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自治体DXの先行事例5選!デジタル化とDXの違いとは?

近年、デジタル化やDX化のための取り組みが増加している。自治体DXは、住民の生活をより良いものにするためには必要不可欠だ。労働環境の改善や、防災、買い物弱者の対策など、自治体に求められている課題は様々である。

そこで、自治体DXとは何か解説し、実際に行われている先行事例を5つ紹介する。

【目次】
• 自治体DXとは?
• 自治体DXの先行事例 

自治体DXとは?

DXは「デジタルトランスフォーメーション」の略で、「情報技術の浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という仮説である。自治体DXとは、蓄積されたデータや様々なデジタル技術を活用して業務の効率化や行政サービスの改善を行うことによって、住民により利便性の高い社会を提供する取り組みである。

これまでアナログで行っていた業務をデジタル化することでデータや情報を有効活用しやすくなる。自治体DXを推進することで、地域住民だけでなく、職員の負担も軽減できるのだ。

政府が目標として掲げている「デジタルの活用により、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会~誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化~」を実現するため、自治体DXを様々な地域が進めている。DX化と聞くと企業向けのイメージがあるかもしれないが、近年では自治体でも推進されている。
 

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デジタル化とDXの違いとは?

デジタル化=DXではなく、それぞれに違いがある。デジタル化とは、単に書類の電子化や業務改善のためにシステムを導入することを意味する。それに対してDXは、デジタル技術を活用して製品やサービス、業務フローそのものを変革し、新しい価値を生み出すことを意味している。

自治体DXの先行事例 

すでにDX化を推進している自治体では、どのように取り組んでいるのだろうか。ここからは自治体DXの先行事例を紹介する。


 

長野県伊那市|ドローンを活用し買い物弱者を支援するシステムの構築

中山間地域で少子高齢化が進む伊那市では、買い物弱者が増加していた。小売店の数が限られるほか、自動車免許を返納した高齢者が多く、買い物が困難であるためだ。また中山間地域のため、荷物配送にかかる費用や時間がかかることも理由に挙げられる。

これらの課題を解決するために、伊那市ではドローンを活用した買い物支援サービス「ゆうあいマーケット」を実施。利用者はテレビのリモコンを使って簡単に注文することができ、購入代金はケーブルテレビの利用料金に加算され引き落とされるキャッシュレス対応となっている。また月額1,000円のサブスクリプション制なので、何度でも利用しやすい仕組みだ。注文が入ったら、ドローンで近くの公民館に届けられ、集落支援員やボランティアが利用者宅まで手渡ししている。

デジタル技術の導入にプラスして、利用者の安否確認や見守りができる方法でもある。買い物弱者は高齢者に多いが、注文方法や料金の支払い方法を簡単で慣れ親しんだものにすることで、利用しやすいよう工夫を行っている。

参考|【総務省】地域社会のデジタル化に係る参考事例集(P50)

 

熊本県玉名市|3D都市モデルを活用して災害リスクを可視化 

近年自然災害が激甚化しているため、防災意識を向上させ、避難計画をあらかじめ決めておく等の備えを社会全体で行っていく必要がある。しかし、具体的なイメージが湧かず、災害に備えることが大切だと分かってはいるものの、何を行うべきか分からないという人は多い。また、高齢者、幼い子ども、障害者などにも分かりやすく的確に伝える必要がある。

そこで玉名市では、人流データ、施設データ、環境データなどの膨大なデータが詰め込まれた3D都市モデルを利用した。災害に関する様々な情報を3D都市モデルに重ね合わせ、災害リスクを三次元かつ時系列で可視化することで、多様な災害に対応した避難場所や経路を分かりやすく周知できる。誰でも無償で自由に使用できるので、避難計画を立てる際にも活用しやすい。

従来は高台や学校などの避難場所に行くことが前提の避難計画を立てていたが、3D都市モデルを使うことで、より安全で迅速な経路を導き出すことが可能となる。「木造を除く」や、「最上階が浸水しない」などパラメータを変えて様々なシミュレーション別の避難場所を割り出すこともできる。3Dでの表示を行うことで、具体的なイメージが可能となり、危機感を持ってより効果的な避難計画を立てられる様になった。

