【セミナーレポート】「口座振替」で叶える収税業務改革 ~脱・納付書の実現へ~
令和4年3月、総務省は自治体に向けて、公金収納等事務に係る経費負担の検証とデジタル化推進を行い、効率化・合理化を図るよう要請しました。これを受け、各自治体でも対応を進めている段階にあると思います。
このセミナーでは、紙での収税業務を見直し、ITツールで効率化を進めている2自治体の担当者にご登壇いただき、ツールを提供するセイコーソリューションズの解説も交えペイジー口座振替受付サービスの導入メリットを共有してもらいました。
概要
◼タイトル:「口座振替」で叶える収税業務改革 ~脱・納付書の実現へ~
◼実施日:2023年7月26日(水)
◼参加対象:自治体職員
◼申込者数:78人
◼プログラム
第1部:ペイジー口座振替受付サービスについて
第2部:ペイジー口座振替受付サービスの導入について
第3部:利便性向上と業務負担軽減に向けて
ペイジー口座振替受付サービスについて
第1部では、全国で導入が広がっているペイジー口座振替受付サービスについて、具体的にどのような機能を持ち、どんな課題を解消してくれるのか、同サービスを提供しているセイコーソリューションズの担当者が、導入から運用までを通して解説する。
<講師>
松本 美波氏
セイコーソリューションズ株式会社
プロフィール
2019年にセイコーソリューションズへ入社。2020年から地方公共団体の担当となり、サービス開始当初から累計300以上の自治体へ端末およびサービスを導入している。
キャッシュカードと暗証番号で口座振替の受付が即座に完了。
いま、自治体では口座振替の受付業務について様々な困り事があるかと思います。例えば、口座振替の依頼書を使うにあたって「登録に手間がかかる」、「印鑑を持ち合わせていない」等その場で登録ができないといったことです。また、口座登録完了までに時間を要するという問題や、事務処理のコスト、書類紛失のリスクなども挙げられます。そもそも、利用者が書類に記入し手続きしてくれるのかという点は、機会損失にもつながってくるでしょう。
こうした困り事を解決するのが、当社の「CREPiCO」(以下、クレピコ)端末です。
クレピコ端末を利用してペイジーの口座振替受付サービスを利用される場合は、キャッシュカードと暗証番号だけで処理が完了します。口座情報は不要で、届出印を探す手間もありません。
受付時にはキャッシュカードを端末でスワイプし、5~15秒ほどで確認結果が出力されるようになっています。住民は窓口を訪問したその場で登録ができ、受け付け結果もすぐに確認できます。さらに、オプションサービスとして出力伝票をCSVデータ化することも可能です。これらの機能で、職員の負担軽減と住民の利便性向上に貢献します。
このペイジー口座振替受付の運用フローですが、全体像としては下図のようになっています。
まず自治体の窓口にクレピコ端末を設置し、住民がキャッシュカードを端末にスワイプします。読み取った情報は当社センターを通じて、金融機関に受付伝票として送信します。金融機関で口座の情報と暗証番号が一致するという確認が取れたら登録受付結果が返信され、端末からはお客さま控え・収納機関控えという伝票が出力されます。
なお、自治体の基幹システムでは現状の依頼書の内容などを登録しているかと思いますが、端末による処理でも事後処理の部分は同じような手続きが発生するので、自治体の基幹システムを改修したり、何かを導入したりする必要はありません。あくまでも受け付け業務を簡略化するというサービスです。
高いセキュリティと手厚い保証で自治体窓口での運用も安心。
クレピコの自治体における活用事例として、最も多いのが国民健康保険料の徴収です。税目の縛りなどはないので、市税や固定資産税、上下水道料の徴収など色々な徴収の場面で活用できます。
また、昨今はセキュリティの部分も注目されますが、クレピコは端末、通信、情報処理センターと当社で提供しているサービスについては最新のセキュリティ基準を担保しているので安心してお使いいただけます。具体的に例を挙げると、「耐タンパ性」というものがあります。これは、端末を特殊なネジでガードし、無理にこじ開けようとすると中のデータやプログラムが自動的に削除される仕組みで、データの抜き取りやプログラムの改修ができない仕様となっています。
また、通信方法はdocomoのLTE網を採用。LTEは携帯電話と同じ通信方法なので、「アクセスできるのでは」と聞かれることもありますが、端末とクレピコセンター間はクローズド接続で閉域での通信を行っているので、外部から接続できたり、当社の端末が違うセンターに接続したりすることはありません。
ほかにも、情報処理センターでは端末個体ごとに認証チェックを行うなどして、セキュリティレベルを上げています。
下図は、ペイジー口座振替受付端末の導入の流れです。導入にあたって事前の手続きが発生します。図内、赤文字表記の3点が重要です。
まずは収納機関番号の取得。日本マルチペイメントネットワーク推進協議会(JAMPA)の会員になり、収納機関番号を取得していただく必要があります。
2つ目は金融機関との契約という部分で、端末を使ったペイジーの口座振替受付サービスを始めることを対象の金融機関に連絡し、付随する契約をします。その中でシステム条件確認書の策定が必要になるのですが、ここで取り扱う税目とやりとりの方法の取り決めを行います。
