気候変動などの影響で、自然災害の激甚化・頻発化、さらに広域化が進む現在、万が一の発災に備えた被災者支援の体制づくりは、どの自治体にとっても急務となっている。ただ、NPO(非営利組織)やNGO(非政府組織)、一般ボランティアなどの“民間の力”と、“行政の力”とがうまくかみ合わず、民間の力が被災地・被災者支援で十分に活用されないケースも少なくはないようだ。そうした現状と今後の課題、被災地におけるトレーラーハウス活用の可能性について、全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)事務局長の明城さんが、「東京トレーラーハウスショー2023」において講演を行った。
[提供]トレーラーハウスデベロップメント株式会社
ご登壇者
明城 徹也(みょうじょう てつや)さん
特定非営利活動法人(認定NPO法人)全国災害ボランティア支援団体ネットワーク
(JVOAD:ジェイボアード)事務局長
プロフィール
平成5年に建設会社に勤務し、8年からNGO業界に転職。タンザニアのコンゴ難民支援事業、 ルワンダ帰還民支援事業、パキスタン地震被災者支援事業など、数々の開発途上国支援と、難民・被災者支援に携わる。22年よりジャパン・プラットフォーム(JPF)に勤務、アフガニスタン・パキスタン支援プログラムや東日本大震災支援を経て、28年にJVOADを設立。事務局長に就任し、現在に至る。
東日本大震災で痛感した“連携”の重要性。
平成8年から10数年間、開発途上国における支援活動を続けてきた明城さん。帰国後、「全国災害ボランティア支援団体ネットワーク」設立を思い立ったきっかけは、東日本大震災発生時に被災地で感じた、“連携体制の拙さ”だったという。
「あれだけの大規模災害でしたから、多くのNPOやNGOが現地に駆けつけました。ところが、“自分たちはこういう団体で、こういったお手伝いができる”と申告しても、行政側がその団体を知らなかったばかりに、“うちのまちで受け入れるのはちょっと……”と、断られるケースがかなりあったのです」。また、どこの地域がどういった支援を必要としているかを総括的に把握し、采配する行政部署や団体がなかったことも、集まった物資やボランティアの力を効果的に届けられなかった要因1つだったという。
一部の地域では、自衛隊と役所とNPO法人とが連携し、市内10数カ所の避難所で炊き出しを行うことができた。「ただ、たまたま理解のある人がその地域にいて、ある程度の時間をかけたおかげで実現したことであり、連携関係を築く準備を平時から整えておくことが重要なのだと痛感しました」。
そうした経験を踏まえ、平成28年に発足したJVOADは、ボランティア団体同士や、民間と行政とが円滑に連携できるよう、多くの災害現場で“中間的な支援”に力を入れている。
行政とボランティア団体が抱える課題とは。
平成28年に起きた熊本地震では、NPOなど約300の専門ボランティア団体と、約12万人の一般ボランティアが現地で活動したという。明城さんをはじめ、JVOADのメンバーもすぐに現地入りし、県および市、県の社協、各NPO法人の連携調整を図ろうとしたが、「JVOADだけでは地元のことが分からないため、地元のNPOを中心に急きょ『火の国会議』という情報共有の場をつくりました」。組織同士の連携だけでなく、他県から駆けつけた人と地元の人との情報連携も重要というわけだ。
発災時、自治体は指定避難所の開設と住民の誘導、要配慮者のための対策、仮設住宅や物資の手配、廃棄物処理などを、制度にのっとって進めなければならない。その際、仮設住宅は建設や住宅関連課、廃棄物は環境課といった具合に、どうしても“縦割り”の動きになりがちだ。
一方、NPO法人にもそれぞれの得意分野があり、例えば生活空間を快適に改善するのが得意な団体や、要配慮者の支援にたけている団体、さらに炊き出しなどが得意の団体もあるという。「最近では、特定の避難所運営を一定期間だけNPOに委託する事例も出ており、子どもや障害者支援、避難所から仮設住宅への引っ越し支援などを行うNPOもあります」。
