業務アプリ開発プラットフォーム
高齢化率の高い小さなまちでありながら、次々と先進的な取り組みを手がける神山町。その裏側は試行錯誤の連続だという。ここでは、同町の庁内業務改革にスポットを当て、リソース不足の問題にデジタル活用で向き合う取り組みを紹介する。
※下記はジチタイワークスVol.28(2023年10月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[提供]サイボウズ株式会社
限られたリソースでできることは?民間知見の導入から始めた庁内改革。
徳島県の山間に位置し、人口5,000人を切る同町。役場のリソース不足という問題に直面し、平成30年に庁内有志と町民による「10年後の役場を考える会」を立ち上げた。その会議の中で決まったのが、「地域活性化起業人」制度の活用だ。令和3年9月に着任し、庁内業務の改革に向けて動きはじめた角南さんは、当時の状況をこう振り返る。
「職員の誰もが、住民のためにと誇りをもって働いていると感じました。その反面、紙ベースで進めている仕事が多かったり、手作業が目立ったりと、デジタルの活用で改善できる部分は多くありました」。
しかし、業務のデジタル化を進めるにも、予算は限られている。「できるだけ既存のツール、もしくは低コストのシステムを利用するという条件で、何ができるのかを検討しました」。
そうした中で目を付けたのが、「サイボウズ」が提供する「kintone(以下、キントーン)」だ。プログラミングの知識なしで業務用アプリをつくれるツールで、同町では約5年前に導入していたが、十分に活用できていなかったという。
地域活性化起業人とは
自治体が3大都市圏の企業人材を一定期間受け入れ、地域活性化に資する業務に従事してもらう制度。取り組みに対しては特別交付税措置が受けられる。
プロトタイプのアプリを駆使して、職員の“改善意識”を高める。
角南さんはアプリのつくり方を学びつつ、並行して職員へのヒアリングや業務改善ワークショップを開始。しかし、活動当初の手応えはいまひとつだったという。「何か困り事はありませんかと聞くと、“大丈夫です”と返ってきます。そこで聞き方を変え、どんなことをストレスに感じているかを尋ねることにしました」。
質問の角度を変えると、様々な意見が出るようになった。これをヒントに最初に着手したのは、高齢者訪問時の報告書作成アプリだ。留守番電話を活用するアイデア(下図参照)で負担を軽減し、担当職員は見守りに専念できるようになった。「改善イメージを共有するため、図解での説明に努めました。アプリは完成前のプロトタイプの段階で提供。実際に使ってもらいながら、現場の意見を取り入れて完成させるという方法を採っています」。
その後着手したのは、総務課の請求管理アプリ。手作業で行っていた請求データの入力や、通帳との突合を自動化した。年間約30日分の作業が、12時間程度まで削減される見込みだという。また、ふるさと納税の申請管理業務では、WEBサイトやメール、手書きなど、バラバラの方法で申請されていたデータを取りまとめて効率化。「こうした成功事例を積み重ねることで、相談すれば改善されるという認識が広まり、要望も増えていきました」。
失敗を恐れずに繰り返す挑戦が、庁内にポジティブな変化を生む。
現在も順次、業務改善が進められており、松田さんの担当する広報紙作成業務もその一つだ。「編集の進捗管理がアプリで一元化され、バックナンバーから記事を検索する手間も大幅に軽減されました。デジタルで業務がラクになるのを実感しています」。
こうした改善の積み重ねにより、“キントーンの使い方を習いたい”という職員もあらわれ、デジタルの積極活用に取り組む課も増えてきている。庁内の変化について松田さんは、「異動の多い自治体職員は、前任の引継書を頼りに、まずはその通りに仕事を覚える必要があります。そのため、業務のやり方を変えるという発想に至りにくいのです。民間の後押しで得た“変えてもいい”という気づきは、とても新鮮でした」と語る。また、角南さんは、こうした変化を起こすのにキントーンが非常にマッチしていると評価する。
「開発コストが抑えられるのが魅力で、プロトタイプも簡単につくれます。再トライが繰り返せるので、失敗してもいいから、まずはやってみよう!という空気を醸成できます」。
今後も新たな挑戦を続けていきたいという2人。「職員と民間人材とで協力しつつ、住民の奉仕者として、未来に向けて自走できる自治体をつくっていきたい」と、改革への決意を語ってくれた。
神山町
総務課 企画調整係
左:地域活性化起業人 角南 大雅(すなみ ひろまさ)さん
右:主事 松田 一輝(まつだ かずき)さん
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ガブキンでできること
①活動事例を知る
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②ユーザーとつながる
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初心者向け体験会やワークショップなどが随時開催されている。
④アプリを試作する
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