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「水道施設台帳システム」の直営運用によるDX推進について

「読者のコトバ」は、自治体職員の様々な「言葉」を集めるコーナーです。

この「コト場」は、自治体職員が日々の業務や活動している「コト」を発表・共有できる「場」です。読者投稿の中から、編集室が選出したものを随時公開していきます。全国の自治体の皆さんにぜひ共有したい!伝えたい!経験・活動などがあれば、ぜひご投稿ください。

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● 投稿者(自治体職員)プロフィール

テーマジャンル : DX推進/インフラ整備・管理
ペンネーム : まーらーさん(30代)
所属部門 : 水道局施設整備課

 

“暗黙知から形式知、集合知”へ。ナレッジマネジメントの観点で技術継承や人材育成にも活用。

水道施設台帳は、平成30年の水道法の改訂による水道法第22条の3で、作成・保存が義務化されました。そこで、当局ではExcelのVBAを用いて当局の水道施設全ての既設機器の点検記録、写真データ、故障履歴、型式、更新履歴等の情報をデータベース化した「水道施設台帳システム」を直営で開発。令和2年度からデータベースの管理・記録・更新を行っています。

電子化することで情報検索等が容易となり、修繕・更新時の発注事務負担が軽減され、業務効率化が実現しました。さらに、ナレッジマネジメントの観点から、蓄積された情報を形式知、集合知とすることで、技術継承・人材育成にも活用しています。

重要なことは、検索機能だけではなくデータベースの情報蓄積、更新を含めて“誰でも扱えるシステム”にすることです。そうしなければ、使われないシステムとして再レガシー化を招きます。

もし、これが外部への発注であれば(今回は直営での開発・運用なので、外注費用はゼロです)、導入費用だけでなく、システムサポートなどの維持管理費もドブに捨てているのと同じです。

 

汎用性のあるExcelで、必要な情報を容易に検索可能。業務効率化と異動者の操作性を考えたシステム。

今回の水道施設台帳システムは、汎用性があるExcelを活用し、設備更新時や点検記録、図面および写真データ等の水道施設情報を容易に検索でき、写真データによる型式の確認が事務所でできるシステムです。そのため、ポンプ等の電気・機械設備修繕時の現地での型式確認が不要となり、発注事務負担が軽減されます。

また、操作が容易なため、水道施設に関する検索や修繕・更新後のデータベース更新が簡単に可能。さらに、更新計画の策定と修繕・更新、維持管理とマネジメントサイクルを回すことで、施設の現況を反映することができ、異動者等への水道施設に対する理解の促進が期待できます。

なぜ、このような取り組みが必要になるのか……それは水道事業に携わる職員が1980年をピークに今や約40%減少しているためです。加えて、1975年と1998年が水道施設整備のピークにあたりますが、これらが軒並み老朽化して修繕や予防保全のための点検が必須となっています。これら多くの課題と対峙するには、業務効率化が不可欠だと考えています。

一人ひとりが日々コツコツ積み重ねた取り組みが、「第6回インフラメンテナンス大賞」にて厚生労働大臣賞を受賞!

 

この取り組みは、令和4年度に実施された「第6回インフラメンテナンス大賞」にて評価され厚生労働大臣賞を受賞しました。

平成28年度から始まったこのアワードは、日本国内のインフラのメンテナンスに係る優れた取り組みや、技術開発を表彰し、ベストプラクティスとして広く紹介するもの。これにより、我が国のインフラメンテナンスに関わる事業者、団体、研究者等の取り組みを促進し、メンテナンス産業の活性化を図るとともに、インフラメンテナンスの理念の普及を図ることを目的にしています。

この取り組みが評価されたポイントとしては、まず、外部委託せず、汎用ソフトであるExcelやVBAを用いて自前のシステムを整備し、台帳の電子化を図った着眼点。これによる優れた生産性・効率性のアップ、知識の共有化や更新計画の合理化が図れたこと。加えて、技術継承や人材育成等の資質向上につながり、異動者に対しても理解促進を図れることなどです。さらに、他自治体でも容易に応用できるであろう“外部効果”の面でも高く評価されました。

国土交通省、総務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、防衛省が所管する施設について、各部門における優れた取り組みや技術開発を行った方々に対して、各界の有識者による審査を経て、各大臣賞、特別賞、優秀賞が決定されます。 

この結果は、開発から運用に至るまで、通常業務のなかで当局職員一人ひとりが業務に対する責任感をもち、日々の小さな作業をコツコツ積み重ねてきたからこそ得られたのだと感じています。

 

今後は、システムに関する相談や問い合わせにも対応し、水道事業の発展にできるだけ寄与していきたい。

また、当システムは他の水道事業体のみならず、「職員が減少して困っている」「開発するにも費用がかかるため事業化できない」といった他自治体にとっても、大きなヒントや活力になるのではないでしょうか。

実は、インフラメンテナンス大賞での大臣賞受賞とは別件で、台帳システムを含めた当局での他事業について、総務省からアドバイザーのお話もいただいています(これは市の財政担当部局からの照会を回答したところ、このお話をいただきました)。

今後、希望があれば当システムの問合せ、システムの譲渡なども検討し、水道事業の発展にできるだけ寄与していきたいと考えています。

これからますます人口減少に伴って職員数が減り、財源も厳しくなるでしょう。そのような状況下にあっても“やらされている”ではなく、“楽しく仕事をする”ために、自分に何ができるのかを自問しながら業務に励みたいと思っています。

 

参考)国交省HPトピックスの掲載|【令和5年1月13日】斉藤大臣が「第6回インフラメンテナンス大賞」表彰式に出席
参考)インフラメンテナンス大賞HP|インフラメンテナンス大賞

 

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