難解な用語をなくし、短い文章で行政手続きのハードルを下げる。

行政にもDXが求められている昨今、窓口手続きのデジタル化や申請の電子化など、様々なサービスが登場している。創業以来、行政サービスや手続きをサポートするツールを提供してきた「アスコエパートナーズ」は、単なるデジタル化や電子化にとどまらず、いかに利用者の負荷を軽減できるかに注目。利用者視点に立ったサービス設計を行っているという。

WEBでも紙でも、自治体が発信する情報の多くは、法律や条例にもとづいて作成されている。そのため、専門用語が多く、住民にとって長くてまわりくどい文章になりがちだという。齋藤さんは、「伝わりにくい表現によって、受け手の住民との間に隔たりが生じているのが実情です。私たちの考え方の根底には、自治体が発信する情報の全てを“誰もが理解しやすく、分かりやすいものにしたい”という思いがあります」と語る。行政サービスを住民に届けるためには、「手続きが“面倒で分かりづらい”という住民の声を受け止め、行政との距離感を縮める必要があります」と続ける。

「各種情報の取得には、多くの住民がスマホを利用しています。ですので、情報を1ページに集約して縦スクロールだけで完結する、文字量を抑えて離脱させないようにするなど、使いやすさを重視しています」。行政が提供するサービスでありながら、柔らかな印象を与えられるデザインを心がけたという。

こうして生まれたのが「手続きナビ」と「申請サポートプラス」の2つのツールだ。これらの総称である「わたしの手続きコンシェルジュ」というサービス名には、住民に寄り添いながら申請までサポートしたい、そんな同社の思想が込められている。

住民に分かりやすい設計だから問い合わせや質問の電話が減る。

出産や引っ越しなどに伴う手続きを案内する手続きナビは、オンラインだから自宅で事前にチェックできる。1問ずつ表示される質問に答えていくと、必要な持ち物と担当課などが分かるという。質問は、難解な行政用語を用いず、職員と会話するような流れで回答できる設計だ。

「例えば、引っ越しの場合はどこから引っ越してきたのか、家族構成は、子どもの年齢は、など、ライフイベントごとに利用者視点で私たちがシナリオを設定します。自治体職員が作成すると行政用語が増え住民に伝わりづらく、またシナリオが複雑となりメンテナンスが困難になるためです」。

質問は独自のナビエンジン（特許出願中）で、必要最小限に抑制。回答が全て終わると、手続きの名称や受付期間、持ち物や行くべき窓口などが一覧で表示される。また、同ツールは、窓口に訪れた住民を対面で案内するときにも便利だという。「ベテラン職員の応対をモデルに設問しているので、案内はスムーズです。また、ツールを使うことで、応対品質の平準化やヒューマンエラーの低減にも寄与します」。

住民が事前に入力したデータを窓口で読み取り、手続きする。

申請サポートプラスは、住民がオンラインで各種申請書を作成できるツールだ。分かりやすい解説のついたフォームに入力していくと、申請書様式に最適化されたデータが完成。データは二次元コード化され、印刷またはPDFで保存できる。窓口で提示された二次元コードを職員が読み取ると、データが復元できる仕組みだ。

「項目連係することで、名前や住所といった共通項目は複数書類に自動で反映。住民は何度も入力する手間が減ります。また、誤りは職員が後から端末上で修正することも可能です」。項目は入力内容に応じて変化。また申請書作成途中の離脱を防ぐため、記入項目は最小限だ。同ツールは、質問や操作が簡単なだけでなく、申請書の補正に伴う職員の負荷軽減と住民の利便性向上を両立している。

今後は、マイナンバーカードと連動した機能の拡充を図っていく予定だという。同社のDXツールによって、限られた時間をより良い住民サービスのために使えるようになることだろう。

アスコエパートナーズ 事業本部
シニアマネージャー
齋藤 好美（さいとう よしみ）さん

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