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【セミナーレポート】デジ田交付金シリーズ第一弾「スタートアップ企業と自治体における地域課題解決のカタチ」

全国で活用が広まっているデジ田交付金。制度の中ではスタートアップのサービス利用が加点対象になるとされています。しかし、スタートアップとの連携をどう始めるか、戸惑いを感じている自治体も多いかもしれません。

このセミナーでは、実際にスタートアップ企業との連携を進めている自治体、および企業担当者が登壇。デジタル田園都市国家構想実現会議事務局の小野氏も参加し、デジ田活用の近況を語ってくれました。

特別協力:内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局

概要

□タイトル:デジ田交付金シリーズ第一弾 企業×導入自治体トークセッション!
 スタートアップ企業と自治体における地域課題解決のカタチ
□実施日:2023年7月28日(金)
□参加対象:自治体職員
□開催形式:オンライン(Zoom)
□申込者数:105人
□プログラム:
第1部
 xID株式会社×岐阜県下呂市~SmartPOSTで実現する自治体の郵送・通知DX~
第2部
 株式会社グラファー×新潟県柏崎市~スタートアップのオンライン申請システムを使ってみての率直な所感~


SmartPOSTで実現する自治体の郵送・通知DX

第1部は岐阜県下呂市の事例。マイナンバーカードによる本人確認を使ったデジタル通知サービスを構築し、様々な業務の自動化を進めている同市。職員が「圧倒的な業務効率化につながる」と語るその仕組みと、スタートアップと連携するメリットを語ってもらった。

モデレーター

小野 康佑 氏
デジタル田園都市国家構想実現会議事務局 参事官補佐

プロフィール

新卒でNTT東日本に入社。新規事業開発室や戦略子会社(株式会社NTTe-Sports)の立ち上げに関わったのち、神奈川県横須賀市への在籍出向を経て、2022年7月より現職(出向)。


講師

加藤 俊介氏
xID株式会社 執行役員

プロフィール

静岡県庁職員として実務経験後、トーマツにて自治体向けコンサルティングに従事。自治体マネジメントに関わる分野が専門。現在はxID(クロスアイディ)の公共事業部長として、自治体向け戦略策定、新規事業開発を担当。公共政策学修士。


長尾 飛鳥氏
岐阜県下呂市 デジタル課 主査

プロフィール

新卒で下呂市役所に入庁し、マイナンバーカードの担当や窓口業務などを経て、令和4年度からDX部門を担当。現在は行政手続きのデジタル完結と業務自動化を推進し、先進的な取り組みとして処分通知などのデジタル化を実践。

協業を重ねる中で見えた自治体の課題
~xIDの事業紹介~

当社は、令和2年4月からマイナンバーカードに特化した事業を行っています。マイナンバーカードとひも付いたアプリを提供し、スマホだけでオンライン上の「身分証」「カギ」「ハンコ」の機能を様々なサービスに連携。例えば行政手続きの電子申請や、施設予約や子育てアプリなど、自治体の皆さまと一緒に事業を進めています。



自治体の皆さまと事業を進めていく中で、電子申請が普及していく一方、自治体から住民への通知という部分はまだ郵送が残っていて、コストや労力がかかっているという課題に気づきました。また、様々なサービスがオンラインで提供されていますが、住民がそれに気づいていないという面もあり、どのように伝えるか?が重要だと考えました。

これらを解決する方法として自治体と一緒に考えてきたのが、デジタル通知サービス「SmartPOST(スマートポスト)」です。これにより、住民への通知をデジタル化しようという取り組みを下呂市などと一緒に進めています。

上図はスマホ画面のイメージです。マイナンバーカードで本人確認を済ませたアプリでボタンを押していくと、本人だけが通知内容を見ることができます。

例えば特定健診のお知らせでは自治体から対象者にプッシュで通知をし、住民はオンラインで健診申請が可能です。また個人ごとに異なる料金を提示することができます。



また、当社のサービスはアカウントでの料金設定なので、どれだけ通知をしても料金が一定。これまで送ることができなかった通知や、リマインドなども送信できるようになります。開封確認機能も好評で、開封状況とその後の行動変容を追い、開封率と健診受診率の関係などが分析可能。こうした部分も含めて、今後も自治体と一緒にデジタル通知の機能を磨き上げていきたいと思っています。

目標は“デジタルで完結できる行政サービス”
~下呂市の事例紹介~

下呂市の長尾です。私からは当市におけるSmartPOSTの事例について紹介します。結論からいうと、通知のデジタル化は今から始めた方がいいと思います。圧倒的な業務効率化につながるからです。

