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【セミナーレポート】事例紹介で分かる! 介護認定審査会におけるデジタル化解説セミナー

社会の超高齢化が進む現在、高齢者福祉のニーズはさらに高まり、自治体にも迅速で細やかなサービスが求められています。それに応える選択肢の1つがDXです。

このセミナーでは、社会福祉の専門家、介護DXサービス提供事業者、そして介護DX導入自治体が登壇、それぞれの視点から介護認定審査会の課題と解決法を語ってもらいました。

概要

【タ イ ト ル】
  事例紹介で分かる! 介護認定審査会におけるデジタル化解説セミナー
  ~2025年、超高齢社会の到来が目前。介護認定にまつわる業務事務デジタル化推進のヒントを一緒に探してみませんか?~
【  実 施 日  】 2023年5月23日(火)
【参 加 対 象】 自治体職員
【申 込 者 数】 229人
【プログラム】
  第1部:要介護認定業務効率化の課題と展望
  第2部:介護認定審査会におけるデジタル化事例紹介
  第3部:moreNOTEで実現!始めよう!デジタル介護認定審査会


要介護認定業務効率化の課題と展望

第1部では、福祉・介護分野のICT化・情報化について社会福祉の立場から研究を続けてきた生田氏が登壇。自身の研究結果と、国、介護福祉の現場の声を総括し、介護認定業務の現状と課題、それを乗り越えるための手法などについて知見を共有した。

<講師>

生田 正幸 氏
日本福祉介護情報学会 代表理事
関西学院大学大学院人間福祉研究科 非常勤講師(前 教授)

プロフィール

1953年、滋賀県大津市生まれ。龍谷大学教授、立命館大学教授を経て、関西学院大学人間福祉学部および大学院人間福祉研究科教授。定年退職後、同研究科非常勤講師。厚生労働省「介護保険システム等標準化検討会」等座長、2022年度「要介護認定事務の効率化に向けたICTの活用に関する調査研究事業」委員長。

要介護認定業務の現状と今後
~超高齢化を通して見えるもの~

私は社会福祉の研究者として福祉・介護分野のICT化・情報化を専門に研究を続けてきました。高齢者福祉や福祉政策も研究対象としているので、その経験も活かしつつお話ししたいと思います。

まずは要介護認定業務の現状です。令和3年までの20年間で、認定者数は約3.1倍になったと報告されています。中でも軽度の認定者数の増加が顕著であり、さらに近年は増加のペースが拡大傾向にあります。

また、申請から認定までの日数について、法律では“30日以内”とされていますが、実情は全国平均で36.2日となっており、30日を超えた状態が続いています。こうした現実に加えて、保険者の立場で見ると、認定調査員や認定審査会委員の確保、認定審査会の開催と運営、それら全体に対する事務負担の重さが問題となっています。

さらに、要介護認定業務は今後どうなっていくのか。今後の人口推移をもとに確認してみましょう。令和5年4月に国立社会保障・人口問題研究所が発表した将来推計人口によると、約20年先の2045年には総人口が現在より15%程度減少するとされています。その一方で65歳以上は増加し、特に85歳以上の増加が激しくなります。我々は、現在、急増していく85歳以上人口の壁に直面しているわけです。

また、認知症の年齢階級別有病率を見てみると、年齢に比例して出現率が高くなっていき、85歳以上では40%を超えます。推計では、2040年の認知症人口が800万人とも953万人ともいわれていて、65歳以上の4分の1が認知症という事態になる可能性があります。

要介護・要支援の認定率は、現状において、65歳以上人口の18.3%、85歳以上では57.8%に達しています。今後の人口動向などを考えると、地域による違いはあるにしても、要介護認定に対するニーズの増大傾向が続き、保険者の業務負担がさらに拡大していくことは避けられないでしょう。こうしたことを念頭に、各保険者における今後の要介護認定のあり方を構想していく必要があります。

課題への対応と今後の展望

では、これらの課題に対してどのような対応が行われているのでしょうか。

まず国の対応ですが、平成30年4月以降、介護認定審査会の簡素化を可能にしました。これによって審査会の負担を減らそうということなのですが、令和2年時点で対応している保険者は3~4割強にとどまっており、まだ簡素化の余地はあるようです。

