【セミナーレポート】「出産・子育て伴走型支援」情報発信・事例紹介セミナー
令和5年1月より、「出産・子育て応援交付金事業」がスタートしました。すべての妊婦・子育て家庭が安心して出産・子育てできるように、各自治体が様々な経済的支援と相談支援を実施しています。そこで今回は、伴走型支援における住民への情報伝達、発信、そしてコミュニケーションについて、有識者を招いて事例紹介を行います。
効果的、効率的で、切れ目のない伴走型支援に役立つ情報が満載。「子育て支援のための有効な情報発信について学びたい」、「妊娠期からの切れ目ない支援のためにできることを学びたい」、「できるだけコストと人件費をかけずに本事業を推進したい」などのニーズをお持ちの自治体職員の方々にお勧めのセミナーです。
概要
■タイトル:「出産・子育て伴走型支援」情報発信・事例紹介セミナー
■実施日:開催日時:2023年5月24日(水)
■参加対象:自治体職員
■参加者数:77人
■プログラム
Program1
子育て世帯への情報発信と広報
Program2
伴走型支援で活躍!子育てガイドブックの無償協働発行
Program3
出産・子育て応援交付金事業のデジタル化~郵送・電話を「SMS」に切り替えコスト&業務量削減~
Program4
すべての妊婦、子育て家庭の幸せ、笑顔のための伴走型相談支援
子育て世帯への情報発信と広報
<講師>
鳴門市子育て広報アドバイザー
PRDESIGN JAPAN株式会社代表取締役
佐久間 智之さん
プロフィール
埼玉県三芳町で税務・介護保険・広報担当を歴任。在職中に独学で広報やデザイン・写真・映像などを学び、全国広報コンクールで自治体広報日本一に導く。地方公務員アワード2019受賞。2020年に退職し、現在に至る。「Officeで簡単!公務員の一枚デザイン術」「公務員のための広報の教科書」「やさしくわかる! 公務員のためのSNS活用の教科書」など著書多数。
出産子育て施策に関する子育て世帯への情報発信、広報、アクションなどについて、子育て広報アドバイザーである佐久間さんの視点から、魅力的、効果的な情報発信手法を紹介する。
手段と手法の使い分けが、情報発信のキモ
LINEを使った情報発信を行っている自治体が多いと思いますが、それは「手段」にすぎません。情報を伝えたいのであれば、見せ方の「手法」が必要です。情報発信のキモとなるのは、「手段」と「手法」を使い分けることです。「手法」とは見せ方や、見出しの作り方・工夫であり、「手段」は通知書、広報、チラシ、SNSなどです。現代人は、あらゆる情報を大量に受け取っています。子育てに関する情報発信を、LINEや子育てアプリなどのツールを使いメール配信するだけでは、相手に気づいてもらえないかもしれませんし、正しい情報として伝わっていないかもしれません。「届けていない」のと同じです。
それを防ぐためには、伝えたい情報の要点をまとめ、「あなたへの情報」ということが一目で判るようにする工夫が必要です。「コミュニケーションデザイン」という考え方です。人が一瞬で判断できる文字数は、9〜13文字程度です。しかもコンマ3秒で、自分自身の関心があるかないかを判断できます。
例をあげると、Yahoo!のトップニュースの見出しは13文字前後。パっと見て、すぐ判らせなければいけません。人は、瞬時に見て興味があるものだけを読むのです。そのため、最初に目に止まらせることが重要になります。
がん検診の受診率を上げるために、見せ方を工夫した例で説明します。左側がこれまでの案内です。それを右側のように表現を変えました。
損失回避というナッジの活用例です。人は利を得るよりも、失う方が辛いと思う心理特が働きます。表現を変えただけで、受診率が約7ポイント上がったそうです。「児童手当を受けるには、現況届が必要です」と案内するより、「現状届けを提出しないと、児童手当は受けられません」とした方が、損をするような印象が強くなりませんか。これがナッジの考え方です。
また、広報やプロモーションにおいて、非常に大事な言葉があります。「AISAS(アイサス) &SIPS(シップス)」です。情報を届けるときに大事なのが「AISAS」。最初に「注目」されないと意味がありません。動き、意外性、ギャップから注目をされると、検索され、共有されます。もう一つの「SIPS」は、最初に「共感」されることです。子育て世代はまさに「SIPS」が当てはまり、どうやったら「注目」と「共感」が得られるかが、情報発信のポイントになります。
新しくできた公園の案内で検証してみましょう。左は、公園の名称や開園日、何ができるのかの説明が入っています。右は、「親子でバーベキューが楽しめる新公園開園」と、見出しを変えただけですが、親子でバーベキューが楽しめることが最初に分かります。見出しで、見る人がその情報に価値やメリットを感じます。このように「価値の見える化」が大事になってきます。
