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内閣府が掲げるスーパーシティ構想とは?スマートシティとの違いも含めて解説!

人口減少や少子高齢化は、日本全体の大きな問題となっている。また、これらの問題が原因で労働力不足や生産性不足に陥っている自治体も多いのではないだろうか。そこで、注目されるのがAIやビッグデータを活用し、生活の利便性を向上させる「スーパーシティ構想」だ。今回は、住民サービスだけでなく、物流分野やインフラなどの面でも地方の課題を解決できると期待されるスーパーシティ構想とはどのようなものかを詳しく解説する。

【目次】
 • スーパーシティ構想とは

 • スマートシティとの違い
 • 事例紹介:スーパーシティ型国家戦略特区
 • 事例紹介:デジタル田園健康特区
 • スーパーシティ構想で住みやすい地域作りに期待

スーパーシティ構想とは

スーパーシティ構想とは、AIなどの先端技術を生活全般に活かし、住民が参画し、住民目線で、2030年頃に実現される未来社会を先行実現することを目指すというものだ。2022年11月に区域方針が内閣総理大臣決定、そして、2022年12月には新たな規制改革事項が国家戦略特区諮問会議で決定した。

これまでも各分野では先端技術が活かされることはあったが、生活全般が改善するまでには至っていなかった。そこで、スーパーシティ構想を立ち上げ、まずは国家戦略特区に選ばれた自治体で実証実験を行うことになったのだ。 

スーパーシティ構想で は以下のような分野で先進的なサービスを提供する。また円滑なサービス提供のために、さまざまな分野間でのデータ連携や共有も行われる。

●    行政手続き
●    移動
●    物流
●    観光
●    医療・介護
●    教育
●    防災
●    エネルギー・環境
●    支払い

現在の予定では、まずは茨城県つくば市大阪府・大阪市などに「スーパーシティ型国家戦略特区」を設け、それらの自治体から推進することになっている。

スマートシティとの違い

「先端技術を用いてまちや地域の問題を解決する」というと、スマートシティが思い浮かぶという人もいるだろう。ここでは、スーパーシティとスマートシティの違いも確認しておこう。

法律面から見た違い ≫

スーパーシティでは、国家戦略特区を設けて生活の中に複数分野の先端技術を組み込むだけでなく、規制緩和も同時に進め、地域の問題点を解決していく。

スマートシティでは、ICTなどの先端技術を活用し、地域の問題を解決する。

目的から見た違い ≫

スーパーシティでは、住民や地域全体の問題の解決を目的としている。よって、先端技術の活用はその手段でしかない。

スマートシティでは、ICTなどの先端技術を活用した効率化を目的としている。

事例紹介:スーパーシティ型国家戦略特区

Case1.茨城県つくば市

つくば市では「つくばスーパー『サイエンス』シティ構想」と銘打ち、デジタルやロボットなどの最先端技術を社会実装することを目指している。同時に、様々な規制緩和・規制改革も行われることも計画されている。

例えば、行政分野 では「インターネット投票の実施による住民の政治参加の促進」を目的とし、2024年のつくば市長選挙、市議会議員選挙に向けて、オンデマンド型移動期日前投票所の導入も検討されている。

実現すれば、移動や自筆が困難な人でも自宅からタブレット等で投票が可能になるため、投票率アップや住民の政治参加の機会増が期待できるという。

なお、このシステムの実現に向け、公職選挙でインターネット投票できる環境や身体が不自由な人などが投票しやすい環境の整備が必要となる。具体的には、(公職選挙法37条(投票管理者)、38条(立会人)、41条(投票所の告示)、44条(投票所における投票)、46条(投票の記載事項及び投函)、48条2(期日前投票)などの規制改革が求められてくる。

また、移動・物流分野 では、遠隔操作できるパーソナルモビリティのシェアリングサービスの導入も目指している。こちらには運転免許を返納した高齢者や身体が不自由な人でも外での買い物や通院がしやすくなるというメリットが期待される。