もう1つは認定の有効期間の延長で、原則12カ月とするとともに上限を24カ月に延長する取り組みも行われています。

要介護認定の遅れは利用者・事業者双方に影響を与えるので、各保険者が認定を迅速かつ適正に実施するために必要な方策について昨年の社会保障審議会で議論が行われ、ICTやAIの活用が重要だと提起されました。コロナ禍に直面するなかで、認定審査会を対面でなくICTを活用して行って差し支えないという国の対応があったのですが、これを今後も続けることが望ましいとされた訳です。

つまり要介護認定については、審査の簡素化・効率化に向けた取り組みが大きな柱となっており、その核がICT活用で、令和5年の介護保険法改正に向け推進されていくことになると推測されます。

ICTで効率化が期待できる介護認定業務
~調査で示された5つのポイント~

では、ICTの活用によって要介護認定はどんな効果を得られるのでしょうか。令和3年に、老健事業の補助を得てNTTデータ経営研究所が行った調査があるので、その結果を参考に、5つの可能性を整理してみました。

以下のような内容です。

これらを吟味してみると、②~④は超えるべきハードルとして、使用者のICTスキルやデータフォーマットの統一、セキュリティなどに関する課題があり、メリットとデメリットが拮抗するなど、効率化への効果が十分ではないように思われます。従って、①の「タブレット端末の活用」と、⑤の「介護認定審査会のオンライン・ペーパーレス化」が、当面の対応策として現実的と考えられ、今後の展開が注目されます。

オンライン審査会について、コロナ禍の影響を強く受けていた時期に実施した調査があります。全国の保険者に、オンライン審査会に対する意向をたずねたところ、「現在検討中」という回答が15.3%だったのに対し「実施予定はない」が49.4%で、積極的とは言い難い状況でした。また、オンライン審査会を導入している保険者に、導入時に生じた課題について聞くと、「審査会委員への対応」という回答が7割を超えました。他は、「運営方法や手順の明確化」「機器や設備の選定・手配などに苦労があった」との回答でした。

審査会のオンライン化を進める上で、審査会委員への対応は難しい部分でしょう。これについては、日頃から信頼関係を醸成しておくことが重要で、「事務局の言うことだからやってみよう」と思ってもらえるような関係構築が望ましいと思います。

もう1つは、慣れてもらうことです。ICTの活用に慣れて「これは便利だ」と認識されると後は比較的スムーズに進みますし、そうした人が増えるとさらに広がります。例えば、認定審査会を対面実施する際にパソコンやタブレットを置いて、それを使いながら徐々に慣れてもらうようにすれば、「今後はオンラインも」といったようにシフトしていく可能性も高まると思われます。

今後、介護サービス全体のICT化は進み、全国医療情報プラットフォームの開発も進行してDXが本格化するでしょう。そうした動きが本年度から始まろうとしています。この介護DXの観点から、要介護認定業務におけるICTの活用も期待度が高まると考えられるので、自治体でもどのように取り組んでいくか、改めて考えるべき時期が来ているのではないかと思います。

介護認定審査会におけるデジタル化事例紹介

このパートでは、介護認定審査会におけるデジタル化の事例を紹介。富士ソフトのソリューション「moreNOTE」を活用して認定審査会の業務をペーパーレス化した取り組みを、3つの自治体の担当者に伝えてもらった。それぞれの挑戦から、課題解決後に得られたものが見えてくる。

<講師>
・茨城県常総市 幸せ長寿課 認定係 主事 松田 健 氏
・山梨県南アルプス市 介護福祉課 主幹 若尾 貴洋 氏
・埼玉県鶴ヶ島市 介護保険課 主査 中嶋 英行 氏

CASE STUDY1:茨城県常総市の事例

当市の審査会では、1回の実施で1,000枚以上の資料を手作業でマスキングし、印刷・製本をした後に、抜けがないかの確認作業を経て、市内にいる委員に個別配送する、という作業を複数の職員が丸1日かけて行っていました。また、審査会終了後には、約4時間かけてシュレッダー処理する作業も控えていました。