つまり、行政と民間ボランティアとでは“守備範囲”が違っているからこそ、“調整役”の動きが重要だと指摘する。「国がまとめた平成26年度版の『防災白書』には、“行政が全ての被災者を迅速に支援することは難しい、行政だけでは被災者支援はできない”と書かれています。被災地・被災者支援には、民間と行政、それぞれの力が必要だということなのです」。
特に、避難所運営に関しては、行政だけでは手が届かない部分が多数ある。「例えば熊本地震の発災時には、県内に855カ所もの避難所が開設され、指定避難所以外の場所も使われました。当然ながらそれぞれの避難所で、食事や物資の手配、寝床の整備やトイレの確保、ほかにも様々なスペースが必要になります。とても行政だけでは手がまわらないでしょう」。そうした実態の中で明城さんが注目しているのが、トレーラーハウス活用による被災地支援の可能性だという。
トレーラーハウス活用で被災者ニーズを解決する。
明城さん自身は、トレーラーハウス業界の在籍経験はもたない。しかし、前述のような災害支援活動を通じて、「避難生活や、損壊した自宅が再建される過程において、トレーラーハウスを活用することで課題が解決できるのではないかと考えるようになりました」。
仮設住宅として代用するだけではなく、支援活動に必要なスペースが確保でき、それによって、被災者はもちろん被災者を支える人たちの環境も改善されるだろう。「トレーラーハウスを支援者たちの活動拠点として活用することで、復興を支援する団体が少しでも長く活動できるようサポートすることにつながると思います」。
現在、そうしたコーディネートを担う災害支援組織が各地に発足しつつあるが、全国的に見ると、まだまだ不足しているのが実情だという。活動の担い手を育成し、どのような体制で支援すれば良いのかを、より多くの人たちで考えることが重要だと明城さんは強調する。
ちなみに、仮設住宅や支援者の活動拠点を確保するため、プレハブ建物を設置する方法もあるが、土地の確保に時間がかかって“緊急”のタイミングに間に合わなかったり、複数種のプレハブ建物が混在したりすることで、利用者同士の不公平感が強まるケースも多いという。「機密性の問題から、冬場なのにガスや石油を使った暖房器具の使用が禁止されることもあります。せっかく建物を提供しているのに、マイナスイメージがついてしまうと何にもなりません」。
トレーラーハウスでもプレハブでも、被災地復興がある程度まで進んだ段階で撤去しなければならない。その際、解体作業や資材・廃材運搬が必要なプレハブと、すぐに移動させられるトレーラーハウスとでは一長一短があるので、“それぞれの特徴を理解した上で、選択肢をもつことが重要”という。「良きにつけ悪しきにつけ、全ての支援活動は長期開発の方向性にまで影響を与えます。支援の計画立案・運営は、“その後の環境問題”まで踏まえて行うことが重要なのです」。
ほかにも、性別や年齢、障害の有無などによる差別を行わないこと、多様性やジェンダーにも配慮すること、支援によって、逆に被災地のリスクを高めないことなど、被災地・被災者支援において留意すべきことは数多くあると指摘する。「地域の災害対応力を強化するため何ができるのか、いつ発生するか分からない災害に対して、支援体制を持続することができるのか、ぜひ皆さんも一緒に考えてください」、「その一環として私は、トレーラーハウス活用を“災害支援の文化”にしたいと考えています」。
発災時ばかりでなく、平時も活用できる自由度の高さ。
大規模災害の発生時、トイレやシャワー、臨時診療室など、様々な被災地支援施設が必要になる。自治体としては、それらを一刻も早く整えたいところだが、比較的簡単に開設できるプレハブであっても“建築物”の形態ならば、建築確認申請の審査完了まで2週間~1カ月ほどの期間が必要だ。その点、トレーラーハウスを活用すれば、平時は住民向け公共施設などとして、発災時には移動型の防災施設として、“臨時部屋”が直ちに準備できる。