このシステムの実現に向けては、パーソナルモビリティの歩道通行における遠隔監視の要件を緩和する必要がある。具体的には道路交通法第2条の規制改革が求められる。

現在のところ、2023年10月~12月で実証内容の精緻化、自治体・省庁・警察への申請、2023年10月~2024年1月に実証環境の準備と構築、そして2023年12月~2024年2月にロボット走行の実証実施が予定されている。

関連記事|【茨城県 つくば市】時間や場所に縛られず一人でも多くの人が投票できる社会を目指す。

Case2.大阪(府・市)

大阪府・大阪市では、2025年のEXPO 2025 大阪・関西万博開催に向けスーパーシティ計画に取り組んでいる。その目玉として注目されているのが、混雑等のストレスを感じず移動できる「空飛ぶクルマ」 だ。大阪ベイエリアと万博会場ポートを結ぶルートを運行するエアタクシーサービスの実現を目指している。

2025年の運行実現 に向け、2023年8月時点では大阪ベイエリアでの離発着候補地選定やインフラ整備、飛行ルートの選定を検討している段階である。また、2024年度中には「離発着ポートの設置」「運行支援体制や拠点、データ基盤等の検討・設備」そしてデモフライトも予定されている。

ちなみに、離発着ポートの設置に向けて、航空法第79条と同法施行規則第2条、場外離着陸許可の事務処理基準等、そして、空飛ぶクルマの機体、運行の安全基準に関しては航空法第11条、第63条、同法施行規制第153条等の規制改革が求められる。

事例紹介:デジタル田園健康特区

デジタルの力を活かし地方の課題を解決することを目指すのが「デジタル田園健康構想」 だ。その先導役として、「石川県加賀市」「長野県茅野市」「岡山県吉備中央町」 がスーパーシティ・デジタル田園健康特区に選定されている。

これら3市町では、「健康医療情報の連携」「健康・医療などをはじめとした分野における創業促進等」「予防医療やAI活用」「健康医療分野のタスクシフト」などが計画されている。具体的には以下のような取り組みが行われる予定だ。

●母子保健分野のデータ活用 

乳幼児健診結果の自治体健康管理システムへのデータ連携を行い、自治体職員や保健師のデータ入力業務の削減につなげる。また、データ連携を行うことで、自治体の「ハイリスク母子」の把握にも利用できる。

さらに、妊産婦側が食生活や家族関係を記録できるため、自治体は将来の疾病リスクを判定の上、予防医療サービスの提供も可能になるというメリットがある。
 

●在宅医療における看護師の役割の拡大 

地域の医療機関や診療所、訪問看護ステーションと連携し、一定の研修を受けた看護師が患者の居宅で医師の指示を待たずに医療行為を実施することを検討する。(長野県茅野市の計画)
 

●高齢者などへの移動支援サービス 

高齢者の免許返納情報とマイナンバー連携で高齢者の通院時等の運賃を割り引く。

関連記事|【群馬県 前橋市】交通手段とひもづけたマイナンバーカード活用で、誰もが安心して外出できる社会へ。
 

●AIやチャットを活用した遠隔服薬指導 

医師による診察後、処方箋やアルゴリズムAIが発行される。薬剤師は必要に応じ、医師に遠隔で指示を受けることができる。また、患者が測定したバイタル情報にもとづき、アルゴリズムAIが作動するため、それをもとに服薬指導することも可能になる。患者側も薬局などに赴くことなく、SNSを通じ、チャットで非同期コミュニケーションを取ることができる。

スーパーシティ構想で住みやすい地域作りに期待 

ご紹介した通り、スーパーシティ構想は国家戦略特区の選定、および計画が発表されている段階だ。現時点では全て実現しているわけではない。

しかし、今後の国の計画や特区での実績によっては、各地方自治体にも流れがやってくることが予想される。今後は国家戦略特区での動きを確認しつつ、自身の自治体ではどのような技術が活かせるか、そして先端技術では何の問題が改善できるのかを考えていきたい。

 

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