これらの作業に対して、資源である紙をムダにしないこと、同時に作業の簡略化を進める取り組みを実施することを決め、方法を模索していました。そうした中、平成27年9月の関東東北豪雨で当市も甚大な被害を受け、紙で保存していた資料にも大きなダメージがありました。その影響で庁内のペーパーレス化の動きが加速し、翌年には予算が承認され、当課が庁内最初のペーパーレス化に着手することとなりました。

導入に際してプロポーザルを行い、各製品を採点した結果、最も点数が高かったのがmoreNOTEでした。使いやすく資料も見やすい。資料を上げるのも短時間ででき、導入後は課題とされていた作業がほぼゼロ化。委員からも「使いやすく資料も見やすい」「ペンでの書き込みもやりやすい」と好評です。紙が大きく減る効果もあり、現在の審査会で使用している100枚程の紙はシュレッダーにかけることがないものばかりなので、紙資源をムダにすることも無くなりました。

現時点では認定審査会をメインに利用していますが、それだけでなく、もっと大勢で資料を共有したり、複数の部署が連携して作業を行う場合に資料共有したりする際にも便利だと思うので、今後はそうした活用もしていけたらと思っています。

CASE STUDY2:山梨県南アルプス市の事例

当市では、審査会に係る業務で職員の時間外勤務を慢性化させているというのが一番の課題でした。
資料の印刷に膨大な時間がかかり、機器も占有してしまうのです。DXが注目され始めた頃、「うちの市も課題があるので何か解決する方法はないか」と検討し始めました。

審査会へのIT導入を決め、予算化した段階で先生方に話をしたところ幸い大きな反対はなく、「試行錯誤をしながら進めましょう」という合意の上で比較的スムーズに展開できました。事務局側としては、合議体ごとに審査会の資料を共有できるという点と、審査会全体で共有したものなどを設定で区別して閲覧できる機能が非常に使いやすいと感じています。また、先生たちもチェックした箇所にメモを入れたり、マーカーで線をつけたりと積極的に活用しています。ディスプレイでも紙と同じイメージで使えるのが喜ばれているようです。

目に見える効果は、紙代です。通常の審査会では、1回当たり150ページくらいの資料を7人分つくり、それが年間90回。単純計算で94,500枚くらいの紙代が節約でき、送料もなくなります。一番の効果は、職員の時間外勤務が解消されたという部分。人件費と、職員の働き方改革ができたのは大きいと感じています。

自治体は、経費ではなく職員の労力でカバーする考え方が根強い面がありますが、お金をかけてでも労力を減らし、違う業務に時間を振り分けられるのであればそちらにシフトする、という時代に来ていることを感じます。当市としては費用に見合ったリターンが得られていると考えているので、皆さんもぜひ紙から卒業した世界に足を踏み入れていただければと思っています。

CASE STUDY3:埼玉県鶴ヶ島市の事例

従来、審査会資料の印刷には1時間以上を要し、資料の配布や審査会の会場設営、終了後のシュレッダー処理などを合計すると、1回の審査会に3時間ほど費やしていたというのが課題でした。

令和2年度当初に、介護認定審査会の電子化を目指し、サイボウズのkintoneでシステムを内製化するという方針が決まっていました。このシステムの資料管理部分をどうするか検討する中、moreNOTEをデモで操作してみると、画面構成がシンプルで分かりやすかった。操作性もムダがなく、書き心地もなめらか。さらに、URL発行によるアプリ起動リンクという機能がkintoneと相性が良いという点が決め手になりました。審査会の委員にシステム説明を行った際にも好評で、慣れた方なら電子書籍を読む感覚で使え、かなり直感的操作ができるUIだと感じています。

moreNOTEの導入で、前述の3時間の作業は不要になり、審査会自体もZoomで行えるようになったので、委員も移動時間などが必要なくなりました。紙の紛失リスクもないので持ち歩ける上、どこでも見られるので、かなり作業がしやすくなったと前向きな意見を頂いています。介護認定審査会のパッケージシステムとなると非常に高額なので、当市が挑戦したように様々なツールを組み合わせた内製で電子化を進めるのも1つの方法かと思います。

moreNOTEで実現!始めよう!デジタル介護認定審査会

セミナーの最後は、介護認定審査会のDXサービスを提供する企業の担当者が登壇。自治体での利用が急拡大する“moreNOTE”とは何か、そして現場で何が変わるのか。その機能と活用事例を通して介護認定審査会の業務改善を提案する。