情報を伝えたいなら、最初に「結論」を届けることが重要です。相手に一番伝えたいことを、最初に目立つように書くと、住民側はその情報を「メリット(価値)がある」と判断して受け取ってくれるのです。
3つのメディアを活用する
メディアには、以下の3種類があります。
●オウンドメディア(広報誌、自庁のウェブサイト、防災無線、掲示板や回覧板など自庁で発置できるメディア)
●アーンドメディア(Twitter、YouTube、LINE、新聞などのマスメディアなどテレビなどの無償メディア)
●ペイドメディア(SNS広告、駅等への広告、PR TIMES、多言語書籍(カタポケ)、シネアドなど)
下記は、内務省が調査したソーシャルメディア系サービス・アプリ等の利用率です。
LINEの利用者と若年層は、ツイッターとインスタを活用していることが分かります。また動画もよく見られていますが、基本的に興味のあるものしか見ていません。
子育て世代は忙しいため、例えばショートムービーを作り、ここからYouTubeの本編に飛ばすなどの工夫が必要です。LINEの場合は、友達登録を増やすことが大事です。例えば、乳幼児健診や子育て支援センターが行う事業の時はチャンスです。LINE登録しておくと、随時自治体からの情報がLINEでプッシュ通知されることを伝えれば、待ち時間に多くの人が登録します。地味ですが、アナログな手法が友達登録を増やすのです。
広報誌をもっと活用する
広報について色々と紹介しました。SNSも大事ですが、一番強みがあるツールは、全戸配布される広報誌だと思います。広報誌の特集で、例えば「保健センターでベビーマッサージをやっています」と紹介記事を載せる。そのページにQRコードも載せ、センターの様子が分かる動画を見る事ができるようにするなど、今ある広報誌を少し工夫するだけで、「うちの町はこんなことをやっているんだ」と、共感してもらえます。
伴走型支援で活躍!子育てガイドブックの無償協働発行
<講師>
株式会社ジチタイアド 地方協創事業部
田口 拓弥
赤ちゃん訪問や面談時に活用される子育てガイドブックを、見やすく、分かりやすく、そして使いやすいものにしながら、予算削減、使用者満足度にもつながる方法について、ジチタイアドの田口が提案する。
出産・子育て応援交付金事業について
ジチタイアドは、「SMART RESOURCEサービス」、「SMART CREATIONサービス」という2つのサービスを通じて、自治体の資産を利活用し、財源を確保していただく取り組みを推進しています。実績は下記の通りです。
・自治体契約案件数は、1年間で約800件以上
・広告事業で累計約94.7億円の財源確保
・年間約3,700件の自治体広告の1次審査を社内で実施
出産・子育て応援交付金事業とは、妊娠時から出産・子育てまで、一貫した「伴走型相談支援」と「経済的支援」を実施する事業です。背景には、核家族化が進んだことによる孤立化を防ぐ必要性が高まったことがあります。自治体が子育てに伴走し、妊娠初期・後期、出産・産後などのタイミングで面談を実施。子育て世代に必要なサービスに繋げるものです。また、妊娠届け時に5万円相当、出産届時に5万円相当の交付金を用意する仕組みづくりと運用が求められています。
ただ、突然始まった事業のため、多くの自治体が抱えている問題点があります。それは、「伴走型相談支援」と「経済的支援」の実施を、妊婦・子育て家庭に向けて抜け・漏れが無いよう情報周知しなければならないということです。面談時に「経済的支援」は伝えていても、「伴走型相談支援」の情報をきちんと伝えられている自治体は多くないように感じます。
低コストで、出産・子育家庭をサポートするための冊子を協働発行
自治体側が、情報発信を確実にできていない背景には、自治体職員の工数の圧迫、多くの予算をかけられないなどの事情があります。情報をきちんと伝えられている自治体もあるでしょうが、チラシを配布し、「ただ伝えるだけ」になっていないでしょうか。その情報を伝えるために、ジチタイアドではお手伝いできることがあります。
できるだけ低コストで、妊婦・子育て家庭へ、「必要な情報をわかりやすく」伝えるために、我々の「子育てガイドブック」、「出産・子育て応援交付金事業ハンドブック」という2種類の冊子を使っていただければと思います。
導入メリットは、大きく2つあります。
①デザイン性の高い冊子を使うことで、「情報の質」を担保できる!
「ただ伝える」ではなく、「わかりやすく伝わる」情報発信が可能です。
②無料で(予算をかけずに)活用できる!