参考|【総務省】地域社会のデジタル化に係る参考事例集(P65)

 

山形県|オンライン会議システムを活用し、有識者を交えたセミナーを手軽に開催 

防災分野における男女共同参画の視点が重要視される中、山形県は、県の防災部局と男女共同参画部局の連携した取り組みとして「女性のためのオンライン防災カフェ」をZoomにて4回開催した。テーマは「女性の力を防災に活かすには」「“もしも”を“いつも”の暮らしに。防災every day講座」などで、女性防災士の講演と交流タイムを設けた。

コロナ禍を考慮し、オンラインを活用して女性が気楽に参加できるカフェ形式の防災事業だ。

オンライン開催にすることで、会場まで足を運ぶ手間が省け、全国から気軽に参加できる。実際に、宮城県や山口県からもパネリストとして参加があった。また申し込み方法として、チラシに二次元コードを貼ることで、興味を持った人がスムーズに申請受付できるように工夫している。

参考|【総務省】地域社会のデジタル化に係る参考事例集(P58)

 

和歌山県|青少年をネットトラブルから守る安全で安心な環境づくり 

近年、青少年のスマートフォン等の接続機器の所持率が高まり、インターネット利用の低年齢化が進んでいる。情報モラルが欠如した状態でSNSを利用することで、いじめや誘拐事件、自撮り被害や、詐欺被害に遭う可能性が高まる。また、インターネットの長時間利用により、睡眠不足や勉強時間の減少等、心身の健康や生活面に支障を来すネット依存傾向が広がっており、社会問題となっている。

和歌山県では、青少年が安心安全にインターネットを利用できるよう、小中高生・保護者・教員が対象の情報モラル講座や、インターネットフォーラムを開催。ほかにもSNS上の危険青少年を守るネットパトロール、ネットトラブル相談窓口の運営等の取り組みを行っている。講座の中では、専門知識のある地域の人と青少年が交流することで、地域全体で問題意識を高めていくねらいがある。

参考|【総務省】地域社会のデジタル化に係る参考事例集(P49)

 

岩手県矢巾町|スマホ等で気軽にこころの状態を確認、相談機関への案内を実現 

ストレス社会に加え、コロナ禍おいて精神的不調や不安感を感じる人が増加しているため、近年はメンタルヘルスにおけるセルフケアの重要性が高まっている。そこで矢巾町では、パソコンやスマホで気軽にこころやストレスの状態を確認できる「こころの体温計」システムを導入した。

自分の健康状態や人間関係、住環境などの4択式の質問13問に答えていくと、ストレス度や落ち込み度が水槽の中で泳ぐ金魚、猫などの絵になって表示される。具体的には、落ち込み度レベルが上がると水槽の水が濁り、ストレスレベルが上がると金魚のけがの表示が増えるといった仕組みだ。

このシステムには、本人モード、赤ちゃんママモード、アルコールチェックモードなどもあり、それぞれの状態によって使い分けることができる。例えば赤ちゃんママモードでは、体内のホルモンバランスの変化により、イライラしたり、憂鬱になったりすることがある産後の母親の心理状態を判定できる。さらに、いじめに気づくための機能も搭載している。

こころの疲れや不調には目安となるものがなく、気がついたときには悪化していることもある。日々こころの状態は変化するため、まずは自身の状態を可視化し、早めに気づくことが必要だ。また「こころの体温計」システムの各診断ページには相談機関の連絡先も掲載しており、相談窓口へスムーズに案内できるよう工夫がなされている。

参考|【総務省】地域社会のデジタル化に係る参考事例集(P44)

まとめ

本記事では、自治体DXとは何か解説し、先行事例を紹介した。自治体DXを推進することで、より利便性の高い社会にしていくことが可能になる。少子高齢化が進み、労働人口が減るこれからの日本において、自治体DXは必要不可欠になるだろう。

医療や福祉、労働環境、教育現場など、抱えている問題や改善する余地はまだまだある。まずはそれぞれの自治体が抱える問題を明確化し、それに合わせたデジタル技術の導入を進め、効率化していくことが重要である。

 

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