3つ目は、一般財団法人流通システム開発センターに対し、決済事業者コードの取得をしていただく必要があります。当社の端末は、市場にクレジット決済端末として売り出しているものですが、自治体で利用するのは口座振替の機能なので、決済の電文とは違う電文を飛ばす必要があります。そのためのコード取得です。
これらの手続きが終わったら当社に申し込みいただき、端末は設定をした上で納品します。クレピコ端末には4年間の端末保証がついており、設置から4年間は自然故障の場合に限り、無償で端末交換します。オプションとして入れ替え機保守契約も用意し、高い安心を提供しています。気になる点などあれば随時お問い合わせください。
ペイジー口座振替受付サービスの導入について
第2部では、山形県高畠町の職員が登壇。人口2万2000人の同町が抱えていた徴収業務の課題と、ペイジー口座振替受付サービス導入のいきさつを共有した。
<講師>
加藤 祐美氏
高畠町役場 税務課 収納管理係長
プロフィール
2001年高畠町役場に入庁。国保介護課、社会教育課、福祉こども課を経験し、2020年より税務課収納管理係長に着任。現在4年目。
県内初導入というプレッシャーの中手探りで進めたペイジーの導入。
ペイジー口座振替受付サービスは全国的に多くの自治体で導入されていますが、山形県では当町が初の導入となりました。昨年度、県内の研修会で紹介したところ、当町に何件か問い合わせをいただき、現在山形県内でも導入準備を進めている自治体があると聞いています。
当町での導入のきっかけは、徴収業務関連の実務研修です。日本経営協会主催の収納対策の研修に職員が参加した際、収納率アップには口座振替が有効であり、口座振替率を上げることが重要。そのために窓口来庁者には口座振替の推進を徹底すること、といった助言があり、ペイジーによる口座振替受付サービスも紹介されました。我々も、口座振替の申請を増やすために申請方法をより簡単便利にする必要があるとは考えていました。WEB口座振替受付も検討しましたが、滞納者とのやりとりで口座振替を確実にしてもらうためには、目の前ですぐに手続きしてもらうことが必要だと常々感じていたので、この方法はそれができる点が魅力だと感じたのです。
とはいえ、県内に導入自治体がなかったため、どういうものでどのくらいの費用がかかるのか全く分からないところからスタートしました。しかし、すでに導入している自治体や事業者の話を聞く中で、口座振替の受付のみを紙から端末に移行できることや、端末で受けた申請をこれまで通り手入力するやり方であればシステム改修は必要ないこと、導入が補助金の対象となることなどが確認できました。
このようにして、令和3年8月から導入検討を開始しました。導入準備は令和3年12月から、運用開始は令和4年7月で、導入端末はクレピコです。当初は令和4年度予算での導入を検討していましたが新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金を利用することにしたため、急きょ12月補正で対応し、3月末には導入を完了しています。
以下は具体的な導入スケジュールです。
令和3年12月に日本マルチペイメントネットワーク運営機構に対して収納機関登録申請を行い、1月に登録を完了していますが、6カ月を経過しないと運用開始ができないことからサービス利用開始は令和4年の7月からとなっています。このスケジュールは、最短で進んだケースと考えていただいて良いかと思います。
この導入準備で何が大変だったかとよく聞かれますが、当町の場合は金融機関とのやりとりが一番大変でした。県内初ということで都度交渉が必要でしたし、覚書の締結にも時間を要しました。初期契約料は金融機関によって差があるということをセイコーソリューションズから聞いていたこともあり、かなり慎重に交渉した記憶があります。
キャンペーンによる利用促進で口座振替の申込数は1.7倍に。
このサービスを導入して得られた効果としては、上図のようなものがあります。
“課税状況を確認しながら窓口で手続きが可能”というのは特に固定資産税で多いケースです。個人名義だけでなく、共有名義など様々な名義で課税されていることがありますが、窓口で誰の名義のものをどの口座から振替するのか確認しながら申し込みいただけるメリットがあります。また、1つの税目で手続きに来られた方へ、ほかの税目についても口座振替を勧められるというのも利点の1つです。さらに、出先での口座振替手続きも可能なため、納税推進員が訪問先で口座振替を受け付けることもあります。
このようにメリットは多く、当町では税務課以外でも、保育料、学童保育利用料、上下水道料で口座振替利用をしています。
参考までに、当町ではクレピコ端末を6台導入しています。税務課内は3台で、1台が窓口、2台が推進員。あとは他課に3台。利用実績は下図の通りです。こちらには記載していないのですが、督促状の発送枚数が前年度よりも440枚くらい減少しており、納期内納付の一助になっているものと思われます。
なお、当町ではペイジー口座振替受付サービスの開始に合わせて、令和4年5月から8月まで口座振替推進キャンペーンを実施しました。期間中、新規お申し込みの方から抽選で100名に地域通貨をプレゼントするという内容で、実施期間中の新規申込者数は、過去3年間の同期間平均の約1.7倍に増加。大変良い結果だと思っています。