冊子へ広告を募集し、その広告費で制作や印刷にかかるコストを捻出。住民・自治体にとって、より便利な情報冊子を無料で、協働発行できる仕組みです。
人口5万人以上の自治体であれば、協働発行を受け付けています。5万人未満の場合も条件によっては可能かもしれませんので、一度ご相談ください。どうしても条件が合わず無料でできない場合も、有償で制作することもできます。その場合、
①国からの補助金交付を利用するため、実際には自治体の負担はありません。
②他社や地元の印刷会社のように一から制作するわけではないため、コストを押さえた制作が可能です。
2つの冊子の特徴を紹介します。まず、「子育てガイドブック」。自治体では、「今現在発行している冊子は、市の予算を使っている」、「手刷りで作成、白黒刷り」、「そもそも冊子が無く複数のチラシを配布している」などの状況で困っていると思います。
このような状況でしたら、制作を我々に任せていただければ、抱えている「負」を解消することが可能となります。そして、何よりも情報を受け取るお母さん方・お父さん方が、情報が見やすく分かりやすいという効果に繋がると考えています。子育てガイドブックを配布するタイミングについては、面談のタイミングで使うことを厚労省も推奨しています。基本仕様については、下記を参照してください。
次に、「出産・子育て応援交付金事業ハンドブック」。本年4月に提案を始めました。この冊子は自治体が、「子育て世帯に寄り添っている」という、事業本来の目的を伝えるための冊子です。
最初に説明した「伴走型相談支援」と「経済的支援」の2つを、1ページにまとめています。ほかにも交付金受給までの一連の流れなどをイラストで判りやすく説明しています。ここまでが全国共通の内容です。残りの部分は、自治体ごとに内容を自由に設定できます。例えば、すでに配布しているチラシを、より判りやすいデザインにしたり、自治体独自の支援や取り組みを紹介することも可能です。基本仕様については、下記を参照してください。
ジチタイアドの強みとは
ジチタイアドの強みは2つあります。
①全国の自治体と一緒に行政冊子を作っており、子育て情報冊子の協働発行実績数は320自治体(2023年3月末現在)
②行政冊子に載せる広告募集のノウハウを持っている
全国約1,900の自治体の中でも、市の単位の自治体と協働発行を重ねています。例えば、市内事業者を中心に、市民が利用可能な範囲内で事業者を募集します。自治体発行物に適した広告かを審査するノウハウをもっているため、安心して掲載できる体制です。
出産・子育て応援交付金事業のデジタル化について~郵送・電話を「SMS」に切り替えコスト&業務量削減~
<講師>
株式会社ジチタイワークス ビジネス開発部長
種子田 宗希
スマートフォン等の利用者の、99%以上に直接届く超強力な情報発信ツールであるSMS。SMSや電子アンケートを活用し、デジタル化&業務効率化に成功した自治体事例を弊社の種子田が紹介する。
子育て応援交付金業務デジタル化の概要
現在、住民や子育て中のお母さん方への連絡は、郵送や電話が中心という自治体が多いと思います。伴走型支援ご担当者へのアンケートから事業への取り組みについての悩みを尋ねたとろ、「マンパワー不足/人手不足」、「業務が煩雑化、多様化する」、「処理に時間がかかり、妊婦さんと電話が繋がりにくい」などが多く見られました。
これらの悩みを解決するアプローチの1つが「ジチタイSMS」で、複数自治体の子育て部門で導入が決まっています。スマートフォンで送れるメッセージを活用し、住民の利便性向上と職員負担の軽減を両立するサービスです。
例えば、アンケートや面談日のリマインド、申請が滞っている方への催促連絡など、様々な用途で使用できます。
SMSを、子育て交付金業務に取り入れた場合の流れです。
①妊婦・子育て家庭の「携帯電話番号」取得
② 職員自身でSMSを送信 ※メールを送るような感覚で簡単送信
A 電子アンケートフォームの送付(LGWAN環境で作成可能)
B 妊娠8カ月アンケート依頼/面談意向伺い
C 重要な連絡・催促(交付決定通知、口座情報送付のお願い)
D オンライン面談接続URLの送付
③子育て家庭への周知
HPへの掲載、チラシ配布など
「ジチタイSMS」の特徴について