interview
齋藤 將太郎(さいとう しょうたろう)さん
トレーラーハウスデベロップメント株式会社
事業戦略部 事業推進課 課長
コメント
当社の車検付トレーラーハウスは、「日本建築行政会議(JCBA)」が規定する、“車両を利用した工作物”に該当するナンバープレートのついた自動車(被けん引自動車)です。設置条件さえ満たせば建築確認申請は不要で、設置や移動が自由にできるサステナブルな製品です。建物と異なり基礎工事が不要なので、設置に要する時間はわずか30分程度。平時はオフィスやカプセルホテル、グランピング施設、サウナ室など様々な用途で活用できて、万が一の発災時にはトイレ、臨時診療室、仮眠室、災害対策本部など、‟移動型防災施設”として機能します。平時も発災時も“公共施設”として活用することで、充実感と安心感のある生活環境を、住民に提供することが可能になります。
災害時支援施設として
●CAPSULE CUBE(カプセルキューブ)
部屋2つ、各部屋に2ベッド、合計4カプセルベッドを装備したトレーラーハウス。平時は、外国人技能実習生用宿舎や開発現場仮眠所などとして、災害時にはボランティア休憩所などとして活用が可能。冷暖房完備で、希望によりテレビや冷蔵庫も設置できる。カプセルベッドを8室搭載した8人用タイプも対応可能。
POINT
1.前後2部屋に分かれ、プライバシーを確保する
2.仮眠スペースや緊急避難所など災害支援に活躍
●MEDICAL CUBE(メディカルキューブ)
独自開発の陰圧装置(HEPAフィルター使用)を搭載し、空気洗浄と換気を同時に行えるトレーラーハウス。新型コロナウイルスの感染拡大時には、全国の医療施設や介護施設の駐車場などに設置された。空気の流れを一定方向に制御する設計で、ドアもスムーズに開閉できる半自動。ドアの開放を防ぎ室内の空調を維持できる。
POINT
1.空気清浄機能つき陰圧装置で、屋外へクリーンエアーを排出
2.気流の流れを一定方向にし、医療従事者の飛沫感染を防ぐ
●SHOWER CUBE(シャワーキューブ)
被災地はもちろん、屋外イベントや工事現場などにも、設置するだけで簡単に個室のシャワー室が実現するトレーラーハウス。設置後、電気・給排水・プロパンガスと接続するだけで、すぐに利用が可能。通常の個室のほか、バリアフリー設計で車いすのまま、介助者も一緒に入れる介助用シャワールームもある。
POINT
1. 電気・給排水・プロパンガスと接続し、すぐに利用可
2. 個室以外に車いすでも利用できる介助用ルームを用意
●TOILET CUBE(トイレキューブ)
トイレルームとコンテナ専用車台を接合し、「快適トイレ」認証獲得のトイレスペースを整備したトレーラーハウス。上下水道ライフラインに接続するため、屋内トイレと同様、においが少なく清潔な、トイレ空間を提供可能。エアコンやミラー付洗面台、個室内コートフックを内装しているので、女性でも安心して利用できる。
POINT
1. 性別に配慮した清潔なトイレスペースを整備
2. エアコンつきで、常時快適なトイレ空間を実現
●低床TOILET CUBE 優先トイレ(低床トイレキューブ 優先トイレ)
上記の「TOILET CUBE」を低床化し、車イスでも入れる緩めのスロープが設置できるバリアフリー化した優先トイレ。トイレブース内に車イスの旋回スペースを確保するほか、ベビーシートやベビーチェア、おむつ箱などを備え、障害がある人や子ども連れの人でも安心して使用できる。
POINT
1.エアコン、ベビーシート・チェアなど充実した設備
2.低床型トレーラーハウスでバリアフリー環境を備える
そのほか、様々な分野で活躍するトレーラーハウスの詳細はコチラから
お問い合わせ
サービス提供元企業:トレーラーハウスデベロップメント株式会社
TEL:03-6206-2641
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