当市でデジタル化した通知サービスは大きく以下のようなものです。

(1)就学援助決定通知書
(2)学校給食費納入計画
(3)子育て世帯向けの給付金
(4)乳幼児健診の案内
(5)子育て支援センターなどの案内
(6)特別支援教育就学奨励費の支給決定通知

ほか、健診の年間スケジュールや入園案内も通知しています。

機能の中でも特に便利なのが、個別配信です。SmartPOSTでは取り込みデータに変数を設定し、1人ひとり異なる情報を反映することができます。現在は、約3割の保護者に通知が可能。運用自体は、デジタル庁が公表している処分通知などのデジタル化にかかる基本的な考え方をもとに進めています。これによりデジタル完結の仕組みができましたが、職員の業務効率化も必要だと考え、業務の自動化にもトライしました。

電子申請ツールからCSVを出力し、申請された口座情報をRPAで支払いシステムへ自動登録して、確認作業も自動化。これにより職員の負担を軽減することができました。今後はアプリの普及策として、デジ田交付金を活用した地域通貨型の電子ポイントを実施します。一定の効果が見込まれますが、アプリの登録が目的になってはいけないので、子育て、教育、医療、生活基盤を中心に通知できるよう準備を進めていきます。

当市では、今後も様々な行政サービスがデジタルで完結できるまちを目指し、楽しみながら取り組みを進めていきたいと考えています。SmartPOSTは無償トライアルができるので、この機会にトライしてみてはいかがでしょうか。
 

トークセッション

小野:内閣官房の小野です。ここからはQ&A形式で進めたいと思います。まずは長尾さんに質問です。どんなきっかけでスタートアップのxIDと連携することになったのですか。

長尾:xIDのアプリは電子申請の本人確認ツールとしてすでに使っていたので、マイナンバーカードを活用したオンライン申請を検討したときにxIDに相談をしたのがきっかけです。ミーティングをする中で、スピード感のある仕事ができそうだと感じました。あとやはり最後は人で、xIDメンバーの皆さんの熱意に心を打たれ導入を決めました。

小野:良きパートナーと出会えたわけですね。少し先進的な要素があるとは思っていたのですが、そこに対する不安はなかったですか。

長尾:法令などの不安はあったので、デジタル庁が公表している考え方をみるなど色々調べました。xIDさんに相談しながら進めれたので、不安よりも楽しみな感覚がありました。

小野:ありがとうございます。そこを踏まえて契約や連携にあたり苦労した点はありましたか。

長尾:そこまで苦労と感じたことはないのですが、ソフトウェアを指定して、アプリは総務大臣認定の公的個人認証の提供事業者を、といった風に調達するサービスを仕様書に具体的に指定することが大事だと思います。

小野:ありがとうございます。続いて加藤さんは、下呂市との取り組みにおいて、もしくは他の自治体さんとの契約において苦労した点などはありますか。

加藤:契約開始期間が予算の影響を受けてしまうことや、SaaSを提供していくうえでは従量課金の契約がしづらいという点はあります。連携の部分では下呂市さんとはコミュニケーションツールでつながっているのでスピード感を持って密にやりとりできる。こうした点もプロジェクトの進捗に影響すると感じています。

小野:スタートアップだからこそ小気味よく動ける、という面もあるでしょうね。最後に今後の展望をお願いします。

長尾:対象業務を拡大してほかの自治体へも横展開できるようにしたり、新任職員の教育に取り込んだりしたいですね。また、空き家や高齢化、移動手段などの地域課題がデジタルで解決できるよう、下呂市を実証実験の場にしつつ課題解決に向けて進めたいと考えています。

加藤:デジタルに不慣れな人にも配慮して郵送と併用したサービスを提供していきます。また、マイナンバーカードの強みを活かしつつ、自治体で郵送DXに取り組む意義を考え、効果の高い取り組みを自治体様と一緒に考えながら進めていきます。

スタートアップのオンライン申請システムを使ってみての率直な所感

令和4年10月から始まった、新潟県柏崎市の“スマート申請”に関する取り組み。株式会社グラファーとの連携で現在は150を超える手続きがオンライン化され、今後も活用拡大に向けて歩みを進めている。ここまでの道のりと具体的な内容を両者が共有してくれた。

モデレーター

小野 康佑 氏


講師

池永 知史 氏
株式会社グラファー BusinessDevelopment マネージャー

プロフィール

建設コンサルタント会社で地方自治体における計画策定業務などの経験を経て現職。株式会社グラファーでは複数の自治体への行政デジタル化提案に関わり、2023年4月より部門責任者を担当。


外山 瞭平 氏
新潟県柏崎市 企画政策課 主事

プロフィール

柏崎市企画政策課で情報システムの調達や情報セキュリティ対策、BPR業務を担当。柏崎市DX計画の一環として、オンライン申請システムの導入・運用に携わった。さらなるオンライン申請の拡充を目指している。