スマホに登録していない番号からの電話は取らない、毎日はポストを確認しない…という方が増えています。自治体のアプリをインストールしない方もいます。出産のため里帰りする方も多いので、「必要な時に本人に連絡できない」、「情報が伝わらない」というのが、自治体の悩みでもあります。
それらを解決するための手段として、改めてSMSが注目されています。特にアプリを持っていない自治体の場合、電話や郵送だけよりも、連絡して折り返しが受信できるツールを持っておくだけで、業務の効率化に繋がるはずです。メールに添付したURLをクリックすることで、誰が、いつ確認したか、効果測定も可能です。「ジチタイSMS」の特徴は下記の3つです。
(1)圧倒的なカバー率。携帯電話番号さえわかれば、簡単配信
(2)郵送や電話等の連絡手段より安価。送信成功時のみ課金
(3)到達率99%以上。視認性/着眼率が高く、費用対効果大。効果測定も可能
「確実に届けやすい」ことに加え、以下の3つのメリットが期待できます。
(1)印刷物作成と発送、架電など、人的工数の削減
(2)印刷&郵送費などのコスト削減
(3)業務スピードの加速やペーパーレス化/DX推進など
他の情報伝達方法との比較は下記を参照してください。
子育て交付金における導入自治体事例
【導入事例】(大阪府貝塚市 健康推進課)
導入前は、市民への通知は郵送のみ。一斉発送の場合、対象者が多く、通知文の校正や印刷、封入などの準備に多くの時間がかかっていた…という背景があります。時間や経費の削減を考えてSMSを導入。「出産・子育て応援給付金」の交付決定通知、「出産・子育て応援給付金」の交付決定通知に利用しています。通知は全てSMSを使い、交付金の振り込み予定日などをお知らせします。
期限までに申請がなく、電話等での連絡も取れなかった方に対する「遡及対象者分の申請期限案内」にも、SMSにて通知で連絡。こちらは申請期限が迫っているため、未申請者に対して申請期限の案内を通知します。
●SMSの効果
郵送と比べると、市の作業工数は半分以下に。
・通知対象者の抽出や印刷物の作成などに1カ月以上の期間を必要としていたが、SMS導入後は3名ほどで、データの入力や確認を行うだけで作業が完了する。
・数日単位で情報発信ができる点については、驚きが大きかった。
・郵送と比較してSMS の方が安い。コスト面のメリットも実感。
●市民の反応
・SMSでの決定通知に難色を示す人はいなかった。
・SMSを使用して給付金の交付決定通知や、子育てに関する情報を送ることを、個別送付のチラシやホームページ、窓口配布チラシで周知していたため、混乱はなかった。
・自治体ホームページで携帯電話のキャリア別の発信番号を明示し、安心してメッセージを受け取ってもらえた。
●SMS導入後の展望
・「出産・子育て応援交付金」の交付決定通知をきっかけ に 、子育ての情報発信にも SMS を活用していきたい。
・乳児家庭全戸訪問事業を実施していたが、対象者と連絡が取りづらく良い連絡方法はないかと感じていた。今後はSMS を使って通知を行うなど、広く活用していきたい。
・現役世代の多くの人がスマートフォンを持っているので、SMS は見てもらえる可能性が非常に高い ツール と感じている。
子ども家庭庁に確認していますが、SMSの導入費用は、国の「出産・子育て応援交付金」に該当します。送信費用は初期導入費用がかかりますが、10/10の補助対象になります。
締め切りがあり、令和5年度の上期までに申請が必要です。この事業は数年続くものと思われますので、この機会にぜひ申請を検討してください。
すべての妊婦、子育て家庭の幸せ、笑顔のための伴走型相談支援
<講師>
神戸市教育委員会事務局 学校教育部
学校教育課 係長
水畑 明彦さん
プロフィール
1977年神戸市生まれ、2004年神戸市入庁。市役所、区役所、福祉事務所及び教育委員会事務局で、子育て支援や学校教育、住民総合窓口、神戸港ポートセールスなどを担当しながら、同市における子ども・子育て支援の新制度構築や、教育振興基本計画の策定に従事。社会福祉主事。自著に『自治体の子育て支援担当になったら読む本』『自治体職員が書いた子ども・子育て支援新制度の基礎がわかる本』など。
伴走型支援の制度の意義や、具体的な仕事のノウハウと心構えについて、「自治体の子育て支援担当になったら読む本」の著者でもある水畑さんが、事例を交えて解説する。切れ目のない支援の重要性や意味、実践についても紹介いただく。
伴走型相談支援の意義(子育て支援とは?)
