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公務員の残業は当たり前?勤務時間、平均残業時間、残業代の有無についても解説

各自治体の条例にもよるが 、多くの場合、地方公務員の勤務時間 は7時間45分(週38時間45分)と定められている。しかし、部署や担当業務によっては、残業が多く、定時で仕事が終わったことはほとんどないという人もいるのではないだろうか。

そこで今回は、働き方が適切なのかを確認するために、誰もが気になる地方公務員の勤務時間や平均残業時間について解説する。残業代が支払われないときの対処法についても触れていくので、ぜひ参考にしていただきたい。

地方公務員の勤務時間は何時間?

地方公務員の基本的な勤務時間帯についてご紹介する。

 

基本の勤務時間帯は

地方公務員法第24条5により、地方公務員の勤務時間は各自治体の条例で定める、とされているが、多くの自治体では、国家公務員と 同様の7時間45分(週38時間45分)を採用している。基本的な勤務時間帯について、いくつかの自治体の例を確認してみよう。

始業時間、終業時間は各自治体で異なるが、勤務時間には多い、少ないという違いはない。しかし、休憩時間については「45分」「1時間」と、自治体ごとに異なっている。

 

地方公務員の残業時間、データと実態

では、地方公務員の残業時間について見ていこう。サービス残業の実態、年次有給休暇についても確認していく。

地方公務員の残業時間は

総務省の「令和3年度地方公共団体の勤務条件等に関する調査」の結果によると、地方公務員の時間外勤務の時間数は以下の通りとなっている。

出典)総務省「地方公共団体における時間外勤務の上限規制および及び健康確保措置を実効的に運用するための取組の推進について」内『令和3年度地方公共団体の勤務条件等に関する調査結果』より抜粋
 

参考までに、令和3年国家公務員給与等実態調査の結果から、2020年の国家公務員の時間外勤務の時間も確認しておこう。

 

サービス残業の実態

2019年4月、人事院規則により国家公務員の時間外労働時間 について「原則として1カ月ヵ月に45時間かつ1年について360時間の範囲内」と定められた。地方公務員もこの規定に準ずるよう総務省から要請が出ている。 

しかし、「自分のところは残業が少なくなった実感がない」という人も多いのではないだろうか。上で紹介した「令和3年度地方公共団体の勤務条件等に関する調査」では、時間外勤務の時間数が月45時間を超える職員の状況についても調査している。その結果も見てみよう。
※2021年の状況


出典)総務省「地方公共団体における時間外勤務の上限規制および及び健康確保措置を実効的に運用するための取組の推進について」内『令和3年度地方公共団体の勤務条件等に関する調査結果』より抜粋
 

どの団体でも10%程度の職員が月45時間以上の残業をしていることが分かる。しかし、「令和3年度地方公共団体の勤務条件等に関する調査」では、団体ごとの月々の時間外勤務時間は10時間超程度という結果となっているため、正しく回答していない職員がいることも想定される。そこで、考えられるのが、調査等で回答されていない「サービス残業」の存在だ。

少し古いデータになるが、2014年度、2015年度に調査した「地方公務員の時間外勤務に関する実態調査」では「出退勤時間の把握方法」についても調べられている。その結果は以下の通りだ。

出典)総務省「地方公務員の時間外勤務に関する実態調査結果(平成26・27年度)
 

多くの団体が「職員からの申告」で出退勤時間を把握しているという。また、任命権者(上司)の現場確認頼りの団体もある。タイムカードやICカードなどの客観的記録で出退勤時間を把握している団体は非常に少ない。もちろん、残業時間をきちんと申告・確認している場合も多いだろうが、正しく申告していない、確認されていないという人も、ある程度存在するのではないだろうか。

ちなみに、地方公務員のサービス残業時間がどの程度なのか、という調査結果は存在しない。しかし、新聞・テレビ等のマスコミ報道で公務員の働き方やサービス残業の過酷さについての告発を目にすることも多いのではないだろうか。 

 

年次有給休暇取得率は 

国を挙げての「働き方改革」の影響もあり、地方公務員の時間外労働時間についても総務省から要請が行われている。では、年次有給休暇の取得率についてはどうだろうか。「令和元年度地方公共団体の勤務条件等に関する調査結果の概要」 を確認してみよう。

