全てです!
賃貸未来研究所が2019年から調査・発表する「住み続けたい街ランキング2023首都圏版」で3年連続・1位を獲得。ごみの資源化・減量化による循環型まちづくりを目指した「はやまクリーンプログラム」や、その一環でもある「はやまエシカルアクション」に産官民連携で取り組み、シビックプライドの醸成を進めている。
葉山町ホームページ:https://www.town.hayama.lg.jp/
やまぞえ とうま
1981年、宮崎県三股町生まれ。生家は江戸時代から続く丹後ちりめん織元。高校卒業後に渡仏し建築を学ぶ。「尾崎行雄記念財団主催咢堂塾」を卒塾、与謝野町議会議員(1期)を経て、2014年に32歳で町長に就任。
写真右は、重要伝統的建造物群保存地区「ちりめん街道」でのオフショット
▶ 町村長とは:「住民と未来を信じる勇気を持つ政治家」である
▶ 座右の銘(好きな言葉):住する所なきを、まず花と知るべし
▶ 副会長としての意気込みをヒトコト:新たな価値は辺境の地から生まれる。全国の町村から、新たな時代を切り拓くために、仲間たちを信じて前進いたします。
古くから、丹後ちりめんで栄えた“ものづくり”のまち。持続可能なまちづくりに重要なのは、一番に“ひと”であると捉え、“ひと・しごと・まち創生総合戦略”を推進。住民が参加できる「よさのみらい大学」では、未来に向けた新しいモノ・コト(事業やプロジェクト)を主体的に創出できる“ひとづくり”に取り組んでいる。
与謝野町ホームページ:https://www.town.yosano.lg.jp/
かんの だいし
1978年、山形県西川町生まれ。財務省・金融庁・内閣官房等の勤務を経て、2022年に43歳で町長に就任。公務員と金融機関職員が交流する「一般社団法人ちいきん会」理事、「株式会社更木ふるさと興社」CFOなど多数のパラレルワークにも取り組む。
写真右は、「ちいきん会」のプレゼンテーションの様子
▶ 町村長とは:「将来も持続可能な地域をつくる経営者」である
▶ 座右の銘(好きな言葉):単純明快
▶ 副会長としての意気込みをヒトコト:地域の活性化は、共創と競争の時代。面白い地域に、ヒト・カネ・情報は集まります。励まし合い、アイデアを出しながら、挑戦を通じて、面白い・幸せな地域を創っていきましょう。
高齢化率46%超え”から“逆転”すべく、自治体初の住民投票NFT発行や、地方初のAI謎解き観光など話題を集める事業に次々と挑戦。町民との本気のふれあいから「課題やニーズ」を、民間企業から「知恵や技術」を、国から「交付金・補助金(財源)」を得て事業を起こし、町内外の人を巻き込んだ地方創生を推進する。
西川町ホームページ:https:// https://www.town.nishikawa.yamagata.jp/
くわばら はるか
1986年、新潟県津南町生まれ。2011年、東京大学公共政策大学院在学中に「長野県北部地震」が発生。故郷の被害を目の当たりにし、地元のために役立ちたいという思いから津南町議会議員への立候補を決意、25歳で初当選。町議(2期)を経て、2018年に31歳で町長に就任。
写真右は、夏の風物詩、ひまわり畑の駐車場係
▶ 町村長とは:「住民のため、まちのために尽くす、決してあきらめない人」である
▶ 座右の銘(好きな言葉):頭はグローバルに 足は大地に
▶ 副会長としての意気込みをヒトコト:自分たちの町村が今より一歩前に出るために、多くの仲間の皆さんとつながり、学び合う場づくりのため、微力ながら頑張ります!
豪雪が生む豊富な水に恵まれ、農業を基幹産業とするまち。「ゆき みず だいち つなんまち」をスローガンに、雪下にんじんやアスパラなどの野菜、ユリの産地としてブランディングを推進。高齢化や担い手不足の対策としてスマート農業にも取り組む。持続可能なまちづくりのため、医療・介護の体制整備に重点を置き、町長自身も母親である視点で子育て支援・教育にも力を注ぐ。
津南町ホームページ: https://www.town.tsunan.niigata.jp/
もりた こうじ
1984年、奈良県三宅町生まれ。土木作業員や国会議員秘書、ゴミ収集の作業員、生協の配達員など多様な職を経験した後、「自分が議会に飛び込むことで、若い世代の価値観を知ってもらえたら」の思いから町議会議員へ。約1年の議員職を経て、2016年に32歳で町長に就任。
写真右は、育休を取得した際の子育てオフショット
▶ 町村長とは:「住民さんと役場職員の間にいる人」である
▶ 座右の銘(好きな言葉):なるようになる
▶ 副会長としての意気込みをヒトコト:小さな町や村からワクワクする持続可能な未来を共創していきましょう!
全国で二番目に小さいことをポジティブに捉え、「自分らしくハッピーにスモール(住もうる)タウン」をビジョンに掲げるまち。官民連携に力を注ぎ、特に子育て支援では、保育園でおむつを定期購入することによる「手ぶら登園」を実現。また、町長自ら育休を2回取得したほか、多世代交流を可能にする三宅町まちづくり交流センター「MiiMo」を創設し、住民参加型のまちづくりを進める。
三宅町ホームページ:https://www.town.miyake.lg.jp
※#03前編はここまで
全国若手町村長会ホームぺージ https://www.young-mayor.net/