<講師>

永瀬 佳代子 氏
富士ソフト株式会社 プロダクト事業本部moreNOTE事業部 事業部長

プロフィール

2004年富士ソフト入社後、受託開発や自社プロダクト製品の企画、プロモーション業務を経て、2018年度よりmoreNOTE事業部責任者を務める。

審査会のペーパーレス化が業務負担の軽減に直結する

ここからは、どのようにペーパーレス化を進めるのかという具体的なイメージを、当社の製品・moreNOTEの事例をもとに紹介したいと思います。
moreNOTEは、資料をサーバーに一元管理して、様々な端末でセキュアに閲覧できるサービスです。令和5年5月現在、累計4,800社に導入いただき、最近は自治体でも多く採用されています。自治体での活用シーンとして、最も多いのが議会です。その次が庁内の幹部会議ですが、介護認定審査会への導入が昨年当たりから急激に増えています。

介護認定審査会をmoreNOTEでペーパーレス化すると得られる効果は、上記の通りです。また、第2部ではセキュリティの話もありましたが、紙の場合不可避な置き忘れ、紛失などのリスクがなくなるという効果もあります。

では、具体的に運用がどう変わるのか。簡単にまとめると、導入前に発生していた紙の印刷、封入や郵送、回収して破棄するといった部分がなくなります。ある自治体の導入前後の数値などをもとに試算したところ、年間約26日かかっていた作業が約2日に短縮されています。また、印刷に関しても年間4万2,000枚印刷していた資料が不要に。こうした運用の変化が期待できます。

現場からの要望をもとにつくられた審査会特化型のソリューション

このように、ペーパーレス化するだけで、さほどデメリットもなく業務効率化が図れるために介護認定審査会で採用いただくケースが増加中です。

我々も、さらに使いやすくするため、どんな機能を付ければもっと効率化できるのかと考え、お客さまへのヒアリングを重ね、令和5年4月には介護認定審査会の業務に特化した“介護認定審査会デジタルパック”も開発しました。事務局の皆さんがより簡単に使えたり、手間が削減できたり、審査員の皆さんが便利に見やすくなったりするような新機能を追加しています。

まず、介護認定審査会デジタルパックにログインするとカレンダーが出てきて、審査会の日程をタッチすると審査会資料が表示され、これらの資料を確認して事前判定の結果を入力すると、事前の準備が完了になります。
具体的な機能の紹介ですが、「カレンダー機能」は審査会の日程などが分かりやすく表示されるもので、ユーザーに好評です。「手書きメモ機能」は、紙に書いていたイメージの通りスムーズに書き込みができ、キーボードで文字を打つことも可能。「マーカー機能」を使えばアンダーラインを引いたりすることもできます。

こうした新機能の中でも大きいのが「事前判定入力機能」です。事前審査をした結果は、会議の当日に集計して見ることができます。例えばこの結果が審査員全員一致しているのであれば、会議では簡単な確認だけで済ませ、それ以外の異なっている部分をしっかり話し合う、といった運用で会議の時間配分をしやすくします。この機能も、介護認定審査会の皆さんにヒアリングした内容を活かして追加したものです。

また、こちらも審査員の方からの意見だったのですが、紙のように並べて見るときに、画面上だと例えばAさんの1次判定資料とBさんの意見書を間違って並べてしまうことがあるので何とかしてほしい、ということだったので、必ずAさんの1次判定資料、Aさんの主治医意見書と並べて見られる機能をつけています。

以上、簡単に製品紹介をしました。ほかにも、審査会の資料を分割して登録できる機能や、介護認定審査会の運用に特化した新機能も追加されています。それでもやはり、「導入しても使いこなせるか不安だ」とか、「ハードルが高い」、「フォローが心配」といった悩みもあるかと思います。そうした悩み・不安に対しては、操作説明会なども実施しており、導入後も直接相談できるコールセンターを用意しているので、ご安心いただければと思います。

ほかにも、今回紹介したペーパーレスだけでなく、様々なお悩みをお寄せいただければ、今後の製品開発に活かしていくので、ぜひご相談ください。

お問い合わせ

ジチタイワークス セミナー運営事務局

TEL:092-716-1480
E-mail:seminar@jichitai.works

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