行政手続きに要する時間とコストをなくす!
~グラファーの事業紹介~

当社は平成29年に創業し、現在は約160団体にサービスを利用いただいています。本日紹介するスマート申請は令和2年からサービスを開始したもので、およそ100自治体が導入済みです。我々が向き合っている課題は、行政手続きに費やされる膨大な時間とコスト。

下図の通り、これを金銭換算すると何兆円にものぼると考えています。こうしたコストをなくすことをコンセプトに、電子申請を含め様々な事業を展開しています。

当社では、大きく4つの分野に取り組んでいます。1つ目が情報発信です。オンライン申請では、そもそも自分がどんな手続きをしていいのかが分からないと住民に迷いが起きてしまいます。そういった部分を解消するため、必要な手続きをパーソナライズして案内するサービスを展開しています。

2つ目はオンラインの手続きで、イベントの申し込みをはじめ、証明書の発行や、事業者が入札参加資格の申請をしたいといった場面にも対応するシステムです。

3つ目は窓口予約。マイナンバーカードの交付などで待ち時間を少しでも減らすための予約システムで、様々な自治体で利用されています。

そして4つ目が、職員による受付後の後続業務を自動化・効率化するという部分です。こうした追加のサービスの開発も自治体と実証実験をしながら進めています。

このオンライン申請のシステムを柏崎市が活用中。この後はシステムの詳細について同市から紹介いただきたいと思います。
 

住民、職員、事業者の三方に満足を生む
~柏崎市の事業紹介~

当市では、DX計画を令和3年3月に策定。“市役所に行かない窓口”を実現するため、デジ田交付金を活用して株式会社グラファーのシステムを導入しました。令和4年10月に同社とキックオフをして、現在では151の手続きをオンライン化し、申請の件数は約6000件に達しています。

利用開始の時点では、申請件数の多い手続きを優先したのでオンライン化した手続き数も40程度だったのですが、その後は各課の担当者がオンライン化を広めるなどして、4倍近くまで増えています。

この申請システムでは、完了画面にアンケートが表示される機能があり、上図に記載している通り、市民からも好意的な反応が多く寄せられました。また、「こうなっていたら使いやすい」といった意見もあったので、そうしたものにも対応しながら改善を進めています。

実際にオンライン化した手続きの一例として、「要介護認定等情報の提供の申し出」というものがあります。これは事業所のケアマネがプランをつくるために、介護保険被保険者の要介護認定をしたときの情報を市に提供依頼するものですが、一連の流れについて根本的にやり方を変え、今まで紙ベースだった申請を全てオンライン化することで手間を省略。

事業者からも高い評価をいただいています。原課の担当者は「今後はオンライン申請に合わせた内部処理の効率化も進めたい」と話していました。こういった動きをもっと広めていきたいと考えています。

トークセッション

小野:外山さんにお聞きします。パートナーをグラファーに決めたのはどんな理由だったのでしょうか?

外山:オンライン申請の導入が決まり、色々な事業者に話を聞く中でグラファーと出会いました。自治体の導入実績が多く、他自治体でつくったものをコピーして使えるといった面でもメリットが大きいと感じました。また、直感的に操作できるデザインも魅力で、職員向けのサポートデスクがあることもうれしい点でした。

小野:ユーザーとの距離が近い感じがしますね。スタートアップとの契約という点で苦労はありましたか。

外山:当市ではSLAとして共通のものを定めているので、協議して合意するという作業がありました。また、オンライン決済機能を含んでいるので、指定納付受託者の手続きが必要だったのですが、基本的にグラファー経由で進められたので、非常にやりやすかったです。

小野:グラファー側はどうでしたか。

池永:SLAは気にされる自治体も多いと思います。スクラッチ開発とは考え方が違うのですが、そこを配慮いただけたので有り難かったです。今後、自治体で類似のケースに直面した場合は、先行事例を参考にされるといいかと思います。

小野:自治体がSLAを緩和する動きをすればシステム化の可能性も広がるかもしれませんね。それでは、今後の展望をお願いします。

外山:“市役所に行かない窓口”を実現するために、手続きのオンライン化を進めていきたい。グラファーには引き続き協力いただきたいですし、ユーザーから評価されているものの提案などもお願いできたらと考えています。

池永:我々としては、職員の声、市民の声を聞きながら、オンライン申請はもちろん、受付後の業務も効率化できるようサービスを進化させていきます。生成AIを活用したサービスにも取り組んでいるので、各自治体に最新のサービスをお届けしていきたいです。

お問い合わせ

ジチタイワークス セミナー運営事務局

TEL:092-716-1480
E-mail:seminar@jichitai.works
 

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