上記調査では取得率についての調査結果はなかったが、年次有給休暇の取得日数についての調査はされているので、そちらを紹介する。

地方公務員の年次有給休暇平均取得日数は11.7日/年となっている。(2019年の結果)しかし、取得日数が年5日未満の職員は全体の13.4%と、全ての人が満足できる日数の年次有給休暇を取得できているとは限らない。なお、年次有給休暇取得率が部署の評価の一部になる場合も多いため、年次有給休暇を「夏季休暇」「年末年始休暇」につなげ、長期休暇にすることを推奨する団体も多い。 

残業時間、民間との比較

ここまで、公務員の残業時間について解説してきたが、民間企業の残業時間はどうなっているかも把握しておこう。厚生労働省の「毎月勤労統計調査(令和5年3月分結果確報)」によると、一般労働者の月間の所定外労働時間は14.4時間となっている。また、時間外労働が多い上位5つの産業は以下の通りである。

出典)厚生労働省「毎月勤労統計調査(令和5年3月分結果確報)」第2表「月間実労働時間および及び出勤日数」より抜粋。
 

調査結果を見ると、地方公務員の残業時間とさほど変わらないように思われる。しかし、この調査の結果は、対象事業所からの回答により作成されている。 労働者本人からの回答ではないため、ある程度、事業者の意図が入っている可能性も高い。よって、民間企業の残業時間はそれほど長くない、という結果が全て正しいとは限らない。

残業が多い部署 

残業が多い部署についての調査は特にない。各団体によって部署の業務内容が若干異なることや勤務する職員数、住民数の違いがあるからだろう。ただ、公務員経験者からの話では以下のような部署は残業が多いとされているので、参考までに紹介する。

◆ 財政関連部署
◆人事関連部署
◆保育関連部署
◆防災関連部署
◆生活支援関連部署

なお部署によっては、「年度末」「4月頃」など、期間限定で残業が増えるところも多い。

残業が多い職種 

こちらも「残業が多い部署」同様、正式に調査されたものはない。ただし、公務員経験者によると、管理職になると部署に限らず忙しくなり残業が多くなる傾向があるという。また、以下のような職種は残業が多い職種として知られている。

◆警察
◆教職員
◆消防士


関連記事|メンタル不調は増えた?役職で違いは?公務員のメンタル不調を紐解く!

 

残業代の計算方法やもらえないときの対処法 

サービス残業は正式な時間外労働時間とカウントされていないため、残業代がもらえない可能性もある。しかし、地方公務員として働いており、残業代の未払いが発生した場合であっても、「労働基準法第36条(時間外・休日労働協定) 」や「労働基準法第37条(時間外、休日および及び深夜の割増賃金)」 にもと基づき、残業代を請求することができる。なお、以下の場合は注意が必要なので押さえておこう。

・公立学校の教育職員は例外
公立学校の教育職員(校長・教頭・教諭・講師・実習助手など)は、「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法第3条第2項 」により、時間外勤務手当および及び休日勤務手当は支給されない旨が定められている。

・区分によって相談先が変わる
民間企業の場合、残業代未払いの相談先は「労働基準監督署」であるが、地方公務員の場合は、区分によって相談先が異なるため注意しておきたい。

また、残業代の計算方法だが、地方自治体などの団体ごとに異なる。例えば、東京都の場合は以下のように算出する。 

残業時間(1時間単位)×1.25~1.5(勤務の区分により異なる)=超過勤務手当の金額

例として、東京都、大阪府、愛知県の時間外勤務手当の平均金額をご紹介する。

出典)総務省「令和3年 地方公務員給与の実態」内『別冊 第3 都道府県別、市区町村別給与等の一覧表(PDF)』より抜粋
 

「部署全体に残業時間を申告しづらい雰囲気がある」「上司が残業自体を把握していない」など、さまざまな事情はあるかもしれないが、地方公務員にも残業代を請求する権利はある。サービス残業をなくし、残業代は正しく受け取ろう。

地方公務員の残業削減は重要!残業代は忘れず受け取りを 

働き方改革の流れもあり、地方公務員の残業削減は課題となっている。統計上では残業時間も平均12.4時間となっており、それほど負担感のない時間になっているが、表に出ていない残業時間の存在も考えられる。サービス残業を発生させないよう気を付けておきたい。また、「公務員は残業代の請求ができない」という説もあるが、それは間違いである。残業が発生したら、残業代が正しく支払われているか必ず確認しよう。そして、もし未払い分があったら、しっかりと算出し、その分の金額を請求するようにしたい。
 

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