クレピコに限らず、こうしたITツールは導入費用やランニングコストを考えると、小さな自治体ほど負担は大きくなると思います。しかし導入してみて住民の利便性は確実に上がったと感じています。
導入したからにはより活発に利用したいと思うので、今後はほかの課でも利用を促進し端末の利用を増やしていきたいと考えています。
利便性向上と業務負担軽減に向けて
セミナーの最後は熊本県菊池市の事例。口座振替推進の低迷に悩みサービス導入を実践した職員が、その取り組み内容を振り返りつつ導入効果を語ってくれた。
<講師>
川島 健一氏
菊池市役所 債権管理課
プロフィール
1996年に菊池市役所入庁。防災、下水道、税務などの仕事を担当し、2022年から現職。コロナ関連の交付金を活用し2023年2月からペイジー口座振替受付サービスを導入、口座振替率の向上に取り組み中。
口座振替の移行が進まない中、現場で感じていた3つの課題。
ここからは、菊池市の川島からお話しします。当市では口座振替業務をサブ的な業務として、それぞれの担当課で行っています。その中で起こる諸問題を解決するため、令和4年にペイジー口座振替受付サービスを導入しました。以来、住民の利便性向上と職員の業務負担軽減に向けた取り組みを進めているところです。
導入については、3つの目的がありました。
1つ目は住民と職員の負担軽減です。従来の紙による口座振替依頼書の手続きでは、税目や印鑑の間違いをはじめ、不鮮明な押印のためスムーズな申し込みができない、業務が煩雑で口座振替完了までに時間がかかるなど、住民の手間や職員の負担がありました。そうした理由で口座振替推進がなかなか進まない状況でしたが、ペイジー口座振替受付サービスを導入する事により、スムーズな申し込みと業務の効率化が期待できるという点がありました。
2つ目が、感染症リスクの軽減です。当市では平成30年に市税等の納付方法に関する規則を定め、原則として口座振替での納付を推奨していますが、その利用率は50%に満たず、納付期限の月末には窓口が混雑する状況が続いていました。これを解消するためサービスを導入し、市役所や金融機関での三密を減らすというねらいです。
3つ目は、事務手数料の抑制です。金融機関から事務手数料の有料化や増額の提示があったため、より手数料が安い口座振替への切り替えを促す必要がありました。ちなみに、口座振替と比較して納付書は約3倍、コンビニ決済は約6倍の手数料がかかります。
これら3つの課題を同時に解消しようと考えました。
「来庁したついでに」の登録促進で職員の負担を軽減しつつ目標をクリア。
上図は導入スケジュールです。本来は令和5年の導入を検討していたのですが、金融機関の事務手数料が令和4年から高くなるという話があり、早急に対応する必要が生じました。そこで令和4年6月に補正予算をつけ、令和5年2月のサービス開始となっています。
表の最上段が外部への対応です。ペイジーを利用するため、8月に日本マルチペイメントネットワーク推進協議会に入会し、システムを利用するために流通決済事業者コードの取得を9月に行い、1月には市民への周知を実施して、2月のサービス開始となりました。
2段目は庁内の対応です。8月に、口座振替を利用している8課の職員を集めて説明会を行いました。その結果、全課がペイジーを利用することになったので、1月に操作説明会と要綱の改正を行っています。
3段目は、端末機器の導入に関する作業です。口座振替受付サービスが利用できる端末を提供している業者は複数あったのですが、無線通信機能と印刷機能が一体となった端末はクレピコのみだったため、指名審査会で説明した上で、随意契約の形で対応しました。10月に決定を行い、納品は1月でした。
そして最下段は、金融機関との対応です。高畠町の加藤さんと同様、一番大変だったのはこの作業です。6月から調整を始め、最終的に12月までかかりました。特に、ペイジーを導入していない金融機関がある場合、早めの対応が必要だと感じました。
こうした各方面との調整を経て、市税・公共料金について口座振替をすでに実施していた全13種類が利用できるようになりました。取扱金融機関も今まで利用していた全7金融機関で対応しています。
現在、本格導入して4カ月が経過していますが、一番の効果は、住民が市役所に来たついでに、簡単に口座振替の登録ができるようになったことだと思います。導入前は口座振替依頼書を配布して金融機関への提出をお願いしていましたが、手続きが放置されるケースも多く見られていました。当市の場合は国民健康保険への切り替え時に、なかなか口座振替の登録が進まなかったのですが、クレピコを活用すれば手続きの合間に口座振替の登録が完了するので、新規納税者の口座振替推進には今後も大きな効果が期待できると考えています。
クレピコを現場で実際に運用する中で、従来の紙よりも職員の負担が軽くなり、住民のスムーズな手続きにも貢献できるという手応えを感じています。上の表は、令和5年2月から6月までの登録件数の推移です。当市では端末を6台導入し、本庁で3台、支所で1台ずつ運用しています。月平均で約160件の登録があり、当初の目標である月100件を大きく上まわっている状況です。
今はまだ年度の途中なので今後は口座振替率にも注視し、効果検証をしていきたいと思っています。
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