国が、伴走型相談支援を立ち上げた背景について、厚労省がまとめた現状と課題は次の通りです。
●「妊娠初期」
妊婦全体の7%程度が、妊娠12週以降に届出を行っています。母子手帳の交付時に、全ての妊婦に直接面談しているかは、自治体により異なっています。
●「妊娠中・後期」
妊娠の届出以降、産後まで一度も行政機関や保健師などと接触の機会がない。ここが国の課題認識の部分です。
●「出産・産後」
心中以外の虐待死の検証結果として、0歳児の割合が48.5%と約半分。0日児の割合は18.4%で約2割になり、国はここも課題視しています。
こうした課題に基づき、「妊娠初期」の妊娠届出時に「出産応援ギフト」の手続きをセットにした面談を、加えて、妊娠中・後期に支援が必要と判断される場合にも面談調整をして、保健指導につなげていきましょうということです。
産後の課題についても、以下のようにまとめられています。
●「産後の育児期」
全体の7割以上の母親は、自身の出身地以外で子育てを行っています。また、6割の母親が「子供を預かってくれる人はいない」と回答。特に在宅で子育てしている家庭では、身体的・時間的・精神的の負担が大きいことが指摘されています。
この課題に対して、産後に「子育て応援ギフト」の手続きをセットにした面談を行い、地域子育て支援拠点やその他の支援サービス、育児教室などに繋いでいくことが推進されています。
●「学齢期以降」
就学後も含め、子育てしている保護者のうち7割以上の保護者が、子育てに対して何らかの負担や悩みを抱えている状況です。また、虐待相談対応について、学齢期以降の相談件数が全体の約5割を占めています。学齢期以降であっても、安心して過ごせる居場所の提供が大事だと、国は課題を認識しています。
伴走型相談支援で重視すべきポイント
事業の背景を考えると、何を大事にすべきかが見えてくると思います。重視すべきポイントを図にまとめました。
基本は、左側の土台となっている「ポピュレーションアプローチ」であり、すべての親子に対応し、全体を低リスクにシフトする手法です。妊娠届け出時の面談や乳児家庭全戸訪問などが該当します。
それに加えて、左上に乗っている「ハイリスクアプローチ」で、直接ハイリスク者に対応していきます。これに該当するのが、個別の指導・支援です。
そうした保健のアプローチから、右側にある地域子育て支援拠点や産後ケア、両親教室、保育サービスの一時預かりなど、さまざまな継続的な支援に繋ぎます。
薄ピンク色の部分が今回の「伴走型相談支援」の拡充部分になります。ただ、国の深刻な課題認識をおさえると、ただ単に、一般的な家庭がより子育てしやすくなったというだけでなく、赤で囲っている部分をより充実させ、「課題を抱える家庭が、これまで以上に信頼できる相談機関・支援事業に、継続的につながるようになったか」という部分が肝になります。
対応・支援実践におけるポイント
【相談支援の基本】
(1)さわやかで気持ちのよい対応、相手に寄り添った対応を
「相手に寄り添った対応」とは、我々の目線ではなく、受け手目線で考えるということです。子育て家庭、一人親家庭は特に忙しく、なかなか時間が取れない事情があります。そういう家庭を相手に、長々と説明しても、相手の心に届かないことにもなりかねません。
(2)支援拠点や支援事業を実地に知る
伴走型相談支援では、保健師が主に対応しながら、福祉事業などの保健以外の様々な取り組みに繋いでいます。それらの事業を実地に知って、本当に必要な家庭をしっかり繋いでいくことが、親子の居場所を作ることに繋がります。
【地域子育て支援拠点や保健指導・保育サービス等の子育て支援事業の充実に向けて】
(1)誰もが気軽に利用できるように利用においての心理的なハードルを下げる
伴走型相談支援でつなぐ拠点や支援事業は、利用に際しての心理的なハードルを下げることが大事です。本当に困っている人だけが使うサービスだというイメージでなく、誰もが気軽に利用できるという広報をする必要があります。
(2)多様な課題を抱える妊産婦・子育て家庭に対応した機関・事業を充実させる
例えば、保護者自身や子どもに障害のある場合、また、外国にルーツを持つ家庭の場合など、多数の親子が集まる場所にはなじめない親子がいます。そうした親子には、少人数のグループでの集いの場で、継続的な関わりが有効な場合があります。
今回の伴走型相談支援で、現状の課題に対応していくには、特にこうした家庭にはきめ細かな支援を強化し、繋いだ先をどう充実させるかが大事だと思います。
そうした支援に切れ目なく繋いでいくには、支援する職員が「支援の周りを見渡す」ことと「先を見通す」ことが大事です。
相談者が適切な支援を受けられるように、これらを職員がよく把握することが大切です。
子ども一人ひとりの幸せの先に、社会の持続的発展が待っているという気持ちで、それぞれの自治体でできることを、目の前の親子に対して進めていくことが重要です。